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侮ると怖い

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第七章

 二人は物陰に隠れつつ移動してラターナを尾行に近い警護をしつつ見ていた。そしてだ。
 その彼女の横、二人とは違う物陰にだ。彼を見たのだった。
 背中は曲がり闇に隠れる様な暗い色彩の服を着ている。暗い目つきで痩せた顔をしている。その如何にも不健康そうな彼を見てだった。
 津田は確信した。まさにだというのだ。
「あいつだね」
「そのまま、ですね」
「日本でもストーカーっていえばね」
「ええ、インドネシアでも」
「外見や服装ではわからなくてもね」
 少なくともその男は外見も服装も怪しい。しかし津田はそれよりもだというのだ。
「目だよ」
「そう、目ですよね」
「ストーカーの目ってあるんだよ」
 こう言うのだった。津田は。
「もうね。暗くて偏執的でね」
「一つのこと、そのストーキング対象しか見えない」
「そうしたことになっているからね」
「はい、まさにあいつは」
「ストーカーの目だよ」
 二人が認識しているだ。まさにそれだというのだ。
「あれは何時か大変なことをするね」
「思い詰めて遂には、ですね」
「だからね。絶対にね」
「ここで何とかしないと駄目ですね」
「動きだしたら。その時は」
 まさにだ。その時にだというのだ。
「やっつけるよ。いいね」
「私達二人で」
 その為にもだった。その如何にもストーカーという物陰の男を見るのだった。とにかく彼がおかしな動きをすればすぐに動くつもりなのである。
 だがここでだ。その二人がこっそりと警護しているラターナがだ。
 不意に立ち止まった。そのうえでだ。
 そのストーカーにしか見えない男の方を見てだ。こう言ったのである。
「出て来たら」
「えっ!?」
「まさか」
 その言葉を聞いてだ。津田もチャーンも。
 目を丸くさせた。そして言うのだった。
「気付いてたのか、ひょっとして」
「そうみたいですよね」
「ううん、勘はいいのかな」
「そうかも知れないですね」
 二人は二人のいる物陰でだ。顔を見合わせてだ。
 そのうえで話す。ラターナがストーカーに気付いていた可能性について考えてだ。
 今はラターナから目を離せなかった。そうしてだ。その彼女はというと。
 男に対してだ。顔を彼に向けたまま毅然として言っていた。
「こそこそしなくてもね。わかってるから」
「わかってるって」
「貴方ずっとお店に来て私を見てたわよね」
「そ、それは」
「指名したいならすればいいでしょ」
 その毅然とした顔での言葉だった。
「そうしたらどうなの。こそこそ見るよりはね」
「けれど僕は」
「ストーカーする位なら来なさいよ」
 堂々としていた。まさに。
「これ以上こそこそしたら警察に言う前にね」
 どうするかというのだ。ラターナの言葉は強かった。
「警察に突き出すわよ。そうなれば只じゃ済まないわよ」
「そんな、警察って」
 被害届けが受理されにくくてもだ。それでもだ。
 本人が突き出されてその人間を逮捕しない警察はない。少なくとも真面目な警察ならだ。
 ラターナもそのことがわかっている様だ。だからこそこう言ったのであろう、津田もチャーンも彼女のその言葉からこのことを察した。
 そのラターナはだ。さらに言うのだった。
「逮捕されたい?どうなのよ」
「それだけは」
「そうでしょ。だったら下らないことは止めなさい」
 相手に顔だけでなく身体も向けて左手を枯死にやってだ。ラターナは言う。右手にはバッグがあるがそれはもう武器にしか見えなかった。
 その姿勢でだ。彼女は言うのだった。 
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