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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第37話

~夜・特務支援課~



「―――なるほど。両首脳を狙うテロリストに”結社”か。」

「クッ、可能性はあったがそこまで具体的だったとは……さらには”結社”までクロスベルに潜入しているだと……!?エレボニアにしてもカルバードにしてもいったい何を考えている……!?」

ロイド達から話を聞いたセルゲイは目を細め、ダドリーは唇を噛みしめ

「……こうなってくると、局長やルファディエルの推理が現実味を帯びてきたな……」

「―――!!昨夜に聞かせてもらった”あの話”ですか……!クッ……!……しかし、局長達も局長達です!そこまで推測できているのなら、こちらとしてもいくらでも動きようがあるのに、こちらに指示を一切せずに独自で動こうとするとは……!一体何を考えている……!?」

重々しい様子を纏って呟いたセルゲイの言葉を聞いたダドリーは驚いた後唇を噛みしめ、怒りの表情で叫んだ。

「詳しい話は聞けませんでしたがルファ姉の話だと”黒月”と”赤い星座”をクロスベルから一掃し、さらにエレボニアとカルバードの2大国がクロスベルに手を出しにくい状況にする策と言っていましたが……」

「馬鹿なっ!?信じられん……!」

「ほう……?どうやら今までとは比べものにならないくらいの大規模な策になりそうだな……………とにかく、市長や警備隊にも話をしておく。……局長と親しいギュランドロス司令も残りの”六銃士”達と独自で局長達と共に動きそうだから、一応ソーニャの方にも話しておく。」

そしてロイドの話を聞いたダドリーは驚きの表情で声を上げ、セルゲイは目を丸くした後ダドリーに言った。

「ええ、そちらはお任せします。―――それにしても。お前達があの”アルセイユ”に乗ったと聞いた時には耳を疑ったぞ。しかも国賓クラスの4人からそこまでの話を聞いてくるとは………」

セルゲイの言葉に頷いたダドリーはロイド達を睨み

「はは、一課の方でも当然チェックしていましたか。」

「ま、こっちも突然だったんだから目くじら立てないで欲しいッスね。」

睨まれたロイドは苦笑し、ランディは口元に笑みを浮かべて答えた。



「ええい、突然だろうが、そういう時は上に相談してから招待を受けるかどうかをだな……!」

2人の答えを聞いたダドリーは怒鳴ったが

「クク、ありきたりの対応をコイツらにやらせてどうすんだ?呼びつけた相手も規格外みたいだし、ちょうど良いってところだろ。それに警察(おれたち)のトップの局長やその秘書のアル警視も一緒にいたから、”一応”上には相談してあるだろう。」

「ぐっ………」

セルゲイの話を聞いて唸った。

「いや~、でも確かに変わったお姫様達と皇子だったよな。特にオリヴァルト皇子ってのがあんな変人だとは思わなかったぜ。」

「ハ、ハハ…………(元・エレボニア人としてふ、複雑だ……あんな変わった性格をしている人がエレボニアの皇族だなんて……)」

笑顔で言ったランディの言葉を聞いたリィンは苦笑し

「失礼よ、ランディ。確かに愉快と言うか……とても軽妙な方ではあったけど。」

エリィはランディを見つめて注意した後口元に笑みを浮かべた。

「でも、色々なことをよく考えてる人だとは思う。あの護衛してた少佐もかなりの腕前だったみたいだし。」

「それに、クローディア姫とユリア准佐は素敵でしたね………!姫殿下は気さくだけど気品があってユリア准佐はもう凛としてて……!」

「ふふ、ちゃんと妹さんの分までサインを貰えたみたいじゃない?」

興奮している様子で語るノエルにワジは静かな笑みを浮かべて尋ね

「ど、どうしてそれを……」

尋ねられたノエルは驚いた。

「……まったく。まあいい――――テロリストの存在や両国の思惑がわかっただけでも収穫というものだ。少々、明日の警備シフトを調整した方がいいかもしれんな……」

その様子を見ていたダドリーは呆れて溜息を吐いた後真剣な表情で言った。



「やはり正念場は明日……『通商会議』の本番ですか。」

「ああ、明後日の午後には首脳達も帰国する……何かあるとしたら明日の可能性が高いだろう。」

「たしか……会議は昼からでしたね?」

「ああ、午後1時からオルキスタワー35Fにある『国際会議場』で行われる。それから一度休憩を挟んで夕方くらいまで続く予定だ。」

「となると、その会議中、首脳連中を守り抜けばいいのか?」

「いや、オルキスタワー内部には万全の警備体制が敷かれている。ビル自体のセキュリティもあるし、会議中はむしろ安全だろう。」

「加えて会場警備にはアリオスも参加する予定だ。それもギルドの立会いとして通商会議の場にいるそうだから安心といえば安心だな。」

「そうなんですか……」

「となると、会議の前後が一番危ないかもしれませんね。」

セルゲイの話を聞いたエリィは明るい表情で頷き、ノエルは考え込み

「タワーから出てきたところで遠くからターンって狙撃とかね。」

ワジは静かな笑みを浮かべて意見を言った。

「正直、それが一番恐いパターンではあるよな……」

「狙撃された場合、防ぐ方法がないしな……」

ワジの意見を聞いたロイドが疲れた表情で、リィンが真剣な表情で言ったその時

「ねえねえ、ロイドー。」

キーアが部屋に入って来た。

「あ、ぶすっとしたオジサンだ!」

ダドリーを見たキーアは声を上げ、キーアの言葉を聞いたロイド達は冷や汗をかき

「……相変わらず躾がなっていないようだな?」

ダドリーは顔に青筋を立てて尋ねた。

「す、すみません。」

ダドリーの言葉を聞いたロイドは慌てて謝罪し

「キーアちゃん、この人はダドリーさんといって………」

エリィはキーアに説明しかけた。すると

「うんっ、ダドリー!ひさしぶりだねー。元気だったー?」

キーアは無邪気な笑顔を見せてダドリーに尋ね

「フン、一課の捜査官たる者、体調は常に万全にしている。―――じゃなくて!呼び捨ては止めるがいい!」

尋ねられたダドリーは静かな笑みを浮かべて答えたがすぐにある事に気付いてキーアを睨んで注意した。

「えー、ダメなのー?じゃあ、ダドリーおじさん?」

「誰がオジサンだ、誰がっ!」

そしてキーアが呟いた言葉を聞いたダドリーは突込んだ。

「ま、まあまあ。」

「はは、子供にしてみりゃ、十分オジサンだよなぁ。」

「それでキーア。なんの用なんだい?」

「あ、そうだった。えっとね、ロイド達に通信が入ってるよー?」

「通信が?」

「あら、通信器のベルは鳴ってなかったみたいだけど……」

キーアの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、エリィは意外そうな表情で言った。

「あ、フツーのじゃなくてカオが出て来るほう。」

「端末の方か……キーア、よく操作がわかったな。」

キーアの説明を聞いたロイドは驚き

「でも、それだとしたらティオすけか?夕方連絡してきたみてぇだが。」

ランディは意外そうな表情で尋ねた。

「ううん、ソバカスのヒト。何だかカオが赤くなったり青くなったりしてるけどー。」

その後ロイドは仲間達と共に端末に向かい、通信を始めた。



「――遅いっての!まったく、いつまで待たせんだよ!」

「はは、悪い。それにしても久しぶりだな。元気でやっているの―――」

「あーもう、そんな挨拶はいいっての!アンタらに至急、頼みたいコトがあるんだ!今からボクのベースを見てきてくんねーか!?」

「え……」

「ベースって……あなたが寝泊まりしていた?」

通信相手―――ヨナの話を聞いたロイドは驚き、エリィは尋ねた。

「ああ、ジオフロントB区画の第8制御端末のある場所さ!昨日から今日にかけてあの端末を勝手に使っているヤツがいるみたいなんだ!」

「勝手に使ってるって……」

「一体どうしてそんなことがわかったの?」

「つーか、ヨナ公。勝手に使っているのはお前だって同じじゃねーか。」

「そ、それはともかく!ボクの留守中、あの端末には強力なプロテクトをかけたんだ!それで、万が一それが破られたら導力ネットの遠隔接続実験の時にアラートを送るようにしてて……そのアラートが今日来てんだよ!」

「それは……」

「……君がプロテクトをかけた端末をハッキングした者がいる。つまりそういうことだね?」

「ああ、そういうことさ!かなりのハッカーなのは間違いない!とにかくとっ捕まえて2度と触らせないで欲しいんだ!」

「ったく、自分の事は棚に上げて勝手な事を言ってやがるな。」

ワジに尋ねられ、答えた後自分達に依頼するヨナの話にランディは呆れ

「でも、かなりのハッカーって……ちょっと心配ね。」

エリィは不安そうな表情をし

「ああ、レンは今日の昼前にクロスベルに到着したから違うだろうし、ロバーツ主任とも思えない。とりあえず見て来るからまた後で連絡してきてくれ。」

エリィの言葉に頷いたロイドはヨナに言い

「ああ、頼んだぜ!」

ロイドの言葉を聞いたヨナは通信を止めた。

「なんだ、行くのか?」

ロイド達の会話を聞いていたセルゲイは尋ねた。

「ええ、念のため。何だったら俺一人で見に行って来てもいいですし。」

「おいおい……無茶言うなよ。」

「そうね……いるのがハッカーだけとは限らないでしょうし。」

「ご一緒します!」

ロイドの言葉にランディ達がそれぞれ答えたその時

「――待て。私も同行しておこう。」

ダドリーが意外な提案をした。



「え……」

「へえ、どんな風の吹き回しだい?」

提案を聞いたロイドは驚き、ワジは興味深そうな表情で尋ねた。

「フン、通商会議を前にしてイレギュラーな要素は少しでも把握しておきたいというだけだ。時間が惜しい、とっとと行くぞ。」

「わ、わかりました。」

ダドリーの指示を聞いたロイドは戸惑いながら頷いた。

「フフ、それじゃあ軽く、食後の運動と行きますか。」

「課長、キーアちゃん、それでは行ってきます。」

「おお、せいぜい気を付けろ。」

「いってらっしゃーい。」

その後ロイド達はダドリーと共にジオフロントB区画に潜り、かつてヨナがいた端末室に向かった…………… 
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