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Three Roses

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第七話 子をもうけぬままその三

「色々考えているが尻尾を掴ませないどころかな」
「見せることすらしない」
「それを見るとですね」
「やはりあの方は切れ者ですね」
「優れた方ですね」
「その太子を送ってきたことを見るとわかることがあるが」
 切れ者をあえて送って来た、このこと自体からというのだ。
「あの国は我が国を重要視している」
「彼等の考えの中で」
「そうしてきていますね」
「そしてそのうえで、ですね」
「太子が来られた」
「そして動かれていますね」
「尻尾は見せないがおおよそにしてもだ」
 はっきりではないがというのだ。
「彼等は我が国を狙っている」
「この国もですね」
「これまでの国々と同じ様にですね」
「彼等の領土とするつもりですね」
「ロートリンゲン家の」
「だから婚姻を結んでいるのだ」
 エヴァンズ家、他ならぬ彼等とだ。
「その為にな」
「婚姻は彼等にとってはそうしたものですね」
「相手の家を取り込むもの」
「だからこそですね」
「太子も来られた」
「そうなのですね」
「そうだ、しかしだ」
 大公はここでまた言った。
「彼等の思惑通りにはさせない」
「この国はエヴァンズ家が王家ですね」
「ロートリンゲン家ではなく」
「あくまで、ですね」
「エヴァンズ家ですね」
「そうだ、我々が王家だ」
 そのエヴァンズ家の大公が言う。
「ロートリンゲン家の血が入ってもな」
「それでもですね」
「エヴァンズ家ですね」
「このことは変わらない」
「変えないですね」
「エヴァンズ家の血は守る」
 大公は確かな声で言った。
「そのことも果たしていくぞ」
「ロートリンゲン家はそうした他家の乗っ取りが常でしたが」
「それは防ぎますか」
「何としてもエヴァンズ家が王家のままでいる」
「そうしていきますね」
「確かに王にはお子をもうけて頂きたい」
 ロートリンゲン家から来た王妃との間にだ。
「しかしそのお子はあくまでだ」
「エヴァンズ家の方ですね」
「例えロートリンゲン家の血が入っていても」
「そのことは変わらないですね」
「お子は新教徒であられる、このことがだ」
 何よりもとだ、大公は自身の言葉にそうした言葉も含めてそのうえで彼の前にいる側近達に強い声で話した。
「エヴァンズ家の証だ」
「今の我等のですね」
「そうなりますね」
「旧教ではなくな」
 信仰によりだ、家が決まるというのだ。
「旧教の信仰は貴族や民には認めるが」
「それでもですね」
「王家は新教ですね」
「新教でなくてはならない」
「そのことは絶対ですね」
「その通りだ、信仰を守ることも含めてだ」
 そしてというのだ。 
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