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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはA's ~闇の書の真実~


はやて家襲撃から一夜が明ける。

蒔風たちは学校に行き、授業を受ける。



だが、やりきれない思いで内容など一切入ってこなかった。


休み時間になり、すずかがはやてとの連絡が取れないことを心配している旨を話してくる。
その言葉を聞くだけでやりきれなくなり、三人は顔を俯かせるのだった。



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「じゃあ・・・話そうかな。オレのこと」

帰宅して、蒔風がヴォルケンズや、前回すぐに別れてしまったフェイトに自身の事を説明する。

世界、覚醒、翼人、「奴」

それらの話を聞いて、皆一様に驚いたが、ある意味納得できる内容だった。


シグナムが蒔風に問う。

「では・・・お前は翼人なのだな?」

「その通り。っつても、あんたがたの知ってる人とは違うけどな」

「お前は他の翼人を知ってんのか?」

「オレのほかに二人、確認しているな。どちらも素晴らしい奴だよ」


そして話題は仮面の男に移る。

「いま仮面の男は失われた闇の書のページ集めに奔走しているはずよ」

「シャマル、あの結界の時にどれだけ使ったんだ」

「・・・・全部」

「「「はぁ!?」」」

「ありったけ使ったのよ!!」

「でもこれは好機だ。あの野郎の足取りも掴みやすくなる」

「いや、使わせ切らした奴が言うなよな・・・・」

「だが、「奴」が加担してると言うことは、その力も使われていると思う」

蒔風が顎に手を当てて考え始める。

「さらに俺の力も使われたと思うから・・・・」

その言葉にクロノが待ったをかける。

「待ってくれ。君、蒐集されたのか?」

その問いにその場の全員が蒔風に視線を向ける。

「いや、だけど間違いないと思うよ?ケルベロスとやり合ったときあいつの爪が体内に食いこんでな。その時に力を持ってかれたんだ。だから最後には技能一発の技で仕留めるしかなかったんだよ」

「それで、どれほどページは埋まったと思う?」

そうだなぁ、と蒔風が視線を泳がせて考える。

「なのはの三分の二で確か33ページ・・・だから・・・奴がオレと同じ分分け与えたとして・・・ざっと二人合わせて400ページは埋まったかな」


「「「「「「「400ぅ!?」」」」」」」


「魔力にするとな。それに結構水増ししてだからな。オレの力は魔力じゃないが、魔力に変換するとそれぐらいってこと。オレの能力は燃費悪いからなぁ」

「と、なると残りは266ページ・・・・」

「あいつら・・・一体どう動くつもりだ?」

「闇の書完成前にはやてが浸食されて死んだらそれまでだから・・・あとどれくらい持ちそうだったんだ?はやての身体は」

「あのとき見たら・・・あと・・・ひと月は・・・もしかしたら、もっと短いかも・・・・」

「ひと月か・・・・・なあ・・・・そういえば、はやてには蒐集の事とか伝えられたのか?」

その言葉にシグナムが唇をかみ、ザフィーラが答えた。


「いや。お伝えする直前に、あの男が来たのだ。「盾の守護獣」が・・・聞いてあきれるな・・・」

「落ち込むなって」

そこでクロノが立ち、今後の方針を伝えた。

「では、これより我々アースラは八神はやての保護と、仮面の男の追跡を最重要任務とする!!はやての居場所は、わからないんだよね?」

「ああ・・・闇の書でつながってるから無事なのはわかるけど、それ以外はわかんねー」

「あの・・・クロノ。シグナムさんたちはこれから・・・・」

フェイトが心配そうにクロノに訊いた。
そんなフェイトを見て、クロノがほほ笑んだ。

「大丈夫だ。今彼らがここにいることは、ここにいるみんなと、母さんとエイミィ、ユーノしか知らない」

その言葉に、みんなが目を丸くする。

「クロノ、お前なんか変なもん食べたか?」

「クロノ君、どうしちゃったの!?」

「クロノ、熱があるんじゃ・・・・」

蒔風なのはフェイトの順で次々とクロノの身体をベタベタ触り、異常がないか確認し始めた。


「なにもないっ!というか、僕がこういうことをするのがそんなにおかしいか!?」

その言葉に3人が同時にうなづく。

「クロノはもっと報告とか真面目にしてるかと・・・」

「クロノ君ってルール順守な人ってイメージがあるから・・・」

「クロノはもっとお固くて、融通の利かない子だと思ってましたっ!!!(バシィ!!!)なんで俺だけ!?」

「失礼だぞ君たち!僕だって報告すべきか悩んだけど、これが彼ら的にも一番いいと考えたんだ!!」


「確かに、このまま管理局に行け、と言われたらこの場から脱走して主を探し始めてた自信があるッ!!」

「確かにそうだけど・・・シグナム、ちょっとテンション高くねえ?」

「何を言っている!!この状況で、落ち着いてなどいられるか!!!主はやてがいまどのような状況に置かれているか・・・・できることなら今すぐにでも・・・・・っ」


「ああ。だからこちらと連携がとれるようにした方がいいと思ったんだ。それに、今ここから離れろ、なんてことは・・・・言えないよ」

「クロノ君・・・」
「クロノ・・・」
「クロちゃん・・・・」

「その呼び方は止めろ!!!」

「「「「クロちゃん・・・・」」」」

「ほら見ろうつったぁ!!!」



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それから数日間、クロノ達は仮面の男の動向を追い続けた。

だがしかし、彼らはかつてヴィータ達がやっていたように異世界の巨大生物から蒐集しているようで、あっちこっちで蒐集しているため、現地に行っても追いつけないのだ。
さらにその行動範囲が異常に広い。

大きな転送ポートを持ってるとしか思えないほどの範囲で蒐集している。
そして鉢合わせても、その瞬間の逃げてしまうために、手がかりはまったくと言っていいほど集まらない。


「くそっ!!!」

蒔風が苛立ち、テーブルを叩く。
もうすでに1週間と二日が過ぎてしまっている。

その場には帰還したフェイトとシグナム、待機中のなのはとヴィータ、隣の部屋にはシャマルとザフィーラがいた。

本来ならば一番取り乱しそうな彼らだが、蒔風が必要以上に荒立たせているために、逆に冷静になれている。


「男の所在がわからねえ・・・あいつらどこにいるんだ!!」

そこでなのはが口を開く。

「ねえ、闇の書がこのまま完成してもいいんじゃない?」

「え?」

「だってそれではやてちゃんが治るんでしょ?」

「あ・・・・確かに・・・・・・いや待て待て、下手な場所で完成してみろ。あの男に何されっかわかったもんじゃねえ」

「そっか・・・・」

「「奴」、とかいう輩の事も気になるしな」



はぁ・・・・とみなが一様にため息をつく。
本当にどうしようか・・・


「・・・・なあ・・・闇の書って・・・・本当にこんなもんだったっけ」

ふと、ヴィータが言葉を漏らす。
それにシグナムが返答した。

「何を言っているヴィータ。魔力を蒐集し、完成させることで主に絶対の力を与える。それが闇の書だ」

「確かにそうだけどよぉ・・・何か忘れてる気がすんだよ・・・・」

「忘れてる?」

「ああ・・・なんか違うんだ・・・本当にこれで幸せになれんのかなって・・・・でも・・・でもよお・・・はやてが死んじゃうなんて、あたし嫌だよぉ・・・」

「ヴィータ・・・・そのようなことは我々がさせん。そうだろう?」

「ああ、ああ!そうだ、あたしたちが守るんだ・・・はやてを・・・また、はやてに笑ってもらって…ご飯食べて・・・・」

ヴィータが涙ぐみ、シグナムが慰める。
その姿に、蒔風たちも心が痛む。




ヴィーヴィーヴィー


そこにアラームが鳴り、仮面の男の居場所があらわされる。
それにシグナムとヴィータが立ちあがった。

「今度は逃がさん!!!」
「ぜってーぶっ潰す!!!!」
「私も行こう」
「私も行きます!!」

隣の部屋から二人も出てきた。
ヴォルケンズは皆行く気のようだ。

『だったら僕が付いていこう』

「クロノ!!」

そこにモニターが現れ、クロノを映し出していた。

『現地で合流だ。行こう!!』

「「「「おう!!!」」」」

4人が飛び出していき、部屋が少しだけ広くなった。
と、それと入れ違いに他の人物が部屋に入ってきた。

「3人とも!!」

「「「ユーノ(君)!!」」」


入ってきたユーノはソファに座ってからこう切り出した。


「闇の書の情報が集まったよ」

「本当!?」

「どんな?」

「ああ・・・・ひどい・・・話さ」


ユーノが話し始めた。


闇の書。

それは後世に起こったその陰惨な事件からつけられた別の名である。

その魔導書の真の名は「夜天の書」
本来の目的は、偉大な魔法、魔導師の知識などを蒐集し、研究するためのものだった。
そのための転生、そのための旅する魔導書だった。
素晴らしく、そして優れた技術を失わせないために。


だが、いつかの世代の主の一人が、夜天の書のプログラムを改変してしまった。
ただ、自らの願いのためだけに使おうとしたためだ。

そこに集められた莫大な力、技術、知識。
それらを自由に、自らの欲望のままに行使しようとした結果である。

だが、それはうまくいくはずもなかった。
相手は古代に創られし遺産、ロストロギア「夜天の書」。

そのために旅をする機能と、自動修復の機能が暴走してしまったのだ。
永遠に続く転生と、無限再生はそのためのものだった。

さらには持ち主が蒐集しなかった場合、持ち主の身体を侵食し始めるのだ。



「今のはやてちゃんがその状態なんだね・・・・」

「でも、完成さえさせれば」

「いや、そうもいかないんだ」


ユーノの話は続く。

魔導書を完成させたとする。
だが、そこに待っているのはさらなる悲劇と惨状だけ。

完成したらその書は持ち主の魔力を際限なく使わせるのだ。


ただ、無差別破壊の力のみに


これが「夜天の書」が「闇の書」と呼ばれるようになった所以だ
だから、今までの主も皆、その死に抗い、完成と同時に自らの意志を消され、ただ破壊の力となってしまった。



「そんな・・・」

「じゃあ、完成させても無駄じゃねえか・・・」

「どうするの?ユーノ!」




完成前での闇の書の封印はまず無理だ。
魔導書を完成させた、真の主でなければ、システムに干渉できないからだ。
つまり、闇の書を破壊や封印するには、未完成な状態ではだめなのだ。

だが、完成させると主の意志は消され、荒れ狂う破壊の嵐となる。

無理に外部から介入すると、主を吸収して、転生して逃げてしまう機能まである。



「と、いうことなんだ・・・だから、闇の書の永久封印は、事実上不可能と言われているんだ」

「・・・・・」

「ヴィータちゃんが言ってたのはそういうことだったんだ・・・」

「確か幻影に気付いたのもヴィータだったな。なかなかに鋭い」

「でも・・・どうするの?」

「たしかに・・・・元のプログラムに書き換えられるのははやてだけだ・・・・」

「でも、完成させないと接触できないし、完成したらはやてちゃんは飲み込まれちゃう・・・」


「・・・・・・・あの男はこのことを知ってんのか?」


「そういえば・・・・・」

「今の情報だと、封印できんのは完成直後ぐらいだ」

「そう・・・なるかな。暴走状態になった瞬間にどうにかするしか・・・」

「確かあいつ、「いずれわかる。我々の行動が正しかったとな」って言ってたけど・・・」

その言葉にユーノがまさか・・・と言葉を漏らした。

「仮面の男の目的は・・・・闇の書の封印?」

「だったら説明がつく。シャマルの援護、はやての誘拐、完成の手助け・・・」

「でも、その状態で封印したら!」

「間違いなくはやてごと封印になる・・・しかしどうやるつもりだ・・・よほど大きな組織でない限り、あれを封印する物なんかできないぞ」

「それに、そんなものが作れるような組織なら、闇の書の力を得ようとするはず・・・」


「でも、ユーノ凄いよ。よくここまで調べたね」

フェイトがユーノに称賛を贈る。

「いや、あの無限書庫は凄いよ。調べれば知りたいことはちゃんと出てくるし」

「すげえ・・・あれだけの蔵書をよく調べたな」

「今度ゆっくり整理しに来ないかって、無限書庫の司書の人に呼ばれちゃったよ」

「おおーー」

「でも、大変だったよ。リーゼさんたちは途中任務で出かけちゃうし、ロッテさんなんか、大怪我してきちゃって」

「大丈夫なのか?」

「うん。頭に包帯巻いて、右腕を吊っていたけど、全然大丈夫だって」

「・・・・よかった」





バタン!!!


そこで玄関が勢いよく開き、シグナムたちがクロノと共に帰ってくる。


「また逃げられた!!!」

「シグナム!ちょうどいい。今ちょうどユーノが」

「それよりも!!!あの男から贈り物だ・・・一体何が映ってるのか・・・・くそっ」


そう言ってシグナムがクロノの持つ物を指さす。
クロノの手には1枚のカードがあった。
おそらく映像がその中に収められているのだろう。


それをモニターに写し、みんなで見る。

「ユーノ、資料は集まったのか?」

「うん。あとで話すよ」

「そうか。こっちも気になったことがある」

ぼそぼそとクロノとユーノが小声で話していると、モニターに映像が映った。



そこには車椅子で眠り続ける八神はやてと、仮面の男がいた。




乱れた物語はここから再び軌道に乗る。
そして変わらぬ結末へとなだれ込むのだ。





to be continued

 
 

 
後書き

アリス
「次回、仮面の男の宣告」

ではまた次回









悪魔め・・・!

悪魔で・・・いいよ。
悪魔らしいやり方で話を聞いてもらうから。
 
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