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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはA's ~運命ーを連れーて行く・・・違ったの~


アースラに帰還したユーノ達。
もちろん蒔風も一緒だ。

彼らを出迎えてくれたのはクロノだった。


「舜!!久しぶりだな!!」

クロノが蒔風を見るなり嬉しそうに肩を掴む。

「ははは、クロノ久しぶり!!って、痛い痛い!ど、どうしたん?」

「ふっふっふ・・・待ってたよこの時を・・・」

「クロノさん?」

「舜お前、前回自分のデータ消してったろうが!!」

「ひいバレた!?」

「バレれないでか!!!先の事件の報告書をまとめようとしたら君のデータがゴッソリ無くなってたんだぞ!!!」

「翼人の事なんか残せるか!!それに俺がいなくても大丈夫だったろ!!」

「それとこれとは話が違う!!管理局のデータベースに入り込んでデータの改竄をしたことが問題なんだ!!!」

「冷たいこと言うなよクロちゃぁ~ん」

「あーもーー、君って奴は!!!!」

「クロちゃんです♪」

「やかましい!!!」


蒔風とクロノがいきなり口論を始めてしまった。
なのはを抱えるアルフも、その後ろのユーノとフェイトも唖然としている。

(ねえ、クロノってあんなにはしゃぐタイプだったっけ?)

(ううん。私もそれなりに一緒にいたけど、あんなクロノは初めて)

(なーんか兄弟げんかみたいで面白いねえ)

三人がひそひそと話しているのに気づいたクロノが、咳払いをして話を戻す。

「さ、みんな。これからアースラは時空管理局本局に向かう。話はそれからだ」


アースラは時空管理局本局に向け、出航した。


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なのはが目覚める。

何処かの病室のようだ。
窓の外には見慣れない街が見える。

「ここは・・・・」

そして少し考えて、自分に何があったのかを思い出す。

「そうだ・・・わたし、落とされて・・・」

「なのは」

ベッドで身体を起こしたのなのはに、フェイトが声をかけてきた。
どうやらさっきからずっとそばにいてくれたようだ。

「フェイト・・・ちゃん」

「なのは・・・その・・・えっと・・・」

二人の間になんとも言えない空気が流れている。
それもそうだ。

半年前に涙の別れをし、ビデオメールで連絡は取り合っていたが、こうして会うのは本当に久々なのだ。
それもあんな戦闘のあった直後に。

それは気まずくもなる。


「あ、あはは。なんか変な再会になっちゃったね」

「う、うん」

「・・・フェイトちゃん」

「なに?なのは」

「会いたかったよぅ・・・」

「・・・うん、私も」

そう言ってお互いの手を取る二人。
そして話が盛り上がっていく。


「そういえば、フェイトちゃんを途中で助けた人がいたよね?」

「あ!!!そうだ!!なのは、帰ってきたんだよ!!!」

「え?」


舜が帰ってきたんだよ!とフェイトが言おうとし、「しゅ」のところで扉がガタガタとなりだし、ゴガガガガ、と振動し始めた。

『おかしい・・・引いても押しても開かんだと!?』

扉の向こうから声が聞こえる。
ちなみにこの扉はスライド式で、人が近づくと勝手に開くはずなのだが・・・・

『おのれこの扉野郎め、そこを開いて人を招き入れるのが貴様の機能のくせに、なんでそれもできないんだよ・・・・ひ、ら、け!!!(ドゴガン!!!)』

扉の向こうから声が聞こえてきて、散々騒いだ挙句にあろうことか扉を蹴り破ってきた。
本来開かない方向に開かれた扉は、バタン!!と部屋の中に倒れ、そこを開けた。

そして壊れた扉の構造を冷静に見直して、扉を蹴破った蒔風がふっ、と頭を振って言った。


「あ、あんたが開かないから行けないんだからね!!!」


訳のわからないツンデレである。
いや、ツンデレですらもない。

その蒔風につかつかとフェイトが歩み寄って、その頭を蒔風の脳天から拳を振り落として殴った。

「オゴゥ!?」

「何やってんのかな?舜」

「ま、待てフェイト・・・オレはなんか暗そうな雰囲気だっとこの場をどうにかしようとだな!!」

「どっから聞き耳立ててたの!!!!!」

「え?モチ最初から。その質問は「最初からじゃねえか!!」のベタな・・・待て待て待て!!わかった悪かった俺が悪かった今度は普通に開くからゴォウ!?」

もう一度フェイトが蒔風の後頭部をはたき、粛正した。

「フェ、フェイトちゃん?それに・・・舜君!!!!」

「おう、久しぶりですの。蒔風君だよ~。元気?ってもんでもないかな?」

「うん・・・」

「ま、あのままだったらリンカーコア全部取られてたな。あの騎士、やりよるのう」

「舜はあの人たちのこと知ってるの?」

「それは全員集まってからだ・・・・噂をすれば、だな」

そのときちょうど扉があった場所に、リンディ、クロノ、ユーノ、アルフ、エイミィが入ってきた。

「蒔風君、元気だった?」

「ま、元気ですな。この姿以外は」

「また「実年齢は~」とかですか?」

「なんでそれだけ信じてくれないの?」

「なんとなくです」

「そんな~~~~」

そしてエイミィに挨拶をする。

「どうも、久しぶり」

「ほいほいお久しぶり~。クロノから聞いたよ~?翼人なんだって?」


ビシリ、と蒔風が固まる。

そしてぐるりと蒔風の首がクロノの方を向く。
それと同時にクロノの首が蒔風から逸らされる。

「クロノ?」

「えっと・・・どうしてもって・・・・」

「え~?クロノ君の愚痴で聞いたんだよ~?翼人のどうとかって!」

蒔風がズズイッ、とクロノに近づく。

「クロノ?」

「そ・・・その・・・・すまない・・・」

「・・・はあ、ま、いいけど。そこまで必死に隠すものでもないし」

クロノがフウ、と息を漏らす。

「でもなるたけ言いふらさないでくれよ?なまじ伝説が残ってる世界だと面倒なことになりかねない」


蒔風との再会で一通りの言葉を交わし合ったところで、本題に入った。


「交戦した四人の人物。彼らが今回の相手だ」

モニターが現れて、そこに今回戦った四人が写される。

「たしか、シグナム、ヴィータ、ザフィーラって呼び合ってたね」

「最後の一人はわからないけどな、彼らの言葉からある一つの情報を得た」

「それは?」

「・・・・闇の書・・・・」

口を開いたのはクロノだ。
なんとも言い難い表情をしており、何かしらの因縁があるように見てとれる。

「闇の・・・書?」

蒔風が説明を続けた。

「なんでも古代から存在する魔導書でな。リンカーコアから魔力をいただき、その質と量に比例してページを埋めていくんだ」

「埋めていく?」

「そ、最初は全666ページが白紙の状態から始まる。そこから魔力を蒐集していくごとに埋まっていくんだ」

「それと彼らの関係は?」

「彼らは闇の書の防衛プログラムだ」

「プログラム?」

そこからクロノが説明した。

「闇の書は持ち主が死んだりすると、次の持ち主のところに転生するようにされている。そしてその主と本を守るのが彼ら、「ヴォルケンリッター」だ」

「そういえば、あの人たちの魔法、なんか変だった」

「それは彼らだからというわけではないんだがな。魔法の系統が違うんだ。お前らのはミッド式。彼らのはベルカ式と呼ばれる物だ」

「遥か昔にミッド式と双璧を誇っていた魔法文化だよ。その最大の特徴がカートリッジシステムだ。薬莢の様な物の中に魔力を込めて、戦闘時にそれを開放することで瞬発的に攻撃力を激増させる物だ」

「ま、より対人戦に特化したもんだわな。で、優れた使い手は「騎士」と呼ばれる」

そこでなのはが手を上げた。


「はい、なのはさん」

「えっと・・・それであの人たちはリンカーコアから魔力を奪ってそれでページを埋めて・・・何をするの?」

蒔風はなのはにビンゴ、という様に指を向ける。


「そこなんだ。何が起きるかはわからない。その闇の書の主がどんな奴かはわからないしな」

「だが使いようによっては危険なロストロギアだ。どちらにしろ、話は聞かないといけない」

「それにこの事件、多分私たちアースラが受け持つことになりそうだし」

そこでリンディが当面の問題を言った。


「そうなのよねえ・・・でも、アースラは今整備中だし・・・」

「地球は管理外世界で、行くのには時間がかかる。何かあった時に・・・」


そこで蒔風がぽろっと、言った。



「みんなでくりゃいいじゃん。現地に住んでさ」



「あ」「え?」「あぁ~~」

皆が納得したような声を出した。

「そうね、そうしましょうか。でも、まだうちの担当になるかどうかわからないし」

「なるさぁ。だって」

「だって?」


蒔風が指を頭の上でくるくる回しながら言った。

「主人公達が出会ったんだから」


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「クロノ、会わせたい人って?」

「ああ、この部屋だ」

蒔風がクロノに連れられて来たのは応接室のうちの一つだ。
その中に案内されるまえに、蒔風が止まった。

「待てクロノ。俺はもう学んだのさ・・・」

「何を?」

「この扉がスライド式だと言うことをな!!!!(ドドーーーン!!!)」

「・・・・・・・・はぁ」

「だから今度はさっきのリベンジだ」

「待て舜!!また壊す気か!?」

「そうはしない・・・ふむ、やはり立っても開かないか・・・よいしょ、ッ!?」

蒔風が扉をスライドしようとしても開かない。
どうやっても開かない。

「バカな!!!こうまでしても俺様を拒むか!!!」

ちなみに蒔風がスライドさせているのは右から左だ。
この扉は左から右に開く。

「舜・・・・」

「ぬおおおおおお!!!!な、なんだクロノ!!」

「この扉は魔力に反応して開くんだ。それとは違う力を持つ君が開けないのはそのせいだと思うんだけど」

「そ、そうなの!?じゃあ・・・こうか?」

蒔風が魔力を生成し、扉を開く。


部屋に入ると、ひとりの老人・・・と言うよりも、紳士と言うべき人物が立っていた。
ひげを蓄え、優しげな眼をしていた。

「舜、こちらはギル・グレアム提督。かつては艦隊指揮官、執務官長を務めた、歴戦の勇士だ」

そう言ってクロノがグレアムを紹介する。

「はっは、そうおだてないでくれクロノ。照れてしまう。それにしても面白い子だね」

「へぇ・・・この人がクロノの師匠っていう?」

「ああ。執務官研修を担当していただいたんだ」

「どうも、初めまして蒔風君。ギル・グレアムだ。君の事はクロノから聞いているよ」


その言葉に蒔風がクロノに向く。


「・・・・・クロノ?」

「・・・・・ナンダイ?」

「どこまで話したのかな?かな?」

クロノの弁解より早く、グレアムがバラした。


「君が翼人であることまで知ってるよ」

「提督!!」

「クロノぉ!!!」

「す、すまない!!」

蒔風がクロノに迫るが

「まあまあ、彼に問い質したのは私なのだから、彼を責めないでください」

その言葉に蒔風も引っ込み、三人が席に着く。


「ふう・・・さっき、なのは君とフェイト君とも話していたのだが、二人ともいい目をしていた。君も・・・面白い目をしてるね」

「ん?どういうことで?」

「いや・・・伝説の翼人がこんな子供だったとは・・・・」

「子どもぢゃない・・・って言っても信じてくれないだろうし・・・いいよもう、それで、はあ」

「ん?なんだい?」

「いいえ。それより、管理局の超お偉いさんが何の用でっしゃろか?」

蒔風が聞く。
それに頭を下げて答えるグレアム。

「頼む。この事件を必ず解決してくれ」

「??」

グレアムが話し始めた。

クロノの父、クライド・ハラオウンが自分の部下であったこと。
彼が殉職した原因の事件が「闇の書」の事件であったこと。
そしてグレアム自身も今まで独自に調査してきたこと。

「頼む。闇の書はたとえ所持者を殺しても新たな所持者に転生してしまう。そんな代物をどうにかするには、この世界の力ではどうしようもないのだ」

そう言って頭を下げ直すグレアム。
クロノの顔を見ると、言葉にしたいのに出せない何かがあるようだった。

「クロノ、なんかあんのか?言ってみぃよ」

「・・・・グレアム提督、あの事件はあなたの責任ではありません。あのとき父は船員を助けるために、自分と艦を沈めるように言ったのです。あれはだれの責任でもありません。提督が気に病むことなど・・・」

「そんなことはわかってんよ、この人は」

蒔風がクロノに言う。

「こん人はそれを踏まえたうえでまだ自分が許せないんだ。だからこんな得体のしれない伝説にまで縋る」

その言葉に、グレアムが返す。

「そうだ・・・これが自己満足だとわかっている。だが、もうあんな事件は起こしてはいけないのだ!決して・・・決して!!!」

「・・・・・・・それで?闇の書の主はどうする?」

「できれば・・・助けたいが・・・」

「ふ、無理なら殺れってか。いや、殺したら意味ないから、捕らえて生き地獄かな?ならお断りだ」

そう言って蒔風が部屋から去ろうとする。
それにグレアムが諦めきれないと引きとめる。


「それは・・・だが、必要ならばやるべきなのだ。本当に頼む!!それが最善でないことはわかっている。だが、やってはならないことでも、やらねばならぬときがあるのだ!!それを」

「それを俺にやれっての?それとも俺に許して欲しいってか?悪いが俺は神じゃないんでな。翼はあっても天使ではない」

蒔風が部屋から出ようとする。
そこで背中越しに言った。

「やっちゃいけないことをなんでやっちゃいけないかわかるか?それがやっちゃいけないことだからだ。それ以外の御託は必要ない。ただそれだけの理由だよ、断るのは」

その背中にグレアムが聞いた。

「では・・・君がやることとはなんなんだ?」

そこで振り返って言った。

「当然、いいことだよ。ま、あくまでオレにとってな。いいことをやるのに理由や信念なんてもんはいらない。し続けるなら必要だがな、そんなもんはあとからついてくる。高尚な理由なんていらない。それが誰かのためになるなら、迷わずすべきだ。そうだろう?」


その瞬間、グレアムには蒔風が小学三年生の少年には見えなかった。
まさしく、彼は世界を救う青年だと、確信した。


「では・・・私は何をすべきなのだろうか・・・・」

「知らないね。あなたがやるべきことを、あなたの最善を。あなたの願いの通りにやればいいのでは?今までやってきたことをすればいい。誰かにそれが打ち砕かれるまで、な」



そう言って蒔風が去る。
その後をクロノがグレアムに一礼してから追いかけて行った。

部屋にはグレアムが残される。



「まいったな・・・逃げ道のための会話で、背中を押されるとは・・・・」

そう言ってどこかに通信をつなげる。

「私だ。ああ、やはりやろう。ん?迷い?もう吹っ切れたよ。打ち砕かれるまでやるとしよう。願わくば相手がこちらに気づくことに賭けるがね。ああ・・・・実行するとしよう」


そういって通信を切る。
天井を、いや、おそらくはその先の天を仰いで、グレアムは思った。


闇の書に終わりが来るように、と。






to be continued

 
 

 
後書き


アリス
「蒔風はいちいち魔力作らないといけないんですね」

そうなんですよ。
彼は大体どんな力も生成できますが、する必要がいんですよね。

アリス
「なんでです?」

だって必要なら「力を借り」ればいいし

アリス
「なるほど」

まあ、念話とかをしてたから、結構なれたろうけどね





アリス
「次回、今度こそ本当に新たな住まい」

前回の予行は実現できなかった(泣)










だめだ・・・どんなセリフも先取りしてまう・・・ 
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