| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

剣風覇伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十六話「占い屋」

タチカゼは荒野を彷徨い、しかし旅を続けねばなりませんでした。それはこの旅がヨツゥンヘイムで自分がなす

べき何事かを町をいくつか通るうちに自覚したからでした。最初の奴隷の町を脱したあと幾通りも町を行き来し

てタチカゼは自分の想いを強くしていきました。そして核心へと旅は急激に迫りつつありました。

つまりなぜ、王国が自分を必要とするのか。

 最近、魔物が多く出没し、森のもともとの生物や鳥たちはひっそりとなりを沈め、中には、オーク

やトロルのように武器を使うものが出始め、そして群れになって旅人の隊を襲ったり、辺境の村に

襲撃をかけたりするようになったからでした。魔物たちはその出生は、強大なる暗黒の力が現れる

時、その暗黒の波動によってただの石になって何年も森や山や谷の奥で眠っている者たちで、それだから旅人たちはあまり森や山を好みませ

んし谷などは必要に迫られなければ通りもしません。

 ヨツゥンヘイムへ行くには多くの山や谷を越えなければなりません。天馬でも山々の高さは超えられません。

唯一川の清き流れだけがヨツゥンヘイムの白き賢者の御手によって悪しき者たちの進行を止め、川の水には彼らを消し去る力

瞬にしてもとの白い灰に戻ってしまうのです。ですから川にはいつも守り人がついていますし、谷を抜ける際には、川で樽を20樽ほども持

ち、馬車にのせていくものなのでした。ですが最近その川の流れがよどみ始めているというのです。

 タチカゼはバスカムという宿場町で有名な占い師を訪ねました。タチカゼ自身は、旅には慣れていますし、話の冒頭でオークとやりあった

ように強い剣士でありました。ですが伯爵の城を後にして以後、なにかしるしが欲しかったのです。

「占い屋」のウラヤという老婆で二つの目はもう見えずともその心眼ですべての事象を見る力がある

のです。ただ呪い師や占い師には偽物のインチキまがいの者も多く歌われた文句はただの飾りで

インチキをふっかけるものも多いのでした。タチカゼはそれで町の宿場を何件かたどりそういった

人を見てきましたが宿場町で噂される以上のことをしゃべるものは少なく、あてが違うかインチキをふっかけてくる輩ばかりでした。

 タチカゼには魔法の力がありますので少し念じればその人物の頭の中などは手に取るようにわかります。なのでたいていは逆に驚かれてぜひ弟子にしてくれなどと言い出す始末で思うようにいかなかったのです。しかしウラヤという老婆は違いました。なんと宿場町できつけに茶

などをすすっていたところを呼び止められたのです。老婆はこんなふうに語りました。

「もし、おまえさんは、大変な使命を負っていなさるね、わしでよければ一つ手助けになろう、じゃ

があまり表だって話すことではない、明晩、わしの館へ来なされ、この村のはずれの「占い屋」という小さな館だ」

 そう話すとまた、とぼとぼと歩いて曲がり切った腰を杖を探るようにしてつきながら言ってしまった

のだ。

 タチカゼは言われたとおり館へいった。「占い屋」とみょうに曲がりくねった看板がひっそりとある。

「よく来てくれた。ちょうど野鳥をこいつが獲ってきたところじゃ、鳥の汁は滋養があるでの、おまえさんも食べていきなされ」そこには髪の白い少年がいた。弓をもっている、よくできたいい弓だ。

「ばあさん、私は早く話を聞きたいのだが」

「そう急くな、おまえさんもこのごろの魔物の話はきいておろう、やつらは夜の闇に紛れてくる。夜は長い、朝でかけるとしてもまだまだ話をすっかりするくらいの時間はたっぷりある。それに言葉を尽くして話したほうがおぬしの心の傷にもよい。だいぶひどい運命にかかわったようじゃからのう、そういうものを心からすっかり取り除いておかないと後々良くない」

「わかりました、どうやらあなたは本物のようだ、あなたの心はまるで曇りのない水鏡のようだ、その

水の底は深くて私には見通せないくらいだ」

「ほほ、だてに100まで生きとらんよ、しかしわしが死ぬまでにおまえさんがここに来てくれて助かったわしは見通すことはできるがお主のようにもう荒野を渡り歩くことはできぬからな」

「ほう、その様子だとお若いときはさぞ、勇ましいおんなであったのでしょうな、おまけにたぶんとて

も美人だともうかがえる」

「これ、そんな話で老婆をもてあそぶでない、なに、弓矢の技では男でもわしには適わなかったさ、だがそれももう昔の話、これほど腰が曲がればもう、弓どころか井戸の水くみもしんどいくらいじゃ、幸いにもこいつがいてくれて助かっとる」

「そこの少年はなんという名ですか」

「これ、自己紹介をせんか」

 少年は一歩前へでて丁寧におじぎをすると、はきはきとした少年らしい声でいいました。

「トレンといいます、婆やの娘の子供です」

「これは、良い跡継ぎに恵まれましたな」

「これでまだまだ、寝床に見事な地図をたびたびこさえるでな、おちおち呆けておれん」

「婆や!人の恥ずかしいことをそんなふうにいわないで!!」

「ははは、なにやら今宵はにぎやかなところへ招かれましたな」

「わしの娘は九人いましてな、この子は九人目の娘の子ですわ」

「本当ですか、これはこれはばあさんなどと気軽に読んでしまって失敬、あらためて大婆様とお呼びしよう。こころなしか私の村の長老を思

い出しました」

「ふむ、東方からずいぶん長い旅をしてきなさったようだ、その剣も変わった剣だ、それに青金でできている。鎧も旅にむいて軽く丈夫そう

だ、いい職人に出会いましたな」

「ええ、ですが結局これの使い道はまだ見いだせてません、弓矢も旅の一隊を一度まものから救ったときにつかっていらいですな」

「この荒野もぶっそうになった、魔物たちは日増しに強くなっている。山の奥や谷の坑道にはまだまだ恐ろしい化け物が巣喰っとる、さて、そろそろ、鳥も柔らかく煮えたろう囲炉裏にもってこよう、さあ、座って火にあたりなされ、今日はよく冷える」

 その館は土間があって昔ながらに囲炉裏がある。煙突から煙が抜けるようになっていて、火がぱちぱちと爆ぜていてあたっているとなんだ

か落ち着く。すぐに少年が大きな窯一杯に入った鳥の汁を持ってくる。山菜やキノコがふんだん入って鳥の柔らかい肉がうまそうだ。一羽の鳥を丸ごと煮たのだからうまいに違いない。老婆は肉は別のさらにとって切り分けて三人分にした。皿が回ってきてはしがおかれると、老婆

と少年は両の手を組んでこういった。

「聖なる白き流れの糧よ、今日も我々の腹を満たし明日の力になることに深くお祈りします」

そして老婆は、タチカゼにも目くばせをしたタチカゼもそれにならった。

そして晩餐会が開かれ、食欲も満たされ、長旅の疲れも癒えたころ、老婆は話し始めた。

「今、ヨツゥンヘイムでは邪悪な巨人どもが大群となって攻め寄せている。しかしあの都はもとはその巨人たちが作ったもの、そうそう簡単に破られはしないし、白き賢者の力は今も健在だ。だが敵の王は力を取り戻してしまった。タチカゼどの、そなたの旅の目的はこの巨人たちとの戦争を終わらせることにある、それにはヨツゥンヘイムにいくまでに力をつけねばならない。敵は巨人だ、そこらのトロルとはわけが違う。そして本当の敵は魔王だ、奴はそれまで味方であった巨人たちを自分の手勢に加えてしまった。今白き賢者がいなければヨツゥンヘイムは数日のうちに落ちる。なぜ、おぬしが呼ばれたのかそれは西の賢き良き種族であるエルフが白き賢者と話し預言をもたらしたからだ。東の国に古き神の王と呼ばれた血筋があると、その血筋は生まれて皆強く、そして未来さえも見通し百万でも百億でも軍隊を統べるこの世の良き生きるものにあまねく力を与えるという」

「古き神とは?百億とは私が知っている戦でそんな数の戦いはほんとうの太古にあった大戦争の記録しかしりませぬが」

「そうだ、古き神というのは東の地に伝わる神、それは今は忘れ去られた西の神と対になるという、言い伝えによれば、その昔の大戦争の

折、東西の神は東と西にそれぞれ、神々の王の血筋を置いた。西の王の血筋はもう混迷していてわからぬが、東の地の王が現れれば西の地の王も目ざめ、どんな大難も治めるという。」

「それがわたしだと?」

「そうだ、だがわたしのみたところ、まだその力に覚醒しきってない。これより先にヨツゥンヘイッムへの道でかなり大きな戦に巻き込まれ

るこれより西はかっての王国の王たちが治めている、邪悪なる王はまず、石化していた邪悪なる手勢でその諸国を攻めるはず、だが魔王は東の地を軽視している。それは彼の地の源は海の向こうにありこの大陸での影響力はないと考えているのだ。この邪悪なる王は、太古の神々に反抗した邪神の主神でまずこの大陸をその力で掌握し、そして東の大陸へ攻め込むつもりなのだ」

「ということは、わたしが魔王に対抗できるかが問題になるのですね。」

「ただ示すだけではだめだろう、力に覚醒してゆかねばならぬ。そこで話は伯爵の話に代わる。おまえさんはあの時確かに一度死んだが呼び戻された、そして新たに力を得てもどってきた。だが伯爵は哀れな存在だった。

魔王の波動に呼応することなく、自分を保ちそれでも救われぬ境遇にあった。あの件に関していえば、死神の手によって死を迎えることこそ彼の救いだったのだ。そうでなければ不死の存在として魔王のこの上ない忠実で強力な存在になっていただろう。タチカゼよ、あれは運命じゃったおぬしをあのものは知らなかったにせよ、正しい方向に導きかつ彼の魔王に組みすることなく自身の命を終えたのじゃ、よいか不死というのはさまざま属性の中でも一番強力なものだ、だがその無限にも等しい時間に耐えるのは並の精神ではいやどんなものでも無理だろう。

死なない体は無限の時間にさえも耐えてしまうが心はそうはいかん。タチカゼよ、おまえさんは、ルミアに出会ってそれでよかったのじゃ、一度はよみがえったおぬしでも二度目はない。お主は不死ではない。ただ、神の加護があっただけじゃ」

「それではまた伯爵とやりあっても私が負けていたと?」

「そういうことになる、確かに剣技においておまえさんは伯爵より強くなっただろう、だがあの者はなんど斬られようと死なぬからだなのだ、銀をつかえば死ぬというがそれも正しくは限りなく伯爵を長い時間、眠りにつかせるというだけだ。ヴァンパイアとは古い錬金術師の一族という伝承があるのじゃ、そして錬金術師は水銀などを使う。だが伯爵はまぎれもない本当のヴァンパイアだ、人という脆弱なものではな

くオリジナルの最後の生き残りだったのだ。彼は、もう数千歳はくだらない。

「伯爵のことは大体わかりました。それならばむしろ良かったのですね」

「まあ、あの町のものはこれからも呪われ続けるがよいかそれはヴァンパイアという不死の存在の呪いじゃ、不死なのだから本来なら死神とて殺せぬ、あの町のものがその不死をそれぞれ、薄まった不死を引き継いだのじゃ、彼らは伯爵をこれまで手ひどく扱ってきた。だからよいかこの件にかんしてはおまえさんはもう思い悩むことはない。彼らはもとからそういう運命だった。ただ唯一の救いはルミアが彼らを憎む気持ちを伯爵の死とともに浄化したことじゃろう、それで不死は、薄まった」

「ああ、だが町の者には武具や武器をつくってもらった」

「それが彼らの贖罪となるかはわからん、だがこれからの戦い、おまえさんの剣や武具はなんどか鍛えられるだろう、その最初のものとなっ

たというだけじゃ」

「わかりました、ならばもう迷いはしませぬ」

「その切り替えの速さは東方の地のもののますらおにふさわしいのう」

「人には人の宿命があると村の長老はもうしました、それは他人にはかえることのできぬものでもある。そういう宿命にまきこまれたときの

教えも東の地にはあります」

「ふむ、さて、それでどうすればおまえさんの力が覚醒するかじゃ」

「それさえもわかるのですか?」

「信じる心強く持てとしか言えぬ」

「それだけですか?」

「なにしろ、おまえさんの中にあってまだ呼び起こされてない力じゃ、わたしにはおまえさんの中にかくれひそんでいる力の痕跡をみること

はできるがそれに覚醒するには生と死の極限のはざまにたつしかない、だがどんなときも信じるこころというものは自分を支えるものじゃ、おまえさんがトロルとやりあったときも勝てると信じたから勝てたといえぬか?」

「それはそうですが」

「おまえさんがいったように人には宿命というものがある。だがわたしから

いわせれば宿命にもいくつかの流れがある。そしてその流れに乗るには信じる心が肝要なのじゃ

大丈夫じゃよ、必要なとき、賢者というものは現れる白き賢者ばかりが賢者ではない。そうだな、もう少しいえば、これから旅する国々を助

けるために賢者をさがせ、さすれば百万の敵とも戦えよう」

「やっと探していた答えがみつかった気がします」

「よいか賢者は一人ではないし、人間の形をしてるばかりではない、よく探し、よく見いだせ」

「さて、それでじゃが話は最近のことになる、どうもこの先の山から流れる川に毒を流しているやからがいるようだ。悪しきものじゃ、山のふもとにアルウェルンという王国がある。手始めにここから助けに加わるとよいだろう。山には恐ろしい邪悪で古い化け物がおる。それがわしには黒く澱んだ恐ろしい存在として見える。どくをながしているのはその手下だろう。オークぐらいなら剣でも相手できるがこいつは杖持つ者が必要だろう。わたしにはその存在は、いまだに身の内に神聖なる光を宿している。人間の姿をしているがわたしには光り輝く存在にみえる、そのものは森にいて知恵ある歩く木たちを友としておる。そのくらいじゃ、それ以上は隠れ潜んでおって動向が読めん」

「ありがとうございます、これでやっと動き出せます」

「ふむ、それでは、今日はとまっていきなされ、明日の朝早くに出かけ太陽の出るとき動け、でないと悪しき者たちはここぞと攻めてくる」

そして夜はふけていった。タチカゼの体もだいぶ休まった。鳥の煮込みはすっかり空になり腹もふくれた
 
 

 
後書き
前話が成り行き上、少し重くなりましたが平常運転です。思うにドラクエ1の世界観から大分オリジナル要素が入ってきました。そこで不死という属性を持つ伯爵を出しましたが、それはモンスター(魔物)にも心があることを書きたかったのです。この物語では純粋な善悪という観点を抜けたところで話を進めたいと思ったからなのですが、つまりは世の中は善と悪だけで決まってはいない大魔王を倒せば世界は救われる。しかしそれは一方は滅び他方は繁栄するそんな主観に基づいているということの危険性をそれがつまりは戦争そのものにつながってしまうということを、たしかに大魔王を倒すのは勇気を奮い起こしそして冒険心を湧きたてますがそれでは私達、書き手の伝えたい事はただたんなる衝動でしかないということになります。

そうは書きたくなかった。ですのでまあ、これからの剣風覇伝、すこし考えさせられるかもしれませんがタチカゼの旅路を乞うご期待ください 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧