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善意の裏

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第三章

 顧問達の要求通り湊が築かれそこにアメリカ軍の軍艦が入る。そして軍人達もだ。
 その軍人達が市民達と交流してだ。結婚もしていった。そうしてだ。
 アメリカ人とのハーフが増えていった。その彼等も口々に言うのだった。
「アメリカは素晴らしい国だよ」
「お父さんは立派な人だよ」
「強くて優しくて格好いいよ」
「アメリカはハワイの友達だよ」
 こう言ってだ。彼等もアメリカの素晴らしさを言って回るのだった。それに加えてだ。
 アメリカ人の入植はさらに進んだ。その数はだ。
 日増しに増えていきた。彼等はあらゆる分野の顧問に留まらなくなってきていた。
 サトウキビ栽培でハワイの経済を握りだ。さらにだった。
「アメリカの制度をもっと取り入れるんだ」
「アメリカ人をもっと呼ぼう」
「そしてどんどんアメリカ化を進めるんだ」
「アメリカ人の発言権を大きくしよう」
 こう主張しそれがだ。
 王の周りにも届きだ。顧問達、最早実質的に大臣となっている彼等がまた王を囲んで話す。
「彼等の言葉を受けましょう」
「もっとアメリカ人を呼びましょう」
「そしてアメリカ風の国家にです。よりしていきましょう」
「今以上に」
「そうだな。だが」
 王は彼等の言葉を受けながらもだ。それでもだった。
 戸惑いながらだ。こう言ったのである。
「ハワイの伝統はどうなるのだ。ハワイ人は」
「いえ、それも守っています」
「アメリカ人とハワイ人は仲良くやっているではありませんか」
「親しい友人のままですよ」
「何の心配もいりません」
 彼等はあくまでこう言う。それが事実だというのだ。
「ですからより、です」
「アメリカ化を進めましょう」
「合衆国のよい部分を積極的に取り入れてです」
「ハワイを発展させましょう」
 こう言ってだ。王に更なるアメリカ化を認めさせたのだ。ハワイのアメリカ人は増えてその発言力は増していく一方だった。そうしてである。
 遂にだ。そのアメリカ人達と彼等と親しい者達がだ。動きはじめたのである。彼等はパーティー、アメリカ風のその宴の中でだ。こう話していた。
「いよいよですね」
「はい、時が来ました」
「今こそ我等が動く時です」
「その時になりました」
 彼等はバーボンを飲みながらだ。外で焼かれた豚肉を食べながら話していく。
「では同志達にも連絡をして」
「起ちましょう」
「今こそ」
 こう話してだ。そうしてだった。
 彼等は一斉に蜂起した。クーデターである。軍のかなりの部分、やはりアメリカ人達が指導する者達が一斉に蜂起してだ。ハワイの要所の殆どを占拠してしまった。
 そして高らかにだ。彼等はこう主張した。
「王権の制限を!」
「民衆に自治を!」
「抑圧を許すな!」
「ハワイに自由を!」
「アメリカの自由と平等をハワイにもたらすんだ!」
 こう叫びだ。ハワイの至る場所を占領していったのだ。それは王宮にも及び。
 王宮にも兵達が雪崩れ込み完全に占領した。そしてだ。 
 ハワイ王、既にそれは選挙で選ばれるというアメリカの大統領選挙の様なもので選ばれていた王の前にだ。兵達が来た。アメリカの軍服を着てアメリカの銃を持った者達がだ。
 その彼等が来てだ。玉座の王に言ってきたのだ。見れば彼等はハワイ人だけではない。色が白く鼻の高い者達も大勢いる。
 その彼等が王の前に来てだ。こう言ったのである。
「陛下、民衆が立ち上がりました」
「専制はもうできませんよ」
「これからはハワイも民衆の国になります」
「今からそれがはじまるのです」
「馬鹿な、ハワイはこれまでの民衆の国だった」
 王は玉座からこう兵達に返した。
「そして今もだ。ハワイ人の国ではないのか」
「いえ、違います」
 王の今の言葉を否定してだ。一人の軍服ではない、やはりアメリカの服にタイの男が出て来た。
 その男がだ。王に対してあえて恭しく一礼してからだ。こう言ってきたのだ。
「そうではないのです」
「何っ、それはどういうことだ」
「ハワイはハワイ人だけのものではなくなっているのです」
「ではか」
「そうです。ハワイにいる人間のものになっているのです」
 既にそうなっているとだ。そのアメリカ人は王に対してにこやかな笑みで言うのだった。
「そうなっているのです」
「ではアメリカ人のものでもあるのか」
「アメリカ人はハワイ人の友人ではないですか」
 アメリカ人の顔はにこやかなままだ。しかしだ。
 目は笑っていなかった。まるでガラス球の様な目で王を見つつだ。こう言っていくのだった。 
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