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Three Roses

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第六話 婚姻政策その五

「エヴァンズ家の信仰もな」
「新教でも構いませんね」
「特に」
「彼等の信仰が新教でも」
「それでもですね」
「そうだな、しかし」
 それでもだ、太子はここでだった。
 目を笑わせないままだ、こうしたことも言った。
「わかるな」
「はい、都合が整えば」
「その時はですね」
「この国もエヴァンズ家も」
「これまでの様に」
「その為に私はこの国に来た」
 エヴァンズ家に夫として入ったというのだ。
「そうしたのだ、だからな」
「そうですね、では」
「あれを使いますか」
「この国にも持って来ています」
「太子のお言葉があればすぐに使えますが」
「どうされますか」
「いや、それには及ばない」
 太子は彼等の言葉を察してこう答えた。
「この国ではな」
「王がご病弱だからですね」
「そこからですね」
「どうとでもなる」
「だからですか」
「そうだ、どうも大公もだ」
 先日話をした彼もというのだ、その時だけは好意のみを出していた相手である。ただその好意も仮面であった。
「お身体はな」
「そうです」
 側近の一人、医師が太子に答えた。
「私がお話した通りでしたね」
「顔が痩せているな」
「そしてその色もですね」
「悪かった、そなたの言う通りな」
「はい、あの方はお身体の中にです」
「病を持っておられるな」
「はい」
 その通りとだ、医師は答えた。
「まさに」
「だからだな」
「今は大丈夫ですが」
「数年後にはか」
「おそらくは」
「そうか、ではだ」
「王、大公の後は」
 医師とは別の側近が太子に言った。
「どなたがこの国の王となられるか」
「それが問題だな」
「ではですね」
「そうだ、その時に備えてだ」
 太子はここで目を鋭くさせた、そうして。
 そのうえでだ、彼の側近達に言った。
「今から動いておこう」
「はい、では」
「今よりですね」
「この国の旧教徒達に働きかけ」
「そして、ですね」
「北の国、半島や島国にも」
 この国の周辺諸国にもとだ、側近達も言う。
「こうした国々にはこれまで通りですね」
「我々の息をかけていきますか」
「徐々に」
「そして」
「ここは一つにしたい」
 太子は言った。 
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