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消えた友

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4部分:第四章


第四章

「北朝鮮って悪い奴等みたいだね」
「飛行機爆破したらしいね」
「それで一杯人が死んだんだよね」
「しかも何か独裁者っていう悪い奴がやりたい放題やってて?」
「人を一杯殺してるんだよね」
「まるで仮面ライダーの悪役じゃない」
「何でそんな国あるのかな」
 子供から見てもだ。北朝鮮はおかしな国とみなされだしていた。しかしだ。
 彼は自分の子供達のその言葉を聞いて悲しさを感じずにはいられなかった。それでだ。
 彼等にだ。こう言ったのだった。
「確かに酷い国さ。けれどね」
「けれどって?どうしたのお父さん」
「何処か痛いの?」
 子供達は白川の顔を見た。見ればだ。
 彼のその顔はとても悲しそうだった。その顔を見てだ。
 子供達は不思議な顔になってだ。それで父に尋ねたのだった。
「泣きそうな顔してるけれど」
「何処かにぶつけたの?」
「悲しいからだよ」
 それでだとだ。彼は子供達に話したのだった。
「御前達から見ても北朝鮮は酷い国だね」
「だって。人を一杯殺してるんだよね」
「一人が凄く偉そうにしてるんでしょ?」
「そんなの悪い国に決まってるじゃない」
「皆そう言ってるよ」
 彼等だけでなくだ。他の子供達から見てもだ。
 北朝鮮はそういう国だと思われだしていた。そうなっていたのだ。
 そしてそのことを聞いてだ。彼はまた言った。
「そうだよ。その通りだよ」
「そんな悪い奴許せないよ」
「僕大きくなったらヒーローになって金日成やっつけるよ」
 彼の名前もメジャーになっていた。悪い意味で。
「僕もだよ。絶対にだよ」
「そう。悪い奴だからやっつけるんだ」
「そうだよ。あいつはとんでもなく悪い奴だよ」
 白川は悲しい顔のまま子供達にまた言った。
「そしてあの国はとても悪い国だよ」
「そうだよね。けれどどうしてなの?」
「どうしてお父さんそんなに泣きそうな顔になってるの?」
「うん、ちょっとね」
 金のことを思い出してとはだ。まだ小さい子供達には言えなかった。
「あの悪い国のことを知っててね」
「知っててって何があったの?」
「本当に」
「その時になったら話すから」
 こうだ。彼は金のことを思い出して悲しみを感じていたのだ。そしてだ。
 北朝鮮の実態はさらにわかってきた。それはその国に渡った人達のこともだ。
 そのことは知り合いの在日の人から聞いた。彼は苦い顔で白川に話した。
「もうね。完全に敵対階級としてね」
「敵ですか」
「そう。敵対階層とも。まあ階層でも階級でも同じですね」
 その言葉には今は意味があまりなかった。問題なのはだ。
 敵対という言葉だ。彼はそこから白川に話したのである。
「つまり同じ民族でもです」
「思想や出自で、ですね」
「はい、差別されその中で」
「あちらに渡った人は殆どですか」
「地獄に送られました」
 文字通りだ。そこにだというのだ。
「あちらに与する人達は否定していますがね」
「強制収容所ですね」
「そうです。独裁対象地域に。これといった理由もなく送り込まれて」
「そうしてですね」
「そのまま飢餓と虐待の中でゴミの様に殺されていっています」
 しかも現在形だった。言葉は。
 
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