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スライマーン

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第四章

「馬鹿な、息をされていない」
「お亡くなりになられてるぞ」
「身体は腐っておらず生きられているままだが」
「お亡くなりになられている」
「これはもう」
 目を開く口を閉じたままの王を見て言うのだった。
「お亡くなりになられて何年か」
「何年経っているのか」
「お身体が腐らない様に、ご生前のままのお姿でいられるようにか」
 何故スライマーンが生きたままの姿で腐っても骨にもなっていないのかわかった。
「既に魔術を使われていたか」
「ご自身のお身体に」
「そうされてか」
「立たれていたのか」
「そうだったのか」
「そしてそのうえで」
 彼等はわかってきた、スライマーンが何を考えていたのか。
「お亡くなりになるまで立たれ」
「そのまま立たれていたのか」
「お亡くなりになられるまで」
「そしてお亡くなりになられてからもか」
「立たれていた」
「そうであられたのか」
「そのうえで」
 民達は自分達の周りを見た、するとだった。
 この世にもない様な見事な神殿に宮殿、城に街の中の建物達に。
 恐ろしいまでの富があった、それを見ればだった。
「ここまでか」
「ここまで遺して下さったのか」
「何という素晴らしいことか」
「これが王の最後の叡智なのか」
 民達は王のその智恵にこれまで以上に感銘した、そして。
 周りをさらに見た、するとだった。
 もうジン達は皆去り誰も残っていなかった、民達はそれが何故かもわかった。
「そうか、使役する王が亡くなられた」
「それでか」
「ジン達は全て去ったか」
「もうそれでな」 
 ジン達が去った理由もわかった。
「成程な」
「ではな」
「後は我等がことを進めていくのだな」
「王が遺して下さったものを譲り受けて」
 皆王が遺してくれたものに深く感謝してこれからの道を歩くことにした、その深い最後の叡智に感謝しながら。
 コーランにあるソロモンの話は聖書のものとは全く違う、同じ人物である筈なのに結末はこの様なものだ。そこにあるのは聖書とコーランの、そしてユダヤ教やキリスト教とイスラム教の違いということか。コーランにあるスライマーンの存在は明るくその幕引きもよいものである。


スライマーン   完


                     2016・2・18 
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