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おぢばにおかえり

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第三十一話 研修先でもその一

                          研修先でも
 春季大祭が終わったらもうすぐにゴールデンウィークです。その前に皆で日帰りで研修といいますか関西の観光場所で旅行に行きます。私達が行ったのは映画村でした。
「何か時代劇で一杯見た場所ばかりね」
「そうそう、あの橋だって」
 日本橋を見ながら話をします。
「もう何度見たかしらね」
「最近特撮の映画にもなってるし」
「ああ、ここここ」
 ある道に出たところで皆で言いました。そこも江戸時代の道でよく見ると。
「ここでほら、モモタロスが車引いてね」
「映画でね」
「ここで遠山の金さんが桜吹雪見せてね」
 今度はお白洲に皆で行って言い合います。
「大岡越前もそうよね」
「私あの主題歌今でも口ずさめるわよ」
「私も」
 皆何だかんだで時代劇をよく見ています。本当にありとあらゆる時代劇の撮影で出て来た場所ばかりです。必殺で出ていた中村主水がよく出入りしていたお店もあります。
「八丁堀いるかい?ってね」
「女の子には三田村さんは難しいわよね」
 女の子達でも楽しく明るく楽しみつつ映画村見学を楽しんでいました。その途中で一人がふと言い出してきたのです。
「そういえばここに一年生も来ているらしいわよ」
「あっ、そうなの」
「何処のクラスかしら」
「一年生っていうと」
「まさか」
 ここで私が嫌な予感を感じずにはいられませんでした。
「そんな筈ないと思うけれど」
「まさかってちっち」
「どうしたのよ、急に暗くなって」
「いえ、別に」
 皆にもこう述べました。
「何もないけれど」
「何もないってそうは見えないし」
「一年生って聞いただけであれじゃない」
「だから何もないわよ」
 また皆に答えます。かなり強がりも入っていますけれど。
「気にしないで」
「これで気にしないでってねえ」
「無理があるけれど」
「だから気にしないでって言ってるのよ」
 この場をかなり強引に乗り切ることにしました。
「何でもないんだから」
「絶対に何かあるわよね」
「そうとしか見えないわよね」
 けれど皆は全然信じてくれません。信じてくれないというかどうも薄々わかっている感じです。それを見てどうしても。やばいとしか思えませんでした。
「はっきり言ってね」
「ねえ」
「とりあえず。行きましょう」
 私は何が何でも強引にこの場を移ろうとしました。
「ここはね」
「ここはねって。何処に行くのよ」
「お白洲以外には」
「ええと」
 言われたその場から悩んでしまいました。実は考えていませんでした。
「吉原がいいんじゃないですか?」
「ああ、そうね」
 突然聞こえてきた声に頷きました。
「そこがいいわよね。何か行くのが少し恥ずかしいけれど」
「それでも時代劇にはよく出ますよ」
「そうなのよね。だから行くにはいい場所よ」
 私はまたその声に頷きました。 
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