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おぢばにおかえり

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第三十話 春季大祭その十

「同じ大教会の一年生なんですけれど。能天気でいい加減で」
「ふうん、そうなの」
「しかも馴れ馴れしいんですよ。おかげで」
「その割には何か顔明るくない?」
 先輩は私を見てまた仰いました。
「困ってるのよね、ちっち」
「そうですけれど」
 その通りです。本当に困っています。けれど今の先輩の御言葉は。
「けれど。顔明るいですか?」
「別にストーカーとかそういうのじゃないわよね」
「はい、それは」
 流石にそこまではいきません。どういうわけかいつも一緒になってしまうだけで。
「そこまで悪質じゃないです。っていうか」
「っていうか?」
「悪意とかはないですね」
 それはわかります。あの能天気さはそうしたものとは完全に正反対のものです。
「そういうのは全然」
「それはないの」
「陰とかそういうのもないですね。もう日様みたいに明るくて」
「男の子は元々陰だけれどね」
「ええ」
 これは天理教の考えです。女の子が日様で男の子が月様です。日本ではそうですけれどこれが天理教でも同じになっているわけです。
「それでもかなり明るいんですよ」
「いいじゃない、だったら」
 先輩は私の阿波野君へのことを言って頷かれました。
「明るくて陰がないのよね」
「そういうのは本当に全然」
「明るいのは七難隠すのよ」
 色が白いのは七難隠すだったような。まあいいですけれど。
「明るい男の子はそれだけで有り難いものじゃない」
「それはそうですけれど」
「悪い子じゃないのよね」
「頭はどうかわからないですけれど」
 どうもそちらはあまりいいとは思えません。あまりというか何も考えていないように見受けられます。あそこまで能天気だったら。感じ的には志田未来ちゃんが出ていた正義の味方というドラマで中村静香さんが演じておられたあのクラスメイトの女の子みたいな能天気さでしょうか。
「性格は。そうかも知れないです」
「何か今一つ歯切れが悪いわね」
「まだ会って少ししか経ってないですし」
 その割には本当に色々あった気がします。どうしてでしょうか。
「全部わかってるわけじゃないですし。その子のこと」
「だからなの」
「とりあえず平気でとんでもないこと言います」
 これだけは間違いありません。
「もうすぐに」
「それはよくないわね」
「そう思われますよね。本当にどうしたものか」
 そんな話をしながら商店街を下って歩いていると。ここでまたしてもでした。
「あっ、先輩」
「いたの」
 何とここで急に横道から出て来ました。物凄いタイミングで。
「っていうかまだ帰ってなかったの?」
「えっ、帰ってますよ」
「帰ってるって何処に?自宅生なんでしょ?しかもおぢば以外の」
「ですからおぢばに」
 こう返してきました。
「帰ってきてるんじゃないですか」
「ああ、そういう意味ね」
「はい。それならいいですよね」
「何て言っていいのかしら」
 殆どとんちです。こうしたことには変に頭が回るんですから。また困った子ね、とか思っていたらよりによって先輩がこんなことを仰いました。 
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