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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第24話

4月4日―――創立記念祭 4日目―――



翌日、ロイド達は頭を切り替えて今までのように手分けして支援要請を片付けて行った。そしてそれぞれが担当した支援要請を片付けて全員で残った緊急要請を片付ける為に中央広場に集合したその時ロイドのエニグマに通信が来た為ロイドは通信を始めた。



~中央広場~



「はい、ロイドです。」

「お忙しいところをすみません。今、大丈夫ですか?」

「ああ……一区切りついた所だから大丈夫だと思うけど。緊急の要請が入ったのか?」

「いえ、ロイドさんたちに直接、頼りたいという方がいまして。貿易商のハロルドさんとおっしゃる方なんですけど………」

「ああ、知りたいだけど……一体どうしたんだ?」

「それが……市内のパレードを見ている最中、お子さんが迷子になったそうなんです。」

「!そうか、わかった。どこで待ってもらってるんだ?」

「警察本部の近くにある噴水の前のベンチのところです。どうやらその近辺でお子さんとはぐれたらしくて。」

「わかった、すぐに行ってみるよ。」

「はい、よろしくお願いします。」

「どうしたの?」

ロイドが通信を終えるとエリィが通信内容を訊ねた。



「ああ、貿易商のハロルドさんから俺達に頼みがあるらしい。パレードの最中、お子さんが迷子になったそうだ。」

「……………ぇ……………」

「それは………」

「今日の人出だとはぐれたら大変そうですね………」

「ってことは、祭には定番の迷子探しのミッションってわけか。」

ロイドの話にレンが呆けている中エリィは表情を引き締め、ティオは考え込み、ランディは自分達がやるべき事を推測した。



「ああ、多分ね。」

「……ロイドお兄さん、一つ訊ねたいのだけどいいかしら?」

「?ああ、何を聞きたいんだ?」

「その貿易商のハロルドさんのファミリーネームってなんて名前かしら?」

「へ………?”ヘイワース”だけど、それがどうしたんだ?」

「!!………そう…………」

「レンちゃん………?もしかしてハロルドさんと知り合いなのかしら?」

ロイドからある事を聞いて一瞬血相を変えたレンだったがすぐに表情を戻して目を伏せて黙り込み、レンの様子が気になったエリィは不思議そうな表情で訊ねた。



「ううん……レンはそんな人、知らないわ…………レンの気のせいだったから気にしないで。」

「……?」

顔を僅かに俯かせて呟いた後すぐに気を取り直していつもの表情になったレンの様子が気になったロイドは不思議そうな表情で首を傾げた。

「―――それよりも確か既に来ている緊急要請で、そのハロルドさんって人からの頼みに似た内容もあったわよね?」

「……ええ、アルモリカ村の宿酒場”トネリコ亭”の主人のゴーファンさんから観光客の捜索の緊急要請が来ていますね。内容が対象者の捜索のようですから人手がいる上時間がかかると思い、他の支援要請を手分けして素早く終わらせてここに集合したのでしたね………」

「どうしましょう……?どちらの要請も人命がかかってくるかもしれないし………」

レンの指摘にティオは静かな表情で頷き、エリィは不安そうな表情で考え込んでいた。



「―――だったらレンは一人でアルモリカ村の緊急要請を請けるから、ロイドお兄さん達の方はそのハロルドさんって人の頼みを聞いて迷子の捜索を始めたらどうかしら?」

「ええっ!?レ、レンちゃん一人で………!?幾らなんでも一人で行方不明になった観光客の捜索をするのは厳しいと思うのだけど……」

「あら、レンは今は休職しているけどA級正遊撃士よ。遊撃士の仕事で迷子の捜索とかもあって、それを一人で何度も達成した事があるから一人でも問題ないわよ。」

「なるほどな……要領がわかっている分、あまり経験のない俺達を連れて探すより一人で探した方が効率がいいかもしれないな。」

エリィの心配に対して答えたレンの説明にランディは納得した様子で呟き

「それに高確率で遊撃士協会もその要請―――いえ、”依頼”を請けていると思うから遊撃士の人達と連携すれば、人数の少なさもカバーできるわ。」

「遊撃士協会も高確率でその要請を請けていると思うって………何でそんな事がハッキリと言えるんだ??」

レンの話を聞いてある事が気になったロイドは不思議そうな表情で訊ねた。



「うふふ、今朝遊撃士協会の端末にハッキングしたら”特務支援課”に来ている緊急要請の内容と全く同じ内容の依頼があったもの♪」

そしてレンの口から出たとんでもない答えを聞いたロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「あのな、レン……まだ違法になっていないとはいえ、警察自らが違法同然の行為をするのは問題大ありだろう!?」

我に返ったロイドは疲れた表情でレンに指摘し

「というかレンさん、ハッキングができるレベルの導力端末の技術に長けていたのですか。だったら昨日のヨナの依頼にレンさんにも手伝ってもらった方が楽だったかもしれませんね。」

「そういう問題じゃないでしょう、ティオちゃん………」

ジト目でレンを見つめるティオにエリィは呆れた表情で指摘した。



「つーか、何で遊撃士協会にも俺達と同じ内容の依頼が来ているんだ?」

「多分だけど依頼者の関係者が気を利かせて依頼者とは別に依頼したのだと思うわよ。遊撃士協会に来ている緊急要請と全く同じ内容の依頼をした依頼者の名前も緊急要請に来ている人の名前じゃなかったし。」

「しかし、そうなると同じ依頼を警察と遊撃士が請ける事になってしまいますが………―――!なるほど、だからさっき遊撃士達と連携すると言ったのですね?」

ランディの疑問に答えたレンの説明を聞いてある事に気づいたティオは目を見開いて真剣な表情でレンを見つめた。

「そういう事♪クロスベルの遊撃士達は全員高ランクであるBランク以上の遊撃士達ばかりよ。だから運よくレン達と同じ内容の依頼を請けた遊撃士と合流できれば、単純に遭難者の捜索の仕方の要領がわかっている人物が一人増えるから効率よく捜索をできるわ。しかも遊撃士は民間人の保護を最優先という考えだから、レン達と同じ内容の依頼を請けている可能性も非常に高いわ。」

「確かにそれなら二人でも人数の少なさは経験の多さと実力でカバーできるわね………ロイド、どうする?」

レンの説明を聞いて納得した様子でいたエリィはロイドに判断を促した。



「………もし、依頼者から内容を聞いた時遊撃士がまだその依頼を請けていなかった場合俺達に連絡して俺達の中から一人後でサポートに向かわせて、その人を待ってその人と一緒に捜索を開始する事……それが一人に向かわせる条件だ。」

「あら、どうしてかしら?」

「遊撃士達だって俺達同様忙しいだろうから、もしかしたらレンが依頼を請けた時にまだその依頼を請けていない可能性もあるからだ。確かにレンが遊撃士の頃に培った実力や経験は俺達よりも圧倒的に上だけど、例えどんな実力者でも単独で行動していたら”万が一”もありえるからな。」

「うふふ、なるほどね。――――わかったわ。それじゃあ、レンはアルモリカ村に向かうから一旦外れるわね。依頼者から状況を聞いた後にまた連絡するわ。」

「ああ、そっちは頼む。」

そしてレンは緊急要請を請ける為にアルモリカ村に向かい、ロイド達はハロルドに詳しい事情を聞く為にハロルドがいる行政区に向かった。



~行政区~



「皆さん………!」

「あ………!」

自分達に近づいてきたロイド達に気づいた夫妻――――貿易商のハロルド・ヘイワースとハロルドの妻、ソフィアはロイド達を見つめた。

「どうもお久しぶりです。その、パレードを見物していたらお子さんとはぐれてしまったとか?」

「そ、そうなんです………!私がしっかりしていなかったからあの子が………コリンが………!」

「ソフィア、落ち着きなさい。―――すみません、皆さん。息子とはぐれたのは3時間ほど前………この広場でパレードが通過するのをちょうど見物している最中でした。すぐに妻が気付いて、2人でこのあたりを一通り捜したんですが見つからなくて……思い余って………警察を頼らせていただきました。」

悲痛そうな表情になっているソフィアを宥めたハロルドはロイド達に事情を説明した。



「いえ、よく相談してくれました。―――どうやら私達で手分けして捜した方がよさそうね?」

「ああ、巡回中の警官も今日ばかりは忙しそうだしな。そうなると………割り振りを考える必要がありそうだ。」

「そうですね………」

「ま、別々に探して通信で連絡を取るのが一番だろ。」

「わ、私もお手伝いさせてください!でないとあの子が……コリンが……」

ロイド達が話し合っているとソフィアが真剣な表情で申し出たが

「……落ち着きなさい。皆さん、私達はいったん、住宅街にある自宅に戻ります。その近辺の捜索は私の方で一通り行いますので。」

ハロルドが宥め、ロイド達に提案した。



「なるほど………その方が効率的でしょうね。自分達は手分けして他の街区を一通り捜してみます。それから………息子さんの手掛かりになるものを何かお持ちではないですか?写真があれば一番ですけど。」

「!ああ、ちょうと記念祭で撮った写真を現像してもらってたんです!えっと、確かここに………」

ハロルドは懐から写真の入った封筒を取り出し

「………これです!」

自分達の子供―――コリンが移った写真を3枚ロイド達に渡した。

「可愛い………」

「男の子なのに美人さんですね。」

写真に写る少年を見たエリィとティオはそれぞれ微笑んだ。



「ううっ………コリン………」

「ほら、いったん家に戻ってコリンが帰ってくるのを待とう。ひょっとしたら家の方に戻ってくるかもしれないし………」

「でも………でも……!あの時みたいな事があったら………!」

「大丈夫だ………!もう絶対にあんなことは………!」

(あの時………?)

(何か事情があるみたいね………)

真剣な表情で言い合っている2人の様子が気になったロイドは首を傾げ、エリィは辛そうな表情で見つめていた。

「………すみません、取り乱してしまって。その………ちょっと事情がありまして………」

「いや、気にしないでください。そうだ………写真の他に普段コリン君が持っているような品物はお持ちではないですか?うちには警察犬もいますので匂いで辿れるかもしれません。」

「おお………!」

「じゃ、じゃあこれを………!あの子の持っていたぬいぐるみです!」

ロイドの話を聞いたハロルドは声を上げ、ソフィアは必死の表情でロイドにぬいぐるみを渡した。



「あ………”みっしぃ”のぬいぐるみですか。」

「それではお借りしておきます。」

「ま、焦ったって仕方ねぇ。街の中にいる限りは安全だろうし俺達にドンと任せてくださいよ。」

「は、はい。ありがとうございます。それでは皆さん………息子をよろしくお願いします。」

そしてハロルドとソフィアはロイド達から去って行った。

「さてと………どう手分けするかだけど。その前に……」

「………はい。呼んでみます。……思念波増幅……ツァイト……来て……!」

ハロルド達が去った後ロイドに視線を向けられたティオは導力杖を構えて集中した。するとその時

「グルル………」

ツァイトがどこからともなく現れ、ロイド達に近づいた。



「ツァイト、来てくれたか。」

「ふふ、お疲れ様。」

「グルルル……ウォン。………グルルル………」

「『自分が来たからには大船に乗った気分でいるといい。その幼子の匂いは完璧に嗅ぎ当ててみせよう。』―――だそうです。」

「た、助かるよ。っていうか、来たばかりなのになんでそんなに詳しいんだ………?」

「やれやれ。相変わらずとんでもねぇヤツだな。」

「まあ、それはともかく。この広いクロスベル………どう分担して捜索しましょうか?」

「わたしはツァイトに同行します。彼の言葉をわかる人間が付いていた方がいいでしょう。」

「そうだな………だったらティオにはこのぬいぐるみを渡しておく。ツァイトにコリン君の匂いを探ってもらってくれ。」

「………了解です。」

ツァイトの言葉が唯一理解できるティオにロイドは先程借りたぬいぐるみを手渡した。



「俺達3人は手分けして街区を担当しよう。俺は歓楽街から裏通り、中央広場、駅前通り、それから西通り。ランディは東通りと旧市街全般。エリィは行政区と、港湾区全般。―――そんな分担でどうかな?」

「あら、あなたの担当だけ相当広い気がするけど………?」

「いや、行政区も港湾区も広いし、旧市街だって入り組んでいる。その点、俺の担当はよく通る場所ばかりだから丁度いいバランスのはずだよ。」

「なるほど………」

「ま、とりあえずその分担で始めてみようぜ。進展があったらお互い通信で連絡を取ればいいんだな?」

「ああ、そうしよう。」

「それではコリン君の捜索、ミッションスタートですね。」

こうしてロイド達は迷子の捜索を開始した――――


 
 

 
後書き
と言う訳であのイベントが発動した瞬間、レンちゃんは逃げちゃいましたwwまあ、実際顔を合わせたら色々な意味で不味いですので(苦笑) 
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