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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第69話

~ジュライロッジ~



「何とか退けられたわね……」

「ええ。今度こそ”怪盗紳士”の命運はつきましたね。」

「魂ごと滅した以上、カリンたちのように生まれ変わる事もできん。まあ、奴にとっては満足な最後だったようだがな……」

「さらばだ、我が好敵手よ…………」

戦闘を終えたプリネとツーヤはそれぞれ安堵の表情で呟き、レーヴェは静かな表情で呟き、アムドシアスは自身が持っている琴弓でレクイエムを奏で始めた。



「うふふ、さすがは皆様ですわ♪お蔭様でわたくしも随分と楽ができましたわ♪」

「よく言うわよ……貴女だったらその気になれば、一人で滅する事もできたでしょうに。」

「さてと。後はあちらに女子生徒ですわね…………」

「ええ……今の彼女、かなり”不味いわよ。”」

同じように戦闘を終えたシャロンの称賛の言葉を聞いたクロチルダが呆れている中、シグルーンは真剣な表情でエーデルに視線を向け、レンは厳しい表情でエーデルの状態を推測した。



「フー……フー……エーデル部長の無力化を確認。」

「すみません、エーデル部長……」

「か、勝った~!」

「強かったよ~!」

一方フィーは乱れた息を整え、セレーネは申し訳なさそうな表情でエーデルを見つめ、アリサとミルモは安堵の表情で呟き

「ああ……これでエーデル先輩を助ける事ができたな。―――後はクロウだけだ。」

リィンは静かな表情で呟いて太刀を鞘に納めた。



「!そ、そんな!?まだ、力を残しているというのですか……!?」

「全員、構えなさい!まだ、終わっていないわよ!」

「え…………」

そしてある事に気付いて血相を変えたエマとセリーヌの警告を聞いたセレーネが呆けたその時

「ウゥゥゥ…………アァァァァァァ――――ッ!!」

何とエーデルは膨大な瘴気を解放しながら立ち上がった!

「ええっ!?ま、まだ立ち上がるの!?」

「それよりも今のその娘、かなり不味いワ!このままだとその娘は死ぬワよ!?」

「!?どういう事だ、それは!?」

エーデルの様子を見たアリサが驚いている中、血相を変えたヴァレフォルの警告を聞いたリィンは信じられない表情で尋ねた。



「周囲の霊力(マナ)を取りこんで、自身の霊力(マナ)暴走(オーバーロード)させようとしているのよ、その娘は!」

「それがどうして部長が死ぬことになるの……!?」

クロチルダの警告を聞いたフィーは真剣な表情で尋ね

「自身の魔力を暴走させた結果、起こるのは…………―――”自爆”よ……!」

「自爆ですって!?」

「そ、そんなっ!?」

厳しい表情をしているベルフェゴールの説明を聞いたツーヤは血相を変え、セレーネは表情を青褪めさせた。



…フィ…………レ……ちゃん……



するとその時リィン達の頭に声が響いてきた。

「!これはまさか……念話か!?」

「わ、私にも聞こえたわよ!?一体誰が私達に……!?」

「……今の状況からすると恐らくこの”声”の正体は―――――」

念話にリィンとアリサが驚いている中、シャロンは真剣な表情でエーデルを見つめ

「ま、待ってください……!この声は……!」

「エーデル部長……!?」

声の正体が最初からわかっていたセレーネとフィーは信じられない表情でエーデルを見つめ



フィーちゃん……セレーネちゃん……それにⅦ組のみんなやレオンハルト教官も……



「!また念話が聞こえました!声の正体は間違いなくエーデル先輩です……!」

「どうやら戦闘の疲労によって、一時的に意識が戻ったみたいね……!」

再び念話を聞いたエマとセリーヌは驚きの表情でエーデルを見つめ

「エーデル先輩!意識が戻っているのでしたら、気をしっかり持ち、自分を見失わないで下さい!過去貴女と似たような状況でありながらも、気をしっかり持った事で助かった方もいらっしゃいます!」

「”グノーシス”によって巨大な魔人と化したヨアヒムやアーネストと比べると、助かる確率は高い。だから希望を持て、ブルーメ。」

プリネとレーヴェはそれぞれエーデルに呼びかけた。



二人ともありがとう…………でも、今も……私とは違う……私ガ……私を呑み込モウと……アァッ!?



「部長……!?」

「……どうやら今の彼女は”闇”に属する種族たちに必ずある”魔の衝動”と戦っているみたいですわね。」

「ええ……レンやティオは”魔の衝動”を受け入れる適正があったからそんな事は無かったけど……レンやティオと違って適正がなく、”完全な魔族と化している”彼女では厳しすぎるわ。」

エーデルの念話を聞いてエーデルに異変がある事に気付いたセレーネは血相を変え、シグルーンの推測に頷いたレンは辛そうな表情でエーデルを見つめていた。



お……願い……私を殺して……このままだと、みんなも巻き込んで……しまうわ……



「なっ!?」

「何を言っているんですか!?そんな事、絶対にできません!」

「諦めずに気をしっかり持ってください、エーデル先輩!その間に私達がエーデル先輩を助ける方法を考えます!」

エーデルの驚愕の嘆願にリィンは驚き、アリサとエマはそれぞれ反論した。



もう、いいの……最後に……フィーちゃんと……セレーネちゃんにも会えて……よかったわ…………二人とも……私がいなくなった後……学院の中庭の花の世話を……お願い……ね……



「エーデル部長…………」

「そんな弱気な事を言わないで下さい……!絶対に助けますので、諦めないで下さい……!」

既に自身の命を諦めているエーデルの念話を聞いたフィーは辛そうな表情で顔を俯かせ、セレーネは悲痛そうな表情で反論した。

「アアアアァァァァ―――――ッ!?」

するとその時エーデルは再び咆哮して、更に膨大な瘴気を纏い始めた!

「クッ……!このままだと本気で不味いわよ……!?エマ、最悪の事態に備えて結界を展開しなさい!」

「待って、姉さん……!エーデル先輩を見捨てられないわ!」

エーデルの様子を見て自分達の危機を悟り、結界を展開しようとするクロチルダをエマは制止し

「レン姫、失礼を承知で伺わせて頂きますが、エーデル様と同じ”被験者”としてエーデル様を救う方法で何か妙案はないでしょうか?」

「…………そうね…………何らかの方法で暴走している彼女の力を抑える事ができれば暴走は止まるだろうし、彼女も正気を取り戻すと思うわ。」

「よくわからないけど、エーデル先輩を助けるにはエーデル先輩の力を抑える事ができればいいのですのよね!?何をすればいいのですか!?」

シャロンに視線を向けられたレンは考え込んだ後自身の推測を答え、それを聞いたアリサは真剣な表情で尋ねた。



「”力を抑える”…………―――!うふふ、よく考えてみたら、こんなの簡単じゃない♪ご主人様、例え”どんな方法でも”彼女を助けたいのかしら?」

レンとアリサの会話を聞いて何かに気付いて口元に笑みを浮かべたベルフェゴールは真剣な表情でリィンに視線を向けてリィン達にとって希望となる言葉を口にした。

「ベルフェゴール!?エーデル先輩を助ける方法があるのか!?」

「ええ。でもその為にはご主人様の協力が必要なのだけど……その前にもう一度聞くけど、彼女を助ける為なら”どんな方法”でもいいのよね?」

「ああ……!何をすればいいんだ!?」

(ベルフェゴールが提案している時点で、間違いなく不埒な方法だと思うのですが。実際私という例がありますし。)

(幾ら何でもそれはありえ……―――あ。そ、そう言えばかつてネネカ様はアルフィミア様による暗示による凶化をされていて、それをお父様が”性魔術”で解いたという話を聞いた事がありますから、ネネカ様と似たようなケースであるエーデルさんにも効果は間違いなくあるでしょうね……と言う事はベルフェゴール様が取る方法は間違いなく………………)

(ふふふ、確かに彼女に”性魔術”を施す場合ご主人様の協力がなければ、彼女は助けらませんね。)

(そ、そうね……その過程で彼女は女の子としてとても大切なものを失う事になるけど……命には代えられないから、仕方ないわよね。)

リィンとベルフェゴールの会話を聞いてある事を推測し、ジト目になったアルティナの念話を聞いたメサイアは苦笑したがすぐにある事に気付くと表情を引き攣らせ、静かな笑みを浮かべるリザイラの念話を聞いたアイドスは大量の冷や汗をかきながら答えた。

「―――わかったわ。それじゃあ、その娘を助ける為にその娘とご主人様を借りるわよ!時間がかかるけど、絶対にその娘を助けられるから安心して待っていなさい!」

そしてベルフェゴールは転移魔術を発動して自分とリィン、エーデルをどこかに転移させ

「お兄様!?」

「リィン達……一体どこに行ったのかしら……?」

「部長を助ける為って言っていたけど……何でわたし達の前から姿を消すんだろう?」

突然の出来事にセレーネは驚き、アリサとフィーは考え込んでいた。



「うふふ、なるほどね♪レン、あのお姉さんを助ける方法がもうわかっちゃったわ♪」

「……ま、まさかとは思うけど……いえ、提案した人がベルフェゴールさんだから、間違いなく”あの方法”なのでしょうね……」

「やれやれ……救命措置とはいえ、シュバルツァーがブルーメを救う為に必要以上に例の魔術を施さなければよいのだがな。」

「れ、”例の魔術”……??――――!?ハア……まあ、今回ばかりは仕方ないかもしれませんね……」

「フフッ、後で真実を知ったエリゼ達の反応が目に浮かびますわね。」

既にエーデルを助ける方法を察していたレンは小悪魔な笑みを浮かべ、プリネは表情を引き攣らせ、呆れた表情をしているレーヴェの言葉を聞いて呆けた後すぐに察したツーヤは疲れた表情で溜息を吐き、シグルーンは苦笑していた。



「とりあえず、今の内に待機している方々もこの場にお連れしたらどうでしょうか?ベルフェゴール様の話から推測すると、エーデル様を助ける為に少しばかり時間が必要との事ですし。」

「……そうね。―――エマ、手分けして他のメンバーを連れてくるわよ。」

「わかったわ、姉さん。」

そしてシャロンの提案に同意したクロチルダはエマと共に転移魔術を発動して、手分けして待機メンバーを新たな拠点となる場所に移動し始めた。



「到着っと。」

「アァァァッ!!」

一方転移魔術でリィン達が最初に拠点にしていた場所に到着するとエーデルはベルフェゴールに襲い掛かったが

「っと。はいはい、暴れないの。」

「アアァァッ!?」

ベルフェゴールは軽やかにエーデルの攻撃を回避した後一瞬でエーデルの背後に回り、吸収魔術でエーデルの力を大幅に奪って、エーデルを地面に倒れさせた。そしてベルフェゴールは短い詠唱をし、エーデルが倒れている地面に魔法陣を形成し、ベルフェゴールによって形成された魔法陣は光を放ち始めた。



「ウ……アァァ……ッ!?」

「エーデル先輩!?ベルフェゴール、エーデル先輩に一体何をしたんだ!?」

呻き声を上げながら必死に立ち上がろうとしているエーデルの様子を見たリィンは血相を変えてベルフェゴールに尋ねた。

「今、魔法陣でその娘が暴走させている力をジワジワと吸い取っているのよ。彼女を助けるには精神的にもそうだけど、肉体的にも消耗させなければならないし。」

「そうだったのか……それでエーデル先輩を助けるには何をすればいいんだ?先輩を助けるには俺の協力が必要って言っていたが……」

ベルフェゴールから理由を聞かされたリィンは安堵の表情で溜息を吐いた後自分が連れて来られた理由を思い出し、ベルフェゴールに尋ねた。



「うふふ、落ち着いてよく聞いてね?その娘を助ける為にご主人様がする事は至って簡単……それはその娘に”性魔術”を施してあげる事よ♪」

「……………………」

(ふふふ、予想通りですね。)

(や、やっぱりですか……)

(案の定、あの不埒過ぎる魔術の出番でしたね。)

(まあ実際の所、今の状況で彼女を助ける方法は性魔術が一番安全な方法だものね……)

ベルフェゴールの説明を聞いたリィンは一瞬石化したかのように固まり、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアは疲れた表情をし、アルティナはジト目になり、アイドスは苦笑していた。



「えええええええええええええええええええええっ!?な、何でそんな事をしないとダメなんだ!?こんな時くらいふざけてないで、まともに答えてくれよ!」

そして我に返ったリィンは声をあげた後疲れた表情でベルフェゴールに指摘した。

「あら、幾ら私でも人の命がかかった事にふざけるみたいな趣味の悪い事なんかしないわよ。ましてやこんな純情可憐な女の子の命がかかっているんだから、私も真剣よ?―――真面目な話、こういう時こそ性魔術の出番なのよ。性魔術なら暴走した力を抑えられるし、この娘を呑み込もうとしている魔族と化した事によってできた”魔の衝動”を抑え込んで本来のこの娘の意識を呼び戻す事もできるしね。」

「!?エーデル先輩が魔族って……どういう事だ!?確かに”グノーシス”を投与された事で”力”を解放した俺やレン姫のようになったけど、俺とレン姫は人間だぞ!?」

ベルフェゴールの説明を聞いてある事に気付いたリィンは血相を変えて尋ねた。

「……その娘には気の毒な話だけど、今のその娘、完全に”魔族”よ。それも半魔人とかじゃなく、純粋な魔族になっているわ。その娘が大人になったら、成長はそこで止まって、普通の魔族同様長い時を生きる事になるのでしょうね。」

「そんな……エーデル先輩を人間に戻す事はできないのか!?」

複雑そうな表情をしているベルフェゴールの話を聞いて悲痛そうな表情をしたリィンはベルフェゴールに問いかけた。



「無理よ。人間が魔族になる方法はあるけど、その逆はないわ。―――例え神々でも、完全に魔族化した人間を元に戻すなんて事はできないわ。―――そうでしょう、アイドス?」

リィンに説明を続けたベルフェゴールはアイドスが宿るリィンの神剣に視線を向け

(ベルフェゴールの言う通りよ。完全に魔族化した彼女を人間に戻せるような”奇蹟”は私でも無理だわ……)

「そんな………………」

ベルフェゴールの説明を裏付ける内容のアイドスの念話を聞いたリィンは辛そうな表情で顔を俯かせた。

「ウゥゥ……アァァァァ――――ッ!」

するとその時エーデルは再び咆哮をあげて立ち上がろうとしていたが、魔法陣によって力が奪われ続けている為すぐに倒れた。

「それで?どうするの?冗談抜きで今の状況であの娘を助けられるとしたら、性魔術しかないわよ。」

一瞬エーデルに視線を向けたベルフェゴールは真剣な表情でリィンを見つめて問いかけ

「……………………」

問いかけられたリィンは複雑そうな表情で考え込んでいた。



リィン……君……お願……い………よく……わからないけど……もし、私が生きられる方法があるのなら……私はその方法を……受け入れる……わ……私は……もっと……”生きたい”……!



「エーデル先輩…………わかりました。」

そしてエーデルの念話を聞いたリィンは決意の表情になり

「うふふ、どうやら覚悟を決めたみたいね。―――それじゃあ私はご主人様の中から指示を出すから、頑張ってね♪」

リィンの様子を見たベルフェゴールは微笑んだ後リィンの身体の中に戻った。その後リィンはエーデルに性魔術を施し、その結果エーデルは正気に戻り、性魔術で力を抑えられた事によって髪や瞳の色も元に戻った。 
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