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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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外伝~援軍の鼓動~

~同時刻・クロスベル帝国・帝都クロスベル・東通り・宿酒場・『龍老飯店』~



「クシュン!―――失礼しました。」

同じ頃クロスベルの宿酒場の一室でケビン達と共にある人物と対面していたエイドスはくしゃみをした。

「いえ、どうかお気になさらずに。というかエイドス様も我々と同じような生理現象があるのですね。」

エイドスと対面している人物―――レクター少尉は苦笑しながらエイドスを見つめていた。

「もう……いつもいつも思いますが皆さんは私を何だと思っているのですか……」

(((本物の”空の女神”です!)))

呆れた表情で溜息を吐いたエイドスにケビンとリース、ルフィナはそれぞれ同時に疲れた表情で心の中で指摘した。



「コホン。それで話を纏めますと……エレボニアの私に対する依頼は”グノーシス”を投与された被害者達の治療の協力並びに”ハーメルの悲劇”を公表した際私がリベールだけでなくエレボニアに対するフォローする宣言をして欲しいとの事でよろしいのですね?」

「はい。厚かましい頼みかと思われますが、どうかエレボニアの民達の為に御慈悲をお願いします。」

エイドスの言葉に頷いたレクター少尉は頭を深く下げた。

「……ちなみにその依頼を私が受ければ、エレボニアは私に何をしてくれるのでしょうか?」

「へ…………それはどういう事でしょうか?」

しかしエイドスの口から出た予想外の言葉に呆けた後すぐに立ち直って不思議そうな表情でエイドスを見つめて問いかけた。



「あら。まさかとは思いますが私が”女神”だからと言って、何の見返りもなく応じるとでも思っていたのですか?というか相手が誰であろうと見返りを用意するのは交渉の”基本”だと思いますが、違いましたか?」

「い、いえ……エイドス様の仰る通りです。(オイオイオイ……!女神なのに、見返りを求めるのかよ!?)」

エイドスの言葉にレクター少尉は内心驚きながらも表情に出さずに答えを濁した様子で答え

(あの様子やと大方エイドスさんが見返りを求めて来た事に内心驚いているんやろな。)

(………むしろ驚かない方がおかしいと思う。人々が女神に救いを求めれば、女神は無償で人々を救ってくれるというのが七耀教会の教えだし。)

レクター少尉の様子を見たケビンは苦笑し、リースは疲れた表情で小声で会話をしていた。



「あら……二人とも何か言いましたか?」

「「な、何でもありません!」」

しかし膨大な威圧を纏ったエイドスに微笑まれると姿勢を正して答え、その様子を見守っていたレクター少尉は冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

「あ、あのエイドス様。今は国家は関係なくゼムリアに住まう人々の危機なのですから、一般的に考えれば女神……いえ、”人として”エレボニアの依頼を受けるべきかと愚考いたします。勿論エイドス様のゼムリア大陸に滞在される限られた僅かな貴重な時間の一部をエレボニアが独占する事になるのですから、当然エレボニアはその見返りを用意すべきですがエイドス様もご存知の通り、エレボニアはメンフィルとの”戦争回避条約”によって様々なものが失われる事になります。なのでエレボニアに住まう民達の為にも、あまり厳しい条件を求めない事は女神以前に”人として”当然の選択だと思われます。」

するとその時ルフィナが必死で言葉を選びながらエイドスを見つめて指摘した。

「そのくらいの事は言われなくてもわかっていますよ。というかハーメル公表の件に関してはルフィナさん達も知っていると思いますがオリヴァルト皇子が呑んだ条件以上の事を求めるような人として最低な真似はしませんよ。」

「……オリヴァルト殿下が?あの、エイドス様。お手数ですがその件についての詳細な話を教えて頂いてもよろしいでしょうか?私はクロスベルが解放されるまでクロスベルに潜伏していた為、オリヴァルト殿下がエイドス様とどのような取引を行ったのか把握していないのですが……」

エイドスの答えを聞いて目を丸くしたレクター少尉は困惑の表情で尋ねた。そしてエイドス達はオリヴァルト皇子との取引について説明した。



「……………………(や、やられた……!あの放蕩皇子、”革新派”―――いや、オッサン直属の俺達の手綱を握って、勝手な事をさせない為にエレボニアの領土を削り取ってでも俺らにとって一番不利になる条件を交渉や反論もする事なく呑みやがったな……!)」

事情を聞き終えたレクター少尉は内心様々な思いを抱えながら石化したかのように固まっていた。

「その様子では何か反論がおありなのですか?」

「い、いえ。エイドス様の仰る通り、せっかくエイドス様がエレボニアの混乱を鎮めようとしてくださっているのに、恩人であるエイドス様を裏切るような余りにも罪深い事を行えば、それこそエイドス様の代行者である”星杯騎士”から”天罰”が降されてもおかしくありません。これからは心を入れ替えて祖国の為に身を粉にして働く所存です。それで話を戻しますが……ハーメル公表の件はそれでいいとしまして、残りの”グノーシス”を投与された被害者達の治療の協力に対する条件はどのような条件でしょうか?」

「それは―――――」

1時間後、”特務支援課”のビルにルフィナを伴ったエイドスが訪れていた。


~1時間後、特務支援課~



「こんにちは。」

「へ……」

「エ、エイドス様……!?一体何の御用でこちらに来られたのでしょうか?」

ビル内に入って来たエイドスに気付いたロイドは呆け、エリィは信じられない表情で声を上げた後気を取り直して尋ねた。

「実は”D∴G教団”司祭の悪霊―――ヨアヒム・ギュンターに”ゼムリアの裁き”を与える為にヨアヒムの元に向かう女神様の”護衛”を貴方達に務めて貰いたく、こうしてこちらまで足を運ばせて貰ったの。」

「ハアッ!?」

「ヨ、ヨアヒムに裁きを与える為って……確かヨアヒムは今エレボニアにいるんですよね?女神様はともかく、クロスベル所属の私がエレボニアの許可なくそんな事をすれば、不味くありませんか?」

ルフィナの説明を聞いたランディは驚きの表情で声をあげ、ノエルは戸惑いの表情で呟いた後不安そうな表情で推測した。



「まあ、その心配はする必要はないと思うよ。だって衰退したエレボニアが今のクロスベルに文句を言って、戦争を仕掛けるような余裕はないだろうしねぇ?」

「というかエイドスさんの”護衛”って……”ゼムリア大陸自身”が味方というまさに”ゼムリアのチート”と言ってもおかしくないエイドスさんに護衛なんていらないと思いますし、アドルさん達やケビンさん達もいるのに、どうしてわたし達なのですか?」

「ティ、ティオ。」

「フフッ、その呼び名も懐かしいな……」

ワジは口元に笑みを浮かべ、ジト目でエイドスに指摘するティオの言葉を聞いたロイドは冷や汗をかき、ツァイトは苦笑し

「ムッ……私程ではないとはいえ、常に七耀脈の加護を受け続けている貴方達”眷属”も”ゼムリアのチート”なのですから、貴方も人の事は言えないんじゃないですか?それに”零の至宝”の力を得ていた頃のキーアさんの方が私よりも”ゼムリアのチート”だと思うのですけど。」

「お前のような”存在自体が反則同然の規格外の中の規格外”と私達を比べるな。」

「ア、アハハ…………確かにあの頃のキーアはそう言われてもおかしくないね……」

「?ねえねえ~、”チート”ってどんなイミ~?」

ジト目でツァイトに指摘するエイドスの凄まじい発言にロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ツァイトは呆れた表情で答え、未来のキーアは苦笑し、キーアは首を傾げた後ロイド達に尋ねた。



「あー…………話を戻しますが、一体何で”空の女神”自らそんな事をする事になって、しかも”守護騎士(ドミニオン)”もいるのに、ウチの連中を連れて行きたいのでしょうか?」

その時セルゲイが疲れた表情でエイドスに問いかけをした。そしてエイドスとルフィナはレクター少尉とした取引―――”グノーシス”を投与された被害者達の治癒の協力の”見返り”としてエイドス達に加えて、ロイド達もヨアヒム討伐参戦をエレボニアが無条件で受け入れる事を条件にした事を説明した。

「……………………」

「な、何て無茶苦茶な取引…………」

「まあ、その無茶を通じさせるのが僕らが崇める”空の女神”なんだよね♪」

「しかもエイドスさん”達”という事はエイドスに加えてアドルさん達やケビンさん達どころか、まさかとは思いますがエステルさん達も一緒にエレボニアに行くんですか?」

説明を聞き終えたロイドは口をパクパクさせ、表情を引き攣らせて呟いたエリィの言葉を聞いたワジは笑顔を浮かべ、ティオは疲れた表情で尋ねた。



「ええ、勿論エステルさん達も一緒ですよ。エステルさん達も皆さんと一緒にヨアヒム討伐を行ったのですから。ちなみにヴァイスさんからも既に許可を頂いていますから、このまま私と一緒にエレボニアに向かっても大丈夫ですよ♪」

「す、既に局長―――いえ、ヴァイスハイト陛下とも話をつけていたのですか……」

「やれやれ……突拍子もない事をする時に限って手際がいいのも相変わらずだな。」

エイドスの答えを聞いたノエルが表情を引き攣らせている中、ツァイトは呆れた表情で溜息を吐いた。

「話を戻すけど……今、エレボニアはヨアヒム・ギュンターによって発生させられた問題を解決する為に既に問題解決に向けて動いているわ。」

「え………」

「あの野郎は一体何を仕出かしたんスか?」

ルフィナの話を聞いたエリィは呆け、ランディは真剣な表情で尋ねた。そして二人はエレボニアの状況を説明した。



「なっ!?ヨアヒムはキーアちゃんを手に入れるだけの為に関係のないリベールまで巻き込もうとしているんですか!?」

「「………………」」

「キーア…………」

事情を聞き終えたノエルは驚き、それぞれ辛そうな表情で黙り込んでいるキーア達をティオは心配そうな表情で見つめ

「ちなみにリベール王国はその事について知っているのでしょうか?」

ロイドは真剣な表情で質問をした。

「レクター少尉の話ではリウイ陛下の手配によってオリヴァルト皇子を含めたエレボニア皇家の方々が事情の説明の為にリベールの王都―――グランセルに向かったとの事だすから、恐らくリベールも既に知っていると思うわ。」

「リウイ陛下がですか!?」

「へえ?ちょっと前まで戦争をしていた相手の為に、メンフィルがよくそこまでしてくれたね。」

「リウイお義兄様の真意はわからないけど、オリヴァルト殿下達がリベールに事情を説明する事で少なくてもユミル襲撃の時のように戦争勃発までは発展しないでしょうね。」

ルフィナの話を聞いたロイドは驚き、ワジは目を丸くし、エリィは安堵の表情で呟いた。



「ヨアヒム討伐と先程仰いましたが……肝心のヨアヒムの居場所はわかっているのですか?」

「ええ。既にリィンさん達もヨアヒムが潜伏している場所に向かっているそうです。」

「つー事は”Ⅶ組”の連中との共闘か。」

「わたし達が援軍として現れたらさぞ驚くでしょうね。」

「むしろ驚かない方がおかしいから。――――エイドスさん、一つ尋ねてもいいでしょうか。」

「ロ、ロイド……?」

セルゲイの質問に答えたエイドスの話を聞いたランディは目を丸くし、静かな表情で呟いたティオの言葉に疲れた表情で指摘した後真剣な表情でエイドスに質問するロイドをエリィは戸惑いの表情で見つめていた。



「ええ、構いませんよ。何を聞きたいのですか?」

「……何故ヨアヒム討伐の為に俺達を”護衛”という名目で同行させる事を決めたのでしょうか?」

「フフ、答えは到って単純ですよ…………――――ヨアヒムとの決着を今度こそ付けるべきメンバーの中にはかつてヨアヒムと雌雄を決した皆さんもいるべきと私が判断したからです。」

「あ…………」

「エイドス様……」

「わたし達の為でもあったのですか……」

自分自身の質問に答えたエイドスの話を聞いたロイドは呆け、エリィとティオはそれぞれ目を丸くし

「ハハ、ゼムリア大陸全土が崇めている”空の女神”にここまで御膳立てされたんだから、応えない訳にはいかないよな?」

「ああ……!エレボニアの人々の為に”新型のグノーシス”に対する特効薬の開発の為に今もエルファティシアさん達と一緒に試行錯誤しているセティ達の分も頑張らないとな……!」

「あの時は私はご一緒できませんでしたが、今度は私もご一緒します!」

「フフ、当然僕も付き合うよ。”星杯騎士”として……そしてかつての”特務支援課”のメンバーとしてね。」

ランディの言葉にロイドは力強く頷き、ノエルとワジもそれぞれ同行の意思をロイド達に示した。



「ロイド……キーアも一緒に行く!」

「キ、キーアちゃん!?ヨアヒムの狙いは貴女である事はわかっていて言っているの?」

未来のキーアの申し出を聞いたエリィは驚いた後心配そうな表情で尋ね

「うん……でもキーアのせいで、色んな人達に迷惑をかけてしまったもの……だからその償いの為にもキーアもヨアヒムを討伐するロイド達の手伝いをしたいの……!」

「みんな、おねがい……!今のキーアではみんなの力になれないけど未来のキーアならみんなの力になれるから、キーアの代わりに連れていってあげて……!」

「キーア…………」

未来と現代、それぞれのキーアの答えと嘆願を聞いたティオは複雑そうな表情をしていた。



「……フウ。今回ばかりは正直反対したい所だけど今俺達の目の前にいる未来のキーアは一人前の”大人”だ。だから未来のキーアがそう決めたのならキーアの親として俺達は未来のキーアの意思を尊重する。」

「ロイド……」

「まあ、実際未来のキー坊はロイド達より年上だもんな。」

「それとこれとは別問題だと思いますが。」

ロイドの話を聞いたエリィは微笑み、苦笑するランディにティオはジト目で指摘した。

「―――ただし、絶対に無茶や勝手な行動はしない事。それだけは絶対に守ってもらうぞ。」

「うん……!」

ロイドの言葉に未来のキーアは笑顔で力強く頷いた。



「やれやれ……ヨアヒム如きの為にわざわざお前らがエレボニアに出張る必要なんてないんだがな……ま、どうせ止めても無駄だっただろうな。」

ロイド達の様子を呆れた表情で見守っていたセルゲイだったがすぐに気を取り直してロイド達を見回して順番にロイド達の名前を呼んだ。

「―――ロイド・バニングス。」

「はい!」

「エリィ・マクダエル。」

「はい。」

「ティオ・プラトー。」

「……はい。」

「ランディ・オルランド。」

「うッス!」

「ノエル・シーカー。」

「はい!」

「ワジ・ヘミスフィア。」

「ja(ヤー)。」

「そして……―――キーア・バニングス。」

「はーい!」

「絶対に全員無事で帰って来い。これは”命令”だ!」

「はい……!」

「わかりました!」

「了解です……!」

「「イエス・サー!」」

了解(ラジャー)!」

「うん……!」

そしてセルゲイの号令にロイド達はそれぞれ力強く頷いた!





こうして……ロイド達”特務支援課”もヨアヒム討伐の為にエレボニアに向かう事になり……ロイド達を乗せたワジの”メルカバ仇号機”、そしてエステル達やエイドスを始めとした”空の女神の一族”を乗せたケビンの”メルカバ伍号機”はヨアヒムが潜伏している”ジュライロッジ”に向かい始めた……! 
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