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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第64話

同日、15:20――――



ヨアヒムが去って3時間後、転移魔導によって次々と姿を現した貴族連合の残党に加えて貴族連合が所有していた”結社”の人形兵器、更にはヨアヒムが召喚した悪魔の軍団がリベール王国に向けて侵攻を開始し始めると、行く手を阻むかのようにミュラー少佐率いる”第七機甲師団”が待ち構えていた。



~リベール王国領、エレボニア帝国領、メンフィル帝国領国境・ハーケン街道~



「―――来たか。これより貴族連合の残党の捕縛を開始する!ただし人形兵器や悪魔に容赦する必要はない!帝国正規軍の誇りにかけて一人たりとも後ろに通すな!」

「イエス・サー!」

ミュラー少佐の号令を合図に第七機甲師団は戦闘を開始し、ミュラー少佐もまた大剣を振るって戦闘を開始した!正規軍の練度は高かったが、対する貴族連合側は人と兵器、悪魔の混成軍の上数も圧倒的に上だった為、正規軍はジリジリと後退をしながらも敵を決して後ろに通さずに戦っていた。

「クッ……やはりこの数では抑えきれんか……(仕方ない。ハーケン門に使者を送って―――――)」

状況が劣勢である事に唇を噛みしめたミュラー少佐がある判断をしたその時2体の機甲兵がミュラー少佐を左右に挟み撃ちにしてそれぞれ武器を構えていた。



「挟まれたか……!」

挟み撃ちにされたミュラー少佐が迎撃の構えをしたその時!

「―――右の機甲兵は私が無力化する!君は左の機甲兵を無力化したまえ!」

突如自分にとって聞き覚えがあり、また懐かしい男性の声が聞こえて来た!

「なっ!?……!」

男性の声を聞いたミュラー少佐は驚いたがすぐに気を取り直して左の機甲兵に向かい、それを見た右の機甲兵は自分に背を向けたミュラー少佐に武器であるライフルの銃口をミュラー少佐に向けた。

「―――させん!光輪斬!!」

しかしその時黒い軍服を着た男性の抜刀技によって発生した刀気の輪によってライフルの銃口は斬られ

「散り逝くは叢雲………咲き乱れるは桜花……今宵、散華する武士(もののふ)が為、せめてもの手向けをさせてもらおう!はぁぁっ………!せいやっ!秘技!桜花残月!!」

「―――――!?」

更に男性の大技によって片脚を破壊された為、転倒して戦闘不能になった!

「おおおおおおっ……!喰らうがいい――――ヴァンダールの剣!!」

一方ミュラー少佐も強烈な攻撃で両脚の関節部分を破壊して機甲兵を戦闘不能にした!



「ミュラー少佐同様生身で”機甲兵”を制圧するなんて……!」

「す、凄い……!」

「何者だ、あの者は……!?」

二人の戦闘を見ていた正規軍の兵達は驚きの表情で二人を見つめ

「―――”影の国”以来だな、リシャール殿。何故貴方がこちらに?」

ミュラー少佐は口元に笑みを浮かべた後すぐに気を取り直して男性――――かつてリベールでクーデターを起こした主犯であり、”リベールの異変”の際カシウスの手筈によって特例措置として一時的にリベール軍に復帰して窮地に陥ったリベールを救った事で恩赦が与えられた事によりクーデターの主犯でありながら僅かな期間で釈放され、今は民間の調査会社を営んでいるアラン・リシャールを見つめて問いかけた。

「フフ、カシウス准将の指示と言えばわかるだろう?」

「!まさかこうなる事もカシウス准将は察知されていたのか……!?」

リシャールの答えを聞いて目を見開いたミュラー少佐は信じられない表情で尋ねた。



「ああ。先程メンフィルから数時間後に貴族連合の残党がリベールに侵攻する可能性ありという情報の提供があってね。その情報を知ったカシウス准将が即座に”もう一つの可能性”―――――”D∴G教団”によって傀儡にされた貴族連合の残党がリベールに侵攻する事も察知されていたんだ。だが、幾らかの”教団”の仕業でエレボニアの侵攻によるものでないと理解しているとは言えすぐにはリベール軍を貴族連合の残党を喰い止めているエレボニア正規軍の援軍に向かわせる事はできない……そこでリベール軍に所属していない”民間人”の私達がエレボニアへの”旅行”の最中に巻き込まれ、結果的に君達エレボニア正規軍に助太刀したという形で我々を投入する事にしたのさ。」

「ふふっ、さすがはカシウス准将だな。……ん?”我々”という事はまさか――――」

リシャールの説明を聞いて苦笑したミュラー少佐はある事に気付いて驚きの表情で尋ねかけた。するとその時、黒い軍服を着た女性が黒装束の兵士達を引き攣れて戦場に現れた。

「これより貴族連合の残党の捕縛並びに人形兵器と悪魔達の掃討を始める!”機甲兵”には脚部関節に攻撃を集中し、動きを止める事を最優先にしなさい!」

「イエス・マム!!」

リシャールの秘書――――カノーネ・アマルティアは黒装束の兵士達――――リベール軍の諜報部隊であった元”情報部”に所属していた兵士達にして今はリシャールが経営している民間の調査会社―――”R&Aリサーチ”の社員達に号令をかけ、号令に力強く頷いた社員たちは交戦を開始した!

「”情報部”の”特務兵”……!かつて”リベールの異変”の際、導力兵器が使用できない状況で結社の猟兵達を撃退した話は聞いていたが、まさか”機甲兵”とも渡り合えるとは……!」

「―――見ての通りだ。諸事情でこの場に来れなかった者もいるが、可能な限り我が社の”社員”たちを招集した。―――今回の件は”百日戦役”の時と違い、エレボニア帝国の”意志”でない事は理解している。愛する故郷(リベール)が再び戦火に包まれない為に……戦争を望まないアリシア女王陛下達の為に……そしてリベールとエレボニアが良き友人であり続けられる為に私達も全力で協力させてもらおう。」

「……感謝する。」

リシャールの言葉を聞いたミュラー少佐は静かな笑みを浮かべて会釈をした。



「―――総員、今この場に現れた武装集団はリベールからの援軍だ!彼らと協力し、迎撃に当たれ!援軍を送ってくれたリベールの恩に報いる為にも一人たりとも絶対に後ろに通すな!!」

「リベールを愛する勇士達よ!愛する故郷を守る為に、今こそ共に力を合わせる時だ!貴族連合に……そして正規軍にも見せてやろう――――我らリベール王国の”誇り”を!」

「「イエス・サー!!」」

ミュラー少佐とリシャール、二人の勇将の号令にそれぞれ頷いて戦意を高めた兵士達は戦闘を再開した!

「フフ、”影の国”の件が終わってから更にどれだけ腕を上げたか見せてもらおう――――『剣聖』より受け継ぎし八葉の剣を。」

「フッ、それは私の台詞だ。こちらこそ、見せてもらうよ――――エレボニアの武の双璧の片翼を担う”ヴァンダール”の剣を。」

そして互いに口元に笑みを浮かべて視線を交わした二人は同時に突撃して戦闘を再開した!





同日、15:30――――



~エレボニア帝国領・ジュライ特区上空~



ハーケン街道で激戦が繰り広げられている中リィン達を乗せたカレイジャスはジュライ特区の上空に到着した。

「!あれは……!」

「魔煌兵!?何であいつらもいるのよ……!?」

「どういう事!?”煌魔城”が顕現もしていないのに、あんな数の魔煌兵がいるなんて……!幾ら何でも”D∴G教団”の秘術で、あれ程の数の魔煌兵の顕現をできる訳がないわ!」

カレイジャスの甲板からジュライ特区の様子を見て魔煌兵達がジュライ特区内を徘徊しているのを見たエマは血相を変え、セリーヌとクロチルダは信じられない表情で声を上げた。

「クッ……!エリゼ、ヴァイスリッターもいけるか!?」

「―――はい。いつでも出撃できます。」

「勿論パテル=マテルもいつでもオッケーよ♪」

ヴァリマールに搭乗しているリィンの声を聞いたヴァイスリッターに搭乗しているエリゼは静かな表情で答え、エリゼに続くようにパテル=マテルの傍にいるレンは不敵な笑みを浮かべて答えた。



「こうなったら、ヴァリマールとヴァイスリッター、それとパテル=マテルで……!」

そしてリィンが声を上げたその時

「―――その必要はありませんわ!」

地上から女子生徒の声が聞こえて来た!地上には既にカレイジャスから降りたフェリスを始めとしたトールズ士官学院の面々やデュバリィ達”鉄機隊”、そしてクレア大尉率いる”鉄道憲兵隊”がそれぞれ武器を構えていた!



「打ち合わせ通り、ここは私達にお任せ下さい!」

「皆さんはどうかそのままパトリック様達の救出へ―――!」

「ジュライ市内の方は私達が何とかしてあげますから、貴方達は後ろの事は気にせず今回の件の元凶であるヨアヒムの討伐に集中しなさい!」

「クレア大尉……!サリファさん……!それにデュバリィも……!」

「ああ、任せたぞ!」

「よろしくお願いします……!」

「どうかお気をつけて……!」

激戦が予想される地上のメンバーに向けてユーシスやマキアス、エリスはそれぞれ激励の言葉を送った。そしてカレイジャスが発進すると同時にフェリス達はそれぞれが相手する”敵”に向かって突撃した!



「ロギンス君、背中は任せたわ!」

「おお、そっちこそ!」

「行くわよ、エミリー!」

「ええ、テレジア!」

「フッ……フロラルドの名に賭けて!」

「アリサのライバルとして、絶対に負けませんわ!」

「お供します、ヴィンセント様、フェリス様。」

「01~04分隊は私と共に敵の掃討を。残りの分隊は手分けして避難経路の確保並びに市民達の避難誘導を行いなさい!」

「イエス・マム!!」

「エンネア!アイネス!”鉄機隊”の底力、存分に見せてやりますわよ!」

「ええ!”執行者”と拮抗する実力を持つ私達を味方にすればどれ程心強いか……そして敵に回せばどれ程恐ろしいのか、存分に見せてやりましょう!」

「”鉄機隊”――――出陣!!」

それぞれ戦意を高めた地上のメンバーは魔煌兵や貴族連合の残党、そして悪魔や人形兵器達との戦闘を繰り広げ始めた!



「いや~、こちらの出る幕は無いかもしれませんねぇ。」

一方その様子を見守っていたトマス教官は場所が戦場であるにも関わらず呑気そうな様子で答え

「それならそれで面倒がなくていいんだが……」

トマス教官と共にいるマカロフ教官も呑気にタバコを吸っていた。

「―――しかしアンタ。いい加減そろそろ本気を出さないのか?多分だが”アンタと敵対関係だった連中の最高幹部達”もアンタの”正体”にも気付いているだろうから、もう隠す必要もないと思うが。」

「あはは~、何を仰るのやら。……おっと、そうこうするうちに新手が現れましたよ~?」

マカロフ教官の指摘にトマス教官がとぼけた様子で答えたその時、1体の機甲兵が二人の背後から近づいてきた!

「やれやれ……煙草を吸うヒマもない。」

「それじゃあ始めましょうか~!」

そして二人も戦闘を繰り広げ始めた!その後カレイジャスは”ジュライロッジ”の近くに到着した。


~ジュライロッジ~



「よし―――着いたぞ!」

「みんな、気を付けて……!」

「空の女神(エイドス)の加護を……!」

「おおっ!!」

アンゼリカやトワ、ジョルジュの激励の言葉にリィン達は力強く頷き、リィンとエリゼはそれぞれが操縦するヴァリマールとヴァイスリッターで地上に降下し、パテル=マテルも2体に続くように地上に降下し、残りのメンバーはエマやクロチルダ、エヴリーヌとパントの転移魔術によって地上に転移した。

「カレイジャス、急速上昇!地上にいるみんなと協力してジュライの市民達の救助をするよ!」

「アイアイ・マム!!」

リィン達の地上への降下を確認したカレイジャスは飛び去って行った。



「これが”D∴G教団”の”ジュライロッジ”ですか……洞窟であるにも関わらず随分と近代的な設備が整っていますわね。」

セレーネは洞窟でありながら、近代的な設備が整っている”ジュライロッジ”を見て呆け

「―――確か”ジュライロッジ”はエレボニアにある”教団”の”ロッジ”の中でも最も大きい施設であったと”結社”の資料で読んだ事がありますわ。」

「という事は当然ここで多くの幼い子供達が”教団”の”儀式”によって犠牲になったのでしょうね……」

「外道が……!」

シャロンの話を聞いたプリネは重々しい様子を纏って呟き、ラウラは厳しい表情でジュライロッジを睨んだ。



「うふふ、まずはあの大きな門を挨拶代わりに景気よく壊してあげましょ♪――――パテル=マテル!」

「――――――!」

レンの指示によってパテル=マテルは巨大な戦斧を召喚して構え

「エリゼ、同時に行くぞ!」

「はい、兄様!」

ヴァリマールとヴァイスリッターもそれぞれ太刀を構え、パテル=マテルと共にジュライロッジの巨大な門目掛けて突撃して強烈な一撃を叩きつけた!

「はぁぁぁぁぁぁ……っ!!」

「やぁぁぁぁぁぁ……っ!!」

「――――――!!」

3体の同時攻撃を受けた巨大な門はバラバラに砕け散り、門が砕け散ると巨大な空洞が現れた!



「や、やったわ……!」

「一体でも凄まじい威力なのに、3体になったお蔭で威力も倍増していますね。」

入口ができた事にアリサは明るい表情をし、ツーヤは苦笑していた。

「いや―――――!」

しかし何かの気配に気付いたガイウスが真剣な表情で呟いたその時、空洞の前に巨大な結界が現れた!

「な、なんだ……!?」

「霊的な障壁だと!?」

「す、凄まじい密度の霊子結界……!」

「最上位悪魔――――いや、下手をすれば”神格者”や”魔神”クラスが展開できるレベルの結界だな……!」

「それを離れた位置から展開できるという事は相当の術者である証拠ですね。」

「―――間違いなくかつて”特務支援課”が戦った時と比べて強くなっている証拠ですわね。」

「まさかこの私をも超える術式の結界を”D∴G教団”の司祭が展開できるなんて……!」

「多分”グノーシス”の強化によるものなのでしょうね……!」

「キャハッ♪戦いになったら楽しめる証拠だね♪」

結界を見たマキアスとユーシスは驚き、エマは信じられない表情をし、パントとルイーズ、シグルーンはそれぞれ真剣な表情をし、クロチルダとセリーヌは厳しい表情をし、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべた。そしてヴァリマールとヴァイスリッター、パテル=マテルはそれぞれ結界に攻撃をしたが何と攻撃は弾かれた!



「ああっ!?」

「っ……ダメっぽい?」

「ヴァリマール達でダメならガーちゃんとクーちゃんでも……」

「――――…………」

「くっ、何か手は――――」

ヴァリマール達の攻撃が弾かれた事にエリオットは声をあげ、フィーとミリアムは厳しい表情をし、サラ教官は唇を噛みしめた。

「いや―――」

「――――ならば私と”剣帝”が何とかしてみせましょう。」

するとその時リィンが申し出始めようとするとリアンヌが申し出た。



「え…………」

「シル―――リアンヌさんとレーヴェさんがですか?一体どうやって……」

リアンヌの申し出にリィンが呆けている中、ツーヤが不思議そうな表情で問いかけた。

「貴女もご存知でしょうが”剣帝”が持つ魔剣(レヴァンテイン)は”盟主”から授かった”外の理”の魔剣を元に作られた剣。そして私が持つ神剣(ルクノゥ・セウ)もかつての私―――シルフィアが持っていた神剣を強化した剣。それぞれの剣に秘められる”力”を解放し、同時に叩きつける事ができれば、例え”神”が展開した結界であろうと破壊できるはずです。」

「―――なるほどな。”聖”と”魔”。相反する属性をぶつける事で起こる爆発のエネルギーも利用すると言った所か。」

リアンヌの説明に納得したレーヴェは鞘から”魔剣レヴァンテイン”を抜いて”神剣ルクノゥ・セウ”を鞘から抜いたリアンヌと共に結界に近づき、リアンヌと同時に闘気を練り始めた!

「おぉぉぉぉぉ……ッ!!」

「ハァァァァァ……ッ!!」

二人がさらけ出す膨大な闘気によって周囲の空気が震えると大地は大きく揺れ始め、二人が持つ剣は凄まじい光を放ち続けた!

「「滅―――――ッ!!」」

そして二人が同時に強烈な一撃を結界に叩きつけると結界は崩壊した!



「おお……っ!?」

「結界が……!」

「うふふ、さすがは”結社最強”の”鋼の聖女”と”執行者最強”である”剣帝”の合わせ技ですわね♪」

「アリアンロードはともかくレオンが”執行者最強”はさすがにありえ……って、確かによく考えてみれば”劫炎”は死んだから”執行者最強”はレオンになるわね。」

「……別にあいつが破壊しなくても、エヴリーヌでも破壊できたし。」

「ま、まあまあ………誰が破壊してもいいではないですか、お姉様。」

崩壊した結界を見たフィーとエリスは驚き、微笑みながら呟いたシャロンの言葉を聞いて眉をひそめたがすぐにある事に気付いたクロチルダは苦笑し、レーヴェが活躍した事に不満げな様子でいるエヴリーヌをプリネは苦笑しながら諌めていた。

「今よ――――全員、突入!!」

「おおっ!!」

サラ教官の号令を合図に全員はジュライロッジに突入した!



「この”風”は……!」

「……やはりここもノルド高原の石切場や”精霊窟”の時同様上位三属性が働いていますね。」

「ええ……”あの時”と一緒よ。」

ロッジ内に突入して何かに気付いたガイウスは目を見開き、エマの言葉にレンは真剣な表情で頷いた。

「”あの時”、ですか……?」

「レンさん、それってもしかして”太陽の砦”の時での事ですか?」

レンの言葉を聞いたエリスは首を傾げ、ツーヤは真剣な表情で尋ねた。



「ええ、そうよ。ロイドお兄さん達やエステル達と一緒にヨアヒムが潜伏している”太陽の砦”に感じた気配と全く同じよ。この様子だと”太陽の砦”の時同様”悪魔”やゼムリア大陸にとっては”得体のしれない魔獣”がいるでしょうね。」

「そうね……それ所かひょっとしたら”影の国”で出て来た”魔物”や悪魔も出て来るかもしれないわね……」

「え、”得体の知れない魔獣”に加えて”影の国”とかいう所で出て来た”魔物”ってどんな相手なんだろう……」

「………どうやらこの先は一筋縄では行かないみたいだな。」

「より一層気を引き締める必要がありますね。」

「キャハッ♪それなら歯ごたえの奴もいるだろうから、楽しめそうだね♪」

レンとプリネの推測を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、ラウラとルイーズは真剣な表情で呟き、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべ

「……しかも冥界の霊圧も混じっているから、下手したら”死者”達も出てくるかもしれないわね。」

「ええっ!?そ、それって……!」

「ま、ままままま、まさかとは思うがカレル離宮の時みたいに領邦軍の亡霊も現れるって事か!?」

「あわわわわわっ!?それじゃあまたローエングリン城の時みたいに、攻撃がすり抜けるの~!?」

「フン、こちらには悪魔にも亡霊にも効く武器がある上、奴等との戦いも異世界での”特別実習”で十分学んでいる。今更臆する必要はあるまい。」

「ちなみに以前カレイジャスでレン姫がミリアムさんに渡された武具には”退魔”の効果が秘められていますから、悪魔もそうですが幽霊相手にも効果的なのですが……」

セリーヌの推測を聞いたアリサは驚き、マキアスとミリアムが慌てている中ユーシスは冷静な様子で答え、エリゼは苦笑しながらミリアムを見つめて指摘した。



「そしてここのどこかに貴族連合に誘拐されたパトリックさんを始めとした人質の方達がいるのですのよね……」

「部長………」

「……当然クロウもいるでしょうね。」

「クロウ……」

セレーネとフィーは心配そうな表情で呟き、クロチルダとリィンは複雑そうな表情をし

「後はカイエン公もそうですが、残りの”帝国解放戦線”の幹部もいる可能性はありますね。」

「残りの”帝国解放戦線”の幹部というと………”V(ヴァルカン)”とやらですわね。」

「そう言えば”V”を含めた”帝国解放戦線”も貴族連合の残党同様行方不明だったわね……」

「最悪彼らも”ルバーチェ”や貴族連合の残党同様”グノーシス”を投与された状態で、私達を阻んでくるかもしれませんわね。」

リアンヌとシグルーンの話を聞いてある事に気付いたサラ教官とシャロンはそれぞれ真剣な表情で考え込んでいた。



「ふむ…………―――みんな、私から提案があるんだが、いいかい?」

「提案、ですか?」

パントの申し出を聞いたリィンは不思議そうな表情をし、仲間達と共にパントに注目した。

「ああ。”太陽の砦”の件を考えると恐らくヨアヒム・ギュンターはこのロッジの最奥にいる可能性が考えられる。それまでの道のりは長いだろうから、ここは探索班と待機班に分かれたほうがいいと思うんだ。」

「えっと……それってどういう事ですか?」

「つまり、安全な場所を拠点としてそこを足がかりにするのですね?」

パントの提案の意味がわからないエリスが首を傾げていると、ある事に気付いたエマが尋ねた。

「まあ、そういうことだ。探索班がルートを発見する間、待機班は拠点を守りながらいざという時の交替に備える。ルートが見つかったら全員で移動して新たな拠点を作る。それを繰り返して最後は全員でヨアヒムの所に向かうという事だ。」

「なるほど……合理的だね。」

そして説明を聞いたフィーは納得した様子で頷いた。



「だったら、当面はこの場所を拠点にした方がよさそうね。リィン、君が探索班を決めなさい。」

「……わかりました。」

サラ教官の言葉に頷いたリィンは静かな表情で仲間達を見回し、そして――――

「トールズ士官学院、特科クラス”Ⅶ組”並びに協力者一同――――これより異変解決の為”ジュライロッジ”の探索を開始する。それぞれの明日を掴むため……何よりもクロウ達を……士官学院の仲間を助ける為に今はただ、ひたすら前へ進もう。状況開始――――各自、全力を尽くしてくれ!」

「おおっ……!!」

号令をかけ、仲間達は力強く頷いた!



その後リィンは最初の探索メンバーにエリオット、ガイウス、ユーシス、マキアス、セレーネ、ミリアム、サラ教官、エリゼ、エリス、パント、ルイーズを選び、探索を開始した。 
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