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先輩

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第五章

「とても行かせられません」
「一人ではだね」
「ですからもう一人つけます」
「横溝巡査部長をだね」
「二人ならです」
 一人では危ういが二人ならというのだ。
「安心していいです」
「先輩後輩の二人ならか」
「はい、この組み合わせなら」
「わかった、ではな」
「二人がここに到着したら」
「すぐにやってもらおう」
 署長は決めた、そしてだった。
 まずは潤と宗男の到着を待った、すると数分もしないうちにだった。
 パトカーがとんでもない、百五十キロは出して現場に来た。警部はそのパトカーが自分達の傍に停まるとすぐに怒鳴った。
「そんなに出す奴があるか!」
「飛んで来ました!」
 運転席から潤が飛んで来て言って来た。
「それで状況は」
「人の話は聞け。どれだけ出したんだ」
「ほんの一五〇キロですよ」
「こうした時はスピードは気にしなくていいが限度があるだろ」
 要するにスピードの出し過ぎだというのだ。
「全く御前はいつも」
「ほら、言っただろ」
 助手席から宗男が出て言った。
「幾ら何でもってな」
「スピード出し過ぎですか」
「せめて一〇〇キロにしろ」
「一五〇はアウトですか」
「レースじゃないんだからな」
「じゃあ今度からそうします」
「今度からじゃない、後でまた始末書書け」
 警部はまだ潤に怒る、だが。
 何はともあれという口調でだ、今度は二人に言った。
「それでだが」
「はい、銀行強盗ですよね」
「これからだ」
 ここで署長と二人でだった、作戦を話した。そして。
 その話を聞いてだ、潤は熱い目で応えた。
「はい、行きます」
「俺もですね」
「二人で言ってもらう」
「俺だけじゃないんですね」
「御前一人だと本当に殉職しそうだからな」
 警部は潤に彼の性格を踏まえて言った。
「駄目だ」
「そうですか」
「だから御前も行け」
 こう宗男に言うのだった、彼に顔を向けて。
「いいな」
「わかりました、じゃあこいつはです」
 宗男は笑ってだ、潤の肩に手をやりつつ警部に答えた。
「俺が子守りしますので」
「頼むぞ」
「これから二人で行きます」
「君達が潜入して内部から攪乱している間にだ」
 署長も強張った顔で話す。
「我々も突入する」
「俺達は陽動ですね」
「そして奇襲だ」 
 その二つの役割を担っているというのだ。
「だからやってもらうぞ」
「はい、それじゃあ」
「行かせてもらいます」
 宗男だけでなく潤も応えてだ、そしてだった。
 二人はすぐにだった、銀行の横のビルに移動してだ、そこから。
 スパイの様にだった。一気にだった。
 銀行の屋上まで来た、その屋上に着地してだった。
 潤は潜入の用意をしながらだ、共に用意をしている宗男に言った。
「じゃあやりますか」
「屋上の手すりに留め金を付けてな」
「はい、ロープの」
 見ればもうだ、ロープは腰のベルトにもう一方の留め金を付けている。二人共その腰には拳銃も備えている。 
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