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Three Roses

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第一話 運命の薔薇その十一

「やはり」
「男の方がいい」
「旧教も新教もそうした教えです」
「そもそも同じ神を信仰しているしな」
 旧教、新教といっても実は同じ宗教なのだ。つまり宗派が違うのだ。しかしその宗派の違いが欧州では絶対のことなのだ。
「それもだ」
「同じですね」
「そうだ、男が第一だ」
「その後で女となります」
「女はどうしても落ちる」
「特に君主の座は」
「ですから」
 それで、というのだ。
「まずは太子です」
「何といってもな」
「そしてですね」
「姫達だ」
「そうなりますね」
「何としても王位はだ」
 それこそというのだ。
「我が家で出す」
「そして断絶もですね」
「させてはならない」
 このことも言うのだった、王として。
「間違ってもロートリンゲン家に渡さないことだ」
「あの家にはですね」
「そしてアントワープ家にもだ」
「あの家も一応当家と縁戚にあります」
 大公は王に難しい顔で述べた。
「一応でありますが」
「そこから王位継承の件がいい加減だとな」
「介入してきますね」
「数百年前の戦争では我が国が介入したな」
 その縁戚を口実にアントワープ家が治める国も王位継承権を理由に自分達の国にしようとしたのだ、よくある話である。
「そしてだな」
「こちらがすることは相手もします」
「そういうことだな」
「ですから」
「アントワープ家にも隙を見せられぬ」
「はい、しかしアントワープ家に対する為に」
「ロートリンゲン家とは縁戚を結ぶか」
 話が戻った。
「そうするか」
「是非共」
「その様にしよう、ではだ」
「ロートリンゲン家にですね」
「人をやれ」
 使者、それを送れというのだ。
「すぐにな」
「畏まりました」
「王の務めは国を保つこと」
 王は己の役目をだ、鋭い声で言った。
「だからこそな」
「万全の手を打っておこう」
「それも幾手も」
「その助けをこれからも頼む」
「承知しております」
 二人でこうした話をしたのだった、そして。 
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