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ハイク

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第六章

「それを」
「ハイク?」
「ハイクをか?」
「ああ、見たか?」
 こう問うのだった。
「そっちは」
「いや、そう言われるとな」
「ちょっとな」
「ハイクは見たけれどな」
「白いハイクな」
「よく整った白いハイクだっただろ」
 こう言うのだった。
「洗濯もされていてアイロンもかけた」
「奇麗なか」
「汚れ一つなく皺もない」
「そうしたハイクだった」
「そう言うんだな」
「あの人はいつもそうしたハイクを着ているんだよ」 
 非常に整えられたそれをというのだ。
「しかもすれ違ったら薔薇の凄くいい香りがしてな」
「香水?」
「それか?」
「服に香りもな」
 その二つも備えているというのだ。
「どっちもな、この二つも大事なんだよ」
「美人かどうか」
「その見極めはか」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「そういうところを見てか」
「爺さん達はあの人が美人とわかった」
「そうだったんだな」
「実は」
「そうだよ、顔は見えなくてもな」
 ハイクでだ、それでもというのだ。
「美人かどうかはわかるんだよ」
「そうなんだな」
「顔が見えなくてもか」
「そうしたものでもわかるんだな」
「美人かどうかって」
「そうだ、そこを見極められる様になるのはな」
 まさにというのだ。
「人生経験からなんだよ」
「爺さん達みたいに長く生きてか」
「色々なことを経験してか」
「わかるようになる」
「そうなんだな」
「これはこのことだけじゃなくてな」
 美人の見極めに限らないというのだ。
「この世のあらゆることについてそうなんだよ」
「何でもか」
「そこからわかるんだな」
「人生経験から」
「それから」
「そうなんだよ」
 まさにというのだ。
「御前さん達はまだまだ若い、だからな」
「そうしたことはわからない」
「そういうことか」
「ああ、長生きすることじゃ」
 老人は笑ってだ、二人にこうも言った。
「そうすればわかるぞ」
「そうなんだな、いや何かな」
「今日は凄いこと教えてもらったな」
 ラシッドもシャドルもだ、老人の話を聞き終えて顔を見合わせて話した。 
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