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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第192話

~エルベ離宮~



「あ……っ!貴方達は……!」

「………”特務支援課”。それに”闘神の息子”も。」

「この人達がみんなの話に時々出て来た”特務支援課”………」

ロイド達の登場にエリオットは声をあげ、フィーの呟いた言葉を聞いたゲルドは目を丸くしてロイド達を見つめた。



「いい加減、その呼び名は止めろっつーの。」

「フフ、久しぶり……という訳でもないわね。」

「”Ⅶ組”の皆さんも警備担当として呼ばれたんですか?」

フィーの言葉にランディは疲れた表情で答え、エリィは苦笑しながらアリサ達を見つめ、ティオは目を丸くして尋ねた。

「ええ、そんな所よ。そういうアンタたちもかしら?」

「はい。そう言えばエイドスさんが今回の会談に公式な立場で参加しましたけど、やっぱり皆さんがあの人を説得したからですか?」

サラ教官に尋ねられたロイドは答えた後ある事を思い出して尋ねた。



「はい。ユミルに女神様がいるという情報を教えてくれた皆様のおかげです。」

「あのふざけた女神の居場所の情報を提供してくれた事には感謝している。」

「……まあ、この会談に出席してもらう際の”試練”を受けさせられたがな。」

「しかも、それ以外にも色々と条件を呑む羽目になったしな……」

エリスはロイド達に会釈をし、ユーシスは静かな表情で答え、ガイウスは苦笑しながら答え、マキアスは疲れた表情で呟いた。

「”試練”ってまさか……」

「ヴァイスさん達が皆さんに受けさせたような”試練”ですか?」

ガイウスの答えを聞いてある事を察したエリィは驚き、ティオは目を丸くして尋ねた。



「そうだよ~。しかも君達の元”仲間”とも戦って苦労して勝ったんだからね~。」

「俺達の元”仲間”ってまさか……!」

「ワジとも戦ったのかよ!?」

ミリアムの答えを聞いたロイドは驚き、ランディは信じられない表情で尋ねた。

「他にはエイドス殿の父親であるアドル殿と先祖にあたるナユタ……どちらも相当な使い手だった。」

「え……あの二人とも戦ったのですか……!?」

「す、凄いわね……二人ともかなりの使い手なのに。」

ラウラの答えを聞いたティオとエリィはそれぞれ驚きの表情でアリサ達を見つめていた。



「それにしても焦りのあまり、あんな行動を取ってあのハチャメチャ女神達を怒らせたリィンには笑ったわよね~♪」

「サ、サラ教官……」

「へ……」

「エイドス様達を怒らせるって……一体どういう行動をしたのかしら?」

からかいの表情をしているサラ教官の言葉を聞いたエマが冷や汗をかいている中、ロイドは呆け、エリィは不思議そうな表情で尋ねた。



「………エイドス達が露店風呂に入っている所をあの男が突撃したのよ。」

「ええっ!?」

「何ィッ!?」

「エ、エイドス様達が入浴している所に突撃って……」

「………とんでもないです。」

呆れた表情をしているセリーヌの答えを聞いたロイドは驚き、ランディは厳しい表情で声をあげ、エリィは表情を引き攣らせ、ティオはジト目で呟いた。



「まあその後に”女神の裁き”とやらを受けたようだがな。」

「しかも女神様達に説教までされていたよね、リィン……」

「まあ、あれは仕方ないだろう。」

ユーシスは静かな笑みを浮かべ、苦笑するエリオットの言葉にマキアスは呆れた表情で頷き

「むしろ兄様には足りないくらいでしたね。」

「そうよね……!私達があれだけ説教したのに全然懲りていないし……!」

「ま、まあまあ……話によるとお兄様は物理的な裁きまでも受けたのですから、エイドス様達の入浴姿を見てしまったという罪に対する償いはしたと思いますわよ?」

「そ、そうですよ。あれに懲りてリィンさんももう2度としないと思いますよ?…………恐らくですが。」

顔に青筋を立てているエリスとアリサにセレーネとエマは苦笑しながら諌めていた。



「ぶ、”物理的な裁き”って……」

「ま、まあ普通に考えて女性が入浴している所を突撃したのだから、そのくらいの罰はあっても仕方ないわよね。」

「へっ、ざまあみろ!リア充野郎が!ようやく女神からの天罰を受けたようだな!」

「そういう意味での天罰ではないのですが。」

一方エイドス達がリィンにやった事を察したロイドは表情を引き攣らせ、エリィは大量の冷や汗をかいて苦笑し、得意げに声をあげるランディにティオは呆れた表情で指摘した。



「あ。そう言えばロイドさんとエリィさんに一つ言い忘れていた事があったわ。」

「へ。」

「わ、私とロイドに?」

アリサの言葉を聞いたロイドは呆け、エリィは戸惑いの表情をした。

「婚約おめでとう。エリィさんがつけているその指輪が婚約指輪なのよね?」

「なあああああああっ!?」

「ど、どどどどうして、その事を……!?」

アリサの言葉を聞いた瞬間ロイドと共に顔を真っ赤にしたエリィは混乱しながらも咄嗟に指輪を付けている手を隠して尋ねた。

「アハハ……えっと、ロイドさん達のかつての仲間の方―――ワジさんからお二人の関係を教えてもらったんです。」

「ちなみにあんた達が”一線”を超えた関係である事も教えてくれたわよ~?」

「「ワジ(君)ッ!!」」

苦笑するセレーネと口元をニヤニヤさせるサラ教官の言葉を聞いた瞬間この場にはいないワジを思い浮かべたロイドとエリィは声を上げ、その様子を見ていたその場にいる多くの者達は冷や汗をかき

「ったく、相変わらず趣味が悪いな……」

「ワジさんがリィンさん達に二人の婚約等を面白おかしく教えている様子が目に浮かびますね。」

ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ティオはジト目で呟いた。



「クスクス………えっと、”キーア”っていう娘はいないの?その娘にお礼を言おうと思っていたのだけど……」

「え……キーアに”お礼”、ですか?」

「というか貴女は前の”特別模擬戦”の時には見かけませんでしたが……」

ゲルドの質問を聞いたロイドは目を丸くし、見覚えのないゲルドに気付いたティオは不思議そうな表情をした。そしてアリサ達はゲルドの事情を説明した。



「ええっ!?じゃ、じゃあケルディック焼き討ちの未来を予知してプリネさん達に教えたのは貴女の事だったの!?」

「未来を見る力―――”予知能力”ってどんだけチートなんだよ……って、そうだ!ゲルドちゃんだったか?その予知能力とやらで俺の未来の奥さんもわかるか!?」

事情を聞き終えたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟いた後ある事に気付いて真剣な表情で尋ねた。

「おい、ランディ……」

「図々し過ぎです。」

ランディの行動にロイドとティオはそれぞれ呆れた。



「……………………!えっと、ランディさん以外の特務支援課の人達は少しの間だけ私の近くに来てもらえるかしら?」

ランディをジッと見つめていたゲルドはロイド達に声を掛け

「?はい。」

「えっと、ランディさんが結婚する相手の名前は………………」

ゲルドは自分に近づいてきたロイドとエリィ、ティオに小声である答えを口にした。



「ええっ!?あ、あの人が!?」

「ですがあの人なら納得ですね。」

「フフ、そうね。」

ゲルドの答えを聞いたロイドは驚き、ティオとエリィは微笑ましそうにランディを見つめ

「えっと、ゲルド……もしかして……」

「ランディさんの未来の伴侶をロイドさん達にだけ教えたのか?」

ロイド達の様子を見て何かを察したエリオットは冷や汗をかき、ガイウスは苦笑しながら尋ねた。



「うん。本人には言わないようにってちゃんと念押しはしたわ。」

「何っ!?おいロイド、お嬢、ティオすけ!俺の奥さんは一体誰だ!?ヒントでもいいから教えてくれ!」

ゲルドの答えを聞いて驚いたランディは真剣な表情でロイド達に尋ねたが

「え、えっと、それは……」

「フフ、ヒントを言ったら答えになってしまうから、言う訳にはいかないわ。」

「そうですね。ランディさんがその人と結婚した時にネタバレしてあげますよ。」

「畜生~!そんな言われ方をしたら余計気になるじゃねえか~!」

ロイド達はそれぞれ答えを誤魔化し、ロイド達の答えにランディは悔しそうな表情で声をあげた。


「えっと……話を戻すけどゲルドさん。キーアにお礼を言いたいような事を言っていたけど……」

「うん。キーアって娘に伝えておいて。――――貴女の力で私をこの世界に呼び寄せてⅦ組のみんなと出会わせてくれてありがとうって。」

「ゲルド……」

「フフ、ならば私もですわ。私もキーアさんのお蔭でリィンお兄様やツーヤお姉様、そして皆さんと出会える事ができたのですから。マキアスさんもフィオーラ様の件でお礼を言った方がいいと思いますわよ。」

ロイドの質問に対して優しげな微笑みを浮かべて答えたゲルドにアリサは驚き、セレーネもゲルドに続くように微笑みながら答えた後マキアスに視線を向け

「そうか……”本来の歴史”――――異世界と繋がっていなければ姉さんは………その、姉さんの事も救ってくれた事に僕は今でも感謝している事をそのキーアって娘に伝えておいてくれ。」

改変されていない時代ではフィオーラは生きていなかった事を悟ったマキアスは複雑そうな表情をした後すぐに気を取り直して真剣な表情でロイド達を見つめて言った。



「キーアちゃんの”力”のお蔭って……」

「ツーヤさんの妹であるセレーネさんは察していましたけど、ゲルドさんも別の世界の出身の方なんですか?」

二人の答えを聞いたエリィは驚き、ある事を察したティオは驚きの表情で尋ねた。

「うん。」

「……そう言えば以前から聞こうと思っていたのですが……ゲルドさんはこの世界に来てしまった事に後悔等はないのでしょうか?身内の方が心配していると思いますし……」

「あ……」

「言われてみればそうだよな……」

「確か……以前の演奏会の際に祖父に育ててもらったような事を口にしていたが………」

エマの質問を聞いたエリオットは呆け、マキアスは複雑そうな表情で考え込み、ケルディックの演奏会が終わった後のゲルドの話を思い出したラウラは真剣な表情でゲルドを見つめた。



「……………私を育ててくれたおじいちゃんは私が旅立つ少し前に亡くなったわ。」

「……すまぬ。」

ゲルドの答えを聞いたラウラは重々しい様子を纏って頭を下げ

「ううん、気にしないで。それに私がいた世界では私がいなくなった事を気にする人は絶対にいないわ。」

「”絶対にいない”って……例え身内じゃなくても友達とかが心配するわよ?」

「それに何故そう言い切れるのだ?」

ゲルドの口から出た信じられない答えにアリサは悲痛そうな表情をし、ユーシスは複雑そうな表情で尋ねた。



「だって私、自分がいた世界では”既に死んでいる”し、亡骸もちゃんと葬られてあるもの。」

「何ですって!?」

「す、既に死んでいるって……ま、ままままま、まさかお化け~!?」

ゲルドの口から出た予想外の答えにその場にいる全員と共に顔色を変えたサラ教官は声をあげ、ミリアムは混乱し

「落ち着きなさい。その娘は間違いなく生きた存在よ。」

「でもそうだとしたらゲルド、わたし達の世界で生き返った事になるよね?」

混乱しているミリアムにセリーヌは静かな表情で指摘し、フィーは複雑そうな表情でゲルドを見つめながら推測を口にした。



「……あ。まさか……!」

「キー坊の”零の至宝”の力か!」

「因果の操作ですね……」

「……実際それによってこの世に蘇る事ができた方達がいるものね……」

フィーの疑問を聞いて何かを察したロイドとランディは声をあげ、ティオとエリィは複雑そうな表情をしていた。



「うん……多分私が生き返ってこの世界に来る事ができたのはそのキーアって娘のおかげ。だから――――ありがとう。私は元いた世界では友達もいなく、一人ぼっちで私が死ぬその時まで旅をしていたけど……今はたくさんの友達がいるわ。キーアって娘に会ったら私が貴女に今でも貴女のお蔭で生き返る事ができた上、みんなと出会えた事に感謝しているって伝えておいて。」

「ゲルドさん………」

「………わかった。クロスベルに戻ったら本人達に伝えておくよ。それでは俺達も警備に入りますので、一端失礼します。」

ゲルドの答えにエリィは辛そうな表情をし、ロイドは静かな表情で会釈をした後エリィ達と共にその場から去り、離宮内に入って行った。



「その……ゲルドさん。ゲルドさんは一人で旅をしていたとの事ですが……本当に友人の方は一人もいなかったのですか?」

ロイド達が去るとエリスは辛そうな表情で尋ねた。

「うん。―――私ね、旅の途中でよった街や村に様々な”予言”を残していったんだけど……みんなはそれを怖がって、誰も私に近づこうとしなかったわ。中には石を投げて街から追い出そうとする人達もいたわ。」

「そんな……!ゲルドの事だから、その街や村にケルディックの時のような事が起こる所を予知能力で見えたからその人達に警告したんだよね!?それなのにどうして……!」

寂しげな笑みを浮かべるゲルドの答えを聞いたエリオットは悲痛そうな表情で尋ねた。



「…………人々のその反応はある意味当然よ。予知能力の事を知らなければ、ゲルドは自分達に対して不吉な事を言い残して災いを呼び寄せようとする疫病神にしか見えないのだから。」

「そうね…………遥か昔では自国の未来の為にその能力を持つ者達を”予言士”として重用していたそうだけど……予知能力の事を何も知らなければそんな反応になっても仕方ないわね……」

複雑そうな表情で語ったセリーヌとエマの話を聞いたその場にいる全員は暗い表情で黙り込み

「……ゲルド。辛い事を聞いてすまないと思うが、ゲルドが死んだ原因はなんだったんだ?オレ達と大して変わらない年齢で死ぬなんて、余りにも若すぎる死だぞ……」

「まさか疫病とかかしら?」

ある事が気になったガイウスとサラ教官は辛そうな表情でゲルドに尋ねた。



「ううん、私の死は病死じゃないわ。」

「びょ、病死ではないという事は後に残っている可能性は……!」

「―――自殺か、何者かに殺されたとしか思えないよね~。」

「ミリアム!」

「貴様……こんな時くらいは奥歯に衣着せるような言い方はできんのか?」

ゲルドの答えを聞いてある事を察したセレーネは信じられない表情をし、ミリアムの推測を聞いたアリサは声をあげ、ユーシスは厳しい表情でミリアムに指摘した。



「…………ゲルド、実際の所はどうなの?」

「………………私は希望を紡ぐ為に私が見た”私の最期”を受け入れた……ただそれだけよ。それと私はどんな絶望があっても、自分から命を絶つような事は絶対にしないわ。―――先に行っているわね。」

フィーに尋ねられたゲルドは静かな表情で答えた後エルベ離宮へと向かい

「ゲルドのあの言い方だとゲルドの”死因”って……」

「”何者かに殺された”しかありえないよな……」

ゲルドが去った後エリオットとマキアスはそれぞれ暗い表情をした。



「一体誰よ、あんなに優しいゲルドを殺すなんて……!」

「その方だけは絶対に許せません……!」

「……人から恨みを買うような性格とはとても思えないゲルドを何故殺したんだ……?」

アリサとエリスは怒りの表情で身体を震わせ、ガイウスは静かな表情で考え込み

「……あたし達の世界ともプリネ達の世界とも違う世界の話だから、少なくてもゲルドの命を狙っている奴はいない事が唯一の救いね。さ、切り替えて離宮に入るわよ!」

サラ教官は複雑そうな表情で呟いた後アリサ達を見回して号令をかけ、アリサ達と共にゲルドの後を追ってエルベ離宮の中へと入って行った。



その後ロビーで待っていたゲルドと合流したアリサ達は離宮内を一通り見て回った後自分達が待機する部屋に向かい、部屋に備え付けてある画面端末で会議の様子を見守り始めた。 
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