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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~才媛の交渉~

同日、12:50―――――



~海都オルディス近郊~



「ヴァイス、後5分でオルディスに到着します。予想していた通り、オルディスの前にも領邦軍が展開しているとの事です。」

「そうか。最後の最後まで諦めの悪い連中だったな、貴族連合は。」

「それも下らないプライドの為でしょうね。」

連合軍が進軍している最中のアルの報告を聞いたヴァイスとリセルはそれぞれ呆れた表情をしていた。



「?――はい、ノウゲートです。…………え?……わかりました、伝えておきます。」

その時通信機からの通信に気付いたアルは通信を開始したが、通信の最中で戸惑いの表情をしていた。

「アルちゃん?何かあったのですか?」

「はい、何でもオルディスの防衛の為に展開している領邦軍から一人の貴族と思われる女性が護衛もつけずに現れたとの事でして。」

「え…………」

「何?貴族の女性だと?」

アルの報告を聞いたリセルは呆け、ヴァイスは眉を顰めた。



「ええ。先行部隊を率いていたミレイユがその女性に接触して事情を聞いた際、その女性はカイエン公爵家の長女だとの事でして。その者がクロスベル皇帝の一人であるヴァイス。貴方に交渉をしたいと申し出たとの事です。」

「ほう?確かカイエン公爵家の長女と言えば、”才媛”として有名で、民達にも慕われている女性だったな……」

「一体何が狙いなのでしょう?」

アルの説明を聞いたヴァイスは興味ありげな表情をし、リセルはまだ見ぬ女性の真意を考え込んでいた。



「それでどうしますか……と聞かなくても、ヴァイスの場合は答えは決まっていますね。」

ヴァイスに判断を促そうとしたアルだったが、ヴァイスが好色家であるので女性自らの申し出を断る訳がないとわかっていた為、すぐに苦笑し始め

「フッ、わかっているじゃないか。この俺が名門貴族の淑女の誘いを断る訳がないだろう?」

「ハア……ヴァイス様、せめてメンフィル軍を率いているリフィア殿下に話を通してから接触してくださいよ。本来カイエン公爵家はメンフィルによって裁かれる予定である事もわかっていますよね?」

ヴァイスが静かな笑みを浮かべている中、疲れた表情で溜息を吐いたリセルはヴァイスを見つめて言い

「ああ。さて……民達にも慕われている才女は絶望的な状況でありながら、一体何の交渉をするつもりだ?」

リセルの言葉に頷いたヴァイスはまだ見ぬ女性との交渉に対して、興味ありげな表情をしていた。その後連合軍の本隊がオルディス近郊に到着するとヴァイスとリフィアがそれぞれの護衛であるシグルーンとアルと共に護衛もつけずに連合軍を静かな表情で見つめている女性――――ユーディットに近づいた。



「俺に交渉をしたいと言っていた者はお前か?」

「!……はい。貴方がクロスベル皇帝の一人―――ヴァイスハイト・ツェリンダー陛下でしょうか?」

「そうだ。」

「貴方が…………自己紹介が遅れ、申し訳ありません。私の名はユーディット・カイエン。カイエン公爵家の長女です。…………リフィア皇女殿下。今更謝罪をしたところで許してもらえないでしょうが、父―――カイエン公爵の愚行を”カイエン公爵家”を代表して謝罪させて下さい。…………父の愚行を止められず、貴国まで巻き込んでしまい、誠に申し訳ございませんでした…………!」

自己紹介をしたユーディットはリフィアに視線を向けた後頭を深く下げて謝罪した。



「…………諜報部隊の報告ではお主は内戦に反対し、内戦が起こった後は妹と共に私財をなげうって内戦で苦しむ民達に支援物資を送っていたと聞いている。お主とお主の妹キュアは情状酌量の余地がある上”戦争回避条約”にも当てはまらない為、元々お主とキュア嬢の命を奪うつもりはなかったが……我が盟友たるヴァイスハイト皇帝に何の交渉をするつもりなのじゃ?」

ユーディットに謝罪されて少しの間目を伏せて黙り込んでいたリフィアはやがて目を見開いて静かな表情で問いかけた。

「私達”カイエン公爵家”が貴族として存続できるように……そして父と共にメンフィルに裁かれる立場である母の助命の為の交渉をしたく、ヴァイスハイト陛下に申し出ました。」

「……なるほど。メンフィルと同盟を結んでいる皇帝の要請なら、さすがのメンフィルも考え直すと判断したのですか。」

「母君の助命の為と仰いましたが、父君であるカイエン公自身の助命はしないのですか?」

ユーディットの説明を聞いたアルは納得し、ある事が気になったシグルーンは真剣な表情で尋ねた。



「……はい。エレボニア皇家である”アルノール家”に対して反旗を翻し、更には内戦を引き起こした元凶の一人である父は内戦によって苦しみ続けたエレボニアの民達や内戦に巻き込んだメンフィル帝国に対する”償い”をする必要がありますので、父の助命をするつもりは一切ありません。」

「……俺に交渉したいという理由は理解した。では聞くが俺がお前の交渉に応じた所で、クロスベルに何のメリットがある。」

話を戻したヴァイスは真剣な表情でユーディットに問いかけた。

「……カイエン公爵家が全ての元凶でありながら私と私の妹キュアは畏れ多くもラマールの民達から慕われています。私達自身、新たな祖国となるクロスベル帝国に忠誠を誓い、クロスベル帝国やクロスベル皇家の方々のお役に立つ為に働く所存であります。」

「―――なるほど。ラマールの民達に慕われているお前達自身が俺達に忠誠を誓えば、ラマールの民達もそうだがラマール州の統括領主であったカイエン公爵家がクロスベル帝国に忠誠を誓えばラマールの貴族達もある程度納得し、俺達クロスベルに対する反乱の可能性を低くできる上、領地経営がやりやすくなるな。」

「それだけではありません。本来なら爵位剥奪どころか一家郎党処刑されてもおかしくない立場である私達”カイエン公爵家”を救った所か配下として新たな国造りに携わらせた事で、国内の人々は当然として、諸外国に対してもクロスベルが簒奪者の国ではなく慈悲深く、また懐が広い国であると印象付ける事もできます。」

「言われてみればそうですね。」

「フッ、”才媛”という噂は本当だったようだな。まさか”そこ”にも気付いていたとはな。」

ユーディットの説明にアルは納得し、ヴァイスは感心した様子でユーディットを見つめていた。



「――それらに加えて”ヴァイスハイト陛下個人”に対するメリットもあります。」

「ほう?」

「なぬ?それは一体何じゃ?」

ユーディットの言葉が気になったヴァイスは興味ありげな表情をし、リフィアは眉を顰めて尋ねた。

「それは…………―――カイエン公爵家のクロスベル皇家への忠誠の証として私自身がヴァイスハイト陛下の側室として嫁ぐからです。」

「フッ、そう来たか。」

「ヴァイスは好色家として有名ですからねぇ。」

「何せ自分が好色家である事を公言していたくらいじゃからな……」

「……ですが実際カイエン公爵家の長女である彼女がヴァイスハイト陛下に嫁げば忠誠の証となりますわね。」

ユーディットの決意を知ったヴァイスは静かな笑みを浮かべ、ヴァイスの性格を分析してヴァイスに対する有効な交渉して来た事にアルは苦笑し、リフィアは呆れた表情で呟き、シグルーンは納得した様子で呟いた。



「陛下の護衛の方が仰ったように皇帝の一人たるヴァイスハイト陛下は多くの跡継ぎを残す為に多くの女性と関係を持つ事を好んでおられると話に聞いております。自画自賛をするつもりではございませんが、多くの貴族達から求婚され、将来を期待されていたルーファス卿の正妻の候補の中でも筆頭であった私の身体でしたら、陛下もご満足できるかと愚考いたします。」

「何?ルーファス・アルバレアの正妻候補の筆頭に上がっていただと?」

「……そう言えば諜報部隊の報告でそんな話があったな。確かカイエン公爵自身がルーファス・アルバレアに持ちかけていたそうじゃ。」

「”総参謀”であったルーファス・アルバレアはカイエン公爵の右腕といってもおかしくない立場でしたからね。しかも”四大名門”の跡継ぎですから、自慢の娘の嫁ぎ相手として相応しいと思ったのではないかと。」

ユーディットの話を聞いたヴァイスは目を丸くし、ある事を思い出したリフィアは静かな表情で呟き、シグルーンは推測を口にした。



「確かに言われてみればそうだな…………――――だが、何も忠誠の証の為だけに俺に嫁ぐ訳ではないだろう?大方、皇帝である俺に嫁ぎ、クロスベル皇家との縁を作る事で地に墜ちたカイエン公爵家の立場を建て直し、あわよくば俺との間に産まれて来た子をクロスベル皇帝の跡継ぎにすると言った所か?」

「そのような畏れ多い事は考えておりません。私は野望に満ちていた父や父の野望に賛同した兄とは違います。かつて”四大名門”の一角であり、古き伝統を誇っていた”カイエン公爵家”が貴族として存続できればそれだけで満足です。」

不敵な笑みを浮かべて問いかけて来たヴァイスの推測に対し、ユーディットは静かな表情で答え

「私の身体はヴァイスハイト陛下の思うがままにして頂いて構いません。ですがその代わり妹には……キュアには手を出さないで下さい……!そしてどうか母の命を助けてください……!お願いします……!」

身体を震わせつつも決意の表情でヴァイスを見つめ、頭を深く下げた。


「どうしますか、ヴァイス?」

「そうだな………………リフィア殿下、カイエン公爵夫人の助命やカイエン公爵家の長女が俺に嫁ぐ事でカイエン公爵家が貴族として存続できる事についてメンフィルはどう思う?」

アルに問いかけられたヴァイスは考え込んだ後リフィアに視線を向けた。

「特に異論はない。カイエン公自身の助命ならばさすがに反対するが公爵夫人ならば別に構わんし、内戦に反対し、私財をなげうってまで民達に支援物資を送っていた姉妹に免じてカイエン公爵家が貴族として存続しても構わんと思っている上、そもそもラマール州はクロスベル帝国領。クロスベルの貴族達について口を挟む権利は余達メンフィルにはない。」

「そうか。…………―――ユーディット嬢、一つだけ質問がある。」

「何でしょうか。」

「”尊い血”を誇りにしている名門貴族の令嬢であるお前自身が成り上がりの皇にして侵略者でもある俺に身を捧げてまで残そうとするカイエン公爵家の務め―――”貴族の務め”は何だと思っている?」

「…………民の生活が平穏である事を保ち、民を守り続ける事……―――それが私達”貴族”が果たすべき”義務”――――”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”だと思っています。」

「ほう?内戦を引き起こした愚かな父親とは大違いじゃの。」

「”鳶が鷹を生む”とはこの事でしょうね。」

ヴァイスの問いかけに対するユーディットの答えを聞いたリフィアとシグルーンは感心した様子でユーディットを見つめていた。



「…………ユーディット。真の貴族の気概を見せてくれた礼に俺が大切にしている言葉を教えてやる。」

「え…………」

「『皇族である自覚と誇りを持ち、誰よりも皇族らしくあれ』―――それが俺が今でも大切にしている言葉だ。」

「『皇族である自覚と誇りを持ち、誰よりも皇族らしくあれ』…………その言葉には一体どういう意味が込められているのでしょうか?」

ヴァイスの言葉を聞いたユーディットは不思議そうな表情で尋ねた。

「”とある男”の話だ。その男はある国の”庶子”でな。その男が幼い頃、国の謀によって謀殺された大切な母に常に言い聞かされたそうだ。『半分であろうと貴方には尊い血が流れており、皇族である事に変わりはないのだと。皇族である自覚と誇りを持ち、誰よりも皇族らしくあれ』とな。」

「とても”庶子”の母君とは思えない程、皇族としての自覚を持った方ですね……」

「俺もそう思う。そしてその男はその言葉を証明する為に常に”上”を目指し、皇帝へと上り詰めた。それは内戦を引き起こした”元凶”を当主にしていたお前達”カイエン公爵家”にも該当すると思うぞ?カイエン公爵は確かに愚か者だが、お前達にはカイエン公爵同様先祖代々の尊い血が流れているだろう?」

「あ………………」

ヴァイスの言葉を聞いたユーディットは呆け

「―――今後産まれて来る俺とお前の子供にもお前自身の”貴族としての在り方”や先程の俺の言葉を教えておけ。」

「え……それでは……!」

ヴァイスが自分を娶る事に気付いたユーディットは自分が持ち掛けた交渉にヴァイスが応じてくれた事を察して明るい表情をした。



「ああ。お前の希望は全て叶えてやる。」

「あ…………―――寛大なお心遣い、ありがとうございます。陛下の御慈悲に心から感謝致します。」

ヴァイスの答えを聞いて明るい表情で呆けた声を出した後すぐに表情を戻して会釈をした。

「―――ただし、本当に侵略者である俺に嫁ぎ、忠誠を誓う覚悟があるのか、後で確かめさせてもらう。」

「……一体何をすればよろしいのでしょうか?」

「今夜お前の貞操を俺が奪う。その時に備えて身を清めておけ。」

「!!…………―――かしこまりました。」

そしてヴァイスが今夜自分を犯して自分の貞操を奪う事を理解したユーディットは目を見開いた後身体を震わせながら会釈をし

「早速ですか、ヴァイス……」

「フフッ、言葉通り”英雄色を好む”、ですわね。」

「全く、好色家な所も生まれ変わっても全然変わっていないな。」

アルとシグルーンは苦笑し、リフィアは呆れた表情で呟いた。



「”生まれ変わって”…………あの、まさか陛下も前世の記憶があるのでしょうか?」

「ん?ああ、異世界ディル・リフィーナの”アヴァタール地方”に今も存在している”メルキア帝国”。かつてその皇だった者だ。」

ユーディットの口から出た予想外の質問に目を丸くしたヴァイスは静かな表情で答えた。

「”メルキア帝国”……!かのレウィニアと友好を結び、”帝国制定”する程まで国力を増大させた魔導技術最先端の大国の皇帝だった方なのですか………」

「メルキアを知っているという事はまさかお前も…………」

「……はい。私と私の妹の前世はこのゼムリア大陸で言う異世界――――ディル・リフィーナにかつて存在し、今は既に存在していない国の姫だったのです。」

「ほう?」

「今は存在していない国、ですか。ここ数十年で国家が滅ぶような出来事は聞いた事はありませんが、一体何という名の国ですか?」

ユーディットの答えにヴァイスが興味ありげな表情をしている中、ユーディットの前世が気になったシグルーンは尋ねた。



「……”リガナール半島”にかつて存在し、ある魔人によって滅ばされた帝国――――”ドルアーギア帝国”です。」

「今は生物も住めない大地となっているかの半島に存在していたという事は相当昔の国家ですね……」

「!!”リガナール半島”じゃと!?まさかその”魔人”というのは……!」

ユーディットの説明を聞いたアルが考え込んでいる中、ユーディットの前世の国を滅ぼした存在に心当たりがあるリフィアは血相を変えた。

「”破戒の魔人”イグナートか。」

「…………はい。国が滅ぶ少し前に私と妹はかの魔人の囚われの身となり、そして………………」

「―――それ以上は言わなくてよい。お主達もシルフィエッタと同じあの”闇夜の眷属”の面汚しによって悲惨な人生を送ったのじゃな……」

かつての出来事を思い出そうとし、辛そうな表情で唇を噛みしめて青褪めさせて身体を震わせているユーディットを制止したリフィアは憐みの目でユーディットを見つめた。



「え……シルフィエッタ姫をご存知なのですか?」

自分が知る遥か昔の人物をリフィアが知っている事に驚いたユーディットは信じられない表情でリフィアを見つめた。

「うむ。というか今ではリウイの側室として幸せに過ごしておるぞ。」

「ええっ!?一体何があってそのような事に……」

そしてリフィア達はシルフィエッタを含めた”影の国”の件等を説明した。



「…………そうだったのですか。かの魔人が何者かによって討伐された事は私の魂が解放された際にわかっていましたが、まさかかの魔人を討伐したのがヴァイスハイト陛下やメンフィルの”英雄王”達に加えて、かの”神殺し”だった事にも驚きましたが、まさか父親であるあの魔人に心酔していたセオビットが自らの手でかの魔人を討ち、シルフィエッタ姫と親子の絆を結び、更にシルフィエッタ姫が現代でも生きているなんて………」

「確か”破戒の魔人”が討伐されたのは2年前くらいですよね?それだとしたら生まれ変わった彼女がここまで成長した年と”破戒の魔人”が討伐された年に矛盾が生じてしまいますが……」

「………もしかしたらプリネの件のような”零の至宝”の”奇蹟”によるものかもしれんな。」

「確かにそれならありえそうですわね。」

アルの疑問に答えたリフィアの推測にシグルーンは静かな表情で頷いた。

「―――ま、そんな細かい事を気にする必要はないだろう。ユーディット嬢―――いや、ユーディット姫。先程約束したように今夜俺にお前の貞操を捧げてもらうが、俺は女性全員を等しく愛し、幸せにする主義だ。いつか必ずお前に俺を惚れさせ、家の為に俺に嫁いだ事が幸せである事を思い知らせてやろう。何せ俺の好きな物の一つは女性の笑顔であり、嫌いなものは女性の涙だからな!」

「まあ…………フフ、不思議な方ですね。陛下の御言葉がいつか真実になる事……期待させて頂きますわ。」

笑顔で自分を見つめるヴァイスの言葉に目を丸くしたユーディットは苦笑した後ヴァイスに会釈をした。そして数時間後、身を清めたユーディットは自室で静かにヴァイスを待っていた。



同日、23:30――――



~海都オルディス・カイエン公爵城館・ユーディットの私室~



「ユーディ……本当に大丈夫なの……?」

真夜中に差し掛かろうとしていたその頃、姉の状況を知っていたキュアは心配そうな表情でユーディットを見つめ

「ええ……相手があの魔人を討伐した”英雄”の一人とわかったからなのか、不思議と嫌な気持ちが湧いてこないのよ。それに私を犯すと宣言しておきながら、私を幸せにするとも宣言したあの方に少しだけ惹かれているからかもしれないわね……さあ、もう夜も遅いし、貴女はもう寝なさい。」

「うん……おやすみ、ユーディ。」

ユーディットに促された後部屋を退出した。そして少しすると扉がノックされた。



「起きているか、ユーディット。」

「―――はい。お待ちしておりました。どうぞお入りください。」

「―――失礼する。」

部屋に入室したヴァイスは寝間着姿でベッドに座っているユーディットに近づいた。



「ヴァイスハイト陛下。私の嘆願に応じ、本来でしたらメンフィルに裁かれる立場であったカイエン公爵家を救って頂いた事、改めてお礼を言わせて下さい。――――ありがとうございます。」

「気にするな。お前の交渉に応じた方が俺にとっても、クロスベルにとっても”益”になると判断したまでの事。さて、早速約束通りお前の”全て”をもらうが………その前に俺の事は”ヴァイス”と呼ぶように。」

「え…………何故今日会ったばかりの私に陛下を愛称で呼ぶ事をお許しに?」

「いずれお前は俺の側室の一人になるのだからな。側室達には皆、プライベートの際はそのように呼ぶ事を許している。それにそうした方が、互いに親しみを持てるしな。」

「フフ、なるほど。―――わかりました。ではヴァイス様、私の事は”ユーディ”とお呼びください。」

「わかった。―――ユーディ、お前の全てを今捧げてもらうぞ。」

「はい…………」

その後ヴァイスはユーディットを抱いた。前世の経験から抱かれる事に忌避感を持っていたユーディットだったが、不思議とヴァイスに抱かれる事に忌避感や抵抗する気持ちも湧かず、また自ら奉仕をしてヴァイスを喜ばせた後ヴァイスに自身の貞操を捧げ、そして全てが終わった後ヴァイスの胸の中で幸せそうに眠っていた。



こうして……ラマール州も連合軍に制圧され、カイエン公爵家はユーディットのヴァイスに対する交渉によって存続する事ができた。



なお、後にユーディットはヴァイスの宣言通り、ヴァイスの男性としての魅力や”覇王”としての”器”に惹かれた事によって女性としてヴァイスに恋心を持つようになり……更にヴァイスに嫁ぐ予定になっている姉の代わりにカイエン公爵家の当主となったキュアも様々な経緯によって姉同様ヴァイスに恋心を持ち、後にヴァイスに抱かれ姉妹揃ってヴァイスとヴァイスに嫁ぐ多くの女性達と結婚する事になったという………… 
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