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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第163話

~遊撃士協会・クロスベル支部~



「す、すみません……恥ずかしい所を見せて話の腰を折ってしまって……」

「フフ、気にしなくていいわよ。それにしても、本来ならしばらく立ち直れなかった事実を知った彼女をすぐに立ち直らせるなんて、さすがは”守護の剣聖”の兄かしら?」

リィンから離れた後頬を赤らめて謝罪するエリスを微笑ましく見守っていたミシェルはリィンに視線を向けた。



「ハハ…………エリゼと言えば……エリゼもその事実を知っているのですか?」

「支援課の坊や達が持ち帰って来た情報はクロスベル帝国、メンフィル帝国にも知らされて皇族か、皇族に信頼されている家臣しから知れないトップシークレット扱いの情報にされているそうだから、”聖魔皇女”が信頼する家臣の一人である”守護の剣聖”も当然知っていると思うわよ?」

「姉様…………」

リィンの問いかけに答えたミシェルの推測を聞いたエリスは姉が自分を妹として扱ってくれるのか不安に思っていたが

「大丈夫よ、エリス。きっとエリゼもリィンと同じで、貴女の事を今後も妹として大切に接してくれると思うわ。だって、貴女達程の仲のいい双子なんて私は見た事ないもの。」

「アリサさん……はい………!」

アリサに元気付けられ、嬉しそうな表情で頷いた。



「まあ、双子揃って同じ男に嫁ぐ程仲のいい姉妹等普通ならありえんと思うがな。」

「確かにそうよね~?」

「ユ、ユーシス!?それにサラ教官まで!?今はその話は関係ないでしょう!?」

からかいの表情をしているユーシスとサラ教官に見つめられたリィンは慌てた。



「ハハ……それにしても”零の至宝”だったか?あの幼い外見でそんなとんでもない事をしていたとはな……」

「―――キーアの事を誤解しないで。彼女は貴方達の為にも”本来の歴史”と比べればマシな因果へと操作したのよ。彼女の歴史改変がなければ、貴方達の大切な人――――クロウは死んでいたし、ケルディックの焼討ちによってオットーという人物も亡くしていたのよ?」

真剣な表情で考え込んだトヴァルの様子を見たサティアは真剣な表情で指摘し

「え……」

「オ、”オットー”ってまさか……!?」

「な――――元締めが本来ならあの焼討ち事件で死んでいたって本当なの!?」

サティアの指摘を聞いてリィン達と共に驚いたサラ教官は血相を変えて尋ねた。



「ええ。アルバレア公爵の指示による領邦軍と北の猟兵達の焼討ちに巻き込まれて命を落としていたそうよ。」

「領邦軍まで一緒になってケルディックを焼討ちしたのですか!?」

「そ、そんな……民を守る立場である領邦軍が自分達の領土を焼討ちするなんて……」

「”本来の歴史”では父は領主として……人として許されざる罪を更に犯していたのか……」

「ユーシス…………」

サティアの説明を聞いたアリサは驚き、エリスは信じられない表情をし、辛そうな表情で肩を落としているユーシスをリィンは心配そうな表情で見つめていた。



「因果の操作によって多くの人々の”運命”が改変されたという事はゲルドとの出会いも因果の操作によるものかもしれないわね……」

「あっ!」

「……それどころかセレーネやベルフェゴール達との出会いもその因果の操作によるものになるな……」

アイドスの推測を聞いたアリサは声をあげ、リィンは複雑そうな表情をし

(という事は私が並行世界の未来に飛ばされたのも……)

(因果の操作によるものでしょうね。)

(貴女は複雑かしら?メンフィルは本来なら存在していないって事は多分貴女も生きていたと思うし。)

(……正直わかりません。ですが今こうしてマスターの傍にいれる事は以前の私の生活と比べれば”幸福”に満ちている事は確かです。)

メサイアの推測にリザイラが頷いている中、ベルフェゴールに尋ねられたアルティナは静かな表情で答えた。



「まあ今のあたし達には関係のない事だから、気にしない方がいいと思うわ。……そう言えば普通に疑問なんだけど何で未来の時代にいるあんたが今の時代にいるのかしら?」

「それに”未来のキーア”という言葉も気になるが……まさか未来の”零の至宝”もこの時代に来ているのか?」

「ええ。そして私にとって先祖にあたるエイドス達も”時代を超えて”この時代にいるわ。」

サラ教官とトヴァルの疑問にサティアが答えたその時、空気が凍りついた!



「え、えっと……サティアさん……?今、エイドスさんの事を”先祖”って言いましたけど……」

「……”ブレイサーロード”の娘が”空の女神”の血を引いているとなると、”ブレイサーロード”や”剣聖”自身も”空の女神”の子孫になるが……」

「ええ。エイドスはエステルや私にとって”先祖”よ。―――エイドス・クリスティン・ブライト。それが彼女――――”空の女神”の本名よ。」

表情を引き攣らせているリィンとユーシスの疑問にサティアは苦笑しながら答えた。



「そ、そう言えば以前レグラムに行った時クラウスさんがエイドスさんがエステルさんの遠い親戚だって言ってた事を話してくれたわね?」

「あ……………」

ある事を思い出したアリサの言葉を聞いたリィンはレグラムのギルドで再会したクラウスのある言葉を思い出した。





エステル様のご説明によると何でもエイドス様はエステル様達―――”ブライト家”の遠い親類に当たるとの事です。





「ま、まさか本当に言葉通りの意味だったなんて……」

「というか女神様に子孫がいる事自体が信じられないですよね?」

「まさかあの娘やカシウスさんがエイドスの子孫だなんてね…………あの娘やカシウスさんが滅茶苦茶強い理由は”空の女神”の子孫だからっていう理由があるのかもしれないわね……」

「オイオイ……洒落になっていねぇぞ、その推測。」

「あの非常識親娘はどこまで非常識になれば気がすむのだ!?」

クラウスのある言葉を思い出したリィンは表情を引き攣らせ、空の女神に子孫がいる事にエリスは信じられない思いを抱き、サラ教官とトヴァルは疲れた表情をし、ユーシスは呆れた表情で声を上げた。



「クスクス……ちなみにエイドス、エステルに”お祖母(ばあ)ちゃん”って呼ばれた時凄いショックを受けていたわよ?」

「ええっ!?」

「め、女神様を祖母呼ばわりするなんて……」

「本物の”神”であるフェミリンスと一緒に普段行動しているあの娘にとっては”空の女神”も大した事のない存在なのでしょうね……」

微笑みながら答えたサティアの言葉を聞いたアリサは驚き、エリスは信じられない表情をし、ミシェルは疲れた表情をし

「そう言えば……トリスタにいるリィンに会いに行く前にエステル達に会いに行った時にエステルの事をお義母様(かあさま)って呼んだら、凄いショックを受けていたわよ?」

「ア、アイドス!?何でエステルさんの事をそんな風に呼んだんだ!?」

アイドスの話を聞いたリィンは信じられない表情で尋ねた。



「あら。私にとって姉にあたるアストライアお姉様――――サティアお姉様の母親がエステルなのだから、彼女は私にとっても”母親”になるでしょう?」

「え、えっと…………た、確かにそうなるんだが……」

「だからと言って今まで赤の他人であった年下の娘を”母”呼ばわりするか?」

「なるほどね……”あの性格”は先祖代々どころか、女神にまで影響しているようね……」

「そりゃ先祖の女神が”あの性格”なんだから、他の女神に影響してもおかしくないだろ……」

アイドスの指摘にリィンが困った表情で答えにつまり、ユーシスが呆れている中、サラ教官とトヴァルは疲れた表情で溜息を吐いた。



「えっと……それで肝心のサティアさん達が時代を超える事ができた方法を聞いていないのですが……」

「……自分達の仲間の人達以外には絶対に秘密にして、その人達にも第三者にも漏らさないって約束できるのなら話してもいいわよ。」

アリサに尋ねられたサティアは静かな表情で答え、リィン達は顔を見合わせて頷いた後了解の答えを口にした。



「わかったわ。――――私達が時代を超える事ができたのは、ミントのお蔭よ。」

「へっ!?」

「ハアッ!?何でそこでミントが出てくるのよ!?」

そしてサティアはリィン達にミントの正体――――時空を超える事ができる”真竜”であり、またミント自身も対象の時間を操る事ができ、自分達がクロイス家との戦いに参加する為に時代を超えた事を説明した。


「………………」

「じ、時空を超える事ができる竜――――”真竜”……それがミントさんの正体……」

「もはや伝承としか思えない程荒唐無稽な話ですね……」

「非常識の元には非常識が集まる。それを体現しているな、”ブライト家”は。」

「確かにそうね……」

「ああ……ん?それじゃあ何でお前さん達はまだ俺達の時代にいるんだ?クロイス家との戦いは”碧の大樹”が消えた事で終わったんだろ?」

リィン達が驚いている中、ユーシスの言葉にサラ教官と共に頷いたトヴァルはある事に気付いてサティアを見つめて尋ね、サティアは今も自分達がリィン達の時代にいる理由――――暗殺されたマリアベルが現代のキーアを暴走させ、その結果時空間の流れが一時的に滅茶苦茶になった影響でしばらく時代を超える事ができない為時空間の流れが落ち着くまで今も現代に残っている事を説明した。



「あの”碧の大樹”でそんな事があったのですか……」

「それでいつになったらあんた達は元の時代に帰るのよ?」

サティアの話を聞いたリィンは驚き、サラ教官は真剣な表情で尋ねた。

「未来の自分自身に事情を聞いたミントの話ではあの碧の大樹が消えた日から半年は経たないと時空間の流れが落ち着かないそうよ。」

「半年!?という事は……!」

「は、半年も女神様達が現代にいるという事になりますね……」

「そしてその半年間を満喫する為にあのふざけた女神は呑気に観光旅行をしているという訳か……」

サティアの答えを聞いたアリサは驚き、エリスは苦笑し、ユーシスは疲れた表情で呟き

「まあ……フフ、という事はお姉様もしばらくこの時代にいるのですね。」

アイドスは目を丸くした後嬉しそうな表情で微笑んだ。



「あの女神の事だから、絶対何かとんでもない事を仕出かしそうね。」

「女神が観光旅行をしているなんて事実、各国のVIPが知ったら絶対慌てるぞ。」

「ホント、非常識一家よね、”ブライト家”って……―――それで話を最初に戻るけどアナタ達は確かエレボニア帝国の滅亡を防ぐ為にマルギレッタ・シリオスという人物に接触する為にクロスベルに来たのよね?」

疲れた表情をしているサラ教官とトヴァルの言葉に頷いたミシェルは気を取り直して尋ねた。



「はい。マルギレッタさんが今どこにいるかわかりませんか?」

「うーん、悪いけどクロスベルのVIPの動向については徹底的に秘匿されていてアタシ達もまだ掴んでいないのよ。トヴァルから話を聞いてウチの遊撃士達にオルキスタワーの受付にクロスベルに残っているVIP達の動向について探らせてみたのだけど、今は二大国と戦争中だから教えられないって断られたそうよ。」

「クロスベル警察の方はどうだ?クロスベル警察の局長と上層部に”六銃士”の”黄金の戦王”と”蒼銀の魔剣姫”がいたから何かわからないのか?」

リィンの質問に疲れた表情で答えたミシェルの説明を聞いたトヴァルはある事を思い出して尋ねた。



「そっちも駄目ね。あの”教団”の事件以来確かにウチとも何度か協力体制を取った事があるけど、だからと言って秘匿情報はさすがに話してくれないわ。――――ただ、クロスベルの復興の為にそのVIP達が自ら市内や市外にある街や村で復興の指示をしている所や自ら復興を手伝っている所が見かけられたって情報は入っているわ。」

「そうなると……下手したら市外に出ている可能性もあるって事ね……」

「それじゃあクロスベルの市内どころか市外にある町や村にも行ってマルギレッタさんを探さないといけない事になるじゃない……」

「そんな悠長な事をしている暇はないぞ。」

「はい……恐らく昨日の進軍スピードを考えると今日中にエレボニア帝国全土を制圧するでしょうから、できれば今日中に接触したいのですが……」

ミシェルの話を聞いたサラ教官は考え込み、疲れた表情で呟いたアリサの言葉に続いたユーシスの意見を聞いたエリスは辛そうな表情で頷いた。



「……あの。サティアさんは”未来”から来ているのですから、何か知りませんか?」

「リィン、それは…………」

「確かに未来から来ているお前さんにとっては過去の出来事だから、知っていそうだな。」

サティアへの質問を聞いたアイドスは複雑そうな表情をし、トヴァルは真剣な表情で頷いてサティアを見つめた。



「―――悪いけどそれについては教えられないわ。ミントからできるだけ未来を変えかねないような事を過去の時代の人々に話さないで欲しいって念を押されているの。現在の”歴史の流れ”を変える恐れが出てくるかもしれないし。」

「そんな……!」

「……未来のあんた自身や過去の空の女神達が今この場でいる事自体が十分”歴史の流れ”が変わっていると思うのだけど?」

サティアの答えを聞いたアリサは悲痛そうな表情をし、サラ教官は厳しい表情で尋ねた。

「―――未来の自分自身から”歴史の流れ”を聞かされたミントの話では今私達がこうして現代にいる事自体も”正しい歴史の流れ”だそうよ。」

「なっ!?」

「……”歴史の流れ”を守る為に二大国は滅びてもいいのかよ!?」

サティアの答えを聞いたリィンは驚き、トヴァルは怒りの表情で尋ね

「”国”は滅びても”人”は生き続けるわ。大切なのは”国”ではなく”人”よ。」

「………………」

サティアの答えを聞き、ある程度理解できたユーシスは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「話を遮る形で悪いけど、カルバード共和国は”もう滅びているわよ”。」

「え…………」

「何だと!?」

「エレボニア帝国侵攻時の進軍スピードを考えると”碧の大樹”が現れた時期から既にカルバード共和国への侵攻を開始していた連合軍がカルバード共和国全土を制圧していてもおかしくないわね……ロックスミス大統領はどうなったのかしら?」

ミシェルの話を聞いたエリスは呆け、ユーシスは厳しい表情で声をあげ、サラ教官は唇を噛みしめて呟いた後ミシェルに尋ねた。



「……ロックスミス大統領は連合軍が首都に侵攻した際に兵達に降伏を命じた後責任を取って”自決”したそうよ。連合軍が大統領がいると思われる執務室に突入した際に大統領の死体を見つけたとの事よ。」

「そんな……!」

「……それも”改変された歴史の正しい流れ”なのかしら?」

ミシェルの話を聞いたリィンは辛そうな表情をし、サラ教官は厳しい表情でサティアに尋ねた。



「ええ。それとマルギレッタの事については私が教えなくても、他の人が今日中に貴方達に教えてくれるそうだから、安心して。」

「え……わ、私達にですか?一体どなたが………」

「……それについてはさっきも言ったように今日中にわかるわ。ミシェル、休憩に入るわね。」

「あ、ちょっと!?」

エリスの質問を誤魔化して答えたサティアはミシェルの制止の声を無視して2階に上がって行った。



「おい、どうする。あの様子では口は一切割らないと思うぞ。」

「……サティアさんの言葉を信じるなら、マルギレッタさんの居場所が誰かが教えてくれるんだ。それを待ちながら市内で情報収集をしよう。」

ユーシスの疑問を聞いたリィンは静かな表情で提案し

「それが賢明ね……こっちも何かわかったら連絡するわ。連絡先を教えてもらってもいいかしら?」

「はい、お願いします。」

ミシェルと連絡番号を交換し合った後市内で手分けして情報収集をした。しかしマルギレッタの情報は全く手に入らず、リィン達は中央広場に一端集まって顔を見合わせて相談していた。 
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