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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~プリネの助言~

同日、16:10―――――



~バリアハート・クロイツェン州統括領主の館・執務室~



「マスター、報告がありますが入ってもよろしいでしょうか?」

「ツーヤ?ええ、入ってきて。」

「―――失礼します。」

リィン達が悲願であるトールズ士官学院奪還を果たしたその頃、ツーヤが仕事をしているプリネの部屋に入って来た。



「マスター、クレア大尉がマスターとの面会を求めて館を訪ねて来ましたがどうしますか?」

「え……クレア大尉が?……―――わかったわ。客室に案内して。」

ツーヤの口から告げられた予想外の訪問者の名を聞いたプリネは目を丸くした後すぐに気を取り直して指示をした。その後プリネは客室の一室で護衛のツーヤを後ろに控えさせてクレア大尉と面会していた。



~客室~



「本日は多忙な所、敗戦国の将校の一人である私の面会に応えて頂き、誠にありがとうございます、プリネ姫。」

「……私の事は気にしないで下さい。それで本日は私に何の御用ですか?―――先に言っておきますがメンフィルとクロスベルの連合による帝都制圧を含めた各地のエレボニア帝国領制圧については私では何もして差し上げられませんし、何もするつもりもございません。”戦争回避条約”で予めそう決められていたのはクレア大尉もご存知ですよね?」

クレア大尉に頭を下げられたプリネは静かな表情で答えた後複雑そうな表情で問いかけた。



「……はい。私が本日こちらに参上したのはその件ではなく、”Ⅶ組”を始めとしたトールズ士官学院の皆さんにせめて悲願であったトリスタ――――トールズ士官学院の奪還を果たした今日だけは”何も知らせない”ように手配して頂く事を嘆願する為です。どうか悲願を果たした彼らに辛い現実を教えるのはせめて明日まで待って頂けないでしょうか……?―――お願いします……!」

クレア大尉は辛そうな表情で説明した後頭を深く下げ

「クレア大尉…………」

ツーヤは複雑そうな表情でクレア大尉を見つめた。



「……お父様―――リウイ陛下の配慮でリィンさん達を始めとした士官学院の皆さんやアルフィン皇女には”戦争回避条約”の”期間”が切れて既に帝都が制圧され、エレボニア帝国の各地が制圧され続けている事実については明朝まで隠す事にしていますのでその点はご安心下さい。」

「そうだったのですか……ありがとうございます……それと……その……ユーゲント陛下達や我々正規軍の”今後”について何かご存知であれば、できれば教えて頂きたいのですが……」

プリネの答えを聞いたクレア大尉は安堵の表情をして頭を下げた後辛そうな表情でプリネを見つめて尋ねた。

「―――少なくとも命を奪わない事や直接危害を加えたりしない事は既に決定していますのでその点についてはご安心下さい。何かわかり次第私かツーヤが大尉のARCUSに連絡致しますので、連絡先の交換をこの場でさせて頂いてもよろしいですか?」

「はい、是非お願いします。」

そしてプリネ達は互いの連絡先を交換し合った。



「…………プリネ姫。先程の話とは関係のない話になってしまいますが帝都制圧時”C”やカイエン公達はどうなったのか、もしよろしければ教えて頂きたいのですが……」

プリネ達と連絡先の交換をし終えたクレア大尉は複雑そうな表情で尋ねた。

「……帝都防衛についていたオーレリア将軍とウォレス准将については自分達が率いる兵達を全員失っていながらも激しい抵抗をし続け、その結果連合軍によって討ち取られました。」

「なっ!?”黄金の羅刹”と”黒旋風”をですか!?討ち取ったのはファーミシルス大将軍のようなメンフィルの名のある将でしょうか?」

「ええ。ただ、オーレリア将軍はメンフィルの将が討ち取りましたが、ウォレス准将はクロスベルの将――――ガルムス・グリズラー元帥によって討ち取られました。」

驚いているクレア大尉にプリネは静かな表情で説明した。



「ガルムス・グリズラー……例のクロスベル襲撃の際に”六銃士”達の援軍に現れ、”赤の戦鬼(オーガロッソ)”相手にたった一人で圧勝したという報告は聞いていますが…………それで”C”達は?」

「クロウさ―――いえ、”帝国解放戦線”リーダー”C”は帝都制圧時にカイエン公や”蒼の深淵”共々拘束され、現在は拘禁されています。激しい抵抗をしようとしたそうですが、エリゼさんに無力化されたとの事です。」

「エリゼさんが…………”C”を拘束したという事は”蒼の騎神”も無力化したのですか?」

ツーヤの説明を聞いたクレア大尉は目を丸くした後ある事が気になり、不思議そうな表情で尋ねた。

「……実はその事なのですが――――」

そしてプリネとツーヤは”蒼の騎神”がクロスベル解放の前に既にロイド達”特務支援課”や彼らに協力する者達の手によって破壊された事を説明した。



「そう………だったのですか。そんなにも早い時期に”蒼の騎神”が破壊されていたのですね……リィンさん達に協力しているシグルーン中将閣下はその事は?」

事情を聞き終えたクレア大尉は複雑そうな表情をした後ある事に気付いてプリネに尋ねた。

「勿論知らされています。リィンさん達に黙っていた理由はメンフィル、クロスベルの双方にとって秘匿とすべき情報だったからです。――――エレボニア帝国侵攻時貴族連―――いえ、”C”に”蒼の騎神”の破壊を悟られ、それを知った”蒼の深淵”やカイエン公達と共に行方を眩まさせない為に敢えて黙っていたとの事です。」

「……そうですか。」

プリネの話を聞いたクレア大尉は事情を理解し、静かな表情で頷いた。



「クレア大尉はこれからどうされるのですか?」

「……明日”第四”が展開しているガレリア要塞跡の臨時基地に先程戻ってきたレクターさんと共にトリスタに向かい、リィンさん達と合流するつもりです。もう私達にできる事は何もありませんので、せめてエレボニアが今後どうなるかは短い間とは言え苦楽を共にし、私にとっても後輩であるリィンさん達と聞こうと思っていますので……」

「……そうですか。でしたらちょうどいいですね……―――クレア大尉。リィンさん達と合流したら彼らに伝えておいてください。エレボニアが例え多くの領地を失ってでも”国”として存続できる方法を探るのならば、リィンさんとアルフィン皇女、そしてセレーネとメサイアさん……この4人とリィンさんの”女運”が鍵となるかもしれない、と。」

「え…………それは一体どういう事でしょうか……!?」

プリネの言葉を聞いたクレア大尉は血相を変えて尋ねた。



「申し訳ありませんがこれ以上はさすがに教えられません。今の言葉が”Ⅶ組”の一員である私が”Ⅶ組”の皆さんにしてあげられるせめてもの助言だと思って下さい。」

「……わかりました。プリネ姫のお言葉、必ず伝えさせて頂きますし、決して無駄にはしません……!――――それでは私はこれで失礼致します。本日は御時間を取って頂き誠にありがとうございました。」

決意の表情で答えたクレア大尉はプリネ達を見つめて頭を深く下げた後客室から退室し

「マスター、さすがに今のヒントだと幾ら何でも解かりやす過ぎてヒントになっていないと思うのですが……クレア大尉程の聡明な方なら今のヒントですぐに答え―――――”エレボニアが国として生き延びる方法”に気付くと思うのですが…………」

クレア大尉が退出するとツーヤは苦笑しながら指摘した。

「フフ、別にいいじゃない。それにもし実行するにしてもアルフィン皇女は明朝トリスタに送り届ける事になっているユーゲント三世達が認めればいいけど、滅亡した事で交渉の余地がないエレボニアがメンフィルとクロスベルに交渉のテーブルに就いてもらう為やセレーネとメサイアさんの婚約をそれぞれの”国家自身”が正式に認める為に用意されていた”三国の試練”があるから、このくらいのサービスはしてもいいと思うわよ?」

「確かにそうですね……後はリィンさん達次第ですか…………」

そしてプリネとツーヤはそれぞれリィン達を思い浮かべていた。



~市内~



(エレボニアが”国”として存続する為に何故リィンさん達が…………)

城館を出て市内を歩いているクレア大尉は真剣な表情でプリネの助言に隠されている答えを考え込んでいた。

(リィンさんがクロイツェン州の将来の統括領主で、アルフィン皇女殿下の嫁ぎ先だから……?いえ、それならお二人の結婚にセレーネさんとメサイアさんは関係していませんし……それにリィンさんの”女運”が何故関係が……?リィンさんの”女運”と言えば私を含めた多くの女性達を惹きつけ、その結果将来結婚する事になってしまった事でしょうけど……”結婚”……?―――――!!)

プリネの助言の意味を考え込んでいたクレア大尉はある答えに到って目を見開いて立ち止まり

(セレーネさんは養子とはいえメンフィル皇家の一員。そしてメサイアさんは二人いるクロスベル帝国の皇帝の一人になった”黄金の戦王”とあの説明の際に現れた女性の二人から”自分達の娘”として認知されている……―――つまり”クロスベル帝国の皇族の一員”……!リィンさんとアルフィン皇女殿下達が結婚するかもしくは婚約の関係になればリィンさんを介して”エレボニア、メンフィル、クロスベルの三国の皇族の一員達が婚姻を結んだ事になり”、それを理由に情状酌量を求める事ができる可能性が出てきますね……!フフ、まさかリィンさんの重婚によってエレボニア帝国が生き残る可能性が見つかるなんて……呆れを通り越してもはや感心に値しますね、リィンさんの”そういう所”は…………ですが、それはそれ。また女性を増やした時にはお説教ですからね……?)

プリネの助言に隠されていた答えがわかった後苦笑した。

(そうなると……問題はメンフィルとクロスベルにどのようにして交渉のテーブルに就いてもらう件と、メサイアさんの件ですね……アルフィン皇女殿下は”救済条約”にサインをした時点でリィンさんとの婚約はされた事になっていますし、セレーネさんについても彼女の双子の姉であり、保護者でもあるツーヤさんがリィンさんと将来結婚する事を認めているとセレーネさん自身も言っていた為、唯一親族から婚約の許可を得ていないメサイアさんですね。メサイアさんとリィンさんが婚約する事を認めて貰う為には最低でもメサイアさんの両親である”黄金の戦王”かあの女性―――マルギレッタ・シリオスのどちらかに承諾してもらう必要がありますし、そもそもメサイアさん自身がリィンさんとの婚約を承知するかが問題……ではありませんでしたね、フフ……)

真剣な表情でこれからの事を考えていたクレア大尉は肝心のメサイアがリィンとの結婚に承知するかどうかに頭を悩ましていたが、すぐにアリサ達から教えられた話――――リィンと”契約”しているメサイアを含めた異種族達は全員リィンと肉体関係の間柄である話を思い出し、そのような関係にまで発展しているのならメサイア達もリィンに想いを寄せている事である事を察して苦笑していた。 
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