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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第142話

~トールズ士官学院~

「ぐうっ……!?」

「坊ちゃま……!」

リィン達との戦いで地面に膝をついたパトリックに同じように地面に膝をついたセレスタンが視線を向けた。

「や、やった……勝ったの、わたしたち!?」

「ええ……そうみたいです。なんとか乗り越えることができたみたいですね。」

信じられない表情をしているトワの言葉にリィンは静かな表情で頷いた。



「そ、そんな………これでも届かないんですの……!?」

「ふふ、この子たちが咲かせた花には敵わなかったみたいですね。」

悔しそうな表情をしているフェリスにエーデルが慰めの言葉をかけた。

「馬鹿なっ!?この僕が実技テストに続いて二度までも遅れをとる上、以前以上の実力差を見せつけられて敗北するなんて……!」

「坊ちゃま、顔をお上げください。この敗北は決して恥じることではありません。正々堂々と、全力を尽くして戦ったのですから。」

「くっ……!」

セレスタンに慰められたパトリックは唇を噛みしめ

(そもそも実戦経験のない彼らがご主人様達に勝てる道理がない上、好敵手扱いする事自体が理解不能なのですが。)

(その意見に同意します。マスター達の力量を考えると相手の勝率は0%です。)

(しょうがないわよ~。相手は世の中で言う”勝者側”である”貴族”なんだから。)

(あ、あの~……皆さん?例え事実とは言え、リィン様達にとっては大切なご学友なのだから、そこまで言うのはさすがに可哀想だと思いますよ?)

(メサイアも何気に酷い事を言っているけどね……)

リザイラ達の念話を聞いて表情を引き攣らせているメサイアの指摘を聞いたアイドスは苦笑していた。



「ふふ、フェリスも悔しがる必要はないわ。少し見ない間にこんなに逞しくなってるなんて思いもよらなかった。あなたの頑張り屋なところ……友達としてとても誇りに思うから。」

「……ア、アリサ……もう、ズルいですわ。そんなことを言うなんて。」

「―――ふふ。本当によき勝負であった。」

リィン達が武器を収めたその時学院からヴァンダイク学院長とマカロフ教官が現れた。



「が、学院長……マカロフ教官まで……!?」

「軟禁されていたんじゃ……」

「よう、久しぶりだな。」

「確かに見届けさせてもらったぞ。双方が出せる全てを尽くした素晴らしい立ち合いじゃった。――――パトリック君も決して敗北を恥じることはない。」

「…………っ…………!」

ヴァンダイク学院長の言葉を聞いたパトリックはリィン達から視線を逸らした。



「まさか……パトリック、君達が?」

「はい、貴族連合が撤退した折に、坊ちゃまによって教官がたの軟禁は解かれました。そして、この勝負の決着までは学院内に待機していただくようお願いしていたのです。」

ヴァンダイク学院長の言葉を聞いてある事を察して驚いているマキアスにセレスタンは説明した。

「パトリック……」

「……フン。」

「ふふ、こちらも見届け終わりましたよ。」

リィンに見つめられたパトリックが鼻を鳴らしたその時B班やB班と戦っていた騎士団の面々、そしてベアトリクス教官とハインリッヒ教頭が姿を現した。



「あ……アンちゃんたち!」

「ベアトリクス教官にハインリッヒ教頭も……!」

「ふふ、お元気でしたか?」

自分達の登場に驚いているリィンにベアトリクス教官は微笑んだ。

「フフ、こちらもついさっき勝利を収めることができてね。教官がたにはそれを見届けてもらったよ。」

「我が刃、麗しの君と姫に届かず……おお、なんと悲しき現実か。」

「ヴィンセント様。仕方ないことかと。これも紛うことなき実力差でしょう。」

「ぐふっ!?」

「サリファ、止めを刺してどうしますの……」

高々と叫んだヴィンセントに突っ込んでヴィンセントに肩を落とさせたサリファにフェリスは真剣な表情で指摘した。



「まったく、どうして私までこんなことに付き合わされて……」

「フフ、教頭もお疲れ様でした。」

ハインリッヒ教頭が溜息を吐いたその時サラ教官にトマス教官、ジョルジュや”Ⅶ組”の協力者の面々がリィン達の背後から現れ

「教官たち……ジョルジュ先輩にゲルドたちも。」

ガイウスは静かな表情でサラ教官達を見つめた。



「みんな、お疲れ様。」

「ようやく悲願を果たせましたね、兄様。それに士官学院生の皆様も。」

「おめでとう。リィン達なら叶えられるって信じていたわ……」

「―――お見事です。当初は絶望的な状況でありながら”ここまで”辿り着けた事には私も正直、驚きましたわ。」

ジョルジュやエリス、ゲルドとシグルーンはそれぞれリィン達を労ったり、称賛の言葉を送った。



「一段落したみたいだから様子を見に来たのよ。」

「いやぁ、どうやら決着はついたみたいですね~?」

「うむ、そのようじゃ。」

トマス教官の言葉に頷いたヴァンダイク学院長はパトリック達に近づいた。

「パトリック君―――それ以外の諸君も。互いの意志と意志をぶつけ合い、もはや雌雄は決したと言えよう。それで―――どうするのじゃ?」

「………………」

「坊ちゃま……」

ヴァンダイク学院長の言葉を聞いて黙り込んでいるパトリックをセレスタンが心配そうな表情で見つめているとリィンがパトリックに近づいて手を差し伸べた。



「……何のつもりだ、シュバルツァー。性懲りもなく、敗者に手を差し伸べるなど……」

「いやー――俺達は今日、初めて真正面から全力でぶつかり合えたと思う。あの実技テストの日とは違って……互いを対等な立場と認め合えた上で。今なら―――俺達は手を取り合えるんじゃないか?」

「リィン君……」

「「(お)兄様……」」

リィンの言葉を聞いたトワやエリス、セレーネはそれぞれ静かな表情でリィンを見つめていた。



「………………やれやれ。どこまでも癪に障る男だ。」

するとその時溜息を吐いたパトリックがリィンの手を取って立ち上がり、”騎士団”の面々を順番に見回してある決断を下し、それを口にした。

「……我々、トールズの”騎士団”は本日をもって解散する。そして全貴族生徒はハーシェル生徒会長の下に改めて結束―――”有角の獅子紋”を纏う者として共に剣を振るうことを誓おう!」

「あ……!」

「パトリック……!」

パトリックの宣言を聞いたトワとリィンが明るい表情をしたその時、学院から平民、貴族問わず生徒達が出て来て明るい表情で互いに喜び合い、またいつの間にか駆け付けていたカレイジャスの船員である士官学院生達も明るい表情で士官学院生達の意志が一つになった事を喜んでいた。



「……フン。」

「フフ、ようやくここまで辿り着けたね。」

「ぐすっ……うん!ようやくみんなで学院に戻ってこられた……”トールズ士官学院”が、やっと一つになれた……!」

「ええ、会長。―――行こう、みんな。あとは俺達の―――かけがえのない毎日を取り戻すだけだ……!!」

「おおっ!!」

「……………………」

「リィン……みんな…………」

「…………?」

リィンの号令にⅦ組の面々が力強く答えた様子を重々しい様子を纏って目を伏せているシグルーンと辛そうな表情で見つめているゲルドに気付いたエリスは不思議そうな表情で首を傾げていた。



―――こうして、リィン達は全員でトールズ士官学院を取り戻した。学院生達の声援はしばらくの間止む事はなく……誰もが士官学院の一員であることに誇りと喜びを感じながら―――この内戦の空に、強い意志と明日への希望を抱くのだった。



既に”全てが終わった事”を知らずに……………… 
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