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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第18話

貴族連合の重要拠点の一つ―――双龍橋に到着すると、そこにはアハツェンや機甲兵が配置され、橋には検問を敷いている領邦軍の兵士達がいた。



~双龍橋~



「ここが”双龍橋”か……さすがに厳重な警備が敷かれているみたいだな。」

「はい……しかも”機甲兵”まで、配備していますよね……」

リィンの意見に頷いたセレーネは不安そうな表情で機甲兵を見つめた。

「東西にかかる2本の巨大橋……その守備力はかなりのモンだ。貴族連合の拠点の一つとして相応しい場所と言えるだろうな。」

「その上、今は内戦中に加えて街道を少し行った先にはメンフィル帝国が軍を展開中………警戒はいつもの比じゃないな。むむ……やっぱり越えるのは相当難しそうだが。」

「それに橋を渡った先の街道も封鎖されてるっぽい。ここを越えたとしても、そのまま要塞方面に行くのは難しいはず。」

「じゃ、じゃあ、ここからどうするのさ?」

”双龍橋”を越える事が相当難しい事を話し合っている仲間達の会話を聞いたエリオットは不安そうな表情で尋ねた。



「貴族連合は”大陸横断鉄道”を通じて要塞方面に兵を送りこんでる。―――その鉄道の線路を利用する。」

「鉄道の線路を……!?」

「見て。」

フィーの視線につられるようにリィン達も鉄道の線路に視線を向けた。



「”大陸横断鉄道”の線路―――あれは砦の内部を通っていて貨物整備用の単線に繋がっている。そちらを通れば、警備の裏をかいてガレリア要塞方面に抜けられるはず。」

「なるほど……確かにそんな線路があったな。正規のルートからは外れちゃいるが、そっちも要塞方面に通じていたはずだ。」

「はあ、理屈はわかるけど……」

「ちょ、ちょっと大胆すぎやしないか?たしかに死角は突けるだろうが見つかる危険もゼロじゃないぞ?」

「そ、そうですわよね……?もし、線路をたどっている際に列車が来たら、すぐに見つかってしまうでしょうし……」

フィーとトヴァルの説明を聞いたセリーヌは呆れ、マキアスとセレーネは疲れた表情で指摘した。



「いや―――俺は賛成だ。」

「リィン…………」

「曲がりなりにも貴族連合の重要拠点……どちらにせよ、リスクもなしに通り抜けるのは難しいはずだ。だったら、少しでも可能性のある方に賭けるべきだと思う。」

リィンの意見を聞いた仲間達はそれぞれ黙って考え込んだ後結論を出した。



「……そうだね。今は内戦中……僕達も覚悟を決めるべきなのかも。」

「わたくしはお兄様の行く所なら、どこであろうとついて行きますわ!」

「ふう、仕方がない。ギャンブルは好みじゃないが、やれるだけやってみよう。」

線路を使う事に消極的な意見を出していたエリオット、セレーネ、マキアスは決意の表情でリィンの意見に頷いた。



「しかし、どうやって線路側に降りるつもりだ?さすがにフェンスを乗り越えるわけにもいかないだろうし。」

「多分、どこかに線路に下りる整備用の通路があるはず。」

「まずはあっちにある待合所で探してみよう。」

「よし……目立たないように聞き込みをしてみるか。」

その後待合所に入って聞き込みをしていたリィン達だったが、何者かが声をかけて来た。



~待合所~



「―――何かお困りのようだね。」

声が聞こえた瞬間、部屋の扉が開かれ、フードを被った怪しげな人物がリィン達の目の前に現れた。

「へっ……」

「え、えっと……?」

「…………あなたは?」

謎の人物の登場にマキアスとセレーネが戸惑っている中、リィンは警戒の表情で尋ねた。



「なに、ここで足止めを食らうしがない行商人の一人さ。さっきから、何かを嗅ぎまわっているようだが……せっかくだから何か力になれないかと思ってね。」

「え、えっと……」

「……悪いが、こっちはちょっと立て込んでいてね。押し売りなら他を当たってくれるかい?」

男の申し出にエリオットは戸惑い、トヴァルは真剣な表情で男を見つめた。



「おやおや、つれないな。少しくらいはいいだろう?トールズ士官学院―――特科クラス”Ⅶ組”の諸君?」

「……!?」

「どうしてそれを!?」

「あなたは一体……」

「まさか……わたくし達を狙っているのですか?」

しかし男が自分達の正体を知っている事を口にするとリィン達は血相を変えて目の前の男を最大限に警戒した。



「さあて、誰だろうね?フフ……知りたかったら、捕まえたまえ。」

そして男は挑発的な言葉をリィン達に送った後その場から走り去り

「あっ!?」

「くっ……!」

それを見たリィン達も男を追跡したが、角を曲がると行き止まりになっており、そこには男の姿はなかった。



「なっ……!?」

「い、行き止まりだと……!?」

「おいおい……消えちまったってのか?」

「も、もしかしてベルフェゴールさん達みたいに転移魔法を使ったとか?」

「そんなワケないと思うけど……」

男がいない事にリィンとマキアスは驚き、トヴァルとセレーネの推測を聞いたセリーヌは眉を顰めて答えた。



「……待って。ここ、風の流れを感じる。」

その時風を感じたフィーはダクトを見つけた。

「……これを使ったみたい。」

「通気用のダクト……!?こんな所を通っていったのか?」

「も、もしかしてこのダクトって……」

「線路に繋がっているのではないでしょうか……!?」

「さっきのフードの男の行方も気になる……さっそく入ってみよう。」

そしてリィン達はダクトの中に入って、狭いダクト内を進み始めた。



~ダクト内~



「く、暗いな……」

「アタシは夜目が利くからいいけどね。」

「わたしも結構見えてるかも。」

「あの人……本当にここを入ったのかな?」

「さて……只者じゃなさそうだが。」

(一体何者だ……?――――ッ!?)

ダクト内を進む仲間達が会話をしている中、殿を務めていたリィンは考え込みながらダクト内を進んでいたが自分の目の前の人物―――セレーネの大人向けの清楚な純白の下着が時折見える事に気付いて顔を真っ赤にした。



「ふう……ふう……狭くて、ちょっとキツイですね……」

(い、今気付いたけど、セレーネのスカート、短すぎだろ……!?ユミルに戻った時に、もっと長いスカートにさせるか、せめて後ろを隠す対策をしないとマズすぎる……!)

自分の様子に気付いていない目の前のセレーネからリィンは顔を真っ赤にして必死に視線を逸らしながら考え込み

(うふふ、相変わらず、初心で可愛いわね、ご主人様ったら♪)

(まあまあ……そこがリィンの良いところでもあるのよ?)

(彼女の裸は何度も見ている上、肌も重ねているというのに、今更下着如きで何故慌てるのか理解に苦しみますね。)

(リ、リザイラ様……そういう問題じゃありませんよ……)

リィンの様子を見たからかいの表情になっているベルフェゴールの念話を聞いたアイドスは苦笑しながら指摘し、リザイラの指摘を聞いたメサイアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「確かに狭いが……キツイって程じゃないぞ?」

「セレーネって、どっちかというと痩せているほうだよね?何でだろう?」

ダクト内を進んでいたマキアスとエリオットはセレーネの言葉を聞いて首を傾げたが

「そ、その……胸が何度もつっかえていて、キツイんです……」

「え、えっと…………」

「な、ななななななななっ!?いたっ!?」

恥ずかしそうな表情で言ったセレーネの答えを聞くとエリオットは顔を赤らめて困った表情をし、同じように顔を真っ赤にしたマキアスは混乱して思わずダクトに頭をぶつけ

「クックックッ……その程度で慌てるなんて、まだまだお子様だな。」

「スケベ。」

慌てている二人の様子にトヴァルは笑いを噛み殺し、フィーはジト目になり

「ハア……馬鹿やってないで、さっさと進みなさいよ。」

セリーヌは呆れた表情で指摘した。そしてリィン達がダクトを出ると、そこは”大陸横断鉄道”が通る線路がある場所だった。


~双龍橋・線路~



「やっと、外に出れましたわね……」

「ふう、狭かったぁ……って、ここは……!」

「大陸横断鉄道の線路……!こんな所に通じていたのか。」

「やっぱり……でも、これで道は開けたね。」

「そ、それはいいが、さっきのフードの男は……?」

マキアスの指摘を聞いたリィン達は周囲を見回したが謎のフードの男はどこにも見当たらなかった。



「見当たらないな……どこに消えたんだ?」

「ええ……気配も感じられません。………俺達”Ⅶ組”のことを知っていたのは気がかりですが……今は橋を越える事に集中したほうがよさそうですね。」

「……だね。怪しい男だけど、今のところ敵意は悪意は感じなかった。」

「もしかして、このダクトを僕達に教えようとして……?」

「と言う事は、あの人、わたくし達の味方なのでしょうか……?」

「ふう、さすがにそれは楽観的すぎるでしょ。」

リィン達と共にフードの男の事について推測したエリオットとセレーネの推測を聞いたセリーヌは呆れた表情で指摘した。



「とにかく、ここを通れば要塞内に忍び込めそうだな。」

「ああ、橋の方からも死角になっているみたいだ。このまま線路伝いに侵入しよう。」

その後リィン達は線路伝いに橋を越えて建物の中に入って行ったが、その様子を遠くからフードの男が見守っていた。



「――ふふ、行ったみたいですねぇ。私が手伝えるのはここまで……後は君達次第でしょう。無事に道を拓けるよう……女神(エイドス)にお祈りしていますよ。」

フードの男は口元に笑みを浮かべた後その場から去って行った。一方建物内に入ったリィン達は遠くにいる多くの機甲兵が積んで、連結してある貨物列車を見つけて立ち止まった。



(あれは……!)

リィン達がそれぞれ身を隠している中、貨物列車は出発し、その様子を領邦軍が見守っていた。

「―――”機甲兵”部隊、間もなく配備完了します!」

「フン、準備は整ったようだな。”対機甲兵戦術”もここまで……今回の作戦で一網打尽にしてくれる。―――アルバレア公爵閣下からも早急に片付け、メンフィル帝国軍の襲撃に備えよとの命を賜っている!例の”助っ人”も投入し、反逆者どもを徹底的に叩き潰せ!」

部下の報告を聞いた隊長は鼻を鳴らして指示をし

「イエス・サー!」

指示をされた兵士達はそれぞれの行動に移った。



「くっ……横断鉄道方面はかなりの緊張があるようだな。”機甲兵”も相当な数が投入されているみたいだし。」

「ああ、トリスタ方面でも配備されているのを見たけど……正規軍との戦闘がそれだけ激化しているということか。」

「父さん……無事だといいけど。」

マキアスとリィンの会話を聞いていたエリオットは不安そうな表情をした。



「……あまり心配するな。お前の親父さんなら大丈夫さ。なんたってあの”紅毛のクレイグ”だからな。」

「実際、第四機甲師団は何度も機甲兵部隊を撃退してるみたい。」

「そのぶん貴族連合もムキになってるっぽいけど。」

「それと……領邦軍もメンフィル帝国軍を警戒しているのは、気になりますわよね……」

「ああ……恐らく、街道に展開しているメンフィル帝国軍の拠点に気付いて警戒し始めているんだろうな……」

セレーネの言葉に頷いたリィンは真剣な表情になり

「ったく、アルバレア公爵は一体何を考えているんだよ……そんな事をしたら更に火に油を注ぐようなものだぞ?」

トヴァルは呆れた表情で溜息を吐き

「フン、どちらにしろ急いだ方がよさそうね。」

セリーヌは鼻を鳴らして静かな表情で呟いた。



「ああ……このまま線路を辿っていけばいいんだな?」

「ん、この先で貨物整備用の単線に分かれている筈。」

「よし……見つからないように気を付けて進もう。」

その後リィン達は線路伝いに双龍橋を越え、ガレリア要塞へと続く街道の脇道まで抜ける事ができた。



~ガレリア間道~



「ふう……何とか”双龍橋”を抜けられたみたいだな。」

「ええ……線路を走っている時は列車がいつ来るのか、ドキドキしていましたわ……」

リィンの言葉に頷いたセレーネは安堵の表情で溜息を吐いた。



「この先がガレリア要塞方面に繋がっているんですね?」

「ああ、”ガレリア間道”……前に仕事で通ったこともある。舗装はされているがそれなりに険しい丘陵地帯でな。大陸横断鉄道が通ってからは、ほとんど裏道になっている場所だ。」

マキアスに尋ねられたトヴァルは懐かしそうな表情をしながら答えた。



「内戦が始まってからは完全に封鎖されてるっぽい。貴族連合に見つかる心配はかなり少ないと思う。」

「とりあえず一息か……まだ道のりは長そうだけど。でも、遊撃士っていうのはやっぱり大変そうですね。仕事とはいえ、こんな裏道にまで入るなんて。」

「ハハ、依頼さえあればな。昔やってた仕事と比べりゃずいぶんとマシになっ……って、その話はいいか。」

途中で言うのを止めたトヴァルの話が気になったリィン達はそれぞれ首を傾げた。



「えっと……?」

「どうして、途中で話すのを止めたのでしょうか?」

「微妙に気になるんですが……」

「いやまあ、大した話じゃないさ。……コホン、とにかく。要塞まではかなりの距離があったはずだ。魔獣も徘徊してるようだし、慎重に進んでいくとしようぜ。」

「ええ、了解です……!」

「何とか父さんたちのところに辿り着かないとね……!」

そしてリィン達がガレリア間道に向けて歩きはじめている中、その様子を崖の上から二人の人物達が見守り

「……………………?………………」

何かの気配に気付いたフィーは崖を見上げたが、そこには誰もいなかったが、フィーは真剣な表情で崖を睨んだ後リィン達と共にガレリア要塞に向かい始めた。 
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