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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第164話

その後RF本社ビルに向かったリィン達はイリーナ会長にアポイントを取って会いに向かうとシャロンに出迎えられ、イリーナ会長の部屋に通された。



~RF本社ビル・23F~



「通しなさい。」

「はい。」

「母様、入るわよ。」

「失礼します。」

シャロンによって扉を開けてもらったリィン達はイリーナ会長に近づいた。



「昨日は夕食をキャンセルして済まなかったわね。ただ、悪いけれど今夜も難しそうだわ。」

「いえ……それは当然でしょう。」

「あれだけの出来事が起こっている最中ですから……」

「もっとも……忙しそうな割には当然の義務を果たしていないみたいだけど。」

「……………」

「お嬢様……」

アリサの指摘にイリーナ会長は何も反論せずに黙り込み、シャロンは静かな表情でアリサを見つめた。



「ザクセン鉄鉱山の鉱員はラインフォルトの人間でもあるわ。そして鉄鉱山を封鎖している領邦軍はまるで動こうとせず、彼らをテロの危機に晒している……その抗議はログナー候にしたの?」

「グループとしてはまだよ。第一製作所のハイデル取締役は一応”要請”はしたみたいだけど。」

「この期に及んでどうしてそんな事を……!彼の第一製作所が、この数年、莫大な鉄鉱石をどこかに横流ししていたこと!気付いていないとはさすがに言わせないわよ!?」

イリーナ会長の答えを聞いたアリサは怒りの表情でイリーナ会長を睨んだ。



「―――当然、気付いているわ。コントロールできなかったのは正直、私の落ち度であるのは確か。でも、今回のテロが仕組まれて起こされた事だとするならば………グループとしてログナー候に抗議して何の意味があるのかしら?」

「そ、それは……」

「今回の件がどうなろうとしかるべき保障は必要でしょう。万が一鉱山が爆破されたりしたら今後の対応も考える必要もある。最早ラインフォルトは世界企業―――クロスベル方面も視野に入れた株価対策もする必要があるわね。」

「…………っ…………」

イリーナ会長の話に反論できないアリサは怒りの表情で唇を噛みしめ

「確かに、ラインフォルトがクシャミをしたら凄まじい数の人間が風邪を引きそうだな。」

クロウは疲れた表情で答えた。



「そう……RFグループはRFグループの会長には会長の果たすべき役割がある。領邦軍にしても、鉄道憲兵隊にしても極言すればテロリストだって『己の役割』を果たすべく動いている。それが”世の中”というものよ。―――それで、あなた達は一体、どんな役割を果たそうというのかしら。」

「……!」

「あ……」

「……役割……」

イリーナ会長の指摘を聞いたリィン達はそれぞれ黙って考え込み始めた。



「わかったら帰りなさい。おそらく軍需工場以外は市内に被害は及ばないでしょう。幾つか依頼も使いするからそれを今日はこなすといいわ。そして、こんな状況でもあるし、明日の朝にはルーレを発ちなさい。理事として許可します。」

「……………」

「そ、それは……」

「―――それはできないわ。」

イリーナ会長の言葉にリィン達が答えに詰まっているとアリサが首を横に振って答えた。



「だって私はもう……同じ事を繰り返したくないから。」

「……え……?」

アリサの口から出た予想外の答えを聞いたイリーナ会長は呆けた表情をした。



「今まで私は……ずっと目を背けてきた。お祖父様が会長を追われた時も。ううん、父様が亡くなって母様が仕事に没頭し始めた時から……そして母様がグループを途方もなく大きくし続けた間も……でも士官学院に入って世の様々な理不尽を知って……それでも私は―――私達は諦めずに少しずつ前に進めたと思う。それがこの半年、私達が手に入れたものだわ。」

「………………」

「アリサ……」

「……そだね。」

アリサの話をイリーナ会長は目を閉じて聞き続け、リィン達はアリサを見つめていた。



「だから私は……もう目を逸らさずに言うわ。母様の娘として、家族として。何よりもラインフォルトを幼い頃から見続けた者として。母様―――貴女のやり方はやっぱり”間違ってる”って。」

「お嬢様……」

「………………フフ……間違っているというからには当然、正しい道を示せるという事ね?」

アリサの指摘を聞いたシャロンは驚き、イリーナ会長は静かな笑みを浮かべた後アリサを試すかのように口元に笑みを浮かべて問いかけた。



「もちろんよ。でも、それを示すには私もまだまだ経験が足りない。だから士官学院卒業までに何らかの道を示すことを誓うわ。いずれ母様の跡を継ぐ―――その可能性がある人間として!」

「あ……」

「ヒュウ♪」

(アリサ、カッコイイよ!)

アリサの決意を知ったエリオットは驚き、クロウは口笛を吹いて感心し、ミルモは嬉しそうな表情で言った。



「……およそ幼稚で勢いだけの発言だけど……まあ、今の貴女が紡げる言葉としては上出来でしょう。」

「母様……」

「シャロン、例のものを。」

「かしこまりました。お嬢様、これをどうぞ。」

イリーナ会長に指示をされたシャロンはアリサにカードキーを渡した。



「これは……何らかのカード……?」

「それはカードキーよ。鉄鉱山に通じている非常連絡道への扉を開く。」

「それって……」

「そんなものがあるんですか!?」

イリーナ会長の説明を聞いたアリサは目を丸くし、リィンは驚きの表情で尋ねた。



「先代会長が建造したルーレ市から直通している非常用の連絡通路よ。都市上層にある整備室から地下に降りた所に存在するわ。」

「そこを通れば……」

「領邦軍の封鎖を越えて鉱山内に侵入できる……!」

「―――お礼は言わないわ。現時点の私が見極めた”最善”と思える道……それを行動で示してみせる。」

リィン達が明るい表情をしている中、アリサは不敵な笑みを浮かべて答えた。



「失礼します、イリーナ会長。今までの実習も活かして必ずや無事に戻ってきます。」

「どうか安心してください!」

そしてリィン達は会長室から去り、急いで上層の整備室に向かった。



「ふふ、どなたも素晴らしい成長ぶりですね。お嬢様のことも、素直に褒めて差し上げたらよろしいですのに。」

リィン達を見送ったシャロンはイリーナ会長に微笑み

「―――まだまだよ。いずれ私の跡を継ぐなら覚悟を示してくれないとね。」

イリーナ会長は首を横に振って静かな表情で答えた。



「さてと……役者は全て揃ったわ。貴女にはもう一働きだけしてもらおうかしら?」

「心得ております。」

そしてイリーナ会長に見つめられたシャロンはスカートを摘み上げて恭しく会釈をして答えた。



「あら?………………」

「会長?どうかされたのですか?」

その時ある事に気付いて真剣な表情で端末を見つめて操作するイリーナ会長に気付いたシャロンは不思議そうな表情をし

「―――シャロン、大至急”第四開発部”の導力端末の担当をしている者達を呼んで。この端末が先程何者かにハッキングをされたわ。」

「え…………」

イリーナ会長の指示を聞いたシャロンは呆けた表情をし

「これを見て見なさい。」

「―――失礼します。」

イリーナ会長に言われたシャロンがイリーナ会長の端末に近づくとイリーナ会長の端末の画面にある文字が映っていた。



中々面白いものを見せてもらったわ♪お礼に今回の”お茶会”には私も参加させてもらうわ♪―――――仔猫



「何者かは知らないけど、何重ものプロテクトをかけた私の端末にハッキングをするなんて相当腕のいいハッカーね。この”仔猫(キティ)”はハンドルネームか何かだろうけど……この”お茶会”は一体どういう意味を示しているのかしら……?」

「…………………!フフッ、ご安心下さい、会長。少なくとも私達の”敵”ではありませんし、その方が力を貸して下さるのならば今から鉱山に向かうお嬢様達の身の安全が保証されたも同然ですわ。」

そして少しの間考え込んでいたシャロンは”仔猫”という言葉からある人物に思い当たり、真剣な表情で考え込んでいるイリーナ会長に助言をした。




 
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