| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第31話 宣言

 
前書き
また長くなってしまった。
申し訳ありません
そして、書くのに苦労しました
 

 
湾内を誘拐しようとした不良グループに単身で乗り込んだサソリは、リーダー格である迷彩柄のタンクトップを着た男の攻撃を受けてしまう。

「うぐぐ!」
サソリがコンテナの中から飛び出てくるとタンクトップの男の前に躍り出る。
急激な体躯の変化からか、先の戦いでの爆発に巻き込まれた際の左腕の熱傷部分の皮膚が裂けた。
血がサソリの指先へと一本の流れを形成し、滴り落ちている。
「いいねいいね!俺様と張り合うのねー!なんだいなんだい?まさかあれだけでケガをしたねー」

タンクトップの男は二、三飛び上がると、再びサソリの視界から消えた。
やはり、サソリの通常の眼でも追いきれない。
サソリはチャクラ糸を辺りに引き伸ばして、様子を探る。
「!?」
高速で切られていくチャクラ糸の感覚に相手は時空間忍術ではなく、ただ単に高速移動しているだけだという情報を得た。

タンクトップの男がサソリの隣に出現すると、飛び上がりながら拳を固めて一気に繰り出した。
「そこか!!」
サソリは、右手を握りしめてチャクラを集中させると突き出した。
二人の拳が互いにぶつかり合い、周りの空気が鋭くなっていく。

「あらあら?やるねー。俺様の高速移動に付いてくるなんてねー」
「......」
サソリのチャクラを込めた拳とタンクトップの男の拳がぶつかった瞬間に衝撃波が発生し、舎弟の不良と縛られて動けない不良が吹き飛ばされた。

「うあああー!リーダー、俺らが居ることをお忘れなく!」

湾内は、コンテナに捕まりながらサソリの変化に気づいた。
左腕から流れ出る血に呼吸が早くなってしまう。

サソリさん
ケガを......

タンクトップの男は、堪えているサソリの形相を上から見下ろすと嬉しそうに歯を見せた。
「じゃあじゃあ!もう少しだけギアを上げるかねー」
拳と拳で拮抗しているサソリの目の前から姿を消けした。サソリは不意に前からの衝撃がなくなり、前のめりになりバランスを崩した。
「!?」
「こちらねー」
タンクトップの男が一瞬でサソリの真横に移動し、負傷している左腕目掛けて拳を叩きつけた。

「がああああああああ!」
ボキッ!
ミチミチと皮膚が裂けていく音と共に、サソリの左腕が変な方向で曲がった。

サソリは壁に吹っ飛ばされていき、地に倒れ込もうとする前にタンクトップの男がサソリの頭を握り締めると倉庫の壁にサソリの頭を擦りつけながら、徐々に速度を上げていく。

「じゃあじゃあ!一緒に光速の旅にでも行こうかねー」
「ぐうううう!」
壁にサソリの頭を擦りながら、タンクトップの男は、湾内達の視界から消えて衝撃音と激突痕だけが不気味に増えていく。

「あ、ああ」
湾内が必死に彼の所在を見つけようと目を凝らすが見えない。
そして、倉庫にあるパイプに当たり、へし折れるとガスが噴射された。
サソリは宙に出現し、タンクトップの男がすぐさま移動し、両腕を組むと振りかぶりサソリを地面に叩きつけた。
「があっ!?」
地面に当たり、バウンドをするとサソリはうつ伏せの形となる。
タンクトップの男は、空中で狙いを定めるとサソリの背中に自分の全体重をぶつけ、そのままサソリの背中に座り出した。
折れた左腕も下敷きとなり、折れた骨が皮膚を抉った。
「ぐああああ!」

「ふうふう!久しぶりに本気で動いたねー」
サソリの尋常ならない声に湾内は、走り出してタンクトップの男に向かって鉄パイプを両手で持って殴りつける。

「サソリさん!今、助けますわ!」
鉄パイプを持った経験が乏しい湾内は、フラフラと危なっかしい腕でサソリの上に居る男を殴る。

湾内......!

タンクトップの男は湾内の攻撃をもろともとしないように耳掃除をすると、息で指先を吹いた。
「うるさいねー。お前たち」
「おっと常盤台のお嬢さんは、俺らが相手してやるぜ」

サソリのチャクラ糸の制御が切れた金髪の男も折れた腕を庇いながら、立ち上がり他の二人と合流すると湾内を抑えるように羽交い締めにした。
「離してください。サソリさんサソリさん!」
タンクトップの男の舎弟が湾内の腕を掴んで、引き倒した。

サソリは、潰されている左腕の激痛に耐えながら、歯をくいしばった!
右手にチャクラを溜めて、片腕だけでタンクトップの男を背中に乗せたまま逆立ちに近い持ち上げ方をした。
「や......め......ろ!」

徐々に宙に浮いていく身体に驚きながらもタンクトップの男は、余裕そうに笑う。

「あらあら!凄い力ねー。だけどふん!」
タンクトップの男が力を込めると電撃が流れて、持ち上げているサソリに流れていく。
「ぐううう!」

サソリの右腕が崩れて、再び下敷きの形となった。
サソリの弱点である電撃を喰らい、サソリの身体に力が入らなくなる。

そうか......分かったぞ
コイツ雷遁使いか
しかも、体術に秀でたタイプだ
雲隠れの雷影と同じ能力だな

タンクトップの男は、電撃を自分の体内に流し、極限までに反応速度を引き上げた武闘派だった。
能力自体は、御坂と比べれば弱いが男の屈強な身体全体が人体の極限の速度に上がると殺傷能力は、桁違いに上がる。

「嫌、嫌!サソリさん」
サソリには見えない角度で湾内が悲鳴を上げている。

不良の一人が湾内の上に馬乗りになって、湾内の口元を押さえた。
湾内は精一杯の力で抵抗するが、抑え込まれ、サソリの方に無理矢理視線を向かせる。
「さあ、あそこでアイツが殺される所でも見るんだな」
「んーん!」
上から男三人分の体重で抑えつけられた湾内は、口から血を流してもがいているサソリを見るとポロポロと涙を流した。

「さあさあ!諦めなさいねー、結局威勢だけじゃ、俺様には勝てないねー」

湾内の悲鳴と自分の無力さに打ちのめされたサソリは、悔しさに身体を震わせた。
「キ......サ......マ......ら」
サソリの身体からチャクラが溢れ出して怒りに呼応するように両眼に紅い巴紋が浮かび上がった。
巴紋は、更に重なり合い万華鏡写輪眼を形成する。

「!?」
押しつぶしているタンクトップの男の下でサソリを中心に燃え盛るような青色のチャクラが出現し、徐々に鎧のような形を造り上げる。

骸骨のような手が鎧から飛び出した。
上に乗っているタンクトップの男を鷲掴みにするとそのままに壁へと投げ付けた。
タンクトップの男は、目付きを鋭くした。

能力者だったねー......

重しが無くなったサソリは、フラフラと立ち上がると再び、チャクラを溜めて骸骨の手を出現させたまま、湾内に乗っている不良男達を骸骨の手で殴りつけた。
「がっ!」
「ぎゃっ!」
次々と壁やコンテナに叩きつけると力なく不良男は、力なくグッタリとした。

「大丈夫か!」
サソリが駆け寄った。
「はあ、はあ......はい、でもサソリさんが」
変な方向に曲がった左腕を気にして、湾内が心配そうに呟いた。
「オレは大丈夫だ。捕まれ」
サソリは、万華鏡写輪眼に意識とチャクラを集中すると渦を発生させた。

時空間忍術 神威!

渦に二人を吸い込ませて脱出しようとするが
軽い火花と共に発射された鉛がサソリの足を貫いた。
「ぐっ?!」
足が言うことを聞かなくなり、サソリは右足から崩れ落ちるように倒れ込んだ。
撃たれた足から血は止めどなく流れ出ている。
「さ、サソリさん?!」
サソリのチャクラが乱れ、時空間忍術が解除されてしまう。
チャクラの反応は小さくなり、万華鏡写輪眼がただの巴紋になり始めた。

な、何が!?
起こった!?

タンクトップの男が銃口から煙を吐き出しながら銃を構えた状態で立っていた。
傍らには、銃やナイフ、手榴弾が入った武器箱を持って来ていた。
良く見れば腰元には、さっきまで装備していなかった武器を身に付けている。

「なるほどなるほど!能力者だったねー。だったら容赦する訳にはいかないねー」

サソリに向けて、更に何発かの銃弾をパンパンと発射した。
「きゃあ!」
サソリは、隣にいた湾内の腕を掴むと自分の背後に回した。
サソリの身体に銃弾が当たると、その場に崩れ落ちるように倒れた。

「じゃあじゃあ!トドメでも刺そうかしらねー」
タンクトップの男が電撃を見に纏い、再び凄まじいスピードでサソリと湾内の所に移動していく。
懐から真っ白に光るナイフを手に持ち、距離を凄まじい勢いで詰めた。

サソリは倒れたままピクリとも動かない。
男は、ナイフで倒れているサソリの首目掛けて切り掛かった。

しかし、そこにサソリの姿はなく地面にナイフが刺さった。
周りを見れば、舎弟の不良達が血を流して倒れていた。

「幻術だ。阿呆め」
サソリは、写輪眼を使いタンクトップの男に幻術を仕掛けていた。
そして、骸骨の手で殴った不良男達をチャクラ糸で操り、サソリと湾内である誤認させる。

サソリは湾内を連れて男が運んできた武器の箱に手を入れるとショットガンを手に取った。
「!?」
要領を得ないタンクトップの男が突き刺さったナイフを引き抜こうと力を込めた。

「てめえ!よくもオレの足をやりやがったな。確かこんな道具で」
サソリは足を引きずりながら、男にサソリは片腕のままで銃口を向けると相手の見よう見まねで引き金を引いた。

凄まじい爆音と共に弾丸が発射された。
弾丸はタンクトップの男に当たると巨大な体格ごと壁際に吹き飛ばした。

「い!?」
サソリも不安定な片腕、踏ん張りの効かない足によりショットガンの反動でバランスを崩し、ひっくり返るようになり頭を打った。
「ぐっ!何だよこれ?!」
予想外の反動に身体中から痛みが走った。
威力は高いが、あまり自分には上手く扱えないと理解したのか、サソリはショットガンを床に置いた。

「サソリさん!これ使えますか?」
湾内が武器の箱から手榴弾を手に取った。
「何だそれ?」
「さあ、わたくしにも」
サソリは手榴弾を手に取ると、物珍しそうに眺めた。
「この丸い部分は何でしょうか?」
湾内が手榴弾の安全ピンを引っ張ると少しだけの抵抗の後スルッと抜けた。

「?!」
シューと音がなり、煙が出始める。
サソリの写輪眼が大きなチャクラを感知し、急いでタンクトップの男に思い切り投げ付けた。
同時にサソリは、来るであろう爆発から湾内を守るために、自分の身体を湾内に被せた。
手榴弾は、タンクトップの男の近くで爆発し辺りを巻き込んで、砂埃を立ち込めた。

「あんな仕掛けだったのか。危ねえな」
起爆札みたいな感じか?

湾内は、誇らしげに手を叩いた。
「わたくし、お役に立てましたか?」
「まあ、結果的にな」

すっかり静かになった倉庫内でサソリは、暁の外套を破くと鉄パイプで曲がった左腕を固定するように巻いた。
更に脚の撃たれた箇所も同様に。

かなり手こずったな。
写輪眼がなかったら、絶対に勝てなかった。
サソリの写輪眼は既に紅い光を失い、鎮静化している。
さっさと戻るか......
湾内の腕を引っ張りながら、サソリは足を引きずりながら、ゆっくりと歩き出した。

「サソリさん!とてもカッコよかったですわ!」
「そうか?」
結構、無様な姿だったと思うが。
湾内は甘えるように掴まれているサソリの右腕に頬をスリスリし始めた。

刹那、サソリの背中にナイフが突き立てられた。
「ぐっ!?」
サソリが首だけを後ろに向けると、背後で火傷と血を出しながらも野獣のようにサソリを見据え、白く光る刃先を突き刺しているタンクトップの男がいた。
「き、キサマ!」

「サソリさん!」
サソリは、湾内を突き放すと口からボタボタと血を出しながら、サソリは指を動かした。
サソリが先程、置いたショットガンをフワフワと遠隔操作で持ち上げた。
「湾内、伏せろ!」

「は、はい!」
湾内は、頭を抱え込むような姿勢になって防御姿勢になる。
サソリは、中指を下に折り曲げた。
ショットガンの引き金が引かれ、タンクトップの男の背中に直撃すると、サソリも男と一緒に窓を突き破り、外へと押し出された。
「があ!」
「ぬ!」

「はあはあ!ここまでやるとはねー」
サソリな馬乗りになったタンクトップの男は、ナイフを更に抉るように奥に刺した。
「ぐうう!?」
サソリは、再び中指を下に曲げてショットガンをタンクトップの男に向けて発射する。

ショットガンが直撃し、タンクトップの男は衝撃で前のめりになるがナイフを固く握り締めて離さない。
弾丸は当たっているが、電磁能力と分厚い筋肉に阻まれて決定打にはならなかった。

タンクトップの男は、ビリリと電撃を放出すると、ナイフに向けて電撃を放つ。
「こ、コイツ!」
歯が欠けた口で男は、ニヤリと笑う。
「白光、ホワイトファング!」
突き刺したナイフの先端から電流がサソリの体内に侵入し、サソリの身体が反射的に大きく仰け反った。
「ぐがあああ!」

反射的に折れまがった中指に呼応し、ショットガンが発射された。
タンクトップの男は、力を緩めたらしく衝撃にサソリの背中から転げ落ちた。

身体の中へ電流を入れられてしまい、サソリは奇妙な痙攣をしている。
タンクトップの男は、息を切らしながら痙攣しているサソリを蹴り付けた。

「はあ、はあ......まさかまさか!ホワイトファングを使うことになるなんてねー。飛びっきりの技だから、暫くは動けないね......」
またしても戯けた感じの声だが、目は完全にサソリに向けた明確な殺意を滲ませる。

ホワイトファング......
白い牙......

タンクトップの男は、サソリの背中に突き刺さっているナイフを手にすると、一気に引き抜いた。
サソリの頸動脈を白い牙で狙いを付けるように頭を片腕で固定した。

「ま、待ちなさいですわ!」
湾内が空中で静止していたショットガンを手にすると、震える手で狙いを付けている。
「サソリさんから離れなさい!さ、さもないと、う、撃ちますわよ!」

タンクトップの男は、無視するようにナイフを振りかぶった。

そんな手で何が出来るかねー?

タンクトップの男は、鋭くナイフを突き刺そうと動かした。
「死ね!」
「キャアアアアアアア!」
湾内は、必死にショットガンの引き金を引いた。
轟く爆音と凄まじい反動に湾内は倉庫の中に吹き飛ばされて、手がビシビシと痺れてしまい、ショットガンを何処かに飛んで行ってしまった。

さ、サソリさん.......

湾内は顔を真っ青にして窓の外へと恐る恐る破れた窓枠から覗き込んだ。

ショットガンの弾は、見当違いな場所に当たり、積まれていたダンボールが燃えていた。

抑えていたはずのサソリの姿がなく、ナイフだけが地面に突き刺さっている。
「!?」
タンクトップの男が慌て、辺りを見回すと赤い髪のツインテールの女性がサソリの襟首を掴んで、離れた場所に立っていた。
「白井さん!」

白井は血を吐き出しているサソリの頬にある血を拭うようにそっと撫でた。
「全くとんだ無茶がお好きのようですわね、貴方は」
「はあはあ」
「 後は、私にお任せくださいな」
負傷したサソリを湾内さんに預けると、白井は噴火しそうな怒りを極限まで堪えた。
白井は、タンクトップの男と向き合うと、息を吸い込み深呼吸をする。
「風紀委員(ジャッジメント)ですの!暴行傷害の現行犯で拘束します!」

「ジャッジメントだとねー!」
タンクトップの男が電撃の力で高速移動を開始し、ナイフで斬りかかろうとするが、白井は直前でテレポートをして躱した。
「悪いですけど!私は今ドタマに来てますから手加減は致しませんので!」

「!?」
「バカ正直に突っ込んでくるだけなら、別に待っている必要はないですわ」
白井が男の頭上に出現すると、脳天に蹴りを入れて、バランスを崩し、もう一度テレポートで背後に回ると体当たりをして転ばせた。

「く!」
タンクトップの男は、白井の足を掴もう身体を捻った形で手を伸ばすが、白井が携帯している金属矢をテレポートで飛ばして、掌を串刺しにした。
「ぐあああああー!」
必死で貫通している針を抜こうとするが、白井は冷酷な目付きでタンクトップの男を睨みつけると首根っこを掴むとテレポートで燃えているダンボール上に男を移動させた。

「ギャアア!あちい!み、水!」
燃え盛る炎から転がるように逃げ出した。
白井は、ツカツカと歩き出すと倉庫外で走っている一つのパイプを叩いた。

「湾内さん、何やら水が欲しいみたいですわよ!」
白井が窓ガラスをテレポートさせて、パイプを真っ二つに切り裂いた。
パイプの中から水が勢い良く溢れていった。
湾内は、最初はよく分からないような表情を浮かべたが、膝枕をしている傷だらけのサソリを見ると、決心したように目元に力を入れた。

湾内は自分の能力を使い、水流を操作するとタンクトップの男の顔に水の塊をすっぽりと被せた。
「がぱ!ゲホゲポ」

空気を吐き出して、自慢の筋肉で水の塊を取り払おうと腕を揉むが、自慢の筋肉でも水を跳ね除けることが出来ずにもがくだけだった。

「サソリさんにヒドイことをした罰ですわ!反省してください!」

急速に失われていく酸素にタンクトップの男の意識は朦朧とする中、タンクトップの男は電撃を放ち、顔周辺の水を電気分解で気体にした。
水は、水素と酸素で出来ている。水素が電撃による火花で爆発を引き起こした。

「があは!?」
タンクトップの男は吹き飛ばされたが、解放されたことに空気を慌て吸い込んだ。
「まあ、なんと無茶なことを!」
白井が呆れたように言った。
「理科の実験で習いませんでしたの?電気は怖いものですと」

タンクトップの男は、ナイフを構えて体内に溜めた電気を使い高速で移動した。
白井ではなく、負傷しているサソリと湾内目掛けて一気に距離を詰めていく。

「では、電気のプロの方にご教授して頂きましょうか。ねえ、お姉様!」

すると、蒼い電撃が出現し、高速移動している男の持っていたナイフを正確に消し飛ばした。
兵器とも取れる巨大な蒼い光が現れた場所を慌て見ると。

怒りに震える御坂が電撃をバチバチと充填しながら、路地裏から静かに歩いている。
「アンタ......覚悟出来てんでしょうね!」

タンクトップの男にしてみれば、自分の完全序列トップの最強の電撃使い(エレクトロマスター)御坂美琴だった。
「第3位!?」
ナイフを溶かされた男は、ナイフを投げ捨てると一目散にその場から舎弟を置いて高速移動で逃げ出した。
「冗談じゃないね!レールガンと殺りあえるかねー」

御坂は、地面を思い切り踏みつけると大量の電撃を放ち、地面ごとタンクトップの男を吹き飛ばした。
「ねー!?」
視界上に出現した男に御坂は、更に追い討ちのように鉄骨を磁力で操ると投げつける。
「キモい口癖ね!」
鉄骨の群れにタンクトップの男は、壁に叩きつけられた。
御坂の磁力で鉄筋の壁に鉄骨で挟み込みように固定した。

不意に現れた最強クラスの常盤台のメンバーにタンクトップの男はたじろいだ。

御坂は、痛めつけられたサソリを見ると更に逆上したように冷たい顔でタンクトップの男に近づく。
男の肩に手を置くと、男の電流とは比べ物にらない大電流を身体中から迸らせた。
「悪いけど......アンタを許す気にはならないわ。サソリにあんなケガをさせて、湾内さんを傷付けようとしたアンタにはねぇぇ!」
蒼い太い電撃の柱が出現し、タンクトップの男を焼き尽くすように包み込んだ。
「あががががが!」

容赦のない電流を浴びせると男は、口から煙を吐いて気絶した。
御坂は手をパンパンと払いながら、サソリの元へと戻った。

「湾内さん!無事ですの?」
黒髪の泡浮が慌て掛けよった。
「泡浮さん!皆さん来てくださったんですの!」

泡浮が連れてきたジャッジメントによりタンクトップのリーダーの男と三人の不良が暴行容疑で拘束された。

「どうサソリの傷は?」
「かなり悪そうですわ。すぐに病院に連絡を」
「わたくしを守る為だったんですの!サソリさんが居なかったら、わたくし......」
湾内の脳裏にあの取り囲まれた時を思い出すと震えが止まらない。

「良くやったわアンタ!ちょっと見直したわよ」
「まあ、サソリならやってくれると私は信じてましたわ!」

湾内は、顔を真っ赤にしながらグッタリと倒れているサソリの頭を抱きしめた。
「!?」
「ありがとうございます。サソリさん」
愛おしそうにそっと胸元に抱き寄せた。
サソリには湾内の体温と心拍の音を感じた。
「わ、湾内さん!大胆ですわね!」
「離れなさいですわ!なんて羨ましいことを」
「まあまあ、今回は湾内さん頑張ったんだから良いじゃない黒子!」
「私だって、レベルアッパーの後始末で頑張ってましたのよ!」
涙を流して抗議した。

湾内はフワッとした笑顔を見せると、嬉しそうにサソリの頬にキスをした。
「!?!」
「「「な!ななななな何をー!!?」」」

「わたくし決めましたわ!絶対にサソリさんを振り向かせてみせますわ!サソリさんに見合う女性を目指しますわ」

「さ、流石に離れなさいですわー!もう、我慢できませんの!」
くっ付いているサソリと湾内を引き剥がそうと両者の頭を持って自分の両腕一杯に拡げる。

だが、当人のサソリは冷や汗をダラダラに流し始めた。
「サソリ!どうしたの?」
「あ......チャクラが無くなりそうだ。マズイ、使い過ぎた」
サソリの顔色がみるみる悪くなり、その場でグッタリと顔を伏せる。
「サソリさん!」
湾内が心配そうに覗き込むのを横目で見ながら、サソリは意識を失う直前にこう思った。

面倒な事になった......な

いつのまにか感覚が遠くなって、サソリは眠ったように意識を失った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧