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Blue Rose

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第九話 戸惑う心その十二

「姉さんは弱いわ」
「そうなの?」
「ええ、そうよ」
「そうは思えないけれど」
「人は誰でも弱いのよ」
「僕も姉さんも」
「そうよ、人は弱いものよ」
 そうだというのだ。
「このことは自覚することよ」
「強いものじゃないんだね」
「だから迷って悩んで苦しむのよ」
「誰でも」
「そう、それに大小はあってもね」
 それでもというのだ。
「弱いのよ」
「ううん、弱いんだ」
「そしてその弱さをね」
 それをというのだ。
「自覚してこそよ、それからなのよ」
「弱いって自覚して」
「何かが出来るのだと思うわ」
「人は」
「そう、太宰治だったからしら」
 昭和の、それこそ殆どの者が知っている小説家だ。走れメロスや富嶽百景等が有名だ。
「その弱さを自覚するからこそ優しくなれる」
「そういうものなんだね」
「そして何かが出来る様になるのよ」
「弱いってことよ」
「そうなんだ」 
「だからね」
 それで、というのだ。
「私は自分が弱いってね」
「自覚しているんだ」
「人は弱いものとね」
 そうも言ったのだった。
「確信しているわ」
「じゃあ僕も」
「弱いって思っていて、そして」
「そして?」
「弱いことは恥ずかしくないことよ」 
 弟のその目を見ての言葉だ。
「全くね」
「恥ずかしくないんだね」
「当然のことだから」
「人として」
「そう、だからね」 
「その弱さを自覚してなんだ」
「龍馬君に対して言うべきかも考えてね」
 優花の目を見たままだ、そのうえでの言葉だった。
「いいわね」
「そうすればいいんだね」
「そして龍馬君も人だから」
「弱いんだね」
「誰でもよ」
 人間ならというのだ。 
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