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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第十二話 竜王の刃、暴風の再来

シーカーサイド

「吹っ飛びな!ラスターバイト!!」
弓から放たれた龍の矢が、牙を剥き出して放たれる。
それはクウトを攻撃するが、その刀で全て弾かれた。
「……うえっ。行動パターン読まれてるなぁ」
「パターン?」
隣で短剣を構えるクレイが質問をしてくる。
「一種のAIの原理だな。パターンを算出してその攻撃に対応する。……まさかとは思うがな……」
俺は弓を投げ捨て、側にある槍ーーー烈火を握り、振り回す。
「さて、と。もう一丁仕掛けますか!」
「連続ソードスキルだね!」
クレイは短剣を構えて、ソードスキルの準備をする。
クレイがソードスキルと思っている物は、俺が習得している«天城流»の技なのだが……まぁ、そこのところは言わない事にしよう。言ったところで理解されないし。
「カウント三で突撃だ。行くぞ」
「うん!」
クウトを挟むように走って位置取りをすると、
「■■■■■■■■■!!」
クウトが俺に襲い掛かってくる。
「対応が速いがーーーー」
烈火が光を帯び、それは焔となる。
「俺の範囲は、そう簡単に取らせるかよ」
天城流槍術«蒼列牙»。
この技は範囲の割に、使ったあとの隙が大きい。ことPvPに置いてはあってはならない隙だ。ソードスキルじゃないから硬直は無いが、硬直を除いてもかなりの隙が空く。
「そうらっ!」
ドゴォ!と言う音と共に確かな感触。だがーーーー
「……アレを掴むかよ」
感触は確かだ。だが、それは掴まれた感触だ。烈火を掴まれた俺は近くの武器を取ろうとしてーーーー
「■■■■■■■■■!!!」
「おわっ!!」
近くの民家にぶん投げられた。
背中に衝撃。ペインアブソーバは切ってないのでそれなりの感覚がある。
「ちょっ!!」
クレイが攻撃を停止させてしまう。
「馬鹿野郎!!」
俺が叫ぶも遅く、硬直した体にクウトの刀が切り裂いた。
「きゃああああっ!!」
「くそっ!!」
腕の短刀を出し、突撃する。勿論、ジグザグに走りながら捉えさせはしない。
「うぉおおおおおっ!!」
「■■■■ーーーーーっ!」
その短刀を、クウトは見事防ぐ。
「嘘だろ!」
ドゴォ!と言う音がし、俺は吹き飛ぶ。
再び地面に叩き付けられるが、転がりながら体勢を入れ換え、足でその勢いを弱める。
「バーサーカー……ヘラクレスよりヤバイバーサーカーだな。いや、ゴッドハンドより凶悪ではないか」
烈火を呼んで掴むと、そのまま高速の突きを放つ。
しかし、それは避けられ、首に反撃を喰らって地面に叩き付けられる。
「おいクレイ!ソードスキルをーーーーっ」
クレイの方を見ると、クウトはクレイの側に居た。
(いつの間にーーーー!)
俺は戦慄する。ゲームの時の俺ほどのチートでは無いが、反撃して接近すると言う芸当は最早化け物レベルだ。
「あ……」
クレイは動かない。いや、動けないのだ。
クウトから放たれる凶悪なプレッシャーに、真正面から向けられたそれに押し負けた。
「くそっ……タレェ!!」
起き上がるが、すぐに地面に沈む。
クウトはその刀を振り上げーーーー
「■■■■ーーーー!」
クレイに放った。



クウトサイド
シーカーサイドより約一分前。

「フィアナのせいで時間食ったじゃねぇかよ!!」
「しょうがないじゃんマスター!設定とか色々私は不得意なんだってー!!」
フィアナの弁明を聞き流しながら俺達は迷宮区画を突破し、コリニア周辺のフィールドに来ていた。
あれからすぐにホロウエリアで俺の試験データを勝手に拝借し、ナーヴギア回路をそっちに接続して、動けるようになったのがほんの一時間前。
フィアナによって中央コンソールについて、設定とか色々やって終わらせたのが四十分前。
そして今、フィールドに来たのがさっきと言うところだ。色々フィアナのせいだと思うのは俺の気のせいじゃない。
「と言うか何でプレイヤー状態なんだ?」
俺は走りながら素朴な疑問を口にする。
「え?だってこの方が動きやすいもん」
フィアナの答えに、なんとも言えない物を感じた俺は、それを振り落とす様に口を閉じる。
(……我ながら、俺の回りには変な人やゲームプログラマーや龍の娘が集まるんだ?)
まぁ、疑問が更に増えたわけだが。

そういう運命だからby作者

「……何か変なの受信した」
「電波人間?」
「ヤメロ」
俺は否定すると、目の前にコリニアの街の門が現れる。フィアナによると、既に街は圏外になっているらしい。
「悪趣味してるぜ全く……」
「父様絶対眉間に皺寄ってるか、迷惑そうな顔してるよね」
「想像できてしまうから怖いなあの人は」
その顔を思い浮かべてしまう所で首を振り、地図を見る。
フィアナ特製の、ガイト探知地図だ。
「反応は……ゲートの方か」
「急ごう!!」
フィアナが武器を俺に投げ付けると、薙刀と長剣に姿を変え、装備が更新される。
「……うん、チートは駄目だよな、チートは」
「緊急事態!!」
「解ってるよ!!本当のゲームなら誰だってチートしたくないのが本音だろうが!!」
まぁ、開発者の一人の俺がいっても説得力皆無。
フィアナは呆れた目付きで俺を見ると、俺はその視線が離れるように速度を上げる。
そしてーーーー

「ガイト!」

目の前にガイトの姿が。しかし、その側にはクレイ。
「アイツ何で……!いや、それよりもーーーー」
長剣を抜いて、走りながら構える。
長剣は赤い光を帯びると、システムアシストが働き、その速度を上げて割り込んだ。
双錬刃ソードスキル«カリドリオブレイザー»。
振り下ろされた六本の刀をその長剣で受け、防いだ。
ギィン!と言う音と共に痛みが走るが、何とか持ちこたえて横っ面に閃打を叩き込む。
「■■■■■!!」
よろけながらも立つガイトに、更にソードスキルを叩き込む。
双錬刃ソードスキル«ガルガルトバスター»。
今度は薙刀と長剣の連続技で、ガイトを退ける。
「ふぅ……」
退けた俺は、薙刀を地面に突き刺すと、フィアナに肩を支えられたクレイを見る。

「よ、クレイ。待たせたな」

たわいもない、何時もの挨拶をすると、クレイは目に涙を浮かべて微笑む。
「もぅ……君は何時も何時も、遅いんだから……」
クレイの体を見て、俺は思う。
傷付いた武装の隙間から、クレイの白い肌や、身に付けている物が少しだけ露出していた。そきて、いつもは綺麗な髪も、今や煤だらけだった。
「全く、無茶しやがって……」
近付くと、クレイが目を瞑る。
俺はその頭を撫でると、クレイは驚くように目を開けた。
「……怒って、無いの?」
「じゃー逆に怒られてぇの?」
すると、クレイは首を横に振った。
「じゃー良いだろ?お前は怒られるようなこたぁしてねぇ。お前が何でアイツを倒そうとしたのかもその理由も聞かねぇ。でもーーーー」
その蒼い外套を風になびかせながら、俺は言う。
「俺はアイツを許さねえ。ましてや、俺の大切な奴に手ぇ出したんだ。その罪は消滅させても消えはしねぇ」
クレイはクスッと笑うと、挑発するように言う。
「じゃあどうするの、来人君?」
あの時と同じように、俺の本名を出してくるクレイ。
その言葉で、俺は口をニヤリとして、言う。
「お前の敵を討つに決まっているだろう?ーーーーだがまぁ、お前の分までやってしまっても構わんのだろう?」
「うん、行っちゃえ!«暴風戦王»!!」
「イエス、マイーーーー」
薙刀と長剣を構えて、その言葉を口にする。
「マスター!」
地面すれすれで体を倒し、ガイトに接近する。
「ライトォオオオオオオ!!」
ガイトが吠える。
「「お前にだけはその名前を口にされたくねぇよ!!」」
声が被り、俺の攻撃がヒットする前にガイトの背中で爆発が起こる。
銀髪の男が持っていた銃が、ガイトに当たっていたのを感じた俺は、そのまま風を纏って疾走する。
「キサマラァアアアアア!!!」
刀を捨て去り、両手用の斧を取り出す。
「悪手だっての!!」
斧を避けながらその速度を上げていく。
俺の元々のスタイルはヒット&ヒット&アウェイ。当てて、当てながら逃げる。俺の«暴風戦王»はそこから取られている。だからこそ、その風を見せよう。
「付いてこれるなら付いてきな!嵐……いや、暴風に付いてこられるならなぁ!!」
「ライトォオオオオオオ!!」
斧を叩きつけ、俺に攻撃するもそこに俺は居ない。幾ら攻撃しようとも俺を捕まえられない。
俺は風。何者も掴めない大いなる風。嵐にも、強風にも、暴風にも今の俺を飲み込めはしない。
何故なら俺は«暴風戦王»クウト。風を纏いし風の剣士だ!
「最高速だ!派手に持ってきな!!」
風が身を包む。風が俺を呼ぶ。
ならば行こう、その場所に。
双錬刃最高速ソードスキル«エアリアルオーケストラ»。
「風はーーーー自然の強さだ」
「グガ……ッ」
ザッ!、と銀髪の男の隣に停止すると、ガイトが崩れ落ちる。身体の隅々まで斬撃跡が残っている。
「HPが全損しない……か」
「風でもキツいのか?」
銀髪の男がニヤリと笑う。
「バカをいえ。風は自然の強さだ。カマイチタとかあんだろ」
「カマイチタって妖怪の一種だろ?」
「自然現象だろうが」
いい争いをすると、ガイトが接近してきていた。
「ライトォオオオオオオ!!!!」
「「しつけぇなテメェも」」
同じ声質で、同じことをいい放つ。
「テメェみたいな奴に」
「俺の名前を」
「「言われんのが腹立つんだよ!!」」
同時に急所に蹴りを放つ。
ガイトはそこを押さえると、地面に崩れ落ちる。
「ガ……」
「「慈悲はねぇ!食らいな!!」」
銀髪の男が銃を持つと、ガイトを蹴り上げて銃を乱射する。
「オラオラオラ!鉛なら沢山あんだよ!!」
散々撃った後、その銃を投げ捨て、新しい銃を取り出すと、頭上で浮かんでるガイトに向けた。
「食らいな!ブラスターク・ブラスト!!」
その砲撃はガイトを包み込み、次層の壁にぶつけた。
「うわぁ……遠いなおい」
「いっくよーマスター!!」
クレイを置いたフィアナが叫ぶと、警告が出るが、それを見ないでYESを押す。

「双錬刃Mod«同調(シンクロ)»」

フィアナがモンスター«バハムート»に戻ると、粒子になって俺に纏うと、蒼いフルアーマーに背中に翼のついた物が装備された。
「……一応、俺はチート非推奨なんだが」
『ごちゃごちゃ言わないの!!』
へぇーい、と気の抜けた声で薙刀と長剣を構えて、空を飛翔する。
「どっらぁあああああっ!!」
落下してきたガイトに、溜めに溜めたソードスキルをぶっぱなす。
双錬竜王刃ソードスキル«バハムート・ディザスター»。
竜王の顎を思わせる構えで飛翔し、ガイトに上下の斬撃を放った。
「テメェは、コレで終わりだ」
薙刀と長剣を振ると、微かにガイトの声がした。
「シュラウドォオオオオオオ………」
そして、硝子が砕ける音がし、ガイトはこの世界から消えた。
俺は地面に降りると、バハムートから戻ったフィアナが言う。
「お疲れマスター!」
「もうぜってぇあんなチートしねぇかんな!!改造しすぎだアレは!!」
「えー?双錬刃はあんなスキルでしょう?」
「なーにーがーだ!なんだ!?ステータスハントの事か!?一時的だろアレは!!」
フィアナとの口喧嘩をしていると、銀髪の男がクレイを連れて近付いてきた。
「よぅ、お疲れさん」
「クウト君、お疲れ」
銀髪の男は笑い、クレイは笑顔で俺を迎えた。
「それにしてもお前さんも隅に置けないな。こんな可愛くて献身的な彼女がいるなんて、羨ましいぞこのやろう」
「か、彼女じゃないです!!でも、クウト君が望むならなりたいけど……」
後半は声が小さくて聞こえなかったが、クレイの何時ものことなので無視する。
「彼女じゃなくて大切な奴です。こいつは」
クレイを引き寄せて言う。
「俺の命と引き換えてもクレイを守る。それが今の俺の生きる意味です」
そう言うと、銀髪の男がちょっと微笑んだ。
「んじゃ、俺は帰るわ。後は宜しくやんな!」
銀髪の男は言うと、目の前から消えてしまった。
まるで、最初からそこに居なかったかのように。 
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