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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  九十五話 力と力

 
前書き
はい!どうもです!

さて、今回は四回戦。
少し雑になってしまったかもしれませんhが……すみません。

では、どうぞ! 

 
「さてさて、鬼さんどちらーっと」
歌うように呟き、リョウは遮蔽物に隠れつつ辺りを伺う。ステージは何というか、中国かどこかの路地の一角のような場所だった。
細い路地が幾つも通り、そこら中に五階建てだかなんだかの雑居ビルが連立している。ビルには漢字で何かが書かれた看板が架かっていて、電線が火花も散らさずに垂れ下がっていた。ビルとビルの間は狭く、あの程度なら簡単に飛び越えられそうだ。


ステージ
“置き去りの路地”

路地の向こうをのぞき込みながら、リョウは聞き耳のスキルを起動させる。……居た。東に400メートルと言った所か。

「ムーヴ……なんてな」
一人で言って一人で笑う。成程、立派な不審者であった。

――――


『んじゃ、やりますか……』
リョウが背中を押し付けるように立つコンクリのから出た所すぐの路地先数十メートル地点に、相手プレイヤー、“ダネル”は居た。
大柄な男で、メインアームが体の影に隠れて見えない。が、距離は近いし、充分に威力のある一撃をお見舞いしてやれる。

『食らっとけ!』
身体を反転。あらかじめ切り替えておいた20㎜ランチャーをぶっ放し、即座に隠れる。

破裂音がして、リョウの横を風が通り抜ける。それと同時に、リョウは再び路地から銃を向ける。既に、モードはアサルトライフルだ。
しかし……

「っち」
其処にダネルの姿は無い。破砕音は聞こえなかったし、試合終了では無いだろうが……

「っ!?」
直後、リョウの居る場所を、赤い線が貫く。どこからかと言うと、リョウの居る路地の右側の割れた窓の向こうからだ。
おそらくは予測線を見てすぐに、真横にあった扉に飛び込んだのだろう。

「やべっ!」
即座にリョウは自身が出て来た右の横道に逃げ込み、直後、ボシッ!と言う銃らしからぬ音がして……

先程までリョウが居た場所の左側の壁が、爆発した。

「はぁぁぁ!?」
爆風で吹っ飛びながら叫ぶ。全力で飛び込んだお陰で削られたHPは四割強と言った所だが……

『おいおいまたグレランかよ!?』
地面を滑るように転けつつ、そんな事を思っていると、此方に真っ直ぐ接近して来る……エンジン音をリョウの耳は捉えた。反射的に、リョウが逃げ込んだ路地の、吹っ飛んだリョウよりも先程の路地側に有る……扉を見た。直後……

ヴォオオオオオン!!

悪魔のような音を響かせながら、木製のその扉が、“蹴り破られた”

「……んな……!?」
派手に現れた相手の姿を見て、リョウは瞠目する。
まず目に付くのは、先程は大柄な身体に隠れて見えなかった背中に背負われた銃器。リボルバー式の拳銃のような給弾機構を持つそれはしかし、一見しただけでそれが拳銃で無いことが充分過ぎるほどに分かる形状をしていた。

大きいのだ。

銃自体の大きさは50センチ以上は有るだろう。銃口の下にはフォアグリップが付き、銃身上には光学照準器。何より銃口は……4センチ位の太さがあった。
その武器は、銃器に疎いリョウであっても、用途を知っていた。余りにも有名なフォルムを持つが故に、リョウの記憶にしっかりと染み付いていたのだ。

アサルトライフルの下部に付ける単発式ではない。リョウのXM29のような威力不足と言う問題も持たない。正真正銘、それだけの為に作られた銃器。

『グレネードランチャー……!?』
型番を、MGL-140と言う。
そして、先程から地の底から響く唸りのような音を響かせる……彼の両手に握られる鉄の塊。聞こえていた、エンジン音の正体。

「おいおい、また良い趣味してんじゃねえか」
「……どうも」
答えたダネルが、その切っ先を此方に向ける。

そう、“切っ先”だ。それは刃物であり、刃物では無かった。本来は木材のように、目が粗く斬りにくい物を削り斬る為に使う機械であり、エンジンの力を借りて動く、破壊の権化。

「チェーンソーとは……恐れ入る」
「……行くぞ!」
「っ!」
低い声と共に、ダネルがチェーンソーを斜め下からすくい上げるように振るう。
バックステップで下がったリョウの真横にあった置き看板が、火花を散らしてバターのように斬れた。

「バ●オのチェンさんかってんだ、てめえはぁ!!」
言いながらリョウはライフルをぶっ放す。
聞き慣れた破裂音と共に、発射された5.56x45mm弾が、ダネルの胴体に殺到する。この距離だ、外しようがない。が……

「……むんっ!」
「なっ……!?」
ダネルはそれを、巨大なチェーンソーの刃を盾にして弾いた。
殆どの弾が、その刃に弾き返され、数発が肩や足に当たり、掠り、ダネルのHPを減らす。しかし……
『少ねぇ……!』
減らせた量はざっと全体の7分くらい。先程のグレネードで減ったのだろう三割と合わせても半分も削れていない。

「……ぬぅん!」
「くおっ!」
そうこう考えて居る間に、ダネルが得物を振り下ろして来る。バックステップで避けるものの、右足に掠ってHPが一割吹っ飛んだ。

『糞っ……!』
近接戦闘用の装備は二本のナイフしかない。流石にチェーンソー相手にコンバットナイフでは分が悪すぎる。受けに回らされた瞬間ナイフごと叩き斬られるのがオチだ。と言うか至近距離で放たれた銃弾受けて無事とか、一体全体何で出来ているのだあれは。
そんな事を考えてつつ、リョウは更にバックステップで距離を稼ぐ。同時に……

「あらよっ!」
「……?」
ライフルを、斜め上に向かって発射した。マズルフラッシュが瞬いた銃口は2つ有る内の上の銃口で有るため、発射されたのは炸裂弾だが……
直後、ダネルの真上で、破裂音が轟いた。

「っ……!?」
反射的に上を向いたダネルは驚愕する。
大量の木材と鉄パイプが、彼の下へ雨のようにふり注いで来たからだ。
たちまち彼の居た場所にそれらが着弾し、ダネルは土煙の中に消える。

「……ヤッタカ」
棒読みで、リョウが言った。
彼の真上には、実はビルとビルの間に無理やり作ろうとしたかのような渡し足場(?)が有ったのだ。支えを吹っ飛ばせば即座に落ちるようなそれを炸裂弾で吹っ飛ばしただけなのだが、これで……

ヴォオオオオオン!

「時間稼ぎにもなんねえわな!」
叫びながらリョウは一直線に路地を奥へと走る。恐らくはバックステップとソーを盾にして難を逃れたのだろう。ダネルが残骸をぶち破って土煙の向こうから現れた。同時に、MGLを此方に向ける。

「ちっ!」
「っ!」
既に距離は50メートルは離れて居たが、そんなもの銃対銃では有って無いような物だ。とっさに真横のビルの中に飛び込み、同時に叫ぶ。

「jump!」
ブーストの作動した音がして、リョウは更にその場から離れた。直後、リョウが先程まで居た場所が爆発する。

「わりー風巻、ちっと遅刻するわ」
また彼女に怒られる未来が頭によぎり、リョウは辟易とした気分にさせられた。

――――

それから十数分。リョウの相手……ダネルはどうにも、少なくともこのステージに置いてはかなりの強さを誇るらしかった。

ダネルのステータスは、ファンタジーゲームで言うところの典型的な戦士タイプ。STR-VIT型だと思われた。初めから機動性を度外視する事で、性能の高い防弾プレートに加えて、チェーンソーとグレネードランチャーと言う高火力の装備を身につけている。
恐らくはステージによって切り替えて居るので有ろう武装を、今回は近-中距離用の物にしているのだろう。ステージタイトルでしっかり対策して来る辺り、ベテランだろう。

MGLの射程は400メートル届くかどうかと言う所だ。此方は1000メートルに達するが、このステージは遮蔽物も隠れる場所も沢山有るため、距離が開くとどうしても命中させる事が困難になる。そのため此方は嫌が応でも接近していく羽目になるのだが、あっちの射程距離に入れば爆撃されるわけだ。無論、爆発は遮蔽物を無視してくることも多々あるので、面倒なことこの上ない。

遮蔽物がこれほど邪魔だと思った事もなかった。

「まいったね……」
残りHPは一割五分。一応グレランを避けられるようになってきているが、一発でも喰らったらどちらにしてもアウトだ。
対し相手は……残り七割。

「回復アイテムあんなら言えよアイリの奴……」
まったくもって理不尽な文句だが、思わず口に出してしまって苦笑する。
どうやらダネルは回復アイテムを常備しているようで、一度長い間隠れた際に再び見てみると、まぁ見事にHPを回復されてしまった居た。

「やれやれ、どうすっかね」
この状況を打開する方法……無いわけではないが……それを今までのピンチでも使わなかった理由がリョウを迷わせていた。

『こういう切り札はね!本当に危なくなった時に取っておくと良いよ!出来れば……本戦まで使わない方が良いかも!』

「本戦まで……ね」
アイリが言いたいのは、まぁ簡単な話だ。
あれは一撃必殺になりうる切り札だが、そう言った切り札と言うのは初見にこそ最も効果を発揮するのだ。
もし使うならば、本当は本選で……しいていえば、本選出場者に見られてしまう可能性が高いこの予選では使わない方が良い。だが……。

「んなこと言ってもらんねぇよな……」
そう言って自嘲気味に笑う。
慣れていないなど理由にもならない。この状況まで追いつめられたのは自分の責任だ。ならば、そのしりぬぐいは自分ですべきだし、今ここでそれをしないと、アイリとの約束も闇風との約束も反故にする羽目になる。そっちの方が問題だろう。

その時だった。

ドガァン!という音を立てて、前方斜め下100メートルくらいの地点にある、右側の木の壁が砕けた。

「オーライオーライ。分かりましたよ」
最早逃げるのもおしまいにした方が良かろう。いい加減画面の向こうのギャラリーも嫌になっている筈だ。それに……

「そろそろあっちも我慢の限界っぽいからな!」
「…………」
ダネルが、建物外の非常階段を上っていた此方を見つけグレネードランチャーを向けた。発射。

「っと!」
逃げる。直後にリョウが居た地点が爆発。爆風でHPが少し減った。

「うおおぉぉぉっ!?」
更に逃げる。逃げる。
弾速が遅いせいか、グレランの弾は余りリョウに直撃はしない。しかしどちらにしても爆風が追いかけて来るそれは十分恐怖を誘う物で……

「そっい!jump!」
最後には、リョウは踊り場から屋上へと飛び込むように入った。同時に非常階段が崩れる。建物内の階段は既に崩落していたので、これでこの建物の屋上に来る手段は無いはずだ。残るは……となりの建物の屋上に上るしかない。その間が、勝負だ。

「よっ……と」
リョウはアイテム欄を操作する。自身のメインアームであるXM29を外し、代わりに“それ”を装備する。

「さーて、来るならこいや」
ニヤリと笑って、リョウは言った。

────

「…………」
ダネルはゆっくりと、扉を開く。
内階段から屋上に続く階段を上がり、相手である女が居るはずの建物のとなりに来た。出る瞬間に攻撃されることを考え、開けてからしばらくは飛び出さない。そして……

「……っ!」
一気に飛び出し、となりの建物に、銃口を向けた。
そこに、そいつが立っていた。

「よぉ……やっと来たか」
そいつは言った。既に銃口は此方に向けられている。しかし見慣れた筈のそれをみて……ダネルは瞠目する。
何故なら、それが、見慣れた物では無かったからだ。

「そんじゃ、喰らえ」
そしてそれが、その一瞬が大きな隙となったことを、ダネルは認めなければならないだろう。
チェーンソーを立てにする暇も無かった。
次の瞬間、彼は“五体をバラバラにされて”ステージから退場した。
最後に、視界に《You are Dead》が表示される中、彼は小さくつぶやいた。

『……は、反則だ……そんな武器』

────

なんとか、リョウは勝者としてそこに立っていた。
毎回毎回HPをギリギリまで減らしての勝負は正直なところ心臓に悪かったが、これで何とか本戦には進める。

「ふぅ……助かったぜ……」
煙を上げる両手で持った銃を見ながら、リョウはため息交じりに呟く。


それは、余りにも巨大だった。否、他の銃と比べて、と言うべきだろうか。

本体は、四角い銃本体から、煙突のようにバレルが飛び出した形をしている。
弾丸の装填、排莢は同時に行われ、装弾方式はベルトリングと呼ばれる手法を使っていた。
言うまでも無い。機関銃である。ただし、それは唯の機関銃と言うのはあまりに大きすぎた。

それはそうだ。何しろそれは本来“個人が携行、移動することを想定していない”筈の武器。文字通りの、重機関銃と呼ばれるタイプの武器なのだから。

発射される弾の大きさはDEと同じく50口径弾。おそらくリアルの戦場では余りにもポピュラーな銃だろう。そして同時に、それを個人で携行し扱う人間などこの世界でも自分くらいの筈だ。当然である。何故ならそれは本体重量だけでも、ミニガンを遥かに超える。50キロオーバーなのだから。


──戦場に置いて、“それ”は一部の物から、怪物《メデューサ》と呼ばれた──

おそらく、リアルの戦場に置いて殆どの兵士が、個人でそれを向けられれば生を諦めるであろう代物だから。

リョウの、この世界における切り札。

その名を──“ブローニング式M2重機関銃”と言う。
 
 

 
後書き
さぁ、始めましょうか。

ではっ! 
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