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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第76話

怪盗Bの謎かけの解読をしていったリィン達はついに”紅蓮の小冠”があると思われる場所である導力トラムに向かい、運転手に事情を説明して中を調べると”紅蓮の小冠”が入っていると思われるトランクが置いてあった。



~導力トラム内~



「どうやら、このトランクが『黒き匣』みたいだな。」

「しかしまた……あからさまに置かれてあるな。」

「なのに、運転士さんが気付いていなかったってことは……」

「ちょっと前に、怪盗Bが置いていったってこと?」

「という事は怪盗Bはあたし達の行動をずっと見ていたという事になりますけど……」

「えっ!?それじゃあ一体何の為に盗んだのですか……?」

「さて、どうだろうな。……とにかく、中を確認しよう。」

マキアス達がそれぞれ話し合っている中、リィンがトランクを開けると紅耀石の眩しいティアラが入っていた。



「あった、これで間違いないね。」

「”紅蓮の小冠”……まるで燃えるような輝きだな。」

「とても綺麗なティアラです……」

”紅蓮の小冠”を確認したフィーは頷き、ラウラとセレーネは”紅蓮の小冠”に見惚れ

「こ、これが1億ミラ……」

「そ、そう考えるとやたら緊張するな。」

「ちょっとでも傷つけたら、凄い賠償金を支払う羽目になりそうですね。」

高級品を間近で見た事によってエリオットとマキアスは緊張し、二人の様子を見たツーヤは苦笑し

「あ、ああ……とにかくこれは無事に届けよう。」

リィンは”紅蓮の小冠”をトランクに仕舞い直した後、トランクを持って導力トラムを出て運転士に見つかった事を説明した。



「そうか、本当にティアラが置かれてあったんだね。ということは、最後に降りたお客さんが怪盗Bだったのかなぁ……特に変わった人を乗せた覚えはないんだけど……」

「そうですか……では心当たりはないんですね。」

「だが痕跡がここまで見えぬとは……怪盗B、恐るべしだな。」

(まあ、正体を知ったら、余計引きますけどね……)

運転士の話を聞いて真剣な表情をしているラウラを見たツーヤは疲れた表情をし

「うん……まあでもティアラが返ってきただけでもよかったんじゃないかな。」

「はい。お店の方もきっと喜ぶでしょうね。」

エリオットとセレーネはそれぞれ安堵の表情をしていた。



「………………」

「どうしたの、リィン?」

一方運転士をジッと見つめるリィンの様子に気付いたフィーは尋ね

「ど、どうしてそんなに私を見るんだい?」

運転士は焦った様子で尋ねた。



「ええ、茶番はこの辺りでお仕舞いにしようと思いまして。ブルブラン男爵―――いや、怪盗B!」

「なんだって……!?」

「ふむ……」

「まさか……!?」

そしてリィンが運転士を睨んで宣言し、リィンの宣言を聞いたマキアス達が驚いたその時

「フフ、フフフフ……ハハ、ハーハッハッハッハ!」

なんと運転士が高笑いをして指を鳴らすと運転士の姿は一瞬で仮面をつけた”怪盗ブルブラン”へと変わった!



「これだから……これだから青い果実はたまらない。」

「さっきの男爵……?それに、その仮面って……」

「間違いない。怪盗Bの仮面だ……!」

「ええっ!?じゃ、じゃあ本当にこの方が……!」

見覚えのある仮面を見て驚いているエリオットとマキアスの言葉を聞いたセレーネは驚きの表情でブルブランを見つめた。



「改めて―――”怪盗B”こと『怪盗紳士ブルブラン』という。ブルブラン男爵は、あくまで仮初の姿に過ぎない。ちなみに……いつから見破っていた?」

ブルブランは大げさに頭を下げて会釈をした後興味ありげな表情でリィンを見つめた。

「見破るもなにも……わざわざクリスタルガーデンで姿を現したくらいだ。あなた自身、本気で正体を隠そうとしていなかっただろう。変装に関しては、見事としか言いようがないけど……これまでの行動パターンを考えるとこの辺りでもう一度、様子を見に来るんじゃないかと思ってね。」

「フフ、なるほど―――いい読みだ。」

(なんでこの鋭さが恋愛方面に発揮されないんでしょうね♪)

リィンの説明を聞いたブルブランは感心し、ベルフェゴールはからかいの表情になった。

(ふふふ、何を言っているのです?鈍感だからこそ、ご主人様は無意識で麗しい女性達を惹きつける事ができるのですよ。)

(なるほどね♪)

そしてリザイラの推測を聞いたベルフェゴールは口元に笑みを浮かべた。



「でも、一体どうしてこんなことを……」

「……もしかしてエステルさん達を試したように、今度はあたし達を試したかったんですか?」

「フフ、知りたいかね?」

エリオットとツーヤの疑問を聞いたブルブランは髪をかきあげて問いかけたが

「いや―――これ以上、ここであなたと話すつもりはない。」

「とりあえず泥棒は泥棒。」

「ああ、我らから逃げられると思わぬことだ。」

「え、えっと……大人しく捕まってください!」

リィン達はブルブランを拘束するつもりで身構えた。



「フフ、威勢のよいことだ。」

リィン達の様子を見たブルブランが静かな笑みを浮かべたその時ブルブランはまるで瞬間移動をしたかのようにその場から消えて、別の場所に現れた!

「な!?」

「今のは………一体どうやって。」

「フフ、ちょっとした隠し芸のようなものだ。とにかく、此度はもう存分に愉しませてもらった。諸君らの活躍、これからも期待している。――――どうか次なる邂逅を楽しみにしてくれたまえ!」

そしてブルブランはリィン達に恭しく頭を下げた後その場から消えた!



「また……」

「くっ……妙な術を使う。」

「一体どんな魔法を使っておられるのでしょう……?」

ブルブランが消えるとフィーはジト目になり、ラウラは悔しがり、セレーネは不安そうな表情をした。

「もしかするとまだ近くに……とりあえず探してみよう。」

その後、リィン達は怪盗Bの行方を追う見つかることはなく―――事件のあらましを帝都内に伝えた上で、宝飾店に報告を行うのだった。



~ガルニエ地区・宝飾店”サン・コリーズ”~



「ああ―――皆さんのおかげで無事にティアラが返ってきましたわ!本当に―――なんとお礼を言ってよいのやら!」

リィン達に”紅蓮の小冠”を返却された店長は嬉しそうな表情で頭を下げた後リィン達を見つめた。

「うーん、怪盗Bの言い分によると俺達のせいでご迷惑をかけたという気もしますが……」

「いえ―――そんな事はありませんわ。だって、怪盗Bのすることは元々そのほとんどが意味不明……きっと、最後に都合よく皆さんのせいにしたんだと思いますわよ。」

(あの執着ぶりを考えると、それはなさそうだが……)

(ま、あえて否定しなくても。)

(ああ……これ以上混乱させることもないからな。)

(先程の口ぶりですと、またわたくし達と会う事を楽しみにしているご様子でしたから、もしかしてまた何かを盗んでわたくし達に謎かけをするつもりなのでしょうか?)

(セレーネ……”怪盗紳士”だと本当にやりかねないから、言わないで……)

店長の言葉を聞いたマキアス達が小声でそれぞれ話し合っている中、首を傾げたセレーネの小声を聞いたツーヤは疲れた表情で指摘した。



「とりあえず―――大したものではありませんけどほんの気持ちですわ。どうぞ、受け取ってくださいまし。」

そして店長はリィン達に大量の7属性のセピスを渡した。



「これはセピス……十分、大したものだと思いますけど……ふふ、そこはこの宝飾店―――そのような欠片でしたら、いくらでも余っていますので。」

「あはは、なるほど……どうもありがとうございます。」

「ふふ、どういたしまして。こちらこそ、本当に救われましたわ。」

その後リィン達は宝飾店を出て広場でブルブランとの邂逅について話合いを始めた。



~ドライケルス広場~



「ふう……さすがに疲れたな。”怪盗B”……ふざけた輩がいたものだ。」

「ドヤ顔で見てたかと思うとちょっとむかつく。」

「今度会った時はお仕置きをしないといけませんね!」

ラウラの言葉にフィーはジト目で頷き、セレーネは真剣な表情で言った。

「うーん、帝都では結構知られている名前なんだけど……」

「前々から胡散臭いとは思っていたがここまで悪ふざけが過ぎるとはな……」

「………………」

エリオットとマキアスが話し合っている中、リィンは真剣な表情で考え込んでいた。



「あれ……リィン、どうしたの?」

「いや……考えてみたら凄まじいほどの技術だと思ってさ。あんな大仕掛けに変装まで……常識外れの能力を持つのは確かだ。それこそ武術における”達人”と言っていいくらいの。」

「それは……」

「……確かに。」

「……まあ、武術が”達人”クラスであるのは間違いないですね。何せ彼は”執行者(レギオン)”なのですから。」

リィンの推測にラウラとフィーが真剣な表情で頷いている中、ツーヤは静かな表情で言った。



「お姉様?」

「その”執行者(レギオン)”って言うのは何なんだ?」

ツーヤの言葉が気になったセレーネとマキアスは首を傾げ

「”執行者(レギオン)”……へえ、”怪盗B”って”身喰らう(ウロボロス)”に所属しているんだ。確かに”執行者(レギオン)”なら、”達人”クラスと言ってもおかしくないね。」

フィーは目を丸くした後納得した表情をした。



「ウ、”身喰らう(ウロボロス)”って……」

「昨夜聞かせてもらった”リベールの異変”を起こした裏組織か。」

フィーの呟いた言葉を聞いたエリオットは驚き、ラウラは真剣な表情でフィーを見つめた。

「ん。その”身喰らう(ウロボロス)”に所属している”執行者(レギオン)”と呼ばれている者達は全員”達人”クラスの使い手って噂は聞いている。ツーヤは”怪盗B”の事を知っているようだけど。」

「ええ……直に会ったのはバリアハートが初めてですけどね。―――執行者No.Ⅹ”怪盗紳士”ブルブラン。”リベールの異変”にも関わった”執行者(レギオン)”です。」

フィーに視線を向けられたツーヤは真剣な表情で答えた。



「”リベールの異変”を起こした裏組織の執行者No.Ⅹ”怪盗紳士”…………あの”怪盗B”が……」

「番号があるという事は、その”執行者(レギオン)”は最低でも10人はいるのか?」

ツーヤの説明を聞いたエリオットは呆け、リィンは尋ねた。

「ええ、ヨシュアさんやレーヴェさんが知る限りでは十数名はいるそうです。」

「へ…………」

「い、今レオンハルト教官の名前が出たよね……!?」

「そ、それに”ヨシュア”ってまさかバリアハートで僕達を助けてくれた遊撃士の人なんじゃ……!」

ツーヤの説明を聞いたリィンは呆け、エリオットとマキアスは信じられない表情をした。



「ええ。二人は元”執行者(レギオン)”です。まあ、既にそれぞれの考えによって”身喰らう(ウロボロス)”と袂を分かち、それぞれの道を歩んでいますから、大丈夫ですよ。」

「……………………」

「え、えっと……お話はよく分からないんですけど、その方達は今は味方でいいのですよね?」

ツーヤの話を聞いたリィンは口をパクパクさせ、セレーネは不安そうな表情で尋ね

「ええ、大丈夫よ。」

不安そうな表情をしているセレーネを安心させるかのようにツーヤは微笑んだ。



「なるほどね。ヨシュアもレーヴェと同じ”執行者(レギオン)”だったんだ。道理で化物じみた戦闘能力や身体能力を持っている訳だね。」

「そう言えばフィー、レオンハルト教官の事を前から知っている風な言い方をしていたけど……」

「確か”剣帝”と言っていたな。それがレオンハルト教官の”執行者(レギオン)”としての呼び名なのか?」

一人で納得しているフィーの様子を見たエリオットはある事を思い出して目を丸くし、ラウラは尋ねた。



「ん。”剣帝”――――強者揃いの”執行者(レギオン)”の中でも1、2の実力を争う”最強”の”執行者(レギオン)”。その実力は”剣聖”や”光の剣匠”にも届くかもしれないって噂で聞いている。」

「なっ!?」

「け、”剣聖”や”光の剣匠”にも届くって……!」

「レオンハルト教官って、一体どれだけ強いの……!?」

「……………………」

フィーの説明を聞いたリィンは驚き、マキアスとエリオットは信じられない表情をし、ラウラは呆け

「カシウスさんやラウラさんのお父さんの”本気”がどれ程なのかはわからないから何とも言えませんが……少なくとも正面から斬り合う事はできるでしょうね。」

ツーヤは真剣な表情で答えた。



「そうか………”剣帝”という異名がつくほどの剣士としての腕前……どのような剣なのか、是非見てみたいな……」

「ラ、ラウラ……」

「全く、君は剣士と聞けば目がないな……」

興味ありげな表情で呟いたラウラの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかき、マキアスは呆れた。するとその時リィンのARCUSの音が鳴り始めた。



「おっと……」

「なんだ、また父さんか?」

自分のARCUSに通信が来た事に気付いたリィンは通信を開始し、その様子を見ていたマキアスは首を傾げた。

「はい、こちら士官学院Ⅶ組、リィン・シュバルツァーです。」

「ハロハロー、。頑張ってるみたいじゃない。」

「その声は……サラ教官ですか。」

「ビンゴ、当たり。これも愛の為せる業ね♪」

「信頼と感謝はありますけど愛はありませんが……―――珍しいですね。実習中に連絡するなんて。何かありましたか?」

「うん、君達全員に行ってほしい場所があってね。実習課題が片付いてからでいいから”サンクト地区”に行って欲しいのよ。」

「”サンクト地区”……”ヘイムダル大聖堂”や大使館がある場所でしたよね。(エリスが通う女学院もたしかそこにあったはずだ……)」

「ええ、そこにある”聖アストライア女学院”の前に夕方5時過ぎに行ってちょうだい。B班の方にも伝えてあるから。」

「ええっ……!?」

「知事閣下の許可も頂いているから遠慮なく楽しんできていらっしゃい。それじゃあヨ・ロ・シ・ク♪」

「ちょ、ちょっと教官――――」

そして通信相手であるサラ教官は一方的に通信を切った。



「くっ……」

「な、何だったの……?」

「どうやらサラ教官が無茶振りをしてきたみたいだが……」

「ああ、よくわからないけど……」

リィンは仲間達にサラ教官から指示された内容を説明した。



「”アストライア女学院”……!」

「君の妹も通っているという、貴族子女の女学校か……」

「ふむ、私の知り合いも何人か通っているが……我ら全員で行けというのはさすがに解せないな。」

「女学院……ちょっと興味があるかも。」

(ううっ、女学院の学生達があたしに気付かなきゃいいけど……)

(?お姉様ったら、どうしたのかしら?)

リィンの話を聞いた仲間達がそれぞれ興味ありげな表情で話し合っている中、女性達に群がられた経験があるツーヤは疲れた表情になり、ツーヤの様子に気付いたセレーネは首を傾げた。

「ま、まあ何かあるんだろう。そろそろ夕方だし……用事を済ませたら行ってみよう。」

その後用事を済ませたリィン達は導力トラムに乗って、”サンクト地区”に向かった。 
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