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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第75話

怪盗Bによる謎かけを解読して順番に様々な所を回っていたリィン達は、次の謎かけのカードがあると思われる場所に向かった。



~マーテル公園・クリスタルガーデン~



「『光透ける箱庭の中』……ここで間違いないよね。」

「うん、まさにこのクリスタルガーデンを指しているんじゃないかな。」

「そして『北東の座』―――座は椅子を示す言葉でもあるから……」

「となると、北東に設置されたこのベンチが怪しくなるか。」

(フウ……後どれだけ続けないといけないんだろう。エステルさん達も毎回良くこんな事に付き合ったよね……)

「あれは――――」

「あ、わたくしが取ってきますね!」

リィン達が見つけたカードをセレーネが取ってきて、リィンに渡した。



「当たりだね。」

「次はなんて書いてあるの?」

「ああ、えっと……」

フィーに促されたリィンはカードの裏側に書かれてある文面を読んだ。



第三の鍵は……『かつて都の東を支えた籠手たち。彼らが憩いし円卓に』



「ふぅ、またわかりにくい表現だな……」

「”都を支えた籠手たち”って何の事でしょう……?」

内容を知ったマキアスは溜息を吐き、セレーネは考え込んだ。

「うん、でも頑張って探さないとね。」

そしてエリオットが呟いたその時

「フフ……諸君、また会ったね。」

「この声は……」

「……………………」

聞き覚えのある声が聞こえ、声を聞いたリィンは目を丸くし、ツーヤは表情を引き攣らせてリィン達と共に声がした方向へと振り向くとそこにはバリアハートで出会ったブルブランがいた。



「えっと、誰だっけ。ブル……なんとか。」

「ブルブラン男爵、ですね。」

「ああ……バリアハートの実習以来ですか。」

(こ、この場で無力化して、さっさと盗難品を回収したい……!でも、相手は腐っても”執行者”。下手に手を出して、盗難品を返してもらえない事態にする訳にはいかないし……)

(……?お姉様は一体どうされたのでしょう??)

ブルブランの登場にリィン達がそれぞれ目を丸くしている中、顔に青筋を立てて口元をピクピクさせて身体を震わせているツーヤの様子に気付いたセレーネは首を傾げた。



「フフ、未だに覚えていてくれて何よりだ。もっとも、そこの3人はお初にお目にかかるがね。」

一方ブルブランは大げさに頭を下げて挨拶をした後エリオットやラウラ、セレーネに視線を向けた。

「え、えっと……はじめまして。」

「セレーネと申します。以後、お見知り置きを。」

「ふむ、軽く話にこそ聞いてはいたが……」

「今回も……”美”との出会いを探しているんですか?」

「まあ、そのようなものさ。だがバリアハートに続き、この(あか)の帝都でも君達に会えるとは……これを運命と言わずして、何と言うべきだろうか?」

リィンの問いかけに頷いたブルブランは笑顔を浮かべてリィン達を見つめ、ブルブランの発言にリィン達は冷や汗をかいて呆れた。



「それは知りませんが……」

(あはは……何というか変わった人だね。)

(ああ、それもかなりな。それにしても、気配をまったく感じなかったが……)

「フフ、私の顔に何かついているかね?それともまさか―――見とれていたのかな?」

真剣な表情のリィンに見つめられたブルブランは静かな笑みを浮かべた。



「そんなわけがありませんから……」

「フフ、まあいい。今日は私も少々忙しいので、この辺で失礼させてもらおう。それでは――――諸君らの健闘を祈らせてもらう。」

そしてブルブランはリィン達から去って行った。



「……行ったみたいだね。」

「ふむ、あの男性は一体我らに何を言いたかったのだ?」

「わたくしたちを応援しているようにも聞こえましたけど……一体何を応援しているのでしょう?」

「さあ……何だろうな。(ブルブラン男爵、か……)」

(ハア…………)

ラウラとセレーネの疑問を聞いたリィンは考え込み、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐いた。その後カードの手掛かりを探して、帝都内を回っていると奇妙な二人組の少女がドライケルス大帝の石像の前にいた。



~ガルニエ地区・ドライケルス広場~



「ほうほう……この石像の人物がかの”獅子戦役”を制したドライケルスか。エレボニア帝国中を巻き込んだ内戦を制したのだから、歴代のエレボニア皇帝の中でも相当の器の持ち主だったのだろうな。」

「ま、お兄ちゃんには敵わないだろうけどね。それにその子孫である今のこの国の皇帝はお兄ちゃんやシルヴァンみたいに、部下達をまとめられていないから大した事ないじゃない。」

「そうじゃな……ドライケルスも子孫が情けなくて、さぞ嘆いているだろうな。まあ、オリヴァルト皇子の方はまだわからんが。」

「……あいつじゃ無理でしょ。いつもふざけているし。」

二房がついた変わった帽子をかぶった貴族風の少女と銀髪のツインテールの少女はドライケルス大帝の石像を見つめて会話をし

「!?」

「……?あの二人、どこかで見たような……」

二人の後ろ姿を見たツーヤは目をギョッとさせ、リィンは首を傾げた。



(うわっ……あの二人、こんな往来でよくエレボニア皇家の悪口を言えるよね……?)

(滅茶苦茶度胸あるね。)

(王宮を守る兵達に聞かれでもしたら、大変だぞ……)

二人の会話を聞いていたエリオットは表情を引き攣らせ、フィーは静かに呟き、マキアスは遠目で見える王宮へと続く通路を守る兵達を気にし

(兵士さん達に気付かれない内に、注意した方がよろしいのでは……?)

「(うむ。)―――そなたたち、少しよいか。」

不安そうな表情をしているセレーネの言葉に頷いたラウラは二人組の少女に近づいて話しかけた。



「ム……?」

「んー……?」

話しかけられた二人はそれぞれ首を傾げてリィン達を見つめ

「!!!??な、何故貴女方がこのような所に………!」

「!?貴女はまさか……!」

二人の少女の顔をよく見たリィンとラウラは血相を変え

「お兄様?ラウラさん?」

「もしかしてリィン達の知り合い?」

リィンの様子に気付いたセレーネは首を傾げ、エリオットは尋ねた。



「ハア…………明日”モルテニア”に乗って帝都に来るはずの貴女達が何で今、ここにいるんですか……―――リフィア殿下、エヴリーヌさん。」

「へ…………」

「リ、リフィア殿下ってまさか……!」

「もしかしてメンフィル皇帝の跡継ぎの”聖魔皇女”と”魔弓将”?」

疲れた表情で溜息を吐いて呟いたツーヤの言葉を聞いたマキアスは呆け、エリオットは信じられない表情をし、フィーは目を丸くして二人を見つめた。



「おお、ツーヤではないか!―――ということはお主達が話にあった”Ⅶ組”の者達か。余の名はリフィア!リフィア・イリーナ・マーシルン!我が妹であるプリネがいつも世話になっているな!姉として感謝するぞ!」

「―――わたし、エヴリーヌ。よろしく。」

「ええええええええ――――……モガッ!?」

(静かにした方がいい!兵士達に気付かれたら一大事になる!)

帽子を被った少女――――メンフィル帝国の皇女にしてメンフィル皇帝の跡継ぎでもあるリフィアと銀髪の少女――――メンフィル帝国の客将である”魔神”エヴリーヌの名を聞いて驚きのあまり声をあげようとしたエリオットの様子に気付いたリィンは慌てた様子でエリオットの口を両手で塞ぎ

(な、何でメンフィル皇帝の跡継ぎの皇女がこんな所に……!?)

(護衛もつけずに帝都を観光とか、プリネの話通り、確かに皇女とはとても思えないくらい滅茶苦茶な行動をしているね。)

(もしかしてお忍びでしょうか……?)

マキアスは混乱した様子でリフィアを見つめ、フィーは呆れた表情で戸惑っているセレーネと共にリフィアを見つめた。



「ねえねえ、ツーヤ。プリネはいないの?」

「プリネさんはもう一つの班で別行動していますから、今は一緒じゃないんです。」

「ちぇ…………これじゃあエリゼの目を掻い潜ってきた意味がないじゃん。」

ツーヤの答えを聞いたエヴリーヌはつまらなさそうな表情をして小声で呟き

「む?そちらの少女は何者だ?制服でない所を見ると、”Ⅶ組”の者ではないようだが……」

セレーネに気付いたリフィアは首を傾げた。



「――お初にお目にかかります。わたくしの名はセレーネ・アルフヘイム。ツーヤお姉様の双子の妹で、今はリィンお兄様の”パートナー”です。」

リフィアに見つめられたセレーネは上品に会釈をして自己紹介をし

「ツーヤの妹??」

「なぬ?ツーヤの妹だと?ツーヤ、一体どういう事なのだ?」

セレーネの自己紹介を聞いた二人はそれぞれ首を傾げた。

「えっと、話せば長くなるんですが――――」

そしてツーヤは二人にセレーネの事を説明しかけようとしたが

「!!すまぬが、その話は後で聞かせてもらう!ゆくぞっ、エヴリーヌ!奴の気配が近づいてきた!」

「んっ!!」

何かに気付いてたリフィアは慌てた様子でエヴリーヌと共にその場から走り去った。



「あ、ちょっと!」

「ええっ!?」

「お二方とも足が凄い速いですね……」

「まるで誰かに追われているかのようにも見えたが……一体誰に追われているのだ?」

走り去った二人を見たマキアスとエリオットは驚き、セレーネは目を丸くし、ラウラは考え込んだ。

「――兄様?」

「エ、エリゼ!?い、一体どうしてここに……」

するとそこに私服姿のエリゼがリィン達に近づいてきた。



「―――ロレントの大使館から勝手に抜け出して来たリフィア殿下の捜索の為に帝都に来たのですが……兄様、この周辺でリフィア殿下を見ませんでしたか?」

「えっと、殿下ならさっきまでここにいたけど、何だか慌てた様子でエヴリーヌ様と一緒に向こうの方へと走り去っていったが……」

「そうですか……どうやら私の気配に気付いて、逃げたようですね……どれだけ逃げたって無駄よ。こっちには発信器があるし、貴女の行動パターンも大体把握しているんだから。ウフフフフフフ…………!」

リィンの答えを聞いたエリゼは顔に青筋を立てて膨大な威圧を纏って微笑み

「エ、エリゼ……?」

(こ、怖っ!?今のエリゼちゃん、笑顔なのに滅茶苦茶怖いよ……)

(一体何が原因で怒っているんだ………?)

エリゼの様子を見たリィンは戸惑い、エリオットやマキアスはラウラ達と共に冷や汗をかいてエリゼを見つめた。

「―――皆様、大変申し訳ありませんが、私はリフィア殿下達を早急に”確保”しなければなりませんので失礼します。」

「おい、エリゼ!?」

そしてエリゼはリィン達に会釈をした後、リフィア達が去った方向に向かって走り去った。



「な、何だったんだ今のは……?エリゼの様子がいつもと比べるとおかしかったし……」

「それにエリゼの口から何やら物騒な言葉も出てきたが……」

「”確保”、って言ってたよね?とても専属メイド長が仕えている主に対して言う言葉とは思えないんだけど。」

エリゼが去るとリィンとラウラは戸惑い、フィーは呆れた表情で呟いた。

「ね、ねえ……それよりリフィア殿下が帝都にお忍びで来ているなんて、大変な事だと思うんだけど……」

「ああ……もし殿下の身に何かあれば、国際問題へと発展してしまうぞ……!」

不安そうな表情で呟いたエリオットの言葉を聞いたマキアスは表情を引き攣らせたが

「―――リフィア殿下達の事は別に気にしなくていいと思いますよ?ああいう事は日常茶飯事ですから。」

「に、日常茶飯事って……」

「……このような事はよくあるのか?」

疲れた表情で答えたツーヤの話を聞いたエリオットは表情を引き攣らせ、ラウラは戸惑いの表情で尋ねた。



「ええ。それより”紅蓮の小冠”の捜索に戻りましょう。リフィア殿下達の身の危険は心配する必要ないですし、既にエリゼさんが動いているから大丈夫でしょう。」

「え、えっと、ツーヤさん。何故エリゼが動いていれば、大丈夫と確信できるんだ?」

ツーヤの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいて尋ね

「話に聞く所、エリゼさんは城から抜け出したリフィア殿下を何度も見つけては”回収”して城に連れ戻しているそうですし、リフィア殿下のお目付け役としてリウイ陛下やシルヴァン陛下からも信頼されているそうですから。」

「ええっ!?エ、エリゼが!?」

「ほう……」

「さすがスーパーメイドだね。」

「まあ……わたくし、そのような凄いメイドの方は今まで見た事がありませんわ。」

ツーヤの説明を聞いたリィンは驚き、ラウラとフィーは感心し、セレーネは目を丸くし

「ま、まあツーヤがそこまで言うなら、僕達は”紅蓮の小冠”の捜索に戻ろうか。」

「そ、そうだね。」

無理矢理話を戻したマキアスの提案にエリオットは頷いた。



その後リィン達は再び怪盗Bによる謎かけの解読を再開した。 
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