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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第49話

6月27日――――



~早朝・ノルドの集落~



「……ん…………」

翌朝羊の鳴き声を耳にしたリィンは目を覚まして起き上がった。

「ここは……そうか……”ノルド高原”だったか……(食事と空気のおかげか……かなり気力が充実している。……ユン老師もこういう場所で修行したのかもしれないな……)」

(ふふ、気力が充実している状態だと精気も凄く美味しいでしょうね♪)

周囲の景色に一瞬戸惑ったリィンだったがすぐに状況を思い出し、リィンの状態を魔力を通してわかるベルフェゴールは魅惑的な笑みを浮かべていた。



「――早いな、リィン。」

その時ガイウスが住居に入ってきた。

「おはよう、ガイウス―――って、その格好は……?」

ガイウスの民族衣装が気になったリィンは驚いた表情で尋ねた。



「ああ、羊の放牧を久々に手伝ってきた。そろそろ朝餉の支度もできている頃だ。」

「わかった……みんなを起こすか。―――ユーシス。アリサ、プリネさんにエマも。」

「朝だぞ、起きるがいい。」

「……ん……ここは……?」

「羊の……鳴き声……?」

「……ここは……?そうでした……確か私達は昨日からノルド高原にいるんでした……」

「……えっと……眼鏡は……」

リィンとガイウスの声に反応したA班のメンバーはそれぞれ眠そうな様子で呟いて起床し始めた。

「はは……」

「さすがにこの時間は早すぎたのかもしれないな。」

眠そうな様子のメンバーの反応を見た二人はそれぞれ苦笑した。その後リィン達はウォーゼル家で朝食をご馳走になっていた。



「美味しい……」

「……染み入る味だな。」

「ええ……目覚めたばかりの身体にちょうどいいですね。」

アリサやユーシス、プリネはそれぞれ美味しそうに朝食を食べ

「ミルク粥……みたいなものでしょうか?」

朝食の正体が気になったエマは尋ねた。



「えとえと、羊の乳と塩漬け肉を使った朝粥です。」

「一応、妹達が用意したんです。」

「リリも手伝ったー。」

エマの質問にガイウスの妹達や弟がそれぞれ答えた。



「へえ、大したものだな。」

幼い子供達が美味しい朝食を作った事にリィンは感心し

「うーん、やっぱりレシピを教えてもらいたいかも。」

「あ、はいっ。えっとですね……」

朝食のレシピが気になっているアリサにシードはおずおずとレシピ内容を教えていた。



「ふふっ……気持ちのいい子達ね。」

「いい風の導きがあったみたいだな。」

その様子を微笑ましそうに見守っていたガイウスの両親達はガイウスに視線を向け

「ああ……おかげさまでな。」

ガイウスは静かな表情で頷いた。



「さて、それではこれを渡しておこう。」

その後朝食を終えたリィン達にラカンは実習内容が書かれてある封筒を渡し、リィン達は実習内容を確認した。

「ゼンダー門の用事から薬草集めまで……」

「高原ならではの課題を入れてくださったんですね。」

「ああ、それなりに吟味して用意させてもらった。昨日も言ったように午前中は南西部だけで終わるはずだ。」

「了解した。」

「時間配分まで考えて下さって本当にありがとうございます。」

「ありがとうございます。」

ラカンの言葉にリィン達はそれぞれ頷いた。



「――よし、それじゃあさっそく実習を始めよう。」

「必須のものを片付けたら昼までに戻ればいいわけね?」

「ああ、昼餉を取る為にな。―――それと集落を出る時は昨日と同じ馬を使おう。下手に徒歩で出たりしたら行き倒れになりかねないからな。」

アリサに視線を向けられたガイウスは頷いた後リィン達に忠告し

「た、確かに……」

「あの雄大な高原を徒歩で移動するのはかなり無理がありますね……」

「洒落になっていないぞ。」

忠告を聞いたエマとプリネは冷や汗をかき、ユーシスは呆れた表情で指摘した。

「フフ、風と女神の加護を。気を付けて行ってくるがいい。」

その後リィン達は実習内容をこなし始め、実習内容の一つを用意した依頼者の一人であるゼクス中将に詳しい話を聞く為にゼンダー門に向かってゼクス中将がいる司令室を尋ねた。



~ゼンダー門~



「よく来てくれた諸君。フフ、集落しっかりと長旅の疲れを癒せたようだな。」

「ゼクス中将、お疲れ様です。おかげさまでしっかりと体を休められました。」

「昨日はお忙しい中、馬まで用意していただいて……」

「なに、さしたる手間でもあるまい。せっかくのガイウスの帰郷だ。あれくらいの配慮は当然だろう。」

「ありがとうございます。士官学院への推薦といい……中将には本当に感謝しています。」

アリサの言葉に答えたゼクス中将の話を聞いたガイウスは会釈をした後ゼクス中将を見つめた。



「学院への推薦……?」

「そういえば、お二人は以前からお知り合いみたいですけど……」

「正規軍中将と北方の遊牧民……いまいち接点が想像できんが。」

「そうですね……一体どんな経緯で出会われたのですか?」

ゼクス中将の話を聞いたリィンは首を傾げ、軍人と遊牧民であるゼクス中将とガイウスが知り合い同士である事を疑問に思ったエマやユーシス、プリネは不思議そうな表情で二人を見比べた。



「ハハ、無理もあるまい。言うなれば、彼は―――私を救ってくれた恩人でな。」

「恩人……?」

「ガイウスさんがゼクス中将のですか……?」

二人の意外な関係にアリサとプリネは首を傾げた。

「1年ほど前……私がこのゼンダー門に赴任したばかりの頃の話だ。馬で高原を視察していた所に、狼型魔獣の群れに囲まれてな。そこへ十字槍を持って馬で駆けつけてくれたのがガイウスだったというわけだ。」

「そんなことが……」

ガイウスとゼクス中将の出会いを聞いたエマは驚きの表情で二人を見比べた。



「フフ、あの時は無我夢中でした。」

「いや、見事なものだったぞ。私が魔獣の群れを相手に慎重に間合いを計っていた中……たった一人の若者が颯爽と現れ、あしらってみせたのだからな。」

「と、当時でもまだ16歳くらいよね?」

「……とても真似できんな。」

ゼクス中将の説明を聞いたアリサとユーシスは驚き

「はは……さすがガイウスというべきか。」

「ええ……魔獣との実戦経験が豊富でなければできませんよ。」

リィンとプリネは感心した様子でガイウスを見つめた。



「ともかく、あれ以来中将には親しくしてもらっている。オレが学院に入れたのも中将の推薦あってこそだろう。」

「フフ、有望な若者に何がしかの道が拓ければと考えてのことだったがな。こうして再会できたこと……嬉しく思うぞ、ガイウス。」

「フフ……オレもです。」

その後リィン達はゼクス中将の依頼内容を聞いた後、達成する為に行動を開始した。 
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