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カイセッド

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第一章

                 カイセッド
 エストニアは北欧かバルト三国のうちの一国なのか、このことが最近議論になっている。
「一緒に独立したからバルト三国だろ」
「いや、それ言ったらもうリトアニアいないぞ」
 そのうちの一国が既にというのだ。
「とっくにポーランドの方に行ったぞ」
「ああ、両国昔は一緒の国だったしな」
「コシューシコリトアニア人だったしな」
 必死にポーランド独立の為に戦ったこの英雄は実はリトアニア出身であった。
「縁が深くてそっち行ったな」
「もう今じゃポーランドと何をするにも一緒か」
「それでエストニアもな」
「フィンランドと仲良くなってな」
「バルト三国っていってもそれぞれの道を歩んでて」
「ばらばらになってるな」
 ラトビアもラトビアでドイツとの関係を深めている、それでだ。
 エストニア人達もだ、この辺りについては考えていた。
「バルト三国だろ、うちは」
「いや、もう北欧だろ」
「一緒に独立したんだし三国だろ」
「だからもううちフィンランドと仲いいぞ」
「世界はそう思ってるぞ、三国だって」
「北欧の国は受け入れてくれてるぞ」
 エストニアでの議論も堂々巡りになっていた、だが。
 その中でだ、マルト=ルーフェは恋人で行きつけの喫茶店の雇われマスターのイングリット=ノールに彼女が勤めているタリンの店のカウンターで言った。
「どっちでもあるって言ったら」
「童話でしょ」
 カウンターの中からだ、イングリットは彼に返した。
「それこそ」
「そうだね」
「というかそうしたことを言ったら」
「余計にまずいね」
「蝙蝠じゃないから」
 その童話の主人公の名前をだ、イングリットは実際に話に出した。
「それこそね」
「その通りだね」
「というか」
 マルトにだ、イングリットはこうも言った。背は一七五程で髪の毛は薄い色の金髪でそれをボブにし目は青い北欧的な彼の顔を。
「私達って人種的にはスオミでしょ」
「近いよ」
 マルトもイングリットの顔を見た、蜂蜜色の波がかった長い髪に緑の瞳が印象的だ。細く薄い眉で顔立ちは楚々としている。背は一五五位で二十八の年齢の割に初々しさw感じさせている。
「あっちにね」
「フィン人ね」
「もっと言えばアジア系だよ」
「そう言うと日本や中国ね」
「どっちかっていうとモンゴルだね」
 そのルーツだというのだ。
「アジアでもね」
「アッチラ大王とかそういう」
「そうだよ、まあとにかく人種的にはね」
「北欧ね」
「フィンランドのね」
「そうなのね」
「そもそもバルト三国というけれど」 
 よく世界で一括りにされるがというのだ。
「文化も人種もそれぞれだからね」
「リトアニアはポーランドと一緒だし」
「また一緒になってるし」
 パートナー同士になっているというのだ。
「で、僕達エストニアもかつてはスウェーデンとかとね」
「フィンランドとね」
「そう、今仲のいいね」
「その国と一緒だったから」
「じゃあ北欧ね」
「そうじゃないの?」
 こう言うのだった。
「やっぱり」
「それじゃあ北欧ね」
「今じゃ僕達しょっちゅうあっちのお祭りに参加してるしね」
「エアギター大会とか」
「北欧だよ、僕達」
「そうなるのね」
「人種とか歴史とか考えたら」 
 バルト三国というが、というのだ。 
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