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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第34話

~バリアハート市・中央広場~



「笛の音……領邦軍か。一体何の騒ぎなんだ……?」

笛の音が響き渡っている中、リィン達が昨夜食事を取ったレストランのオーナーシェフがレストランから出てくるとヨシュアとメティサーナを先頭に、エステルとツーヤを殿にし、サエラブにしがみつくエマとフィー、そしてリィン達が職人街の方面へと走り去って行った!

「ユーシス様にユーシス様のクラスメイトの方達……一体誰に追われているんだ?」

その様子を見ていたオーナーシェフが戸惑ったその時

「職人街の方面に向かったぞ!」

「絶対に逃がすなっ!」

「応援をもっと呼べ!」

領邦軍の兵士達が慌てた様子でリィン達を追いかけていた!

「なっ!?りょ、領邦軍!?一体何故ユーシス様達を……!?」

アルバレア公爵家の次男を追跡する領邦軍の行動にオーナーシェフは信じられない表情をした。



「全く!しつこい奴等だ……!」

「領邦軍はプライドが高いからね。脱走者を出してしまったという失態を取り返す為にも何が何でも逃がすつもりはないんだろうね。」

時折後ろを振り向いて追手を確認して呟いたメティサーナの言葉を聞いたヨシュアは真剣な表情で答え

「はあ……はあ……クッ……予想以上に見つかるのが速かったな……!」

「私達が地下水道に潜る前はまだ、そんなにいなかったのですけどね……」

「多分、わたし達がマキアスを取り返す事を警戒して、多くの兵士達に市内の巡回をさせていたんだろうね。」

地下水道で走った影響や魔獣との戦闘によって疲労を見せているリィンは息を切らせながら表情を歪め、サエラブに跨っているエマは不安そうな表情で時折後ろを振り向いて自分達を追って来る領邦軍を見つめ、フィーは警戒の表情で呟き

「チッ、普段は大した数を市内を巡回させていない癖にこういう時に限って多くの兵士達を巡回させるとは……職務怠慢もいい所だな。」

「はあ……はあ……そんな……呑気な事を言っている場合か……!」

疲労しながらも不愉快そうな表情で呟いたユーシスの言葉を聞いたマキアスは息を切らせながら呆れた表情で指摘した。



「脱走者達は疲労している!撃てっ!!」

一方リィン達を追っている領邦軍の隊長は兵士達に指示をし

「なっ!?」

「まさか……街中で発砲する気か!?」

「そんな……もし流れ弾が市民の方達に当たってしまったら……」

「愚か者共がっ!」

隊長の指示を聞いたリィンとマキアスは驚き、エマは不安そうな表情になり、ユーシスは怒りの表情で追って来る兵士達を睨みつけた。



「そんな事、絶対にさせないわよ!せいっ!」

「十六夜―――”突”!!」

「ガガッ!?」

「ぐあっ!?」

「ギャアッ!?」

その時殿(しんがり)にいたエステルとツーヤがそれぞれ遠距離攻撃の(クラフト)を放って銃を構えた兵士達を吹っ飛ばした!そして中央広場を駆け抜けたリィン達は職人街に駆け抜け、街道に差し掛かろうとしたその時



~職人街~



「!みんな、止まって!」

何かに気付いたヨシュアが警告し、警告を聞いたリィン達が立ち止まるとオーロックス砦でも見かけた戦車―――”アハツェン”が3台、街道へ続く道を塞ぐかのような位置で待機し、リィン達に砲口を向けていた!

「なっ!?あれは……!」

「オーロックス砦で見た戦車……確か……”アハツェン”、でしたよね……!?」

”アハツェン”を見たリィンとエマは驚き

「あんな物まで持ち出してくるなんて、形振り構わなくなってきたね。」

「市民達に犠牲が出てもあたし達を逃がしたくないようですね。」

「戦車まで持ち出すなんて幾ら何でも、大人気なさすぎでしょ。」

フィーとツーヤは警戒の表情で”アハツェン”と周囲にいる兵士達を睨み、エステルは呆れ

「クッ……先程の魔獣といい、脱走者を捕える為に領邦軍はここまでするのか!?」

「だから俺に聞くな!貴様ら……こんな所で砲撃すれば、職人街にどれ程の被害を与える事になるのか、わかっているのか!?」

マキアスはユーシスに視線を向け、視線を向けられたユーシスは兵士達を睨んで怒鳴った。



「隊長!ユーシス様もいますが、いかがいたしましょう……?」

一方”アハツェン”を運転している兵士は”アハツェン”の傍にいる隊長に指示を仰ぎ

「ユーシス様に被害が行かないように、牽制代わりに周囲の建物を砲撃しろ。そうすればこちらも本気だと悟って、投降してくださるだろう。」

「ハッ。」

隊長の指示を聞き、砲口を近くの建物へと向けた。しかしその時!



「下らないプライドの為だけに守るべき民達を傷つけようとするとは……本来なら死罪ですわよ。」

「そんな悪い事をする人達にはお仕置きだよ!」

金髪の女性と蜂蜜色の髪の娘が建物の影から姿を現し、それぞれ”アハツェン”の背後から強襲し

「セイッ!!」

「次元斬!!」

金髪の女性は槍に膨大な聖気を纏わせて槍で薙ぎ払い、蜂蜜色の髪の娘は魔力を纏わせた長剣で”空間ごと”切り裂いた!すると二人の攻撃を受けた2台の”アハツェン”はそれぞれ易々と切られ、”アハツェン”から操縦者の兵士達が姿を現し

「え―――」

「な―――」

戦車が生身の人間に斬られるという信じられない光景にエステル達を除いたその場にいる全員は呆け

「残りの一台はメティに任せておけ!喰らえ――――ッ!!」

その隙を逃がさないかのようにメティサーナは膨大な闘気を込めて大鎌を縦に振るい、空をも切り裂く一撃―――空ヲ切リ裂ク鎌斬を放った。すると天にも届くほどの衝撃波の刃を受けた残りの一台の”アハツェン”は縦に真っ二つに切られ、操縦者である兵士達が何が起こったのかわからない呆けた様子で姿を現した!



「「………………」」

そして我に返ったリィンとユーシスは口をパクパクさせ

「な、なななななななっ!?せ、戦車を……!」

「斬った………」

「わ、私達、夢でも見ているのでしょうか……?」

マキアスは混乱し、フィーは呆け、エマは信じられない表情をし

「ミントちゃん……!」

蜂蜜色の髪の娘―――ミントの姿を見たツーヤは明るい表情をし

「ナイスフォロー、フェミリンス、ミント!―――ヨシュア!」

エステルは嬉しそうな表情でミントと金髪の女性―――フェミリンスを見つめて言った後ヨシュアに視線を向け

「わかった!いくよっ!!」

「ががっ!?」

エステルの言葉に頷いたヨシュアは神速で兵士達に強襲して斬撃を叩き込み

「たぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ぎゃあああああっ!?」

そこにすかさずエステルが飛び込んで棒による連打攻撃を浴びせた後分け身を作ったヨシュアと並び

「「奥義!太極無双撃――――ッ!!」」

「ぐああああああああああああっ!?」

エステルは兵士達の目の前に棒を叩きつけて大地から凄まじい威力の衝撃波を発生させ、ヨシュアは分け身達と共に斬撃を叩き込み、協力技(コンビクラフト)を受けた領邦軍は猛スピードで周囲の建物に叩きつけられるかゴミ屑のように空へと舞い上がった後地面に叩きつけられ、身体をピクピクさせた後気絶した!



「…………」

「な、ななななななっ!?ひ、人が空に打ち上げられるなんて……!」

「ひ、人ってあんな高く飛ばせるんですね……」

「あんな事ができるのはわたしが知っている限りだと前にいた”猟兵団”の団長や副団長ぐらいだと思う。」

「遊撃士というのは皆、このような非常識な強さの奴等ばかりなのか!?」

エステルとヨシュアの圧倒的な攻撃を見たリィンは口をパクパクさせ、マキアスは混乱し、エマは表情を引き攣らせ、フィーは目を丸くし、ユーシスは信じられない表情でエステル達を見つめ

「えっと、エステルさん達を基準にするのは間違っていますから。あの人達が特別なだけです。」

「そういうお前もメティ達と”同類”だから、人の事は言えないだろうが。」

ユーシスの言葉を聞いたツーヤは苦笑しながら答え、ツーヤの答えを聞いたメティサーナは呆れた表情で指摘した。



「あ、ツーヤちゃん!久しぶり!」

その時ミントが嬉しそうな表情でツーヤに駆け寄り

「久しぶり、ミントちゃん。最後に会ったのはクロスベルだから……まだそんなに経っていないね。」

「えへへ……ミントもこんなに速くまた会えるなんて、驚いたよ!ツーヤちゃん、その学生服、とっても似合っているね!」

「フフ、ありがとう、ミントちゃん。」

そして二人はそれぞれ微笑み合った。



「ミント、ツーヤ!今は和んでいる場合じゃないわよ!」

「追手が来る前に街道に出ますわよ!」

「うん!」

「はい!」

「君達も早く!」

「は、はい!」

エステルとフェミリンスの指示を聞いた二人は頷いた後、ヨシュアの指示に頷いたリィン達と共に走って街道へと出た。



「やっぱり、やっちまいやがった!アイツらの頭の中の辞書には”手加減”って言葉はないのかよ!?……ハア……後でアイツに怒鳴られなきゃいいけどな……ってか、アイツもアイツだ。早く来ないと、もっとヤベェ事態になるぞ…………何せ逃げた方向がよりにもよってメンフィル領になったケルディック方面だからな……頼むから、メンフィル軍と領邦軍がぶつかり合うという展開は起こさせないでくれよ……いっそ、今から教会に行って女神に祈っておいた方がいいかもしれねぇな………」

その様子を見ていた金髪の青年は頭痛を感じて両手で頭を抱えて疲れた表情で溜息を吐き、そしてある事に気付くと表情を青褪めさせて身体を震わせ

「フフ……まさか”Ⅶ組”の諸君に”漆黒の牙”達が手を貸すとは、予想外の展開だな。さて……我が知人達の導きによってどのような美しきフィナーレをかざるのか、”観客”として見守らせてもらうよ、”Ⅶ組”の諸君。」

人気のない別の場所から事態を見守っていたブルブランは口元に笑みを浮かべて街道へと去って行くリィン達を見つめた後、懐からステッキを取り出して薔薇の花びらを周囲に舞わせてその場から消えた! 
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