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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第33話

~地下水道~



「リィン君!一体はあたしとヨシュア、メティが片付けるわ!」

「残りの一体は君達が!」

「わかりました!みんな、行くぞ!」

戦闘開始後エステルとヨシュアの指示に頷いたリィンは仲間達と共に一体の魔獣に向かい、エステルとヨシュア、メティサーナはもう一体の魔獣に向かって行った。



「グルルルッ!!」

自分に向かって来たエステル達を見た魔獣は敵の防御を崩す突進―――アーマークラッシュで迎撃してきたが

「っと!」

「甘い!」

エステルとメティサーナは左右に跳躍して回避し

「朧!!」

「グルッ!?」

ヨシュアは背後に一瞬で回って居合いを叩きこむクラフトで回避すると共にダメージを与えた!



「ハァァァ……捻炎棍!!」

魔獣から距離を取ったエステルは魔力を込めた棒を振るって炎の弾丸を魔獣に命中させ

「風よ、切り裂け!真空刃!!」

メティサーナは魔獣のいる場所に巨大なかまいたちを発生させる魔術を発動して追撃した!



「いくよ!もう一撃!!」

一方ヨシュアは双剣で2回斬るクラフト―――双連撃を魔獣に叩き込み

「弧武―――身妖舞!!」

続けて舞いのような動作で武器に残像を残しながら高速剣技を叩き込んだ!

「グルッ!!」

次々と攻撃を加えるヨシュアに反撃する為に魔獣は鋭い爪を振るったがヨシュアは軽やかに後ろに跳躍して回避し

「―――雷光撃!!」

雷のような速さの電光石火の反撃を魔獣に叩きこんだ!



「朱雀!衝撃波!!」

「ギャン!?」

そこに自らの闘気によって”鳳凰”と化したエステルが突撃して強烈な一撃を叩き込み

「せいっ、せいっ、せいっ…………とぉぉりゃああっ!!」

「ガッ!?」

棒で常人の目では決して見えない達人の連打攻撃―――百烈撃で追撃し

「喰らえーっ!!」

「グルルルッ!?」

更にメティサーナが翼を羽ばたかせて天井近くへと上がった後、急降下して叩き込んだ大鎌の一撃――――狩リ取ル鎌撃によって装甲が易々と破壊されると共に背中が斬られ、背中から大量の血を出血させた!

「ウオ――――ンッ!!」

エステル達の総攻撃を受けた魔獣は自分の相方の魔獣と一斉攻撃する為に咆哮したが、相方であるもう一体の魔獣はリィン達との戦闘によって連携できず、ただ空しく咆哮が地下に響いただけであった。



「エニグマ駆動!マグナブレイズ!!」

「ガ――――――ッ!?」

そこにオーブメントの駆動を終えたヨシュアのアーツによって発生した火柱をその身に受けて悲鳴を上げ

「暗黒の炎よ!我が仇名す者を焼き尽くせ!滅界獄滅炎!!」

更に魔獣から離れて放ったエステルの魔術による暗黒の炎が火柱を勢いを更にまして魔獣を苦しめ

「これで止めだあっ!!全て―――砕くっ!!」

そこにメティサーナが強襲して砕ける物はない程の恐ろしい威力を秘めた大鎌の一撃―――全テ砕ク鎌撃を叩き込み、炎に包まれた魔獣の巨体を一刀両断して滅した!



「―――みんな、戦術リンクを!ツーヤさん!」

「ええ!」

「エマ。」

「はい、フィーちゃん!」

エステル達が戦っている一方残りの一体に向かったリィンは仲間達に指示をした後ツーヤと戦術リンクを繋ぎ、フィーはエマと戦術リンクを繋ぎ

「今度こそ成功させるぞ!」

「言われるまでも無い……!」

更にマキアスとユーシスも戦術リンクを結んだ!



「グルルルッ!!」

自分に向かって来たリィン達を見た魔獣は一番近い距離にいるリィンにクラフト―――アーマークラッシュで突撃したが

「―――させません!」

戦術リンクの反応によってツーヤがリィンの前に出て刀で防御の構えをして魔獣の強烈な一撃を受け止めた!

「四の型・改――――紅蓮切り!!」

そして反撃代わりにリィンが炎を纏わせた抜刀技を魔獣に叩き込むと共に魔獣の背後へと駆け抜け

「お返しです!」

更にリィンと戦術リンクと結んでいたツーヤの追撃が魔獣に叩き込まれた!



「排除する。」

フィーは銃剣で牽制銃撃―――クリアランスを魔獣の巨体に命中させ

「白き刃よ……貫け!」

エマは導力によって発生した白銀の刃を敵に叩き込むクラフト―――イセリアルエッジを放って追撃した。

「グルッ!?グルルルル……!」

銃撃と白き刃をその身に受けた魔獣は一瞬怯んだ後フィーとエマに目標を変えて攻撃しようとしたが

「リミットを解除―――喰らえ――――”ブレイクショット”!!」

「ギャン!?」

マキアスのショットガンから放たれた防御を確実に崩す弾丸をその身に受けて怯み

「斬!!」

マキアスと戦術リンクを結んでいたユーシスが怯んだ隙を逃さないかのように詰め寄って騎士剣で薙ぎ払い攻撃を放ってマキアスの銃撃によってできた傷口を広げた!



「グルルルッ!!」

攻撃を受け続けていた魔獣は至近距離にいるユーシスに向けて爪を振るい

「チッ!?」

後ろへと跳躍して回避するつもりだったユーシスだったが、魔獣との距離を詰めすぎていた為、回避が遅れ、片腕を切り裂かれ、切り裂かれた部分から血が出てきた。

「ガルルルッ!」

「な―――グッ!?」

更に一瞬で振り向いて背後にいるリィンにクラフト―――アーマークラッシュを叩きこんでダメージを与えると共に吹っ飛ばしてそこから追撃しようとしたが

「ポイッと。」

「ギャン!?」

フィーが投擲したF(フラッシュ)グレネードをその身に受け、フラッシュグレネードが爆発と共に発生した強烈な光に目がやられ、怯んだ。



「大丈夫ですか!?」

そしてリィンと結んでいたツーヤは戦術リンクによって自動発動した攻撃された相方の傷をある程度回復する”オートティア”を発動してリィンの傷を回復し

「今回復します!―――セレネスブレス!!」

エマは魔導杖に搭載されてある回復魔法(クラフト)―――セレネスブレスを発動してユーシスの傷を回復した。



「フン、仕える主も見分けられん犬が。この借りは倍にして返してやる……!」

エマによって傷が回復したユーシスは怒りの表情で魔獣を睨みながらオーブメントを駆動させた。

「十六夜―――”突”!!」

そしてツーヤは抜刀すると共に衝撃波を放ち

「五の型――――弧影斬!!」

ツーヤと戦術リンクを結んでいるリィンもツーヤに続くように抜刀して衝撃波の刃を放って魔獣の身体を傷つけた。

「グルルルル……!」

その時光にやられた目の状態が戻った魔獣は反撃をしかけようとしたが

「もう一個ポイッと。たたみかける。」

「ガッ!?」

フィーが再びフラッシュグレネードを投擲して怯ませた後、続けてクラフト―――クリアランスを放って追撃し

「アークス駆動、シルバーソーン!!」

そこにオーブメントの駆動を終えたエマがアーツを発動して追撃した。



「ウオ―――――ンッ!!」

リィン達に総攻撃されていた魔獣は相方に援護を求める咆哮を上げたが、エステル達と戦っていた為咆哮は空しく地下中に響いた。

「―――もう一撃、喰らえ!」

「ギャン!?」

そこにチャージを終えて放ったマキアスのクラフト―――ブレイクショットを再び受けて怯み

「そこだっ!!」

マキアスと戦術リンクを結んでいるユーシスがその隙を逃さないかのように斬撃を叩き込んだ。



「フン、犬の分際でこの俺に逆らった事……地獄の底で後悔するがいい。――――ダークマター!!」

「ガアアアアアッ!?」

そしてユーシスは駆動を終えたオーブメントを発動して魔獣の周辺に重力を発生させて魔獣を怯ませ

「…………………」

その場で精神統一して騎士剣に青く輝く光を纏わせ

「――終わりだ!」

闘気を纏わせた騎士剣を片手に魔獣に突撃して突きを放った。すると魔獣は青き光の結界に閉じ込められ

「クリスタル―――セイバーッ!!」

ユーシスは斜め十字(クロス)に斬撃を叩き込み、結界ごと魔獣に強力な威力を持つ斬撃を叩き込んだ!

「ガアアアアアア―――――――ッ!?」

ユーシスが放った美しき騎士奥義―――クリスタルセイバーをその身に受けた魔獣は悲鳴を上げながら消滅した!


「はあっ、はあっ……」

「……何とか倒せたか……」

「ふー……かなりの手応えだったね。」

「ええ……少なくても手配魔獣よりは圧倒的に上でしたね。」

「さ、さすがにもうダメかと思ったぞ……」

「フン……たかが獣ごときに後れを取ってたまるか……」

魔獣の消滅を確認したエマは息を切らせ、リィン達がそれぞれ安堵の溜息を吐いている中、ユーシスは鼻を鳴らしていつものような仏頂面で呟き

「へえ~、君達って、結構やるじゃん!」

「正直驚いたよ……特にその僕達が持っている戦術オーブメントとは異なるオーブメント――――”ARCUS”の機能を始めて見たけど、団体戦で凄まじい能力を発揮するね。」

「それに皆、連携が完璧だったぞ!」

エステル達は感心した様子でリィン達を見つめていた。



「…………はは…………」

「ふふっ……」

「クスクス……」

そしてリィンとエマ、ツーヤはそれぞれ微笑み出し

「まったく……笑いごとじゃないだろう。」

リィン達の表情を見たマキアスは苦笑しながら指摘した。



「フン、そういう貴様こそ何をニヤついている……?」

マキアスの表情を見たユーシスは口元に笑みを浮かべて指摘し

「き、君の方こそ……!」

「やれやれ。」

ユーシスの指摘を聞いてユーシスを睨むマキアスの様子を見たフィーは口元に笑みを浮かべて呆れていた。



「実習の仕上げとしては上々すぎるくらいだな……」

「ええ、戦術リンクも全員でつなげられましたし……」

そしてリィンとエマがそれぞれ安堵の溜息を吐いたその時、笛の音が聞こえてきた!



「しまった……!」

「呆けている場合ではなかったか……!」

するとその時領邦軍が駆け付けてリィン達を包囲しようとしたが

「やれやれ……少しは空気って物を読んでから来なさいよね。」

「なっ!?」

「な、何者だ!?」

突如リィンの隣に現れたベルフェゴールに驚いた。



「へっ!?」

「まさかエステルやロイド達みたいに異種族と契約しているなんて……」

「………この圧倒的な魔力、あの睡魔は恐らく”魔神”だな。」

一方ベルフェゴールの姿を見たエステルとヨシュアは驚き、メティサーナは真剣な表情でベルフェゴールを見つめ

「ええっ!?ま、”魔神”!?」

メティサーナの言葉を聞いたエステルは信じられない表情でベルフェゴールを見つめた。



「た、隊長!新手が……!」

兵士の一人は慌てた様子で隊長に判断を仰ぎ

「ええい、狼狽えるな!数はこちらが上だ!陣形を崩さず包囲しろ!」

隊長は怒鳴って指示をした。しかし

「フフ……………」

「………………ぁ。」

目に膨大な魔力を纏わせたベルフェゴールが妖しげな微笑みを浮かべると隊長や周囲の兵士達は虚ろな目をした状態で硬直し

「こ、これは一体……!?」

「みんな、放心状態。」

「まさか……あの女の仕業か!?」

「………!」

その様子を見たマキアスは驚き、フィーは目を丸くし、ユーシスは信じられない表情でベルフェゴールを見つめ、エマは真剣な表情でベルフェゴールを見つめた。



「あなた達は先程、暴走した領邦軍が運用している軍用魔獣を撃破した。しかし全員が負傷してしまったため、一時的に帰投することになった。脱走者の姿は見ていないし、地下水道を通って脱走した形跡はない。」

「…………………」

ベルフェゴールの言葉を聞いた領邦軍の兵士達や隊長は無言で頷き

「……脱走した形跡もない。」

隊長が虚ろな目で呟いた後、全員詰所の方へと向かって去って行った。



「領邦軍の兵士達が……」

「帰って行く。」

一連の流れを見ていたツーヤは呆け、フィーは目を丸くし

「「………………」」

マキアスは口をパクパクさせ、ユーシスは絶句し

「な、何なの、今の!?」

「まさか……暗示の類いの魔術?」

エステルは驚きの表情で声を上げ、ヨシュアは真剣な表情で推測し

「――ああ、間違いない。ああいった暗示系の魔術は睡魔族の得意分野だからな。」

ヨシュアの推測にメティサーナは頷いて答えた。



「ま、ざっとこんなもんね。」

「ベルフェゴール……領邦軍の兵士達に一体何をやったんだ?」

兵士達が去って行った理由が気になったリィンはベルフェゴールに尋ねた。

「ああ、簡単よ。私の魔力を込めた瞳で私の周囲の敵全員を見た後催眠状態にして、兵士達の脳に私の偽の命令を送って操っただけよ。」

「あ、あんですってー!?」

「あ、操る!?」

「あんな一瞬で敵味方の判別をして、あれ程の数の兵士達に暗示をかけるなんて……」

「味方だと滅茶苦茶心強くて頼もしい存在だけど、敵に回したらとんでもなく厄介で恐ろしい存在だね。あの地下校舎での時、対峙しなくて正解だったね。」

ベルフェゴールの説明を聞いたエステルとマキアスは驚き、エマは信じられない表情でベルフェゴールを見つめ、フィーは静かに呟いた。



「………操られた兵達は大丈夫なのか?」

その時ある事が気になったユーシスは尋ね

「ええ。そんな強力な術はかけていないから、半日ほどで術の効果は解けるわよ。」

「そうか、ならいい。新手の追手が来ない内にさっさとバリアハートから脱出するぞ。」

ベルフェゴールの答えを聞いて頷いた後リィンに視線を向けた。



「わかった。さっきは助かったよ。ありがとう、ベルフェゴール。」

「うふふ、どういたしまして♪私はご主人様の使い魔だから当然の事をしたまでよ♪」

リィンのお礼を言われたベルフェゴールは魅惑的な笑みを浮かべてウインクをした後リィンの身体に戻った。



「それじゃあ、まずは北クロイツェン街道に急いで向かってもらうけど……疲れていてもう走れないって人は今すぐ申し出て。その人はあたしの友達に乗せてもらうわ。」

「の、”乗せてもらう”??」

「エステルさん、もしかして……」

エステルの提案を聞いたリィンは戸惑い、ある事に気付いたツーヤがエステルを見つめたその時

「――――永恒!!」

なんとエステルの傍に普通の狐より数倍の身体の大きさで、炎のような真っ赤な鬣を持ち、8本の尾がある狐―――サエラブが現れた!



「な、なななななななっ!?」

「まさか……リィンのように異種族と契約しているのか?」

突如現れたサエラブにマキアスは混乱し、ユーシスは驚きの表情でエステルを見つめ

「狐……”六異将”の”業炎の疾風”サエラブだね。」

フィーは静かな表情でサエラブを見つめた後呟いた。



「あれ。フィーちゃん、永恒たちの事を知っているんだ。」

「ろ、”六異将”、ですか……?」

フィーの言葉を聞いたエステルは目を丸くし、エマは戸惑いの表情で呟いた。

「今は説明している時間はないわ。―――永恒。悪いけど疲れている人達を貴方の背に乗せて走ってもらっていいかしら?」

(いいだろう。)

エステルに視線を向けられたサエラブは頷き

「え……」

「何、今の……?」

「これはまさか……」

「あ、頭に誰かの声が響いてきたぞ……!?」

「まさか……その狐か!?」

サエラブの念話を聞いたエマは呆け、フィーは首を傾げ、ある事に気付いたリィンは目を丸くしてサエラブを見つめ、マキアスは驚き、ユーシスは信じられない表情でサエラブを見つめた。



「―――今はそんな事を気にするより脱出が先決だ!疲弊している者はさっさと申し出ろ。時間がもったいないぞ!」

「じゃ、わたし。体力はそんなにない方だし、撤退戦に備えての体力も温存しておきたいし。」

メティサーナの言葉を聞いたフィーは申し出

「フィーの体格ならもう一人乗れるな……エマ、君も乗せてもらったらどうだ?ここまで全力で走った事や今までの戦闘の影響で長距離を走る事は難しいだろう?」

サエラブを見つめて呟いたリィンはエマに視線を向けた。



「ええっ!?い、いいんですか……?」

エマは驚いた後リィン達を見回し

「あたしはまだまだ余力があるので大丈夫です。」

「俺も問題ない。まあ、我らが副委員長殿はわからんがな。」

ツーヤは頷き、ユーシスは頷いた後口元に笑みを浮かべてマキアスに視線を向け

「余計なお世話だ!エマ君、遠慮なく君も乗るといい。こうなったのも僕の不注意が招いた事も原因の一つだからな。」

「……わかりました。それじゃあ失礼します。」

ユーシスに視線を向けられたマキアスは声を上げた後エマに視線を向け、エマは頷いた後フィーと共にサエラブの背に跨った。

「どうやら決まったようね。――ヨシュア。」

「ああ。――――ミントかい?今から脱出作戦を始めるから、手筈通り所定の位置に来たら合流をするよ。」

エステルに視線を向けられたヨシュアはオーブメントである人物と通信した。



「それじゃあ、みんな!ここから全速力でバリアハートから脱出するからね!覚悟はいいわね!?」

「脱出の際に襲い掛かってくる兵士達との戦闘はメティ達に任せて、お前達は街道に出る事に専念しろ!」

「はいっ!」

そしてエステルとメティサーナの号令にリィン達は力強く頷いた。



こうして……”バリアハート脱出作戦”が始まった………! 
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