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決戦!!天本博士VS超時空天下人ヒデヨシ

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6部分:第六章


第六章

「こんなあからさまに怪しいお爺さんをねえ」
「まあ不審者と思われてバスチーユ送りかな」
「バスチーユか。それもよい」
 監獄さえ博士にはどうということはないのである。
「即座に完全に爆破してやるわ」
「ただ爆破するだけですか?」
「無論それで終わらせるつもりはない」
 博士はそれで終わるような人間ではない。
「エンペライザーかカイザージョーを召還してそのうえで革命家共を皆殺しにしてやるわ。わしに楯突いた報いを思い知らせてやるわ」
「この時代にあんなの召還できるんですか?」
「できるぞ。ほれ」
 言いながらまた懐から何かを出してきた。見ればそれは携帯電話に非常によく似ている。ライゾウとタロがそれを見てまた話すのだった。
「相変わらず時代考証とか全然考えない人だよなあ」
「フランス革命の時代に携帯電話なんて」
「無論これはただの携帯電話ではない」
 一応携帯にも使えるようである。
「ただの電話ではのう」
「じゃあ本来の時代にも通じるんですね」
「うむ。では早速呼ぶぞ」
 こうしていきなり巨大ロボットをよりによってこの時代に召還するのであった。そうして召還されたのはカイザージョーであった。ベルサイユ宮殿にいきなり場違いなロボットが姿を現わした。
「わっ、何だあれは!」
「悪魔か!」
「銀色の悪魔だ!」
 貴族達だけでなくみらびやかな軍服の近衛兵達までもがカイザージョーを見て驚きの声をあげる。そうして口々に叫びながらその巨大な姿を見上げるのだった。
「悪魔が陛下に害を為しに来たぞ!」
「撃て!撃て!」
「大砲を持って来い!」
「何じゃ、悪魔と申すか」
 博士は彼等の言葉を聞いていささか残念そうに呟く。
「わしの発明した偉大なカイザージョーをそんな陳腐なものとか」
「この時代の人じゃ当たり前なんじゃないんですか?」
 小田切君がその博士に突っ込みを入れる。貴族達も兵士達もその間に剣を抜き銃や大砲をカイザージョーに向けている。そうして今にも攻撃を仕掛けようとしている。
「よし、今だ!」
「撃て!」
「銀の弾丸も持って来たぞ!」
「何じゃ、そんなものでカイザージョーを倒せると思っているのか」
 博士はその様子を見てもやはりいささか不満そうである。
「愚かな。そんなもので倒せる筈もなかろう」
「ですから悪魔と思われてますから」
 小田切君の突込みが続く。
「これも当然ですよ」
「わしは常識や当然といったものが嫌いなのじゃ」
 流石は博士であった。
「さて、それではじゃ」
「で、どうするんですか?」
「発明したものは使うものじゃ」
 これは言うまでもないことであるが博士が言うとこの上なく物騒なものに聞こえる。博士が何かをすればそれだけで何もかもが物騒になってしまう。
「違うか?」
「そうですけれどこんな場所でカイザージョー使ったら」
 小田切君が気にしているのはそのことだった。
「ベルサイユ宮殿が」
「ああ、そんなものはどうでもよい」
 カイザージョーはベルサイユ宮殿のバックにいるのだ。壮麗かつ巨大な宮殿の真後ろに白銀のロボットがいる姿は実にシュールなものであった。
「宮殿の一つや二つはのう」
「けれどベルサイユ宮殿っていったら」
 小田切君は顔を顰めさせて博士にまた言う。
「二百年の歳月をかけてそのうえでやっと完成したんですよ。人手も費用もかなりかかってあれこれ手を入れて建築していった代物ですけれど」
「ふむ。それでトイレがなかったんじゃな」
 博士はこのベルサイユ宮殿におけるあまりにも有名な話を指摘した。
「設計者は何を見落としていたんじゃろうな」
「それで宮殿の端とかお庭はそれこそ排泄物まみれだったんですよね」
「そうじゃ。汚物の消毒じゃ」
 殆ど何処かの世紀末漫画のモヒカンの台詞であった。
「あの宮殿を全部焼くかそれか絶対零度で凍らせて消毒するかじゃな」
「それって結局宮殿全壊じゃないですか」
「ふむ、そういえばそうか」
 言われてまたしてもやっと気付いたような顔を見せる。
「まあそれもよい」
「よくないですよ。そんなことしたら」
 二人が話しているその間に馬に引かれた大砲が幾つもやって来た。そうしてそれぞれ配備されそのうえでいよいよ撃たれようとしていた。
「撃ち方はじめ!」
「あの悪魔を倒せ!」
「陛下を御護りしろ!」
「その陛下がもうちょっとしたらギロチンじゃな」
 相変わらず博士は実に落ち着いている。
 
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