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おぢばにおかえり

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第二十七話 デートじゃないのにその一

                          デートじゃないのに
 阿波野君と一緒に信者の方のお見舞いに行くことになりました。二人でまずはお見舞いの品を受け取りに詰所に向かうのですがその途中で。
「あれ、中村先輩よねえ」
「一緒にいるの誰?」
「同級生の人じゃないの?」
「違いますよお」
 よりによって阿波野君が話をしている女の子達に顔を向けて言うのでした。信じられないです。
「一年ですよ、僕は」
「えっ、後輩!?」
「新入生の子!?」
「はい、そうなんですよ」
 能天気に応えています。見れば二年の娘達です。私もよく知っている娘ばかり。これは非常にまずい、直感じゃなくもう確実にそう思える状況です。
「先輩とちょっとデートを」
「下校中にデートって」
「あの先輩が」
「ちょっと、何いい加減なこと言ってるのよっ」
 私はもう顔を真っ赤にして阿波野君に言いました。
「デートじゃないでしょ、デートじゃ」
「あれっ、一緒に行っていって言ったのに」
「うわ、自分からお誘いって」
「先輩も大胆なのね」
「ち、違うわよ」
 自分でも呆れる位慌てているのがわかります。
「同じ大教会の所属だからね。ちょっと一緒に詰所まで」
「デートなんです」
「やっぱり」
「先輩も凄いっていうか」
「いい加減にしなさいっ」
 阿波野君に対する言葉です。
「そんなこと言ったら一緒に連れて行ってあげないわよっ」
「えっ、それは困りますよ」
 何が困るんでしょうか。困ってるのは私なのに。
「とにかくね。デートじゃないのよ」
「そうなんですか」
「ただ。一緒に詰所に行くだけだから」
「御二人でですよね」
「ええ」
 何か変なことを聞かれました。
「そうよ。それだけよ」
「わかりました」
「そういうことなら」
「わかってくれたみたいね」
「そうですね」
 何故か阿波野君はまだにこにことしています。一体何がここまで楽しいんでしょうか。
「わかって頂いて何よりですよ」
「全く。変なことばかり言うんだから」
 一難去って本当にほっとして言いました。
「何でこんな子が天理高校に来たのよ」
「テストに受かりましたから」
「奈良県だったら他の高校もあるでしょ?」
 じろりと見つつ言いました。
「何で天理高校なのよ、全く」
「だって奇麗な人多いですから」
「まあそれはね」
 これは頷くことができました。結構可愛い人や娘が多いのがおぢばなんです。
「確かにそうだけれど」
「小柄で」
「小柄な娘が好きなの」
「僕大きいですからね」
 それは確かにその通りです。背だけは否定しようがありません。もっとも北乃きいちゃんってプロフィールじゃ一五七になっていますけれどもっと低いんじゃないかしらって思います。
「だからなんですよ」
「小柄な娘が好きだったらおぢばは丁度いいじゃない」
「そうなんですか?」
「だって小さい人多いから」
 私もです、これは。 
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