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戦国異伝

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第二百五十話 信長の先陣その九

「それを考えておる」
「ふむ、殿もです」
「随分と変わられましたな」
 主の話を聞いてだ、片倉と成実は言った。
「かつては戦の場で燃え采配を振るっておられましたが」
「今は政ですか」
「政に専念されたい」
「そうお考えですか」
「そうなのじゃ、戦になれば戦うが」
「第一はですな」
「政ですな」
「仙台を東北で第一の場所としたい」
 そこまで豊かにしたいというのだ。
「民達の笑顔が見たいわ」
「ではその笑顔の為に」
「及ばずながら彼等も」
 片倉と成実もここで主に言った。
「励みましょう」
「殿の手足となり」
「御主等はわしの両腕じゃ」
 まさにそう言うべき存在だとだ、政宗は二人に言った。
「頼んだぞ」
「はい、では」
「これからも」
 二人も応えてだ、そしてだった。
 伊達の軍勢も兵を進めていた、軍勢は整然とした動きを崩してはいなかった。それこそ一兵も落伍することはない。
 その織田の軍勢のことを聞いてだ、老人は魔界衆の本陣で言った。
「一兵もか」
「はい、落伍せずです」
「こちらに来ています」
「その先陣は織田信長」
「あの男が自ら来ています」
「そうか」
 老人はこのことにはだ、目を異様に輝かせて言った。
「それはよいことじゃ」
「では、ですな」
「先陣にいる織田信長をですな」
「討つ」
「そうしますな」
「よいか、あの者を討てばな」
 老人は自身の周りにいる棟梁達にも言った。
「それでかなり違う」
「ですな、戦の趨勢が決まる」
「そこまでのものがありますな」
「織田信長さえ討てば」
「我等の仇敵よ」
「左様、仇敵じゃ」
 老人の目に怒りも宿っていた、その上での言葉だった。
「その仇敵を討つのじゃ」
「必ず」
「何があろうともですな」
「恨み重なるあの者を」
「ことごとく我等の邪魔をし生き残って来た者を」
「是非共」
「先陣で来たからには」
「よくぞ来た」
 こうも言うのだった。
「この場を逃さぬ」
「はい、では」
「この戦において」
「何があろうとも」
「討ちましょうぞ」
「よいか、全軍一丸となりな」
 そしてとだ、老人は命じた。
「織田信長を討て」
「わかりました」
「ではあの者達が来れば」
「全軍で先陣に向かいましょう」
「敵の先陣に」
 即ち信長にというのだ。 
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