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FAIRY TAIL ―Memory Jewel―

作者:紺碧の海
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第1章 薔薇の女帝編
  S t o r y 1 0 Your future is ending ?

 
前書き
読者の皆様こんにちは!そしてご無沙汰しております!紺碧の海です!・・・覚えていらっしゃいますか?
約8カ月更新が止まっていた理由は私のつぶやきをご覧下さい。本当にスミマセンでしたぁ!

さて、今回はナツとアオイvsミルバとジュナ、ルーシィとコテツvsチェルシーとグラミーの勝負の決着をつけます!果てさて勝負の行方や如何に―――――?

※約8カ月ぶりの更新なので誤字などが大量にあると思いますので、感想欄などでご指摘して下されば幸いです。お手数おかけしますがよろしくお願い致します。

それでは皆さん、大変長らくお待たせ致しました!Story10……スタート! 

 
―3番通路―

不気味に、妖艶に微笑んだナツとアオイを見てミルバとジュナは震え上がったが、

「さ、さっきまで!真っ青になって酔ってた奴とやられっぱなしになってた奴になんか言われたくねェよ!」
「そ、そうよそうよ!」

ビシッ!と人差し指でナツとアオイを指差しながらミルバは口を開き、それに合わせてジュナも口をそろえる。

「……お前、やられっぱなしだったのか?」
「……酔ってのびてる奴と気絶した猫を助けるのに少し手こずっただけだ。」

2人が言ってることは事実でもあり触れられてほしくなかったことなので、ナツは恥かしさを隠すように小さく舌打ちをし、アオイは唇をかんだ。が、すぐさまナツは右手に炎を纏い地を蹴って駆け出した。

「火竜の鉄拳ッ!」

その右手をミルバの顔面に叩き込むが、いつの間に造形したのか、ミルバは鋼の(シールド)でナツの拳を防いでいた。ミルバが(シールド)越しからニヤリと笑う。

炎の紐(ファイアリボン)!」

ナツの背後からジュナが右手に展開した赤い魔法陣から燃え盛る(リボン)をくねらせながら攻撃を仕掛ける。が、青竜刀(セイリュウトウ)でアオイが(リボンを)真っ二つに切る。

「俺を忘れんじゃねェよ!」
「ぐっ!」
「おらアァ!」
「ぐあ!」

アオイがジュナを、ナツがミルバを攻撃し2人が呻く。

「ちょこまかと……!じっとしてなさい!」
「うわっ!」
「ぐえ。」

左手に赤い魔法陣を展開し、今度は炎を纏っていない赤い紐(レッドリボン)を出すとナツとアオイの体を一緒に締め上げる。2人が動けない間にミルバが鋼で巨大な()()を造形する。

「ンなもん燃やしてやらァ!」

縛られた状態のままナツが体から炎を噴出させるが、赤い紐(レッドリボン)は一向に燃えない。

「うふふ、残念でした~。」

愉快そうにジュナが笑う。

「だったら切って……え?」
「そっちも、対処済みよ。」

青竜刀(セイリュウトウ)を振り上げようと、アオイが右手を動かすが、いつの間にか赤い紐(レッドリボン)で右腕がぐるぐる巻きにされていた。動かそうとするがビクともしない。

「くそっ……!」
「大人しくしてないと、その羨ましいくらい細い腕、へし折っちゃうわよぉ~?こんな風に……」
「うあああああああああっ!」
「アオイ!」

アオイの右腕に巻きついた赤い紐(レッドリボン)がいっきに締め上がり、あまりの激痛にアオイが呻く。

「アオイー!ナツー!」
「だから猫に用はないのよ!邪魔!」
「うわぁっ!」
「ハッピー!くそっ!何で燃えねェんだよコレ!?」

ハッピーが飛んで駆けつけるが、またしてもジュナに吹っ飛ばされてしまった。ナツは更に炎の威力を強くして(リボン)を燃やそうとするが、(リボン)は燃えるどころか焦げることも煙を出すこともなかった。

「ちょっとミルバ!まだなの!?」
「焦るなって。ちょうど造形し終えたとこだ。」
「さっさとしなさいよ!」

痺れをきらして声を荒げるジュナの視線の先にナツも目をやると、ミルバが巨大な鋼の大砲を3つ造形し終えたとこだった。3つの大砲の砲口は、身動きのできないナツとアオイに向けられていた。

「さーて、地獄に行って来い!」
「くっそー!燃えやがれエーーーッ!!」

更に炎の威力を強くするが、赤い紐(レッドリボン)は相変わらず燃えない。

「ナツ……耳、貸せ。」
「!」

腕を締め上げられて苦しそうにしているアオイが、ナツにだけ聞こえる声で囁いた。

「これでさよならだァ!妖精(ようせい)どもォ!」

巨大な3つの鋼の大砲の砲口に入れられた砲弾が青白く光り出す。そして―――――……

「発射ーーーーーッ!」

3つの大砲の砲口から、同時に鋼の砲弾が放たれた。狙い通り、ものすごい速さでナツとアオイに向かって飛んでいく。

「ナツー!アオイー!避けてーーー!」

傷ついたハッピーが叫んだのと同時に、ナツが背中を思いっきり反らせながら息を吸い込むと、



「火竜の咆哮ッ!」



ナツが口から勢いよく、灼熱の炎が噴出した。炎はナツとアオイに当たる直前で3つの砲弾を一瞬だけ受け止め、3つの砲弾の軌道を若干ずらした。軌道がずれた砲弾はナツとアオイの体を縛っていた赤い紐(レッドリボン)を摩擦で切り、2人の横スレスレを通り越し、

「え、ちょっ、待っ―――――きゃあああああああああ!」

予想外の出来事に頭が追いつけなかったジュナに砲弾が全て直撃した。

「ま…マジ……?こんなの、アリかよっ……!?」

自分の攻撃で味方が倒れてしまったことに、ミルバも後退りをしながら驚嘆の声を上げた。

「作戦勝ち、ってとこだな。」
「おぅ。」

拘束から解放されたナツとアオイが拳をぶつけ合う。

「アオイ、後は俺に任せろ。その腕じゃ、青竜刀(セイリュウトウ)も持てねェだろ?」
「あぁ。お前に美味しいところを持ってかれるのは癪だが……頼んだぜ。」
「おう!」

ガツッ!と鈍い音を立てて、炎を纏った両拳をぶつけた。

「~~~っ!お前等なんかに負けてたまるかアアアアア!スチールメイク、槍騎兵(ランス)ッ!」

雄叫びのように叫んだ後、ミルバは()()で無数の鋼の槍をナツに向かって放った。槍が放たれたのと同時に駆け出したナツは、飛んでくる槍を炎を纏った両拳で次々と払い避ける。

「!!?」

その光景にミルバは息を呑んだ。唖然としてるほんの僅かな間に、ナツが目の前にまで迫っていた。

「アオイが教えてくれたんだ。お前が()()で造形してることをな。」

先程アオイがナツの耳に囁いたことは、砲弾を避ける作戦とこのことだったのだ。ナツの声は、ミルバの耳には聞こえていない。迫りくる恐怖に、ミルバはただただ怯えていた。

「俺の仲間に造形魔道士がいてな……」

そう言うナツの脳裏に浮かび上がるのは、喧嘩相手でもある、熱き心を持った氷の造形魔道士―――――。

「ソイツの師匠が言ってたんだってよ。」

灼熱の炎を纏った両拳を合わせ、火竜(サラマンダー)が吼えた。

「「片手での造形はバランスが悪くて、肝心な時に力が出せねェ」ってな!」
「グアアアアアアアアア!」

ナツの攻撃をまともに食らったミルバは遠くに吹っ飛び、体を壁に強打しその場に崩れ落ちた。

「ふぅ。やっと片付いたな。」

首と両肩をぐるんぐるん回しながらナツは安堵した。

「アオイ、腕は大丈夫か?」
「あぁ。骨は折れてねェみてーだから、何とかな。ハッピーも無事だぜ。」
「あい。この通りです。」

負傷していない左腕でハッピーを抱き抱えたアオイにナツが声をかける。アオイの右腕は骨は折れていなくても、やはり力無くぷらーんと垂れ下がっていた。その腕を、ナツはしゃがんで優しく触れる。

「お前、よくこんな細っこい腕で、こんなデカい刀持って戦えるよな。」
「相手も羨ましがってたもんね。」
「う、うるせーな。筋肉の付き方が特殊なんだよ俺は。」

腕と青竜刀(セイリュウトウ)をまじまじと交互に見つめながら言うナツとハッピーからアオイは慌てて視線を逸らした。

「お前ってホント、“女”みてーだよな。」
「っ!」

笑いながら思ったことを素直に、悪気なく言ったナツの言葉に、アオイは息を呑み、青玉(サファイア)のような色をした青い瞳を僅かに、一瞬だけ見開いた。そして危うく開きかけた口を慌てて閉じた。そのことに、ナツとハッピーは気づかなかった。

「そ、そんなことより!ウェンディ達の居場所、コイツ等に聞かなくてよかったのか?」
「アオイの言う通りだね。でないとオイラ達、シャルル達を助けれないよ。」
「あ!そーだった!おいコラ!ウェンディ達はドコにいるんだ!?」

話を逸らすようにアオイがぶっきらぼうに言い、それに続いてハッピーも言う。言われて気づいたナツは、倒したばかりのミルバの服の襟を掴み、上下にガクガク揺さぶるが……

「……完全にのびちまってるな。」
「あい。」
「だーーーっ!くそーーーーーっ!」

揺さぶってもミルバの首がガクガク揺れるだけだった。

「しゃーねェ。こうなったら手当たり次第でいくしかねェな。」
「やっぱそーなるのか……。」
「あい。それがナツだから仕方ないよ。」

ナツの言葉にガックリと項垂れるアオイをハッピーが励ます。

「まっ、その辺歩いてりゃぁ皆と合流できるかもしれねェからなんとかなるだろ。」
「何でそんなポジティブ思考で考えられるんだよお前はァ!?」

呑気なナツの言葉にアオイがツッコむ。

「おしっ!急いでウェンディ達を探すぞハッピー!アオイ!」
「あいさー!」
「ったく。しょーがねェな。」

駈け出すナツをハッピーが飛んで追いかけた。アオイは追いかけずに、2人の後ろ姿を見つめながら唇を強くかむ。

(……バカ!()のバカ!まだダメだよ()!ナツにもハッピーにも、他の皆にも―――――!まだ言ったらダメ()()っ!)

爪が食い込むほど両拳を握り締める。

「おーいアオイー!」
「!」

自分の名を呼ぶ声にハッ!と我に返り顔を上げた。少し離れたところでナツとハッピーが不思議そうにこっちを見ていた。

「なーにしてんだよー?」
「アオイー!早く早くー!」

笑顔で自分の名を呼んで、自分のことを手招きする2人の姿に、苦笑しながら肩を竦めたアオイは、急いで2人の後を追った。





―1番通路―

天秤座(ライブラ)の天秤に命ずる・・・邪なる標的の重力を変えよっ!」

呪文のようにコテツが唱えると、天秤座(ライブラ)の天秤が左に傾き、

「わーっ!」
「くっ!」

グラミーとチェルシーの体の重力を重くした。

「ルーシィ!今のうちに!」
「わかってるわよ!」

コテツの言葉に頷きながら、ルーシィは腰にぶら下げている鍵束から、金色に光り輝く1本の鍵を取り出すと、

「開け!人馬宮の扉!サジタリウス!」

地面に金色の魔法陣が展開し姿を現したのは、馬の被り物を身に着けて弓矢を構えた、「~もしもし」という言い回しが特徴的な黄道十二門の星霊の1体、人馬宮のサジタリウスだった。
そして、星霊を呼び出す時に恒例の―――――

「やっほーサジタリウス!()()()()()()!」
「コテツ()()も、お元気で何よりであるからしてもしもし。」
「だーかーらー!何なのよその関係ー!」

コテツと星霊達の不思議な関係に声を荒げるが、

「ハッ!そんなことよりサジタリウス!狙いはアイツ等よ!」
「了解でありますからしてもしもし。」

本来の目的を思い出した、(あるじ)であるルーシィの言葉に頷くと、サジタリウスは狙いを定め、一直線に矢を放った。―――――が、

「シェシェシェシェシェ。」
「!?」
「それがしの矢が……!」

放たれた矢は、口しかない白い化け物―――コメルがガチャガチャと耳障りの音を立てながら食い尽くしてしまった。矢を食べ終えたコメルは自分の(あるじ)であるグラミーのもとに戻っていった。
戻ってきたコメルの頭らしきところを撫でながら、既に勝ち誇ったように高笑いしながら口を開いた。

「コメルーっ、達がーっ、いるーっ、限りーっ、あなたーっ、達のーっ、如何ーっ、なるーっ、攻撃ーっ、もーっ、私ーっ、にはーっ、効かないーっ、よーっ!このーっ、子ーっ、達ーっ、がーっ、全部ーっ、食いーっ、尽くしーっ、ちゃうーっ、からーっ!」
「シェシェシェシェシェ。」
「くっ……!」

語尾を伸ばす特殊な喋り方をするグラミーの言葉に、グラミーの周りをふわふわ漂う5匹のコメルが返事をするように、一斉に不気味に笑い出す。
グラミーに重力が効かないことに、コテツは悔しそうに顔を顰めた。

「ちょっと!自分だけ自由になってズルいわよグラミー!私の周りの重力もコメル達に食べさせてちょうだい!」
「あーっ!ゴメーンっ!チェルシーっ!すっかりーっ、忘れーっ、てたーっ!コメルーっ、達ーっ、チェルシーっ、のーっ、周りーっ、のーっ、重力ーっ、もーっ、食べてーっ、あげてーっ。」
「シェシェシェシェシェ。」

反省の色が全く見えないが、チェルシーに謝ったグラミーの指示に従い5匹のコメル達がチェルシーの周りの重力を食べ始めたその時、ザシュッ!と音を立てて、1匹のコメルが放たれた矢に当たって霧の如く砕け散った。

「キャッ!」
「あーーーっ!私ーっ、のーっ、コメルーっ、がっーーーーー!!」

突然目の前で霧の如く砕け散ったコメルを見て、チェルシーは小さく悲鳴を上げ、グラミーがいつも以上に語尾を伸ばしながら嘆いた。

「その化け物のお陰で私達の攻撃が効かないなら……」
「その化け物を攻撃すればいいだけだからね。」

ルーシィとコテツが言い終わったのと同時に、サジタリウスが(つる)を引き、再び矢を放ち2匹目のコメルを倒した。

「もーーーーーっ!許さーっ!ないーっ!コメルーっ!達ーっ!こいつ等ーっ、のーっ、体ーっ、をーっ、骨ーっ、のーっ、欠片ーっ、1つーっ、残さずーっ、食いーっ、尽くせーーーっ!」
「シェシェシェシェシェ。」

3匹になったコメル達が一斉にルーシィ達に襲いかかってきた。が、ルーシィとコテツの狙いはこれだった。

「今よキャンサー!」
「OKエビ。」

ルーシィ達の背後から待機していたキャンサーが飛び出し、コメルが傍にいなくなり守るものがないグラミーにキャンサーが攻撃を仕掛けた。―――――が、

「エビイイイイイィ!」
「キャンサー!」
「す…すまない、エビ……。」

濃い紫色の銃弾を3~4発食らったキャンサーは力尽きて星霊界に帰ってしまった。

「私がいること……忘れてな~い?」
「!」

濃い紫色の銃と、柄の先端に鎖が付いた同色の鎌を持ったチェルシーが首を傾げて挑発するように言葉を紡いだ。
……正直に言おう。ルーシィの眼中には先程までグラミーしかいなかったことを。

(人間性があまりにも強すぎて、すっかりチェルシーのこと忘れてたわ……。)

テンションが高いグラミーと、対照的な性格のチェルシーはよく行動を共にしているが、グラミーの人間性が強すぎて、挙げ句の果てにはギルドメンバーやマスターにまで、チェルシーはその存在を忘れられていることがあるのだ。
と、その時―――――

「うっ……。」
「!?コ、コテツ!?え?ちょっ、ちょっと、大丈夫!?」

突然、隣にいたコテツが左手で頭を押さえ込んでその場に片膝をついて崩れるようにしゃがみ込んでしまった。いきなりのことに、ルーシィは目を白黒させながらもコテツに声をかける。

「…だ、大丈夫……。ちょっと、ズキッてした、だけ…だから……。」
「なら、いいけ……。」

痛みに堪えながら無理をして自分に笑いかけてくれるコテツを見て、ルーシィはそれ以上何も言わなかった。

「油断してたら……死ぬわよ?」
「!ヤバっ……」

ほんの僅かな間に、チェルシーはルーシィの目の前にまで迫り、銃口をルーシィに向けた、その時だった。

「あうっ!」

チェルシーの手から銃が弾き飛ばされたのと同時に、チェルシーの手から鮮血が噴き出した。

「君も、僕のこと忘れてない?」
「コテツ!」

いつの間に復活し取り出したのか、自分の等身と同じくらいの大きさの斧を構えたコテツがルーシィを庇うように立っていた。コテツが持っている斧の刃に、僅かな鮮血が付着していた。そして、その斧にルーシィは見覚えがあった。

「その斧……もしかして、タウロスの?」
「さすがルーシィだね。そう、牡牛座(タウロス)の斧だよ。」

先程の無理したような素振りのない、自然な笑顔をルーシィに向けてコテツは言葉を紡いだ。

「そ、そんな大きな斧を出したところで、私達に勝てると思わないでね!」

血が出た右手を舌で舐めながらチェルシーは強気に言うが、

「だけど、君の相棒大変なことになってるよ?」
「えっ!?」

首を傾げながら言ったコテツが指を指した方に驚嘆の声を上げながらチェルシーが視線を動かすと、

「…ぅ、ぅう……うわぁーーーーーっ!私ーっ、のーっ、コメルーっ、達がーーーーーっ!うわぁーーーーーっ!」

顔から流れ出るものーーー涙、鼻水、よだれーーー全てをダラダラと流して顔をグチャグチャにしたグラミーがものすごい勢いで泣き出した。あまりの泣き声の大きさにその場にいた全員は両手で耳を押さえる。

「あなた達!グラミーに何したの!?」

泣き声に掻き消されないよう、チェルシーが大声でルーシィと、コテツに問うた。

「アンタが私とコテツに気をとられてる間に、サジタリウスがコメルを1匹残らず倒してくれたの。」
「で、コメルを溺愛してるグラミーが、悲しさのあまり泣き出しちゃったんだ。」
「そ、それがしのせいでありますかもしもし。」
「ううん、サジタリウスは悪くないわよ。ありがとね。」

ルーシィとコテツが同じく泣き声で掻き消されないよう大声でチェルシーに説明をする。グラミーが、泣き出したのは自分のせいかと問うサジタリウスにルーシィは首を振る。

「アンタ達……グラミーが泣き出したら、なかなか泣き止まないのに、よくもやってくれたわね!」
「そんなの知らなかったんだから仕方ないじゃーん。」

目を吊り上げて怒るチェルシーにコテツが口を尖らせる。

「とにかく、これでグラミーは戦力外だね。」
「残るはアンタだけよ!」

コテツは牡牛座(タウロス)の斧を構え、ルーシィは人差し指でビシッ!とチェルシーを指差した。
チェルシーは苦虫を潰すように顔を顰めると、体勢を立て直し、地を蹴って勢いよく駆け出した。

「サジタリウス!お願い!」
「狙撃なら、お任せあれであるからしてもしもし。」

駆ける標的(チェルシー)に狙いを定め、サジタリウスは矢を、放った。狙い通り矢はチェルシー目掛けて飛んでいくが、チェルシーはギリギリまで矢をひきつけて、当たる直前で横に素早く移動してかわした。

「それがしの矢が……!」
「あの速さでかわすなんて……!」

サジタリウスとルーシィが驚嘆の声を上げた。
そして、チェルシーはルーシィ達との距離をいっきに詰めると、少し離れた位置で跳躍し、

「やあああああああああああああっ!」

持っていた鎌をルーシィに向かって振りかざした。

(ダメだ!避けきれない……!)

ギュッ!とルーシィが硬く目を瞑ったのと同時に、ガキィン!と金属同士がぶつかり合った音が響いた。ルーシィが恐る恐る目を開けると、コテツがルーシィとチェルシーの間に割って入り、チェルシーの鎌を斧で受け止めていた。食いしばったコテツの歯が、ギリリと鈍い音を立てた。

「……あなた、いったい何者?」
「!」

コテツの斧で鎌を受け止められたまま、チェルシーは問うた。その問いにコテツは視線をチェルシーに合わした。

「さっきから感じるあなたの魔力・・・とても、()()()()()()()()()()グアアァ!」

グラミーの言葉を途中で遮り、コテツは斧でグラミーの腹を斬りつけた。そして後ろを振り返り、力いっぱい叫んだ。

「ルーシィー!」
「ロキ!お願い!」
「もちろんさ!女性を殴る趣味は無いけど、今回は仕方ないかな。」
「あのねー。」

獅子(ライオン)のたてがみのように逆立った髪に青いレンズのオシャレなサングラス、どこかのホストが着ていそうなスーツ姿の黄道十二門の中で最強の星霊、獅子宮のレオ(ロキ)だった。
ロキはチェルシーに向かって駆け出しながらゆっくりと目を閉じ、固く握り締めた拳に金色の光を纏う。

王の光(レグルス)よ、我に力を……」

そして、頃合い(タイミング)を見計らって閉じていた目をカッ!と見開いた。それはまるで、獲物を見つけた獅子のよう―――――。

獅子王の輝き(レグルスインパクト)っ!」
「キャアアアアアアアアアアアアアア!」

殴り飛ばされたチェルシーはその場に倒れ込んだ。そして戦力外になっていたグラミーは、

「ルーシィキック!」
「あーーーっれーーーーーっ……」

ルーシィの蹴りを顎に食らいその場に倒れ込んだ。

「……ふぅ。これで一先ず安心だね。」
「そうね。……あ!ウェンディ達の居場所聞き出すの忘れてたーっ!」

1番の目的をすっかり忘れていたルーシィは頭を抱え込んだ。コテツもルーシィの言葉を聞いて思い出したようにハッ!となったが、倒れているグラミーに歩み寄り肩を揺らして無理矢理起こすと、

「ねぇねぇ、僕達の仲間の居場所、教えてくれる?」
「ふぇーっ……?えーっとねーっ……地下の牢屋だよーっ……。」
「地下の牢屋だね?ありがとう。」

……普通、いくら敗れたとはいえ簡単に明かさないのが当たり前なのだが・・・ルーシィキックが相当強烈だったのか、目を回しながらもグラミーは教えてくれた。

「ルーシィのキック、相当効いたみたいだね。」
「うーん……褒められてる気がしない。」
「僕ならいつでも蹴られてあげるからねっ。」
「バカなこと言わなくていいから。」

褒めてるつもりでコテツは言ったのだがルーシィにはそんな風には感じず、ロキの言葉を慣れた手つきであしらった。

「それより、サジタリウスもロキもありがと!ゆっくり休んで。」
「お役に立ててよかったであるからしてもしもし。」

サジタリウスはルーシィと、()()()コテツに敬礼すると星霊界に帰っていった。

「ほらロキ。出番が最後だけだったからとはいえ、アンタも疲れてるでしょうから早く星霊界に」
「あ、僕はこのまま残るよ。この後女の子達との約束があってね。」
「またアンタは勝手に!」
「大丈夫!今はもう僕自身の魔力でこっちに来てるから。」
「全くもう……。」

勝手なことをするロキに向かってルーシィは頬を膨らませる。

「まぁいいわ。それよりコテツ!グラミーは地下牢屋って言ってたのよね!?急いで行くわよ!」
「あ、うん。」

地下の牢屋に向かうため駆け出したルーシィを追いかけようとしたコテツの肩を、ロキが掴んで引き止めた。振り返ったコテツに向かって、ロキは呆れ顔で小さなため息をついた。

「全く君は……いったい何をやっているんだ?」
「んー?いったい何のことかな、()()?」
「誤魔化さないでくれ。」

哀れむような目で問うロキに対して、誤魔化すようにコテツは笑顔を絶やさずに首を傾げる。そんなコテツを見てロキは再び小さくため息を吐いた。

「ルーシィが僕を呼び出した時、すでにルーシィの魔力は限界で、僕を呼び出すことはできなかったはずた。なのにルーシィは僕を呼び出すことができた。……君がバレないように、自分の魔力をルーシィに受け渡したんだろう?」
「アハハ……さっすがだね。」

ロキの言葉に、コテツは観念したように肩を竦め、力のない乾いた声で笑った。

「大丈夫だよ。ルーシィに受け渡した魔力は、君を呼び出すことができる分だけ・・・ほんの、少しだから。」
「だとしても、君の魔力はルーシィの……いや、()()()()()()()とは別物なんだ。“器”がそもそも違うからね……。君の魔力を、“器”の違うルーシィや他の皆に与え続けたらどうなるか、このことは君が一番分かっているだろう?現に、敵が勘付いていたじゃないか。」
「………。」

ロキの言葉は全て的確で、コテツに反論する理由はなかった。

「……とにかく、これ以上危険なことをするのは止めてくれ。でないと、君が」
「分かってる!」
「!」

その先に続くロキの言葉をコテツは素早く遮った。そして、コテツはロキに笑いかけた。その笑顔はとても儚げで、今すぐにでも消えてしまいそうで―――――。

「ありがとう。わざわざ心配してくれて。」

その笑顔を見た瞬間、ロキはそれ以上何も言えなかった。

「僕は大丈夫。必ず―――必ず何とかするから。」

そう言うとコテツは、ロキの両肩にそっと手を置いた。

「これからも、仲間と一緒に(あるじ)を―――ルーシィを守ってあげてね。頼りにしてるよ、獅子宮のレオ。」
「……あなた様の、仰せのままに。」

いつもの、爽やかでやわらかい笑顔に戻ったコテツの言葉に、()()は片手を添えるように胸に当て、片膝をつきながら恭しく頭を僅かに下げる。

「ちょっとコテツー?何してるのよー?早く早くー!」

ルーシィの声が聞こえた。

「わぁ~!待ってよルーシィー!酷いなー!おいてかないでよ~!」

コテツは何事もなかったように、ロキを置いて足早にその場を走り去ってしまった。その姿を見届けたロキは星霊界に帰っていった。



ルーシィに追いついたコテツは爽やかでやわらかい笑顔でルーシィに笑いかけた。それとは裏腹に、ルーシィはどこか浮かない顔をしていた。

「んー?どうしたのルーシィ?」
「ねぇ……ロキと、何話してたの?」
「んーっと、ロキがこれから会いに行く女の人の魅力についてさんっざん聞かされてた。」
「えぇっ!?」
「これから会いに行く女の子はものすっごく美人さんだし、すっごくお金持ちだし、すっごく優しいし、すっごく……」

どこか不安気に尋ねるルーシィにコテツは自然に明るく答えた。その答えにルーシィは驚嘆の声を上げた。そしてデタラメをすらすらと自然な感じで、たった今ロキにさんざん聞かされたかのように振舞って話す。
話していくうちに、どんどんルーシィの眉間のシワが深くなっていった。

(後でちゃんとロキに謝っとかないとな……。)
「全くもぉ……相変わらず女たらしなところは全然直らないんだからぁ。ハッ!てか、アイツ今何人の女の子と付き合ってるのかしら!?あーもう!今度問い詰めてやんないと!」

コロコロと表情を変えて自問自答を繰り返すルーシィを隣で見つめながら、コテツは心の中で、誰にも聞かれることのない心の中で、小さく小さく呟いた―――――。




(―――ゴメンね、ルーシィ。―――――ゴメンね、許してね。)
 
 

 
後書き
Story10終了ーーー!よかった~!
ただ、約8カ月前の記憶なので曖昧なのですが、私確か、薔薇の女帝(ローゼンエンプレス)編最終話って言った記憶があるようなないような……。
と、とにかく!薔薇の女帝(ローゼンエンプレス)編は次回がホントの最終話です!

それでは、久々の更新だというのにご閲覧して下さいました読者の皆様、ありがとうございました!また次回、お会いしましょ~♪ 
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