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大統領 彼の地にて 斯く戦えり

作者:騎士猫
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第一話 異世界の門

「へぇー、やっぱり東京を新首都に選んだのは正解だったな。日本国時代の政府関係の建物も残ってるし、こりゃあ計画より簡単に終わりそうだ。」
今や世界を統一し、一惑星国家となったロンディバルト民主共和国、その大統領であるペルシャール・ミーストは、秘書官のティレーナ・クリスチアンと十数人ばかりの護衛とともに、新たな首都となる旧日本国東京を視察に来ていた。

「そろそろ銀座ですね。」
ティレーナは自分の持っているタブレット端末に映されている地図を見つつ言った。
「しかし、本当に世界統一したんだよなぁ・・・。まぁ、まだ旧君主制連合領地の治安とか、通貨の統一だとか、色々とやることは多いんだよな。はぁ・・・、また書類が増えるのか。」
ペルシャールはため息を吐きつつ言った。ちなみにペルシャールがいつも処理している書類は1~2メートルの束2つほどである。国がもう一つ増えるほどの領土が新たに追加されたのだから、書類の数は2~3倍に増えるだろう。ペルシャールはそれを考えてまたため息を吐いた。
「そんなことで一々ため息を吐いているようでは、1国の大統領は務まらんでしょう。」
何度もため息を吐くペルシャールを見て、護衛隊長であるシェーンコップがやれやれという表情で言った。

「1号車より連隊長、前方から市民が十数人走ってきます。何やらあわてているようです。」
そんな感じで会話をしていると、1号車の隊員から通信が入った。
「市民が?・・・囮の可能性がある。1,2号車は車両を横にして即応態勢を取れ。他の各車も周辺警戒を怠るな。」
それを聞いたシェーンコップが冷静に指示を出した。

「こちら1号車、前方から来る市民の後方から騎馬隊が接近中。装甲騎兵です。」
「装甲騎兵だと?」
「ティレーナ、今日このあたりで騎馬隊を使ったイベントが行われるという予定は?」
1号車から新たな通信を聞いたペルシャールは、ティレーナに質問した。
「いえ、この辺りでは騎馬隊のイベントどころか、すべてのイベントは禁止させています。」
「ふむ、准将。どうやらお客さんの可能性が高いようだ。どうする?」
それを聞いたペルシャールは、今度はシェーンコップに聞いた。
「そりゃあ、お出迎えしなければいけませんなぁ。」
「よろしい、全車迎撃態勢を取れ。危険があれば自由射撃を許可する、市民には当てるなよ?」
シェーンコップの答えに頷くと、無線を持って命令を出した。


・・・・・・・・・・


「く、くるなぁ!くるなぁぁあっ!」
「たすけれくてぇええ!!」
「あ、足があ!あしがぁぁ!!」
ペルシャール一行が迎撃態勢を整えている頃、銀座は地獄と化していた。
突如として大通りに門が出現し、そこから騎馬隊やモンスター、ドラゴンが現れ、唖然としている市民を襲い始めたのである。一つ幸いだったのは、大統領警備のため、各駅や主要施設に多数の武装親衛隊が配備されていたことだろう。
とはいうものの、門から現れた軍と武装親衛隊では数が違いすぎた。門の軍隊6万に対して、武装親衛隊は600名程度である。

「防衛司令部に増援要請をっ!大統領を最優先で保護しろ!」
警備部隊の隊長が怒鳴りながら部下に指示をだし、自らも銃を取り出して応戦していた。
「くそっ、なんなんだ奴らはっ!モンスターとドラゴンなんて聞いたことないぞっ!!」
「愚痴言う暇があったら敵を撃て!」
SS隊員達は、民間人を保護しつつ、防衛司令部のある旧皇居近辺に後退していった。


「横浜基地からヘリ部隊を送れ!旧皇居に民間人を避難させろっ!戦車部隊を出して、大統領を保護するんだ!急げっ!」
東京都防衛司令部では、スタッフがあわただしく動き回り、門から現れた軍隊の対応に追われていた。


・・・・・・・・・・


「連隊長っ!さすがにこの人数じゃ防ぎきれませんよ!」
「相手は銃も持たない騎兵だ。近づかれなければ対処は容易だっ。人ではなく馬をねらえ!」
3回もの騎馬隊による突撃を何とか凌いだ大統領護衛部隊は、人数的にも弾薬的にも余裕のない状態であった。

「!?連隊長っ、味方の戦車部隊です!」
4度目の突撃が行われる直前、隊列を整えていた騎馬隊に17式戦車の45口径100mm砲が火を噴いた。騎馬隊は木端微塵に吹き飛び、跡形もなくなった。
「閣下!我々が援護しますっ。防衛司令部まで避難をっ!」

ペルシャール達は、戦車部隊に護衛されつつ防衛司令部へと避難した。その頃には横浜基地のヘリ部隊と戦車部隊が市街地出縦横無尽に暴れまわっている門の軍隊を殲滅していた。
ペルシャールが到着した時、すでに主力は壊滅し、掃討戦へと移っていた。



後に”銀座の悲劇”と呼ばれる市街地戦は、民間人1360人 SS及び防衛隊員37人の犠牲者をだし、門の軍隊を全滅させ、6000人に及ぶ捕虜を得て収束を向かえた。
 
 

 
後書き
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