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炎天下

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第四章

「紹介したんだよ」
「そうなのね」
「だからあそこまで行ってな」
 その高い場所にある白い喫茶店までというのだ。
「一緒にアイスコーヒー飲もうな」
「美味しくてしかも安い」
「そうだよ、しかもな」
「しかも?」
「景色もいいからな、楽しみにしておけよ」
「わかったわ、ただね」
 安奈は令にあらためてだ、眉を顰めさせて言った。
「さっきも言ったけれど」
「いい場所じゃなかったらか」
「そうよ、その時はね」 
 まさにというのだ。
「桜かガジュマルかどっちがいい?」
「二択になってるな」
「その時に選ばせてあげるわ」
「だからどっちもな」
「ないっていうのね」
「確かに今日は暑いけれどな」
 沖縄の夏の中でもだ、二人はその中を歩いているから余計に暑い。さながらサウナの中にいるようなものだ。
「こうした思いをしてもな」
「行く価値があるのね」
「だから誘ってるってな」
「あんた言ってるわね」
「じゃあ行こうな」
「ええ、それじゃあね」
 安奈は桜とおガジュマルのことを言ってだった、そのうえで。
 二人でその店まで行った、店は高い周りに様々な花が咲いている場所の中にあってだった。
 南欧風の白い外観でだ、海も見える。安奈はそのコバルトブルーの海を見て令に対してこうしたことを言った。
「海はね」
「いいだろ」
「沖縄の海は奇麗だけれどね」
 沖縄に生まれ育っている者からも言った。
「ここから見る海はね」
「尚更いいよな」
「ええ、絶品よ」
 こう令にも答えた。
「いい海ね」
「この海を見ながらなんだよ」
「そのコーヒーを飲むのね」
「どうだ、ここに来た介があっただろ」
「まだよ」
 冷めた口調でだ、安奈は令に返した。
「これ位じゃね」
「合格点は出さないか」
「だってまだお店の中に入ってないし」
 それにというのだ。
「コーヒーも飲んでないじゃない」
「だからか」
「そうよ、まだ合格点はね」
「出せないか」
「これからよ」
「お店の中に入ってか」
「そうよ、じゃあね」
 それならとだ、令に言ってだった。
 そしてだ、彼の案内をここでも受けてだった。二人で店に入った。
 店の中も白かった、一面白でカラーリングされていてだ。外の眩しい日差しと違い適度な日陰になっていてだ。落ち着いた趣だ。
 しかも店の中はクーラーが効いていて涼しくてだ、店の一面を占めている窓のところからは露天の席が幾つか見える。その席も屋根の下で日陰になっている。
 その店の内装まで見てだ、安奈はまた言った。
「これはね」
「お店の中もいいだろ」
「ええ、しかもね」
 その窓の外を見続けながら言う。 
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