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炎天下

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第三章

「いいわね」
「そうだな、ちゃんとしないとな」
「そうよ、ただまだよね」
「あと一時間位だな」
 そのいい場所に行くにはというのだ。
「それ位だな」
「一時間ね」
「それ位だよ」
「長いわね」
 安奈は一時間と聞いてまた言った。
「それはまた」
「けれどな」
「それでもっていうのね」
「行けばわかるさ」
 そうすればと言う令だった。
「そこにな」
「そうなのね」
「だからいこうな」
「わかったわ、ただね」
「これだけ暑いからか」
「いい場所なのよね」
 眉を顰めさせてだ、安奈は令に問うた。
「本当に」
「ああ、確実にな」
 それこそと答えた令だった。
「安心してくれよ」
「嘘だったら桜の下に埋めるわよ」
 沖縄にも桜があるのでこう言った。
「いいわね」
「この季節で桜かよ」
「覚悟しておきなさいよ」
「どの漫画だよ、沖縄だからガジュマルだろ」
「じゃあガジュマルの木に吊るしてあげるわ」
「それでキジムナーにいじめられろか」
「そうなるわよ」
 若しその場所が暑い思いをしてまで行った価値のない場所ならというのだ。
「わかってるわね」
「だからそうならないだけのな」
「場所なのね」
「これだけ暑い思いしても価値のあるな」
「だったらいいけれど」
「じゃあ行こうな」
「ええ、そこまでね」
 安奈は令の言葉に頷いた、そして持っているタオルで額の汗を拭きながらだった。令に案内されてだった。
 その場所に向かっていった、やがて左右は深い草原からだった。 
 高い場所に向かっていた、その高い場所にだ。
 白い奇麗な建物が見えてきた、その建物を見てだった。
 安奈は令にだ、こう尋ねた。
「あれがなのね」
「ああ、俺達がこれから行くな」
「その場所なのね」
「喫茶店でな」
「ふうん、喫茶店なのよ」
「安くてな」
 まずは値段のことを言うのだった。
「中学生の俺達でも行けて」
「へえ、そんなに安いの」
「ああ、しかも美味いんだよ」
「何が美味しいの?」
「アイスコーヒーがだよ」
 このメニューがというのだ。
「もう最高に美味いんだよ」
「そうなのね」
「そのアイスコーヒーには割引があってな」
「それで安いのね」
「ああ、学生割引があってな」
 そのお陰でというのだ。
「安くてな」
「しかもかなり美味しいのね」
「だからな」
 それでというのだ。 
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