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チウルカ

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第四章

「それならか」
「ああ、そうだ」
「そうしてるからな」
「ここいいるんだよな、今」
「教会の近くにな」
「そうしてるさ」
「わかった、じゃあちょっと探すな」
 こう参列しようとしている友人達に応えてだった、そのうえで。
 彼は友人を探した、そこで。
 実際の教会の近くで話を聞いた、その話は。
「じゃあ私も」
「そうよ」
 二人の声だった。
「やがてはね」
「叔母さんやお姉ちゃんみたいに」
 カシアの言葉だった、一方は。そしてもう一方は彼女の叔母のものだった。ミコワイもよく知っている二人の声だった。
「結婚して」
「家を持つのよ」
「そうなるのね」
「だからね」
「今は信じられなくても」
「その時は来るの」
 結婚するその時はというのだ。
「このことはわかっておいてね」
「私もなのね」
「ええ、覚えておいてね」
「わかったわ、叔母さん」
 カシアの声が答えた、そして。 
 その話をしてからだった、カシアが木陰から出た。その時の彼女の姿はというと。
 緑の丈の長いスカートの上に白い手編みのレースのエプロンをかけている。エプロンには薄い緑の横のラインが二つありその中に星状の白い花が並んで模様として入っている。
 白いブラウスの肩や袖には赤い糸で刺繍が入れられている。緑のベストは左右が長く縁のところが赤い。
 頭には黒のベルベットの大きな帽子、チウルカがある。黒地で上下の縁は赤と緑の細いラインがあり白花が並んでいる模様もあり額の部分に黄色い花がある。
 白や黄色の花飾りが左にあり後ろには黄色と青緑の長いリボンが下ろされている。そして右手にはピンクのブーケがある。
 そのカシアを見てだ、ミコワイは言った。
「もう着替えてるんだな」
「ええ、それからね」
「ここに着たんだな」
「そうなの」
「それでそのブーケをか」
「お姉ちゃんに渡すわ」
 そうするとだ、カシアはミコワイに答えた。
「そうするの」
「そうなんだな」
「ええ、ただね」
「ただ、何だ」
「今の話聞いてたわよね」
「ああ」
 その通りだとだ、ミコワイはカシアに素直に答えた。
「聞くつもりはなかったけれどな」
「そうなのね」
「行くか」
「あれっ、それで終わり?」
「駄目か?」
「いや、何か聞いてくるって思ったから」
「俺も朝同じこと言われたからな」
 だからとだ、カシアはミコワイに答えた。
「親父とお袋に」
「そうなのね」
「同じこと言われてるなって思ったけれどな」
「それだけなのね」
「ああ、そうさ」
 こうだ、ミコワイはカシアに素っ気なく答えた。
「それだけだよ」
「そうなのね」
「じゃあブーケをな」
「ええ、お姉ちゃんに渡すから」
「それじゃあな」
「またね」
「式には出るだろ」
 ミコワイはカシアに確認した、このことを。 
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