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おぢばにおかえり

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第二十四話 出会いその四

「ねえ君」
「君!?」
 その声に周囲を見回します。誰のことでしょうか。
「誰かしら」
「私?」
「そこの君だよ」
 ここでまた声が聞こえてきました。
「そこの君。そう、君」
「ちっちらしいわよ」
「何で私なの?」
 こう言い合っているとまた後ろから声が聞こえてきました。
「そこの背の小さい君。小さい方の」
「小さい!?」
 今の言葉ではっきりわかりました。わかってもうはらだちをはっきり感じました。
「誰が小さいですって!?」
「君、何処のクラス?」
 振り向いたそこにいたのは。背が高くてすらりとしていて髪の毛が茶色がかった男の子でした。細面で今時の男の子って顔です。ちょっと見たらいけてる感じです。何よりもそのすらりとしたスタイル、特に長い脚。かなり羨ましいです。けれど三年でこんな子知らないですけれど。
「よかったらさ、案内してくれるかな」
「案内って何処に?」
「僕のクラス」
 明るく笑って随分図々しいことを言ってきました。
「いいかな、それで」
「クラスって何処よ」
 はらだちをさらに感じながら彼に言い返します。
「三年何組なの?」
「えっ、三年って?」
 けれどこの子は三年って聞いて目を丸くさせてきました。全然予想していなかった感じです。
「僕一年だけれど」
「一年!?」
「あのさ、君」
 目を少し丸くさせたうえで私に言ってきました。
「かなり子供っぽいけれど幾つなの?」
「十七よ」
「僕十五」
 憮然としながら歳を答えるとこう言ってきました。
「今度入学したんだけれど」
「私三年よ」
 むかっとしつつ答えてあげました。
「貴方一年ってことは」
「先輩!?」
「そうなるわね」
 何か彼の背がとても高いんで完全に見上げてしまっています。こうした時小柄だと本当に困ります。相手は優に一七五超えてる感じです。
「三年F組中村千里。貴方は?」
「一年G組阿波野新一です」
「そう、阿波野君なの」
 何か何処かで聞いた名前です。私も今は中日におられる中村紀洋さんの名字だってよく言われますけれど。阿波野って名字は嫌いじゃないです。
「それで一年の教室ね」
「はい。何処ですか?」
「口で言ってもわからないわよね」
 不機嫌な声で答えてあげました。
「やっぱり」
「っていうか本当に何処なのかわからないんですけれど」
 私達は今丁度本校と三年生の校舎の間にいます。一方に家庭科の校舎、もう一方に茶道の建物があります。外の廊下なんです。
「何処が何処なのか」
「一年生の校舎は後ろよ」
「あっ、後ろなんですか」
「けれどやっぱりわからないわよね」
「とりあえず先輩の御顔だけはわかります」
 何か私の顔をじいっと見ています。私の顔に何かついているんでしょうか。それが結構不愉快なんですけれど口に出しては言いませんでした。 
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