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あと三日

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4部分:第四章


第四章

「これはね」
「まあとにかく。絵は描けてるから」
 それはいけるというのだ。
「安心していいから」
「安心ね」
「そう、安心していいから」
 自分で言ってだ。こうしてその破天荒な絵を描いていく。その次は。
 課題のその毎日書かなければいけないものはだ。昼食を食べながら適当に書いた。夕方にはもうそれは無事に書き終わったのだった。
「これでよしね」
「どういう風に書いたの?」
「適当」
 夕食前のテーブルで母にあっさりと返す。
「もうお天気もね。適当に書いたから」
「お天気もって」
「いいのよ、そんなのは」
 誰も覚えていない、宿題を受け取る先生もだと思っての言葉だ。
「全然ね」
「いいのね」
「そう、いいの」
 本当に何でもないといった調子だった。
「まあこれはこれで終わったから」
「そう、終わったの」
「だからいいのよ」
 こう母に返すのであった。
「雨とか雷も書いておいたし」
「雪は?」
「勿論書いたわよ」
 そこまで適当なのだった。夏に雪を書く程だ。
「それもね」
「何処までいい加減なのよ」
「いいのよ。とにかく次よ」
 終わらせた宿題のことは振り返らずだ。次に考えを向けていた。
「それじゃあその次はね」
「読書感想文ね」
「そう、ベートーベンの伝記」
 やはり小学生が読む様な作品だ。
「それについて書くから」
「ベートーベンね」
「とにかく耳が悪くて家庭的には恵まれていなくて」
 幸せな境遇だったとは言い難い。だからこそ伝記になる様な偉人となっていると言ってもいい。しかしベートーベンはそれだけではないのだ。
「あと性格は」
「それについても書くのね」
「とにかく気難しくて尊大で癇癪持ちで頑固だったのよね」
「物凄く付き合いにくい人だったのよ」
 そうだったというのだ。この人間性も今では有名になっている。少なくとも人間としてはお世辞にも偉人とは呼べない。もっとも偉人と呼ばれる人間でもこうした人間は他にもいたりする。
「敵だらけだったし」
「じゃあそれ書くから」
「そっちの方書くのね」
「だって。偉いとか格好いいとか誰でも書くじゃない」
 母に話しながらテーブルの上に原稿用紙を出している。
「そうでしょ。それじゃあね」
「ベートーベンのそうしたところを書くのね」
「書くわよ。早速ね」
「全く。おかしな感想文書くわね」
「いいのよ。そういうのが面白いんだから」
 こんなことも言ってだ。そうしてであった。
 真央はそのいささか破天荒な読書感想文も書いていく。夕食とシャワー以外は全て執筆とその他の細かい宿題にかけてだ。やはり徹夜してであった。
 翌朝。これまた疲れきった顔で朝食の場で母に話した。
「終わったわ」
「そう、終わったのね」
「ええ、読書感想文も他の宿題もね」
「全部終わったのね」
「残るはね」
 残る宿題は。何かというのだ。
 
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