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歌集「春雪花」

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 虚しくも

  春遠ざけし

    雨ぞ降る

 君を想へし

    寒き夜かな



 春になったかと思えば、今にも雪になりそうな冷たい雨が降る…。

 まるで春を遠ざけようとしているようで、心虚しく移ろう空模様を眺める…。

 そんな時でさえ彼のことを考え、またそれで虚しさを覚えてしまう…何とも寒い夜だと溜め息をついた…。



 日も陰り

  寒さを戻す

   冬空の

 想いにしみし

    夢見月かな



 春の陽射しも陰り、冬のような寒々しい空が広がっている…。

 その寒空を見上げ…彼のいる所は、寒くはあるまいか…などと考えてしまう…。

 彼を想い…心配し…それでいて、諦め切れないこんな自分を嘲笑する…。

 見上げた空は、そんな私など知らぬと言う風に…坦々と冷たい雨を落とすだけ…。

 身に凍みて…心に染みる。

 そんな三月の物寂しい…雨空…。



 
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