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サラリーマンヒーロー

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第四章

 それでだ、この日は会社の仕事もヒーローの仕事も早く終わりだ、一同駅前の居酒屋に集まって焼き鳥を食べつつビールを飲みながらだ。
 仕事帰りそのままのくたびれた顔でだ、こんな話をしていた。
「全く、最近うちの女房が」
「篠塚さんのところはですか」
 宮田は勇者仮面こと篠塚克典に尋ねた、そのかなり広い額を見つつ。
「奥さんが」
「やれ太っただのダイエットだの」
「おやや、そうですか」
「はい、それで家に帰ったらヨガとかダンスとかしてます」
「そうされてますか」
「そんなに太ってないんですがね」
 それでもと言う篠塚だった。
「すぐにそう言い出すんですよ」
「そうした奥さんですか」
「はい、全く」
「うちの娘もそうですよ」
 太った中年男、獅子仮面こと中畑利次が言って来た。
「やれダイエットだ健康食品だと」
「娘さん確か大学生ですよね」
 若鷹仮面こと末次大毅が問うた、三十代という年齢の割にかなり老けた顔だ。
「そうですよね」
「はい、私と違ってすらっとしてますが」
「それでもですか」
「そんなことばかり言ってます」
「そうですか、うちは息子ですが」
 末次は自分の家庭のことを話した。
「格闘家になるとか言って空手部で黒帯になったんですが」
「それでもですか」
「今度は発勁だの気功だの言い出してます」
「それゲームなんじゃ」
「実際に出来るとか。変なこと言ってます」
「息子さん格闘マニアですか」
「顔は私似ですが女房がプロレスとかボクシング好きで」
 その影響でというのだ。
「そうなってます」
「そうですか」
「はい、うちの息子はそうです」
「うちはこうですよ」 
 猛虎仮面こと吉村一騎が言う、髪の毛に白いものが混じってきている。
「女房は帰ったらネットでゲームしてて息子はギター弄ってて娘は塾」
「ネットゲームですか」
 吉村にだ、髪の毛がかなり薄くなっている黒燕仮面こと岡崎亮太が応えた。
「うちの女房はパート帰りでいつもお店のものがどうとか言ってますよ」
「パートですか」
「はい、スーパーで」
「そうなんですね、うちは何かネットでアフィリエイトやってますよ」
「それ儲かります?」
「どうなんでしょうね」
 それぞれの家庭のことを話していた、そして。
 宮田は自分が手にしているビールのジョッキを見てだ、他のヒーロー達に尋ねた。
「皆さん健康診断は」
「ああ、それですね」
「あれ何か段々怖くなってきません?」
「糖尿とか高血圧とか痛風とか」
「そうしたこと言われるかって」
「怖くなってきてますよね」
「はい、どうも私ビールが好きで」
 宮田はそのビールを見つつ苦笑いで言った。
「健康診断でも」
「ああ、痛風ですか」
「それですか」
「気をつけてくれって言われてます」
 こう言うのだった、困った笑顔で。
「ビールよりもです」
「ワインとかですね」
「焼酎とかですよね」
「飲むのならそうしたお酒の方がいいと」
「実際にそうですよね」
「飲むならそういったものの方がいいんですよね」
 他のヒーロー達もこう宮田に返した。 
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