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抓る理由

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第二章

「ちょっといいでやんすか?」
「何かな」
「嘉惟人君は安座間先生をどう思っているでやんすか?」
「えっ!?」
 秀弥の今の言葉にだ、嘉惟人は。
 急に狼狽してだ、こう言った。
「い、いや先生はね」
「顔中から汗が凄く出てるでやんすよ」
「それは暑いからだよ」
「今十二月でやんすよ」
 十二月のはじまりである。
「寒いでやんすよ」
「そ、それはね」
「まさかと思うでやんすが」
「だからそれはね」
「もうわかったでやんすよ」
 これが秀弥の返事だった。
「事情は」
「うう、それはね」
「やっぱりそうでやんすね」
「隠しごとは出来ないかな」
「これでわかったでやんす」
 秀弥はこうも言った。
「本当にね、ただ」
「ただ?」
「どうするでやんすか」
「どうするって」
「だから。先生に対してでやんすよ」
 その花純にというのだ。
「これから」
「そう言われると」
「わかっていると思うでやんすが」
「うん、僕は生徒でね」
「先生でやんすよ」
 花純はというのだ。
「だから普通の人とは違うでやんす」
「わかってるよ、普通の人だったらね」
 それこそとだ、嘉惟人も答える。昼食のきつねうどんを食べながら。
「僕だってとっくに」
「告白しているでやんすね」
「そうしてるよ、けれど」
「先生でやんす」
「自分の通ってる学校のね」
「これで告白出来るかどうか」
「漫画や小説ならよくある話だけれど」
 それでもというのだ。
「現実だとね」
「それは出来ないでやんすね」
「うん、だから困ってるんだ」
 こう秀弥に答えるのだった。
「僕もね」
「そのこともあってでやんすね」
「身体を抓ってね」
 その花純の前ではというのだ。
「表情を消してるんだ」
「そうでやすんか」
「そうだよ、本当にね」
「困ってるでやんすね」
「そうなんだよ」
 まさにというのだ、嘉惟人にしても。
「どうしたものかな」
「それはでやんすね」
「それは?」
「まず、嘉惟人君は生徒で相手は先生でやんすから」
「告白とか実際はね」
「出来ないでやんす」
 こう彼に話した。
「それはどうしても無理でやんす」
「生徒だからね、僕はだ」
「だからでやんす、ここは」
「ここは?」
「じっと我慢でやんすよ」
「我慢って?」 
 我慢と言われてだ、嘉惟人はこう秀弥に言った。 
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