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エレンゲレクキ

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第五章

 その服を指し示してだ、老人は二人に話した。
「これですよね」
「それが、ですよね」
「ナナイ族の服ですね」
 二人もこう答えた。
「まさに」
「それですね」
「はい、名前は」
「エレンゲレクキですね」
 二人は同時に服の名前を言った。
「そうですね」
「確か」
「そうです」
 村長はにこりと笑ってだ、二人に答えた。
「私達の昔ながらの服です」
「ですね、もう着ることはないですが」
「そうした服を着ておられましたね」
「鮭の皮で作ります」 
 村長は二人に生地のことも話した。
「これ一着で二十匹以上の皮が必要です」
「それをなめして」
「そして作りますね」
 学者だけあってだ、二人も言う。
「そしてイラクサや魚の皮を細くしたのでつないで」
「そのうえで着ますね」
「そうです、しかもよくなめしているので」
 だからというのだ。
「着心地もいいですよ」
「ですね、この服も見たかったです」
「実は」
 二人は正直に本音も話した。
「現代化していても」
「昔ながらのものもと願っていました」
「しかし見られてです」
「何よりです」
「そうですか、ではです」 
 それではとだ、村長は二人にあらためて言った。
「よくご覧になって下さい」
「そうさせてもらいます」
「写真も撮っていいですね」
「どうぞ、ちなみに着ているのは」 
 にこにことしたままだ、村長は二人に服を着ている少女のことも話した。
「わしの孫娘です」
「お孫さんですか」
「そうなのですね」
「そうです、末孫でして」
 そして、というのだ。
「普段はこうした服はです」
「着ないです」
 その少女も言ってきた。
「というか着たの子供の時にお祭りで」
「いや、こうした服も」
 村長は笑ったままだった。 
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